中村俊輔 サッカーをより楽しむ視点

こんばんは。

 今年は新年早々、オミクロン株による感染拡大が急激に広がり、予断を許さない状況を呈しています。各国とも長引くコロナウィルス対応で、感染の予防、制圧と経済力の維持との間で、その政策に苦戦していますが、オミクロン株の感染力には驚異的なものがあります。岸田総理も早くから水際対策を徹底して入国制限を厳しくしましたが、残念ながらウィルスの進化がまさっていたと言わざるを得ない状況です。

 我々にできることは、日頃の生活で感染対策を徹底することです。

 さて、話は変わりますが、今年はいよいよカタールで、サッカーワールドカップが開催されます。

 そして、我がサムライブルー日本代表の本選出場をかけたアジア最終予選も正念場を迎えます。日本代表は一時、9月のホームで戦ったオマーン戦、10月アウェーでもサウジアラビア戦に敗れ、自力での本戦出場が危ぶまれる展開へと追い込まれていました。しかし、同じく10月に埼玉スタジアムで行われた強敵オーストラリア戦に勝利し、現在、Aグループ第2位の勝ち点を獲得しています。

 オーストラリア戦では、新たに招集された川崎フロンターレからドイツのデュセルドルフに移籍した田中碧選手の先制ゴールによって試合を優位に進め、後半一時同点に追いつかれたものの、最終81分に浅野選手のシュートが相手のオウンゴールを誘い、みごと勝ち点3を手に入れたのです。ここからサムライブルーは息を吹き返し、あと一歩で最終予選を自力で突破派できる位置まで登ってきたのです。

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(オーストラリア戦 田中選手の先制打 sannkei.com)

 最終予選はのこり4試合。ホーム戦での中国、サウジアラビア、アウェイセンでのオーストラリア、ベトナムといずれも予断を許さない戦いとなりますが、これまでの『勢いを維持して本戦へと勝ち進んでもらいたいものです。

 実は、つい先日、日本代表キャプテンの吉田麻也選手がケガをし、ホーム戦の中国船、サウジアラビア戦に欠場するとの心配なニュースが飛び込んできました。守備の要であり、チームの主柱を欠いての闘いは厳しいものになることは間違いありませんが、その選手層の厚さと全員の結束により勝利を手繰り寄せてくれるものと信じています。

 そんな中、新春最初に手にした本は、かのファンタジスタが著したサッカー本です。

「中村俊輔式サッカー観戦術」

(中村俊輔著 ワニブックス新書 2019年)

【究極のワンプレーとは】

 サッカーと言えば、皆さんはNHKのBSで放映されている「サッカーの園」をご存知でしょうか。番組のMCはお笑いコンビ「アンタッチャブル」の柴田さんと元Jリーガーの前園真聖さんですが、毎回テーマを掲げて、そのテーマにマッチするサッカーの「究極のワンプレー」を決定するというサッカーバラエティ番組です。

 前園さんと言えば、「マイヤミの奇跡」を思い出します。

 前回ロシアワールドカップで日本代表を決勝トーナメント(ベスト16)に導いた西野朗監督。1994年。96年開催のアトランタオリンピック出場を目指していたU-21の監督はその西野さんでした。そして、このチームはみごとオリンピック本戦にコマを進めましたが、その予選リーグの初戦に当たったのが金メダル候補であったブラジルでした。日本代表は、このときに初めてブラジルから勝利を挙げたのです。このときに日本代表のキャプテンを務めていたのが前園さんでした。

 一方で、中村俊輔選手と言えば、チームの司令塔として攻撃の要となり、その鮮やかなパス、そして華麗なフリーキックによって「ファンタジスタ」と呼ばれた名選手です。在籍した横浜Fマリノスでの背番号は、チームの代表である「10」番でした。

 今年のお正月。見るともなくNHKBSを見ていると、日付が変わるころに「サッカーの園」がはじまりました。面白いのでそのままみていると、最初のテーマである「PK」が終わると、なぜかまた「サッカーの園」が始まりました。どうやら連続で過去の放送を再度放映しているようです。そのbヴァン組の面白さに引き込まれ、寝るのを忘れてみてしまいました。

 そして、次のテーマは「背番号10」。この回にリモートの取材で登場したのが中村俊輔選手でした。背番号で試合をしているという中村選手。攻守の戦況を見極め、敵を引き寄せ見方へのスペースを見極めると、そこをめがけてゴールにつながるキラーパスをつなげます。そして、ゴールへ。その司令塔としての働きが背番号10なのだ、と言います。

 この日の「究極のワンプレー」には、中村俊輔選手の他、元なでしこジャパンの背番号10澤穂希さん、そして、ジュビロ磐田黄金期の10番、藤田俊哉さんなど、5人がエントリー。それぞれの究極のワンプレーが披露され、その中からこの日の「究極」が選出されます。

 中村俊輔選手が選んだのは、1999年、シドニーオリンピック予選リーグ、カザフスタン戦で放ったワンプレーでした。試合は、前半にカザフスタンの先制ゴールを決められ、後半の70分、日本代表は掘らせ選手のヘディングゴールで同点に追いつきます。しかし、カザフスタンは守備専制の布陣で引き分けを狙いに来たのです。

 固い守りの中後半86分、中村選手のキラーパスがカザフスタンのわずかなスペースめざしてけり出されます。すでにそこに向かっていた平瀬選手が勝越し弾を打ち抜きます。さらにその後中村選手があざやかなFKを決め、みごと31で勝利しました。日本はこの勝利により予選リーグ全勝でシドニーオリンピックの出場権を獲得したのです。

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(1999年 カザフスタン戦の中村選手 youtube.com)

 まさにファンタジスタ!

