600回 本当にw ありがとうございます

こんばんは。

  皆さんのおかげで、人生楽しみのブログも無事に600回を迎えることができました。これも、ひとえに訪問を頂いている皆さんのおかげと心より感謝しております。本当にありがとうございます。

  と言っても、550回目から600回まで丸3年もかかっているのでその更新ペースの遅さには自分でもビックリです。この3年間と言えば、コロナ禍による行動制限の時期とピッタリ重なっています。本来、外出自粛の時期には読書が進むはずなのですが、私の場合には読書時間=通勤時間でしたので、通勤が無くなると自動的に読書の時間も無くなり、すっかりご無沙汰する結果となりました。退職を機会に、これからは読書に時間を割けるのではないかと思っています。

  ところで、先月、退職記念に連れ合いが四国旅行をプレゼントしてくれました。岡山から車で四国に渡り、徳島の鳴門の渦巻き、高松からフェリーで小豆島、高松の父母が浜(チチブガハマ)、愛媛の今治から「しまなみ海道」を北上して大島・大三島・因島をめぐって、福山から帰る、という45日の豪華な旅行でした。

  見所たっぷりの旅行でしたが、おすすめをひとつだけご紹介します。

  香川県の三豊市にある父母が浜は日本のユニ湖として最近映えスポットで有名ですが、そこで宿泊した「咄々々(トツトツトツ)」というペンションは最高のおもてなしをしてくれる、癒やされるお宿でした。古民家を改装した建物は立派な日本建築で、岐阜から移住してきたご夫婦がお客様をもてなしてくれます。予約は一日一組。一泊2食付きで夕食は和食か洋食を選ぶことができますが、どちらも奥様の手料理です。私たちは和食を選んだのですが、懐石風に地元の食材を使った料理が一品ずつ提供されてどれも豊かな味わいのおいしい料理でした。また、日本酒の飲み比べができ、その日は料理に合わせてご主人が仕入れた千葉、長野、香川の本当においしい純米酒を味わうことができました。

  ダイニングと純和室床の間付きのリビングはつながっていて、ゆっくりくつろげます。さらに、別の寝室は青一色に改装されていてアンティーク風にベッド式の洋室となっています。建物や内装もさることながら、食事を運んでいただく間、ご夫婦と、香川の観光情報や地の食材、お酒情報など、様々な会話でホッコリした時間を過ごすことができました。また、宿から車で20分ほど上ったところに「高屋神社」というお社があり、「天空の鳥居」があることで有名です。

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(天空の鳥居 「高屋神社」)

  宿のご主人が「天空の鳥居」の場所を教えてくれ、翌朝、朝食前に「天空の鳥居」を訪れて鳥居から眺める絶景を堪能できました。宿では、鳥居観光から戻る時間に合わせて朝食を用意してくれており、その心遣いもありがたいものでした。朝食は、地の野菜を中心としたクラブサンドイッチで、ご主人が焼いたパンの香ばしさとシットリ感に感激しました。宿は、昼には喫茶店を営んでいて、コーヒーのおいしさも格別でした。瀬戸内海の見所を満喫した旅行でしたが、皆さんも機会があればぜひこの宿を予約してみてはいかがでしょうか。旅が豊かになること間違いなしです。

  それでは、550回から600回までにご紹介した本のベスト10へと話を進めましょう。

  まずは、第10位から第6位までを一気に振り返りましょう。

10位 「残酷な進化論 なぜ『私たち』は『不完全』なのか」(更科功著 NHK出版新書 2019年)

09位 「一軍監督の仕事 育った彼らを勝たせたい」

    (高津臣吾著 光文社新書 2022年)

08位 「よみがえる天才1 伊藤若冲」

    (辻惟雄著 ちくまプリマー新書 2020年)

07 「時代を撃つノンフクション100」

    (佐高信著 岩波新書 2021年)

06位 「天才の思考 高畑薫と宮崎駿」

     (鈴木敏夫著 文春新書 2019年)

   いつも思いますが、読んだ本を見ると自分の興味がどこにあるのかがよくわかります。

   更科功さんは、分子古生物学者という変わった職業についていますが、その専門は遺伝子構造を研究することで、生命の進化を解き明かしていくことです。今回の本は、われわれホモ・サピエンスという種がどのように進化してきたのかを解き明かしていくのですが、今の我々の遺伝子の中にすでに絶滅した人類であるネアンデルタール人の遺伝子が混ざっているという事実に驚きました。さらに、ホモ・サピエンス以外の人類がたくさん存在しており、偶然と必然の連鎖によってホモ・サピエンスのみが生き残ったというワンダーが秀逸です。やっぱり、最新科学は面白い。

