令和元年 伊豆ジオパークの絶景 その1

こんばんは。

  全国的に10連休となった今年のゴールデンウィークも瞬く間に終わり、日常の暮らしが戻ってきました。今年の5月は、新しい年の始まりとなりましたが、皆さんは「令和元年」をどこで迎えたでしょうか。私は、静岡県の西伊豆で令和初日を過ごしました。

【新しい伊豆の魅力とは?】

  ゴールデンウィーク。いつもは、高いお金をかけて人ごみの中へと移動するのは抵抗があり、家でおとなしくしていることに決めているのですが、今年は例年とは違うパターンとなりました。というのも、今回は最近JR東日本が行っているキャンペーンに反応してしまったのが事の始まりでした。

  それは、「大人の休日倶楽部」のキャンペーンでした。イメージキャラクターは、大人の休日にふさわしい吉永小百合さんです。今年は「伊豆半島ジオパーク編」と題して西伊豆の海岸沿いに点在する岸壁の絶景を特集しました。小百合さんが訪れるジオパークは、海と絶壁が織りなす地球規模の命の鼓動そのものです。テレビのコマーシャルからも駅のポスターからもその絶景が目に飛び込んできます。

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(大人の休日倶楽部ポスター jreast.co.jp)

  このポスターを見て思い出したのは、クロード・モネの描いた「エトルタ」です。エトルタは、フランスノルマンディー地方の海岸で、石灰質の断崖が続く海岸でモネをはじめとして印象派の画家たちがこぞって描いた光景でした。また、この海岸の先端には針の岩と呼ばれる塔のような岩がたっており、針岩はアルセーヌ・ルパンの「奇岩城」の舞台となったのです。モネの「エトルタ」には、何枚ものスケッチがあり、針岩が描かれたもののあれば、断崖が描かれたものもあります。

  私が美術展で観た「エトルタ」は、アーチ型の岩石が海に佇んで美しい景色を形作っていました。その画は、まさに今回のポスターで吉永小百合さんが佇んでいた伊豆ジオパークの断崖と全く同じ景色だったのです。エトルタに行くことはかなわないのですが、伊豆ならば行くことができる。こうして、今年のゴールデンウィークには伊豆に行くことと相なったのでした。

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(モネ「エトルタ」 wikipediaより)

  しかし、伊豆のエトルタはどこにあるのか。

  まずは、吉永小百合さんのCMのロケ地はどこだったのか。それを検索するところから計画は始まります。伊豆ジオパークは、西伊豆の様々な場所に散在しており、特定することは容易ではありません。どうやらその断崖の上部は馬の背のかたちをしており、馬ロックと呼ばれているようだ、との情報からその場所は「黄金崎」ではないか、とあたりを付けました。

  「黄金崎」の場所は、西伊豆の堂ヶ島温泉と土肥温泉の間に位置する宇久須という地区にあります。どうやらそこに行くにはバスか車しか足がないようです。バスでは時間が決まっており、待ち時間が長くなります。すると、足はレンタカー。であれば、堂ヶ島温泉に泊まるのが良いようです。

  堂ヶ島温泉には三四郎島があり、見る角度によって島が3つにも4つにも見えるとのことでした。さすがに還暦を迎えて埼玉県から車で行くのは無謀に思え、電車で伊豆急下田に向かい、レンタカーを借りて堂ヶ島温泉に行くのが得策との結論に至りました。であれば、結局JR東日本のビューカードを利用して予約するのが良いとのことで、そのセットで無事予約に至ったのでした。

【いざ、日本のエトルタに出発】

  5月1日、令和の幕開けとともに私と連れ合いは二人で、踊り子号に乗って一路伊豆急下田を目指しました。踊り子号は900東京発、伊豆急下田1146着の臨時特急105号。この日の予報は、午前中は曇りで午後は雨。車窓から見える景色には晴れ間も見えて、旅行日和となりました。臨時列車だけあって、車両は昭和の香りがプンプンするなつかしさで、トイレはなんと和式。さすがにこれは改善してほしい。連れ合いは、グリーン車のトイレに緊急避難して、洋式があったのでホッとしていました。

