渋沢栄一 めざすのはすべての人々の幸せ

こんばんは。

  今年の大河ドラマの主人公は渋沢栄一です。

  また、今年は1年延期された東京オリンピック、東京パラリンピックが開催されています。新型コロナウィルスの第5波の襲来によって、その開催に対して反対する意見も多くみられますが、かかわる人たちの献身的な感染対策の展開と徹底には頭が下がります。様々な意見はありますが、選手たちの活躍が、我々にコロナに正しく立ち向かう勇気を与えてくれているのは間違いのない事実です。

  ここしばらく、大河ドラマは面白さに欠けていて我が家ではすっかりごぶさたをしていました。ところが、今回は地元埼玉県出身の偉人が主人公と言うことで、毎回かかさず見ています。渋沢栄一は、その青年期を維新の時代に過ごしました。200年以上続いた江戸幕府から新明治政府に180度の大転回を果たす。まさに日本の歴史の中で、最も価値観の大転換が起きた時代でした。

  これまで、大河ドラマでは明治維新の主役たちが数多く主人公となりましたが、明治維新ではわき役であった人物が主役となったのははじめてではないでしょうか。しかし、誰もがこの歴史の転換点のただ中にいたことは間違いなく、「志」を貫こうとした渋沢栄一も時代に翻弄された人物の一人です。

  その生涯は波乱に富んでおり、その面白さは無類です。

  先週は、その渋沢栄一が100年以上前に著した「よりよく生きるための羅針盤」と言ってもよい著作を読んでいました。

「現代語訳 論語と算盤」

(渋沢栄一著 守屋淳訳 2010年 ちくま新書)

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(新版「論語と算盤」 amazon.co.jp)

  さて、その「青天を衝け」も、オリ・パラの威力には勝てず、その開催期間には放送されません。

閑話休題

  今回の東京オリンピックでは、わが日本が過去最大の58個のメダルを獲得しました。しかも金メダルは27個。オリンピックは参加することに意義がある、とは言いながら、やはり自国の選手がメダルを獲得することは、日本国籍を持つものとして大いに誇りに思います。とくに柔道や体操は、日本のお家芸としてみごとな世代交代を成し遂げて、世界にその強さを見せつけてくれました。

  その陰では、金メダルを期待されながら成果が出なかった競技種目もありました。

  いったい何が違ったのでしょうか。

  それは、これまでの歴史において培われてきた指導者と選手の心技体の鍛錬の違いではないかと思います。世界ランカーが何人もいながら決勝まで進めなかったバトミントンは、ケガによる要因もありましたが、なぜか全員が何者かに魅入られたかのように予選敗退となりました。その中で、混合ダブルスの東野有紗選手と渡辺勇大選手は、見事な戦いぶりで香港チームを下し、銅メダルを獲得しました。

  例えば、バトミントン勢の不調は、自国開催のオリンピックに対する大きな期待へのプレッシャーや1年間の延期期間の圧迫などのメンタル面での影響とも言われています。確かに、柔道や体操、野球、水泳などと異なり、これまでのオリンピックでの実績は、ロンドンでの初のメダル、前回大会の女子シングルス、の銅メダル、女子ダブルスの金メダルのみです。

  どの競技においても、過去には不遇の時期がありました。しかし、今大会の柔道競技のように、指導者層と選手が一丸となって、これまでの成果と課題を分析し、着実なトレーニングを継続して続けたこと、さらに全員で他業種競技を体験するなどのメンタルトレーニングも行ったことがメダルラッシュにつながったとの大きな成果もあります。体操におけるすそ野の広い選手育成システムも大いに参考になるのではないでしょうか。

  今回、無念の涙をのんだ選手たちの一層の奮起に大いに期待しています。

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(みごと銅メダル ワタガシペア nikkansports.jp)

  一方、東京パラリンピックは、今回多様性の調和を大きな理念として掲げ、連日その言葉通りの多様な選手たちの闘いが胸を熱くしてくれます。

  パラアスリートたちには、一人一人異なる克服してきた過去があります。その過去をプラスに転じたパワーとそれを支えてきた家族や仲間たちの想いが、連日の感動の源になっていることは間違いありません。その熱い戦いには目が離せません。

  皆さん、パラアスリートたちの闘いを応援しましょう!