  そして、忘れてならないのはスポーツ本です。野球といえば、ワールドベースボールクラシックの感動は忘れることができませんが、この本はヤクルトスワローズを優勝に導いた高津監督が優勝への道筋を書き綴った面白い本でした。今年は、ラグビーそしてバスケットのワールドカップイヤーになります。日本代表の活躍から目が離せない年になりますね。みんなで応援しましょう!

  「伊藤若冲」は、近代日本画のさきがけとなる江戸期の日本画家です。彼が追求したリアリズムはまさに天才ならでは、といえます。作品のリアリティのために画材や技法を究極まで追求し、さらにそこに遊び心までを的確に表現し、見る者の心を動かしていきます。まさに絵画好きの心を射貫く本でした。

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(京都 錦市場 若冲の生家)

  佐高信さんの本は、時代を代表するノンフィクション作品の紹介ですが、心を打つのんふぃくしょんの中心にいるのは一人の人間であり、その人間とそれ以外の人々との関わり合いの真実です。この本は「人」への興味を改めて沸き起こしてくれました。

  スタジオジブリが制作した数々のアニメーション映画は、日本の観客はもちろん、世界中の観客にワンダーと感動を与えてくれました。そこで異彩を放った作家お二人はいったいその才能をどのように発揮していったのか。この本はスタジオジプリで、すべての作品のプロデューサーを務めた鈴木敏夫さんが、戦友でライバルでもあった高畑薫と宮崎駿の軌跡を語ったノンフィクションです。人々の心を動かす映画はどのように生まれるのか、その秘密に興味は尽きません。

  さて、ここからはベスト5の紹介です。

5位  「クオリアと人工意識」

    (茂木健一郎著 講談社現代新書 2020年)

  現在、AIとして最も話題となっているのは、まるで人間のように文章を作成してくれるAI、「Chat GPT」です。これまでのAIは、文章として不完全なものが多く、読めば人間が書いた文章でないことがすぐにわかりましたが、このAIが作成した文章は人が書いた文章と遜色がないのが大きな特徴です。たとえば、ラブレターの代筆や感想文、さらには大学の研究論文や卒業論文など、へたな人間が書くよりも自然な文章となっています。

  大学では、このAIで研究論文や卒業論文を制作することを禁止していますが、基本的には人間が創ったツールに過ぎませんので、問題はAI側にあるのではなく使う人間側にあると思います。そうはいっても、その文章が、見分けがつかないほど洗練されたものなのであれば、一定のルールのもとに利用されることが合理的だといえます。

  画像作成AIも現在人間のお株を奪うほどに洗練されてきていますので、法的に考えれば創作物に対する著作権の問題をきちんと整理し、判例に頼るのではなく、法整備を行うべきなのではないでしょうか。

  イーロン・マスク氏は、様々な危険性が内在していることを理由に、当面の利用を禁止すべきとの見解を公表して話題となっていますが、自らも開発を表明しており、「別次元の発想による開発」と語っていますが、そのうさんくささは天下一品ですね。

  この本は、こうしたAIと人間の問題を脳科学の観点から語ります。著者が語る「クオリア」はいまだに解明されていない、脳が認識する質感のことですが、その仕組みは果たしてAIでも同じように形成されることができるのか、実に興味が尽きない議論が展開されています。

4位 「日本インテリジェンス史」

    (小谷賢著 2022年 中公新書)

  このブログで最も興味深い関心を持っているのは、「インテリジェンス」です。それは、国家の安全、存続に直結する「諜報」のことを意味します。戦前、日本には政府や軍部の垣根を越えてインテリジェンスオフィサーを育成するための「陸軍中野学校」がインテリジェンスの核となる人材を育成していました。しかし、戦後にはすべてが解体され、日本のインテリジェンスはすべてをアメリカにゆだねることとなったのです。それ以来、日本には政府や各省庁、官僚組織を横断するインテリジェンス組織は存在していなかったのです。しかし、この本は、戦後の日本には本気で「インテリジェンス組織」を設立しようとの高い志を持っていた人々がおり、尽力していたのです。

