こんばんは。
しばらくブログをお休みしている間に世界中に新型コロナウィルスが蔓延してしまいました。
これまでも我々人類は未知のウィルスや細菌に侵されて、絶大な被害を出してきました。古くはペストによるヨーロッパ社会の壊滅的被害、近くはスペイン風邪の大流行、エイズウィルスによる甚大な被害、アフリカではエボラ出血熱の流行と封じ込め、サーズやマーズの世界的な流行など、今回も学ぶべき事例として紹介されてきました。
今回のウィルスは、7年前に流行したマーズ(マーズも新型コロナウィルスと解説されていたのは記憶に新しいところです。)の変型種だそうです。変型種とはいえ、今までのワクチンでは効果がなく、その感染力の強さと肺機能への絶大な影響で抵抗力の低い高齢者や既往症者などでは、死に至る病となります。アメリカでは、先日、死亡者が3,000人を超えて2001年の同時多発テロの死者を超えた、と報道されましたが、アッという間に7000人を超えました。。
「パンデミック」、「クラスター」、「オーバーシュート」、「ロックダウン」など、過激な言葉に対する人々の反応は過剰な動揺と懐疑的な無関心を呼び起こしています。
志村けんさんが新型コロナウィルスで亡くなってから、改めて我々はその恐ろしさを身近に実感していますが、コロナに感染するとは自らの人生の問題であると同時に身近で大切な人の命までを奪うことにまで至る無責任な不幸であるともいえます。一人一人が冷静に感染に対して適切な予防策を講じることが最も責任のある行動だと感じます。
(小池都知事の外出自粛要請 asahi.com)
実は、クルーズ船での感染が日本を震撼させている2月末、私も風邪の症状と発熱に見舞われました。安易に受診しないようにとの報道があったので、事前にかかりつけ医に電話したところ、「発熱者用の診察室があるので、診察ができるときに折り返し電話するので直接その部屋に入ってください。」との返事。もつべきものはかかりつけ医で、安心しました。その発熱室で診察を受けると、熱は37度8分。念のためにインフルエンザの検査を受けました。
結果は、A型インフルエンザ。実は、12月に十数年ぶりにインフルエンザの予防注射を打ってもらったのですが、発熱の低さはそのせいだったようです。リレンザ吸入薬を吸って帰りましたが、熱は翌日下がり、症状も3日ほどで抜けました。もちろん、家では自室で自己隔離を行い、会社には5日後に出社したのは言うまでもありません。このときばかりは、かかりつけ医のありがたさを感じましたが、女医さん曰く「今回ばかりはA型インフルエンザでよかったわね。薬があるからすぐに良くなるから。」
「よかったわね。」には複雑な思いがしましたが、確かに予防注射のおかげもあってすぐに回復。さらに5日ぶりに会社に行っても、すでに会社ではコロナ対策でテレワークや自宅勤務が始まっており、A型インフルで5日間休んでも、ほとんど話題にも上らない状況でした。
それにしても不思議なのは、インフルにかかった一週間前には飲み会や仕事や会議など、周囲の人とはいわいる濃厚接触を繰り返していたのですが、不思議なことに周りでは誰一人インフルエンザにかかっていないのです。私が他人に迷惑をかけていなかったことは僥倖さったのですが、感染経路が不明であることは不可解でした。
そこで、いろいろと振り返ってみると、原因は飛沫などによる感染なのではなく、どこかでウィルスが手についたのではないかと想像されます。例えば、通勤時の手摺についていたA型インフルウィルスが手につき、会社で目をこするなど涙から感染したのではないか、それが原因として最も濃厚です。
つまり、新型コロナ対策は、濃厚接触を避けることはもちろんですが、外出していても仕事をしていても、家にいても、いかにこまめに手洗いをして過ごすかが、最も大切出ることを悟ったのでした。新型コロナウィルスに感染するか否か、最後は運不運ではあるものの事前にできることもたくさんあります。まずは、こまめな手洗いと消毒、その回数が感染するか否かの分水嶺なのかもしれません。
さて、一日も早いワクチン開発を願いつつ、本屋さんの話題に戻りましょう。