  伊豆急下田は、駅前にペリーの黒船が停泊していて、黒船饅頭がある歴史の街です。我々の目的はジオパークなので、駅の観光案内にてどこがジオパークなのかを確認しに行きました。エトルタにそっくりの場所ですが、私は堂ヶ島の先の「黄金崎」を想定していたのですが、連れ合いが調べてくれたところどうやらそこは下田近くの「龍宮窟」らしいというのです。半信半疑でしたが、観光案内で確認すると担当の女性は丁寧に地図を出して解説してくれました。

  下田から行けるジオパークは、「爪木崎」、「恵比寿島」、「龍宮窟」の3か所でした。心配だったのは駐車場です。お姉さん曰く「爪木崎」は有料駐車場があり安心ですが、「恵比寿島」は4台程度、「龍宮窟」には10台程度の駐車場しかないので、駐車場待ちの車で道路が大渋滞するというのです。バスはと言えば、1時間に12本。「不便ですね~。」というと、「以前には一日1本だったので便利になったんですよ~。」だそうです。ジオパークを目玉にするならば、市をあげて駐車場くらいは整備してお客様をお迎えしてはいかがでしょうか。

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(爪木﨑の壮大な柱状節理に感動)

  さて、まずは3か所巡りです。この日は天気が優れず、「爪木崎」を出るころから空から雨が落ち始めましたが、これがラッキーで駐車場のないジオパークに人が少なく、駐車場が止め放題だったことです。「爪木崎」では、海岸線に入るところに有料駐車場があり、おじさんが車を止めて500円を徴収されました。

  「この先は?」と質問すると「行き止まりだよ。」との答え。選択の余地はないのかとあきらめて500円を支払うと、中から目つきの鋭い茶色の猫がのっそりと姿を見せます。そのブチさ加減がとてもカワイク、この猫のエサ台ならしょうがないかと納得です。しかし、海岸に向かって丘を下っていくと、海岸沿いには別に駐車スペースがあってそこには無料で止まられるのです。やられた!

  しかし、爪木崎から見る断崖の奇岩は素晴らしい。そこには、柱状節理と呼ばれる5角形の岩の柱が無数に立ち上がっていて、岩の群れを形成しているのです。タモリさんが見たら泣いて喜ぶような地形が広大な海を背景に繰り広げられているのです。また、入り口から灯台まで、いくつものハートが恋人たちの撮影用に用意されていて、太平洋を見下ろす撮影スポットが用意されていました。

  その絶景は言葉通りのジオパークで、地球の息吹を味わうことができました。

  我々は、爪木崎でお弁当を食べてから次のジオへと出発します。少し下田駅の方の戻り南下していくと、次の目的地「恵比寿島」に到着です。「恵比寿島」は、ガイドにも載らない1km四方にも満たない小さな岩山ですが、四方を海に囲まれていて海を眺めながら島を1周することができ絶景が味わえます。

  生憎の天気でしたが、4台しかない駐車場は、ラッキーなことにガラガラで車はすぐに止めることができました。ほとんどだれもいなかったので、我々二人は傘を差しつつ、橋を渡って島に着き、1周しようと島周りの遊歩道を歩き始めたのです。

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(誰もいない恵比寿島は独り占め)

  そこに恐ろしい出来事が待っていようとは想像もできませんでした。

  我々は島に巡らされた海を見渡すことができる狭い舗装路を断崖の写真を撮りながらゆっくりと歩いていました。周囲にはだれもおらず、島の南側に差し掛かり外海に出てしばらくすると、突然波が襲ってきたのです。大きな波が一閃すると目の前の道は波の下に消えてしまい、引いていく波が1.5m程度の道を洗っていくのです。

  大きな波が来れば、足を取られて海に引き込まれてしまいそうです。汐が満ちていたのでしょう。波はひと波ごとに大きくなり、前も後ろも波間に消えています。このまま進めば、道路は海の下に消えてしまいそうです。我々は意を決してもと来た道を戻ることにしました。このときに私は波間の間隔を読み間違えて、膝から下に大きな波しぶきを浴びてしまいました。靴の中もビッチョリ。

