森保ジャパンが導いた新たな地平

こんばんは。

  すっかりご無沙汰しましたが、今年もいよいよ最後の週へと突入しました。

  今年の漢字は「戦」。2月に始まったロシアのプーチン大統領によるウクライナ侵攻は、ロシアの一方的な領土の略奪であり、力によって国際的に認められた国家の国土を軍事によって奪おうとする「戦争」は絶対に許されるものではありません。

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(今年の漢字「戦」mainichi.com)

  ロシアも核兵器による世界戦争を望んでいるわけではありません。しかし、第一次世界大戦、そして第二次世界大戦を顧みると、独裁者の抱く野心は止まるところを知らず、世界の人々に「死」や「不幸」をもたらすことに躊躇はありません。ロシアは反米、反ヨーロッパという価値観を共有する国々との外交によって孤立化を避けようとしていますが、この世界に生きる人々の「生きる権利」を奪う行為に賛同するような国は、必ず衰退をまねくことになります。

  ロシアやその他の国がどのようなバリアをはっても、「戦争」が人類にもたらす「惨禍」は、生命の歴史の中で、人類という種の汚点そのものです。

  世界中の人々が、ロシアの蛮行を止めるために力を尽くし行動を起こすことが必要です。

  さて、「戦」といえば、今年はサッカーワールドカップがカタールで開催されました。中東での開催ははじめてであり、我が森保ジャパンは、これまでの歴史で超えることがかなわなかったベスト8の壁を超えるべく、ドーハへと向かいました。

【Eグループは死の組か?】

  ワールドカップの予選大会。日本は抽選でグループEとなりました。グループEに選ばれたのは、世界ランキング7位のスペイン、12位のドイツ、23位の日本、そして31位のコスタリカでした。特に我々がゾッとしたのは、スペインもドイツもかつてワールドカップで優勝したことのある実力あるチームだったことです。

  そして、1123日、日本はついにドイツと対決します。

  今回のワールドカップメンバーは、これまでとはかなり異なるメンバーが名前を連ねていました。前回ロシア大会では、西野監督が大会開始の2カ月前に急遽監督に就任し、香川選手、乾選手、本田選手、岡崎選手など、過去のワールドカップで活躍した選手たちを本戦メンバーに選んだのです。そのときにコーチだった森保監督は、西野ジャパンがベスト16を勝ち取った大会のすぐ後、オリンピック世代の監督と、ワールドカップ日本代表の監督を兼務する形で代表監督に就任しました。

  カタール大会に選ばれたメンバーは、26名中、ワ-ルドカップ経験者は7名というとても若いメンバーでした。そのうち海外経験者は23名。日本国内のJリーグ組はたったの3名となりました。ちなみに攻撃陣は全員がワールドカップ初体験です。

  メンバー発表で森保監督が語っていたのは、メンバー選考では経験よりも未経験者のより「成功したいという野心」を選択した、という言葉でした。確かに、ワールドカップで求められるのは延長戦も含めれば120分間フルに走れる体力だけではなく、世界に通用する個人技、当たり負けしないデュエルの強さ、そして、何よりもチームのためにプレーする強靭さ、です。

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(メンバー発表の記者会見 mainichi.com)

  日本の実力者たちは、みな世界に通用する力を身に着けるために次々と海外、特にヨーロッパのクラブへと移籍していきました。そうして、海外で、世界に通用するための経験を積んできたのです。ヨーロッパでのサッカーが365日、あたりまえのように生活している選手たちが見せるサッカーはどのようなものなのか。

  その力は、まさにそのドイツ戦でためされたのです。

【壮絶なドイツとの闘い】

  ドイツ戦の前半。日本は守備的な体制「4-3-2-1」、フォーバックで守りつつ、高い位置でボールを奪って攻めていく布陣を取りました。しかし、ドイツは日本を十分に研究してきており、スピードスターの伊東選手や久保選手は徹底的にマークされ、思う様にボールをキープすることができません。ボール支配率はドイツが7割以上となり、日本は守りに多くの時間を費やします。そんな中、前半33分、ドイツのミッドフィルダーのギュンドアン選手がノーマークでパスを受け、ペナルティエリアへと飛び込んできます。ボールを抑えようと飛び込んだキーパー権田選手の腕がギュンドアン選手の足を引っかける形となり、不運にも反則を取られ、PKを与えてしまったのです。