本屋さんで、本当に面白かった本の著者の名前を久しぶりに見つけたとき、その本のことを思い出しました。その著者の名前は高井研氏。海洋研究開発機構に属する生物学者です。その仕事は、海洋探査船“しんかい6500”を駆使して地球生命の起源を解き明かすことだったのです。そのときに読んだ本は、「生命はなぜ生まれたのか 地球生命の起源の謎に迫る」(幻冬舎新書)という本でした。
昨年、NHKのプロフェッショナル仕事に流儀という番組で、高井さんが率いる“しんかい6500”が登場しました。この船は太陽の光の届かない深海の探索を行う有人深海探査船です。人を乗せ、深海にもぐること30年。番組では、2019年の夏に実施された「アルビンガイの移動生体実験」と「学生の乗船体験による人材育成」を9日間密着して取材していたのです。当然、チーフ研究員である高井氏もしっかり操縦する姿が映し出されました。
今週は、本屋さんで見つけた高井研さんの対談本を読んでいました。
「対論! 生命誕生の謎」
(山岸明彦 高井研著 集英社インターナショナル新書 2019年)
(「対論!生命誕生の謎」 amazon.co.jp)
【地球生命の誕生とは?】
科学が解き明かす、まだ知られていない未知の世界。
例えば、素粒子の世界では理論上つきつめていくと世の中は11次元でできている、とか、ある素粒子は見ているときだけ存在し、目を離した時には存在していない、とか、現代科学は思いもよらぬことが真実であることを明かしてくれます。生命に関しても地球上の最初の生命にかかる研究では、はやぶさ2の宇宙生命のカギを握る岩石を採取して帰還するプロジェクトが現在進行中です。「生命誕生」には、どんな謎が潜んでいるのでしょうか。
まずは、この対論の目次を見てみましょう。
第1章:生物の共通祖先に「第3の説」!
第2章:生命はまだ定義されていない!
第3章:生命に進化は必要か?
第4章:生命の材料は宇宙からやってきた
第5章:RNAワールドはあった? なかった?
第6章:地球外生命は存在する! ではどこに?
第7章:アストロバイオロジーの未来
さて、対論のお相手となる山岸明彦氏ですが、こちらは年長で国際宇宙センターで行われた生命期限探索研究「たんぽぽ計画」のリーダーを務めた分子生物学者です。年こそ違え、生命誕生の謎に正面から挑む両科学者が繰り広げる生命誕生にかかる丁々発止のタイロン。その展開は、まさに手に汗を握る知的論議の連続です。
まず、お二人の論点となるのは「LUCA」です。「LUCA」とは、「最終普遍共通祖先」のことを言います。共通祖先とは、ダーウィン進化論の基本といってもよい考え方です。例えば、チンパンジーとホモ・サピエンスは同じ霊長類に属していますが、霊長類の中でも我々は約700万年前にほんの少しの遺伝子の変化によってヒトへと分岐したといわれています。つまり、この分岐前に存在した霊長類がチンパンジーとヒトの共通祖先と呼ばれるのです。
この共通祖先をはるかに遡っていくと、哺乳類は爬虫類との共通祖先がいて、爬虫類と両生類、両生類と魚類、脊椎静物と無脊椎静物、さらには藻類などの菌類や細菌、バクテリア等々、系統図と呼ばれる樹木のような系図ができあがります。さらに遡ると、最後には「LUCA(最終普遍共通祖先)に行きつくことになるのです。
この「LUCA」が地球上に生息する生命の最初の誕生の形である点は、ダーウィンの進化論を認める限りにおいては真実であることに間違いがありません。お二人もここまでは異論なく同意しているのです。
それでは、何が対論となるのか。この本が面白いのはここからなのです。
まず、「LUCA」がいつ、どこで誕生したのか。そこが議論になります。現在の生命には炭素という有機物が生成されていることが条件となります。現在、最古の化石で認められる炭素は、38億年前の化石だといいます。長い時間をかけて炭素が形作られることを考えれば、生命誕生は、38億年から40億年前と推定されます。この点は、お二人が一致する点です。
それでは、生命誕生はどこで起きたのか。