【渋沢栄一って誰でしょう】

  さて、渋沢栄一とは何者のでしょうか。

  彼が生まれたのは江戸時代の末期、1840年(天保14年)です。日本が幕末の動乱を経て、明治維新を迎えたのが1868年(明治元年)。そのとき栄一は28歳でした。そして、幕末から維新、そしてその後には、波乱万丈の人生を送り、1931年(昭和6年)にその生涯を閉じました。

  その生まれは、埼玉県深谷市の血洗島。

  大河ドラマを見るまで、恥ずかしながらその人生と功績はあまりよく知りませんでした。

  それでも日本で初めて銀行を設立し、それが第一銀行と言う名称で、第一勧業銀行からみずほ銀行となったこと。産業振興に努め、地元深谷にレンガ工場を設立。東京駅にみごとな日本製のレンガを提供し、深谷駅にも同様のレンガが使用されてレトロ建築として有名であること。王子駅に近い飛鳥山公園にその邸宅があったことは知っていました。

  その渋沢栄一は、2024年度から新1万円札の顔になることが決まっています。聖徳太子、福沢諭吉と並んで1万円札になるとは、本当に日本の発展に尽くした人なのですね。

  そんなこんなで、今年の大河ドラマは毎回欠かさずに見ているのですが、今年の大河ドラマは異例ずくめです。まず、昨年からのコロナ禍で、前の「麒麟がくる」の撮影が中断。その放送が延びたことから本来12月末で終了するところが、2月まで放送が延長されました。さらに今年は東京オリンピック・パラリンピックがあり、大河ドラマの放映回数が縮小。「青天を衝く」も延長されるのかと思いきや、こちらはいつもどおり12月で終了するようです。

  こうした逆境の中でも「青天を衝け」は近年になかった面白い大河ドラマに間違いありません。

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(「青天を衝け」ガイドブック amazon.co.jp)

  その面白さは、現実の渋沢栄一の生涯が奇想天外であったことが大きな要因です。栄一の実家は血洗島で藍を取り扱う豪農でした。そこで、父親から藍の育成から仕入れ、藍染め屋への卸まで農業と商売のノウハウを学んでいきます。ところが、17歳の時、父親の名代で地元の代官から税の徴収を申し付けられるとの場を経験します。そのとき、農家が汗水たらして稼いだ銭を、武士が言葉一つで貢がせることの理不尽を味わい、その理不尽な仕組みを覆すためには、自分も武士になるしかないと決意するのです。

  このドラマの脚本はよく書かれていて、渋沢栄一が将来実業家になり、第一銀行をはじめとして480社もの会社を設立し、日本資本主義の父と呼ばれることとなる、その根本の思想がどのように形成されたのかを、その幼少期に求めています。それは、栄一の母、ゑいが諭すように語る言葉です。それは、「みんなが幸せなのが一番なんだ」という一言。この言葉が栄一の将来を象徴する一言となるのです。

  そして、武士になるために父親の家を出て、江戸に出た栄一が出会ったのが、平岡円四郎でした。円四郎は栄一の向こう見ずで志豊かな人柄が好きでたまりません。その円四郎は、なんと徳川慶喜の第一の家臣だったのです。血洗島では尊王思想から討幕のために高崎城乗っ取りまで計画していた栄一は、その徳川の家臣である円四郎から仕官を勧められます。栄一は、その変節に悩みますが、世の中を変えるために徳川慶喜への仕官の道を選びます。