  恵比寿島は小高い山になっており、頂には恵比寿神社があります。神社を超えると島の反対側に出ることができ、そこから見える外海と断崖は絶景でした。少し回って、先ほど波に消えた道の方を見てみると、島沿いの道は大きな波に洗われていて、改めて先ほどの恐怖がよみがえりました。道には「落石注意」の看板はありましたが、「満潮時、波に注意」との標識も必要だと、心から思いました。

  「恵比寿島」から伊豆急下田駅に戻ってから車で15分程度のところに「龍宮窟」があります。駐車場が少なく渋滞すると言われていましたが、午後4時に近かったことと、雨だったことが幸いして駐車場にはすんなり止めることができました。

  「龍宮窟」の景色はすばらしいものでした。

  ぬかるんだ山道には閉口しましたが、小高い丘の上に上がると展望台からは天空の穴から断崖を潜り抜けて岸に寄せるやわらかい波を見ることができます。そして、その穴はみごとなハート型をあらわしているのです。それは心に響く景色でした。丘を一周して駐車場に戻ると、脇には龍宮窟に降りる石の階段が設置されています。階段を下りるとそこには、先ほど上から眺めた龍宮窟を見上げることができます。

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(上から見るとハートが現れる「龍宮窟」)

  その岸辺から目を落すと、正面には大きくアーチ型にくりぬかれた断崖が迫ってきて、その向こうに海原が見えます。この場所こそ、ジオパークのポスターに写された場所だったのです。エトルタの景色に比べると小ぶりな風景ではありますが、真近に見るその形と岩肌はまさに自然の息吹と海とを感じさせられるジオそのものでした。

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(「龍宮窟」はまさに日本のエトルタ?)

【タイヤよあれが松崎の灯だ】

  さて、「龍宮窟」の景色に魅せられて、時刻は1700近くになってしまいました。今日の宿がある堂ヶ島温泉までは、小1時間はかかります。ナビで見ると、一度下田方向に戻って半島の中を突っ切る道が近いと出ます。せっかく海岸にいるので、ルート検索で海岸沿いの道を探し、そちらで堂ヶ島に向かうことにしました。こちらの道は15分ほど遠いのですが、湘南道のイメージでは海沿いの道が綺麗ではないかと期待したのです。

  ところが、これは大きな誤算でした。確かに海沿いの道ではありのですが、西伊豆の海岸線はほとんどが切り立った崖であり、国道136号線はその崖のうえを行く道だったのです。しかも道路の高低差は半端ではなく、道はほとんど日光いろは坂のようなつづれ折りの国道です。しかも山の天気は変わり易く、つづれ折りのカーブに加えて道は濃いもやが降りてきて、視界が良くありません。

  海岸沿いの道路のはずですが、なぜか周囲は崖と木々にかこまれていて上り下りの激しい連続カーブに必死にハンドルを握ります。まるで山の中を走るような風景が続き、ナビを見ると、そろそろ左側に海岸線が見えてくるはずです。しかし、つづら折りの道に余裕がないことと雨のために視界が悪いことが重なり、景色を見る余裕は全くありませんでした。そうこうするうちに、車は松崎という港へと差し掛かり、断崖を抜けて街並みが見えてきました。

  車の数も増え、信号も見えてきて乗り合いバスも走っています。信号とバスを見てこんなにホッとしたのは久しぶりでした。

  堂ヶ島温泉は三四郎島を望む温泉地で、入り江にいくつもの旅館やホテルが立ち並んでいます。今回宿泊したのは、南側に位置する「堂ヶ島 ニュー銀水」です。宿の入り口に車が入ると玄関には多くの従業員の方が出迎えに出ていてくれて、丁寧に案内をしてくれます。宿のつくりは面白く、フロントがあるのは7階。真ん中には、ガラス張りの吹抜けがはるかに上下に貫かれており、フロントの奥は入り江に面していて、大きな全面窓から美しい三四郎島が海に浮かんでいるのが見えます。

  夕飯のはし袋に書かれた「令和元年おめでとうございます。」の文字が嬉しく思えました。

  さて、宿に着いたところで紙面が尽きました。明日は天気の上々だそうです。この続きは、また次回にお送りいたします。

  それでは皆さんお元気で、またお会いします。


今回も最後までお付き合いありがとうございます。
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