 ところで、この日のテーマ「背番号10」の究極のワンプレーは誰のプレーだったのか。中村俊輔選手?それとも、その答えは来たるべき再放送をお楽しみください。

【サッカーはこうして観れば面白い!】

 いつもながら前置きが長くて恐縮です。

 ところで皆さんはサッカーを見るときに何を意識してみているでしょうか。

 そう、何と言ってもサッカーの醍醐味と言えば劇的なゴールです。サッカーは人数が多いスポーツなので、全員が自陣に弾いて守備を固めると容易に得点は入りません。事実、ワールドカップの日本代表も強敵に対しては守備に徹し、カウンターでの得点を狙って予選を突破してきました。逆に、Jリーグや海外チームでの経験で豊富な人材が育ってきた日本に対して、格下の国々は手堅く引いて守備固めをし、引き分けを狙ったうえでカウンター攻撃を仕掛けてきました。

 つまり、感動のゴールシーンは極めて数が少なく、一試合で目にすることが少ないのです。

 では、サッカーの試合はスポーツニュースのダイジェストで観れば事足りるのでしょうか。

 決してそういうわけではありません。11人の選手たちはキックオフから前半45分、後半45分、自らのゴールを守り、敵陣のゴールネットを揺らすために常に集中し続けているのです。90分間の試合中、何をよりどころに観戦すればサッカーを楽しめるのか。

 この本は、22年間トップ下でゴールを演出し続けたファンタジスタがサッカーの楽しみ方を我々に語ってくれるという、なんとも贅沢な一冊なのです。

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(ファンタジスタが語るサッカーの視点 amazon.co.jp)

 それでは、この本の構成からご紹介しましょう。

1章 中盤を制すものがゲームを制す。「トップ下」の観戦術

2章 戦術からサッカーを読み解く。「戦術」的な観戦術

3章 ピッチを彩る個の力。「個」の観戦術

4章 セットプレーはパッケージで楽しむ。「セットプレー」の観戦術

5章 感染方法についての考察。「スタジアム」&「映像」での観戦術

(巻末得点) 記憶に残る5つのゲーム

 どの章をとってもそこには中村俊輔選手独自の視点に彩られており、サッカーファンにはたまらない内容です。

 この本が他のサッカー本と異なるのは、まさに現役のトッププロの視点から書かれている点です。例えば、中村選手がこれまでこだわってきた「トップ下」。トップ下とは、FWのすぐ後ろでゲームの司令塔として全体と闘いの流れを把握し、あらゆる戦術を駆使して試合の流れを、決定づけるパスを供給するポジションです。

 トップ下の「トップ」とは、言わずと知れたFWのことを指しますが、皆さんはトップ下が最も効果的に機能するのは2トップのフォーメーションであることをご存知でしたか?2トップのフォーメーションは「442」または「352」となるわけで、鹿島アントラーズはこの「442」のフォーメーションを伝統的に守っていることは有名です。

 トップ下が守備と攻撃の中盤での要の役割を果たし、攻守の局面を切り替え、スペースに飛び込むFWに効果的なパスを供給し決定機を創りだす。この戦術は長くサッカー界で採用されてきました。しかし、現在は1トップのフォーメーションを取るチームが増えてきたと言うのです。

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(セルティックにてFKを打つ中村選手 sportive.co.jp)

 1トップは2トップへの対策として講じられたフォーメーションから始まります。2トップへの対応、それは、守備陣の4バックから3バックへの移行です。2トップで攻めてくるFW3バックで守る利点は、2トップに対してマンツーマンを敷いてマークし、さらに友軍となる一人が2トップに供給されるパスを阻止できることです。そして、スリーバックとなったためにその体制が前線にも影響し、「3421」のフォーメーションが出来上がるのです。

 これまで、テレビなどで解説者が1トップを攻撃的な陣形と話すことに違和感を覚えていました。なぜFWが二人よりも一人の方が攻撃的なのか。この本を読んで、進化の過程で、1トップがその後ろの二人のMFと合わせ、3人で攻撃する体制となることで、より攻撃に厚みが増すということ、だと知ることができたのです。

 そして、「3421」となったとき、これまで中村俊輔選手が担ってきた「トップ下」とおうポジションは機能しなくなってきたと言います。なぜならば、2トップの体制では後ろのMFが直接攻撃に参加せずキラーパスを出す陣形構築、そしてパスの供給に特化しても攻撃が成り立ちますが、1トップの場合には、MFも一緒に攻撃に参加しなければ得点の確率が上がらないためです。

 1トップの時代である現在、中村選手がめざす「トップ下」は、その出番が少なくなったのです。

 この認識は驚きでしたが、同時にサッカーを見る目が変わりました。

 この本には、その他にもをより深くサッカーを楽しめる視点が満載されています。ワールドカップイヤーの今年、日本代表の試合をより楽しむためにもぜひこの本を手に取ってみて下さい。試合の見方が変わること間違いなしです。


 この数日、オミクロン株によるコロナウィルスの感染拡大が爆発的に増加しています。我々もこれまで同様の感染対策をより徹底していくことが必要です。マスクの常時着用とこまめな手洗いと消毒。そして、家族以外の人との飲食をできるだけ控えること。毎日の習慣を続けることが、感染拡大に歯止めをかけることにつながります。

 それでは皆さんお元気で、またお会いします。


今回も最後までお付き合いありがとうございます。
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