  その仕官に至る栄一の行動が、このドラマのオープニングを飾るみごとな場面です。

【栄一が語る「論語と算盤」とは?】

  さて、そうした渋谷栄一が100年以上前に出版したのが、今回ご紹介する「論語と算盤」です。

  この本は、渋沢栄一を慕う人々が、彼の講演会での話を毎回雑誌に掲載し、その後に項目別に編集したものを出版した本です。つまり、渋沢栄一の講演録ですが、その内容は渋沢の生きる指針が語られていると同時に、ところどころ自らのル-ツにも触れている素晴らしい内容となっています。

  その目次を紐解くと、第一章 処世と信条、第二章 立志と学問、第三章 常識と習慣、第四章 仁義と富貴、第五章 理想と迷信、第六章 人格と修養、第七章 算盤と権利、第八章 実業と士道、第九章 教育と情誼、第十章 成敗と運命。その章も面白く、とても100年以上前に語られた言葉とは思えません。もちろん、訳者、守屋淳氏に負うところも大きく、きわめて読みやすい書体となっています。

  ところで、この本の題名ですが、「論語」は孔子の教えが記されたあの「論語」のことです。そして、「算盤」は、今でいえばコンピューターもしくはタブレットと言い換えることができるのではないでしょうか。渋沢は、大蔵省に入る以前から日本の国力を高まるためには、国が経済的に豊かに名たなければならないと考えていました。そのために必要なのは、民間での商業の発展です。

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(渋沢栄一翁肖像画  kof.or.jpより)

  そのためには、銀行が出資し、市中に資金を潤沢に供給し、その資金を集めて株式会社を設立し、その利益金が積み重なれば、国民も政府も豊かになるとの信念です。

  そのためには、株式を上場するための証券取引所も必要です。渋沢は、第一銀行と同時に東京証券取引所の開設にもかかわっていました。そして、その豊かさ創出のための経済的な営みを象徴するのが、「算盤」です。しかし、バブル経済の崩壊やサブプライムに端を発したリーマンショックを見れば、知恵や哲学のない「算盤」の暴走は、人類を、豊かさとは対極の不幸へと導いてしまいます。

  渋沢は、商売や仕事に不可欠なものは、「商売道徳」であると語ります。日本では、「論語」から出た儒教をルーツとする朱子学に基づいた武士道が発達しましたが、その中で人格者に必要とされるものは、「仁」「義」「孝」「弟」「忠」「信」とされています。商売において利益を追求する場合でも、士道に通ずるこうした「商売道徳」がなければその商売は決して長続きはせず、豊かさには通じないのだというのです。

  この本には実業に必要な様々なことが書かれていますが、ときに面白いエピソードも差し込まれています。渋沢が大蔵省にて財政改革に奔走していたときに渋沢の自宅に当時、政府の参与を勤めていた西郷隆盛がやってきたと言います。果たして、西郷は何の目的で渋沢栄一の下を訪れたのか。そのエピソードは、ぜひこの本の第六章で味わってください。

  これまで、企業統治と言えば、京セラの稲盛さんやソニーの井深さん、はたまたユニクロの棚井さんの本に心を動かされてきましたが、100年以上前の日本にすでに企業統治の基本的理念を持った人物の本が出版されていたとは驚きです。

  この本は、プロ野球パリーグ、日本ハムの栗山英樹監督が新たに入団した選手たちに毎年配っているそうです。プロ野球選手は、野球人である前に一人の社会人としての人格が必要との考えは、野村克也さんが常に口にしていた言葉でした。栗山さんもヤクルト時代にそうした薫陶を受けた野球人の一人です。

  たしかにこの本にはそれだけの価値があります。


  世間ではまだまだコロナウィルスの新規感染者の数が高止まりを続けています。皆さん、ぜひともマスク、手洗い、消毒、密回避を実践し、コロナに打ち勝ちましょう。ワクチン接種も忘れずに!

  それでは皆さんお元気で、またお会いします。


今回も最後までお付き合いありがとうございます。
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