  ブログを始めて12年、日本のインテリジェンスに対して様々にグチをこぼしてきましたが、この本を読んではじめて自らの不明を恥じることとなりました。しかし、現在の日本ではまだまだインテリジェンスが生かされているとは思えません。これからも、このブログではインテリジェンス本を取り上げていきたいと思っています。

3位 「ヒトラーの時代 ドイツ国民はなぜ独裁者に熱狂したのか」(池内紀著 中公新書 2019年)

  この本は、ドイツ文学の研究者であり、同時にエッセイストでもあった池内紀さんの遺作です。現代の世界は、分断の時代を迎えています。さらには、冷戦が終了したにもかかわらず、世界の各国内では民主勢力と軍事勢力の内戦やクーデターが巻き起こり、多くの難民が発生するだけではなく、多くの無垢な命が奪われています。それでも、国家間での戦争は世界大戦に至らずに令和の時代を迎えました。

  ところが、2022223日、ロシアのプーチン大統領はウクライナの国境を越えてウクライナ国内に攻め入ったのです。ロシアはウクライナ国内東部に位置するロシア人地域ないロシア人が虐殺されており、解放する必要があったと述べていますが、いきなりウクライナの首都キーウを攻撃し、傀儡政権を打ち立てようとしたことは、まさに宣戦布告に他なりません。

  いったいプーチン大統領は何を考えて戦争を開始したのか、まさに時代はヒトラーの時代を彷彿とさせる事態にまで及んでいます。この本はそうした時代のエポックを我々に教えてくれるのです。

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(池内紀著「ヒトラーの時代」)

2位 「呉越春秋 湖底の城 九」

   (宮城谷昌光著 講談社文庫 2020年)

  宮城谷昌光さんの古代中国歴史小説は人と人の数奇なつながりと国家の戦略を描いてあますところがありません。これまで春秋時代、戦国時代を描いて数々の名作を上梓してきましたが、その時代を締めくくる大作がこの「呉越春秋 湖底の城」です。全9巻の内容については、それぞれの巻を紹介したブログに譲りますが、この呉越の戦いは宮城谷さんが長年暖めに暖めてきた題材で、あまりに知られすぎている歴史であり、なかなか書き出せなかったと語っています。

  しかし、楚の国王に父と兄を殺された伍子胥の復讐劇を中心に「呉」の国の隆盛を描くとの構想に至ったときにこの小説がはじまりました。そして、伍子胥が素晴らしい仲間に出会い、互いに確固たる団結を作り上げる語りは、まさに宮城谷節が炸裂した氏の真骨頂です。歴史小説の醍醐味を味わいたい方には必読の書に間違いありません。

1位 「たゆたえども沈まず」

   (原田マハ著 幻冬舎文庫 2020年)

  今回、もっとも面白かった本は、このブログでは常連となった原田マハさんのアート小説でした。「たゆたえども沈まず」は、ゴッホを描いた小説ではありますが、これまでとはプロットが異なっており、物語の主人公はゴッホの弟であるテオとゴッホ、そしてテオと同じくパリで美術商を営む日本人の林忠正とその部下の加納重吉なのです。さらに、この小説にはもう一人の主人公がいます。それは、すべての人々が恋い焦がれたパリ。「たゆたえども沈まず」とは、決して沈んでしまうことのないパリとゴッホのことを語っているのです。本作は、人の生み出す絵画とパリを描いた見事なアート小説です。

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(パリで出版された日本美術特集雑誌)

  ちなみに、マハさんの小説が初めてベスト10に顔を出したのは第150回のときに第5位だった「キネマの神様」でした。そして、第250回のときにはルソーを描いたアート小説第1作目の「楽園のカンヴァス」が第1位となっています。その後も第300回に「ジヴェルニーの食卓」が第2位。第400回には「翼をください」が第5位。第500回では「暗幕のゲルニカ」が第3位。前回550回では「モダン」が第9位でした。久々に第1位となった作品をぜひお楽しみください。


  おかげさまで、601回目も無事にお開きとなりました。本は人生の伴侶です。これからもこのブログで人生が楽しくなる本を紹介していきますので、これからも「日々雑記」をよろしくお願いいたします。

  それでは皆さんお元気で、またお会いします。


今回も最後までお付き合いありがとうございます。
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