高井さんが提唱するのは、そのフィールドワークから研究が深められている熱水噴出孔が生命誕生の知ではないか、との仮説です。熱水噴水孔は火山などのようにマグマによって熱せられた熱水が噴出する孔ですが、高井さんが注目するのは深海に存在する熱水噴出孔です。かつて、400度にも至る高熱の中に生命がいるとは考えられませんでしたが、実際にはそこにひとつの生物社会が形成されていたのです。そこに生息するバクテリアや細菌は、硫化物や金属性物質を有機物に換えて生息しているのです。我々は、基本的に太陽エネルギーの恩恵を受けて命をはぐくんでいるのですが、高井氏は40億年前、無機物から発生する化学エネルギーや電気エネルギーが生命のもとになったのではないかとの仮説を提唱しています。
(深海の熱水噴出孔探査”しんかい” motor-fan.jp)
しかし、対論の相手である山岸氏は、この説とは異なる仮説を提唱しているのです。
山岸氏は、生命誕生の地は深海にある熱水噴出孔ではなく、陸地に噴出している高熱の温泉付近だと語ります。その理由は、最初の生命が誕生するためには、豊富な水分と水分が飛んだ乾いた環境が相互にあることが必要だからだというのです。そこには、生命誕生のとき、生命はどんな機能を備えていたのか、という大きな謎がその根底を流れているのです。
【生命とは何か?】
山岸氏の科学的論理は極めて明確です。
我々には耳慣れないのですが、山岸氏が支持する生命誕生の仮説は「RNAワールド仮説」と呼ばれているそうです。詳しくはぜひこの本で味わっていただきたいのですが、ポイントは、生命の重要な要素として複製機能があることです。生命は遺伝子情報を持っていることによって同じ生命を複製できます。遺伝子は核を持つRNAとらせん構造で情報を保存しているDNAによって成り立っています。生命は、エネルギーを持つこと、複製機能があること、膜によって外界と区分けされた世界を持つこと、が要件とされています。
一般的には情報保持装置がDNAで、RNAはこの情報保持の司令塔とのイメージがありますが、実は、RNAにも独自の遺伝情報を持っており、RNAはもともと複製系として自己完結をしていたとの考えが基本となっています。それにはある酵素の発見が寄与しているのですが、山岸氏の説は、現存する生命はすべて核と膜RNAから成り立っており、進化論の帰結として「LUCA(最終普遍共通祖先)」は、RNAであることが最も合理的である、との考え方から成立しています。
(RNAは情報を伝達する gizmode.com)
対論は、「生命の定義」と「進化論の帰結」とは何かという根源的な問いかけに突入していきます。生命とは何か、との問いに対してお二人は、生命に必要な条件とは何か、との議論を展開します。高井さんは、その条件を①エネルギーがあること、②必要な元素を有していること、③有機物であること、の3つを挙げています。これに対して、山岸さんは、①何らかの膜を有していること、エネルギーがあること、③情報を伝える核酸を持つこと、を挙げています。
つまり、膜があり情報を持つ核酸がある。この条件を満たすのが「RNAワールド仮説」であり、最初のRNAは乾いた環境がなければ生成されることがないので、生命御誕生は陸地で、さらに熱水噴水孔のある温泉地だと主張するのです。お二人おまったく異なる仮説は、迫真の対論を巻き起こし我々を生命議論に巻き込んでいくのです。
いったい、地球の、我々の元となる生命の素はどこから生まれたのでしょうか。お二人の議論は、真っ二つに割れながら、最後には宇宙における生命実験の神秘と科学へと進んでいきます。太陽系に果たして生命は存在するのか。土星の第二惑星エンケシドスには「水」の存在が確認されており、生命の存在が期待されています。我々生命はどこから埋めれたのか?その謎への最前線の研究を皆さんもぜひこの本で味わってください。夢とワンダーが膨らむこと間違いなしです。
(土星の第二衛星エンゲラドス wokipediaより)
今回は、コロナ話のせいで、いつもに増して長いブログとなってしまいました。最後までお付き合いありがとうございます。皆さん、汚染された手で唇や目にさわるのは絶対にやめましょう。頻度の高い手洗いと細心の注意が被害者、そして加害者となることを防ぎます。
それでは皆さんお元気で、またお会いします。
〓今回も最後までお付き合いありがとうございます。
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