  こうして前半は、ドイツに押され先制点を与えてしまいました。

  1対0で後半戦を迎えた日本は果敢に戦術を変更してきます。守備的な「4-3-2-1」からより前に重点を置く、「3-4-2-1」に戦術変更を行ったのです。さらに森保監督は、後半に入るやすぐに久保選手に変えて冨安選手を投入、さらにその10分後には長友選手に変えて三苫選手を、ワントップの前田選手に変えて浅野選手をピッチに送り込んだのです。

  この采配は日本に活を注入しました。「3-4-2-1」は、ドイツの布陣とピッタリと呼応して、攻守においてマンツーマンが明確になり、見事に機能します。日本が前からプレッシャーをかけてドイツの攻め手を封じていきます。ドイツも後半20分にはミッドフィルダーを2名後退し、日本に対抗します。

  ドイツは、交代したミッドフィルダーが機能し、日本のゴールに襲いかかります。続けざまにこぼれ球のシュートを含め、4本のシュートが日本のゴールに放たれたのです。しかし、ここで日本の守護神、権田選手がスーパーセーブを見せ、この4つのシュートを見事に跳ね返したのです。

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(日本の守護神 権田選手 yomiuri.co.jp)

  それまで、スタジアムではドイツサポーターの歓声がめだっていたのですが、ここから地元サポーターが日本に声援を送っているのか、日本への歓声が高くなり、ドイツへのブーイングまでが巻き起こり、スタジアムも日本の色に変わったのです。

  そして、呼応するように、その5分後、森保監督は田中選手に変えて堂安選手を、足を痛めた酒井宏樹選手に変えて南野選手を投入します。そして、後半30分、三苫選手のパスをゴール前に走りこんだ南野選手が受けシュートを放ちます。さらに、そのこぼれ球を堂安選手が得意の左足で合わせます。同点ゴール!日本とスタジアムが喜びに沸きあがりました。

  ドイツはこの直後、同点を死守し勝越しのゴールを狙って、フォワードの選手とミッドフィルダーの選手を交代し、新たな戦力を投入します。しかし、その4分後、前半38分でした。右サイドの板倉選手が放ったロングパスにワントップの浅野選手が反応します。走りに走る浅野選手、そしてドイツのデイフェンダーも全力で並走します。並んだ2人。しかし、浅野選手の右足がわずかに勝り、一瞬の閃光のようにボールはゴールに吸い込まれました。

  オフサイドはなく、見事な勝ち越しゴールが決まったのです。日本はこのまま勢いを守備にもつなげて見事な逆転勝利を収めたのです。

【そして、日本代表は新たな高みへ】

  ワールドカップでの戦いは唯一無二です。第2戦のコスタリカ戦はいかにワールドカップの闘いが予想どおりに行かないかを物語ります。ランク下のコスタリカに勝てば、日本は勝ち点6となり、予選突破をほぼ手中にすることができたはずでした。ところが、日本は0対1でコスタリカに敗れました。そして、ベスト16に残るためには最後のスペイン戦の勝利がそのカギを握るのです。

  12月1日(日本時間122日午前0時)、日本対スペインの闘いの幕が切って落とされました。本大会のスペインはヨーロッパ予選を1位で通過し、乗りに乗っています。初戦のコスタリカ戦では、なんと70で勝利を飾っているのです。

  日本は、この試合も本戦で機能を高めている「3-4-2-1」のフォーメーションで臨みます。しかし、スペインは得意とする早いパス交換を駆使して日本ゴールへとじわじわと攻め寄せてきます。日本も負けずに前線にボールを送り、開始そうそう久保選手が相手ゴールエリアにボールを送り込み、さらに日本ゴール前で奪ったボールをつないで田中選手のパスから伊東選手が果敢にシュートを打ちます。ボールは枠を外れました。

  そして、開始から11分。スペインは得意のパス回しからゴール前で左サイドバックがクロスボールをあげ、フォワードのモラタ選手がみごとなヘディングで合わせます。ボールはそのまま日本ゴールへと吸い込まれました。またしても、日本は先制点を許します。しかし、今の日本は、失点1は想定内。これ以上の失点を抑えれば、必ずチャンスは回ってきます。しかし、スペインはかさにかかって攻めてきます。前半のボール保持率は、何と82%。日本は前線からのプレッシャー、高い位置からの守備、そして最終ディフンスラインでゴ-ルを守ります。

  23分には再びモラタ選手のシュートが日本ゴールを襲いますが、ここはキーパー権田選手がみごとにキャッチして失点を防ぎます。日本は前半戦を決死の守備を見せ、最終ラインの板倉選手、谷口選手、吉田選手と3人にイエローカードが出されました。

  前半を1失点に抑えた日本。後半、森保監督が動きます。

  それは、ドイツ戦で逆転を実現したときと同じオフェンシブな選手交代でした。ミッドフィルダーの久保選手を堂安選手に交代、そして、ディファンダ―の長友選手に代えて三苫選手を投入したのです。この交代がボールをスペインゴールへと押し上げたのです。後半開始直後、3分。中盤でボールを奪いゴール前にけり出されたボールを堂安選手の左足が振り抜き、高速のシュートはキーパーの掌をはじいてゴールへと吸い込まれたのです。

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(堂安選手の黄金の左足 tokyoheadline.com)

  堂安選手の見事な同点ゴールでした。さらにその5分後、右サイドでボールを持った堂安選手がゴール前にボールを転がすと、前田選手が左サイドからボールに向かって猛然と走ります。しかし、ボールはそのままゴール脇に抜けていきます。そのとき、ボールが抜ける左のゴールラインに向かって猛然と走りこんだ選手がいます。三苫選手です。三苫選手の左足は、ゴールラインを割ったかに見えるボールをゴール前へと蹴り上げます。そこに待ち構えていたのは、後ろから走りこんでいた田中選手でした。田中選手は、体ごとボールにぶつかるようにしてゴールに飛び込みます。

  はたして、ボールはゴールラインを割っていたのか。

  今年から公式に導入されたVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)。スタジアムに備えられたたホークアイと呼ばれるカメラとボールに内蔵されたセンサーチップがボールがラインを割っていたのかどうかを判定するのです。その結果は・・・。サッカーでは上から見た時にラインにボールがかかっているかどうかで、インかアウトかを判定します。なんと、ボールは、1.88mm、ラインにかかっていたのです。

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(三苫選手の1mm  nipponwadai.com)

  あまりに劇的な逆転ゴール。日本は、この後、すべてを尽くしたディフェンスで7分間のアディッショナルタイムを含めた44分間、自らのゴールを守り抜き、スペインに勝利しました。日本は、Eグループ1位で予選通過を果たしたのです。

  ベスト8をかけたクロアチアとの1戦、日本は前田選手が見事に初ゴールを挙げましたが、その後同点にされ、延長戦、PK戦の結果、惜しくも敗れてしまいました。クロアチアは、次にブラジル戦にも勝利し、アルゼンチンにこそ敗れましたが、堂々の3位となりました。日本の実力も推して知るべしですね。

  今年の日本代表は、ヨーロッパ、南米のサッカーと互角以上に渡り合う素晴らしい試合を戦い、勝ち切ってくれました。今後の日本サッカーが楽しみで仕方ありません。


  さて、今年も残すところわずかとなりました。1年の終わりにこれほどの感動を味合わせてくれた森保監督と日本代表の皆さんに本当に感謝です。「戦争」や「コロナ」という暗い出来事もありますが、やっぱり人間は捨てたものではありません。明るい明日に向かって走りだしましょう。

  皆さん、どうぞよいお年をお迎えください。

  それでは皆さんお元気で、またお会いします。

今回も最後までお付き合いありがとうございます。
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