こんばんは。
令和元年の初日、我々は「伊豆ジオパーク」の旅へと出発しました。1日目はあいにくの天気ではありましたが、伊豆急下田の駅からレンタカーで訪れたジオパークの名所は素晴らしく、ハプニングもありましたが感動のうちに終わりました。堂ヶ島温泉まで車を走らせて、オーシャンビューの部屋に案内され、その日は、美味しい料理に舌鼓を打ち、広い大浴場と露天風呂を備えた温泉を満喫しました。
朝、部屋で目覚めてカーテンを開けると、部屋からは広大な海とそこに点在する三四郎島をパノラマで眺めることができます。青空が映える美しく青い海と水平線。地球の息吹を感じさせてくれる凛々しい岩肌を見せてくれる島々。昨日とは打って変わった青い空と白い雲が自然の絵画を引き立たせてくれます。
温泉と言えば朝風呂です。
昨夜はすでに夜も更けていて、せっかくの露天風呂も真っ暗で何も見えず、ただ波の音だけが静かに響いていました。この日の朝は青い空と白い雲。露天風呂に入ると目の前に三四郎島が点在し、青い海が水平線まで続いています。温泉のお湯加減も絶妙で、至福の時間を過ごすことが出来ました。
(露天風呂から見える三四郎島の景色)
【三四郎島のトンボロ現象とは】
さて、朝食を済ませてフロントで堂ヶ島での過ごし方を聴きました。
お勧めは、堂ヶ島遊覧船で島の洞窟内に入る航路だそうですが、この日は波が高く遊覧船は欠航だとのこと。次なるプランは、「トンボロ」です。トンボロとは、イタリアの言葉で陸繋島の砂州の事を意味するとのことですが、島と島の間をつなぐ砂州が潮が引くことで現れる現象をトンボロ現象というそうです。堂ヶ島の三四郎島はこの現象が有名で、引き潮のときには砂地が現れて岸辺から島へと渡れるのです。
この日、最も潮が引くのは午前10時16分。その前後1時間くらいが砂州の現れる時間だということでした。ただ、引き潮時の潮位は季節によって変わるため、この日にどの程度の砂州になるかは微妙なところだそうです。トンボロ現象がみられるのは、堂ヶ島の瀬浜海岸でこの海岸は堂ヶ島温泉ホテルの敷地に面しており、宿からは歩いて15分ほどのところにあります。
我々は、9:30にチェックアウト。車を宿に預けて瀬浜海岸に向かいました。道路を下っていく間も右手には三四郎島と海の景色が続いています。天気は上々。船が欠航となったのが不思議なくらいです。昨日までは、薄手のセーターが欲しい天候でしたが、今日は上着もいらない天候です。
堂ヶ島温泉ホテルの脇をさらに降りていくと、いよいよ瀬浜海岸へと繋がります。浜は岸辺が石で覆われていて海水浴には向きませんが、はるか先には水平線が続いて、手前には島々が、そして象島にむかって砂地が続いており、左右から波に洗われています。天気が良いこともあり、海岸はたくさんの人でにぎわっていました。島への道が現れると言うと、モーセの十戎を思い出す人がいるかもしれませんが、こちらは海が割れるわけではありません。
(象島へと続くトンボロの砂州)
かなり広い砂州が島に向かって伸びています。確かに波はたゆたうように道を洗っているので、はだしでひざ上までパンツを上げれば島に渡ることは出来そうです。トンボロ現象を味わおうと、多くの親子連れがはだしになって砂州を渡っていました。我々は、昨日の恵比寿島でのトラウマがあり、波に洗われている砂州を渡る勇気がでません。もう少し潮が引けば、と思い、最大の引き潮である10時16分を待ちます。
時刻は10時16分を回りました。残念ながら島への道は波に洗われたままで、完全な砂州はついに現れませんでした。島には渡ることは叶いませんでしたが、三四郎島の景観や海岸の周囲にそびえる奇岩たちは荘厳な姿を見せていて、ジオパークの雄大さを十二分に味わうことが出来ました。遊覧船とトンボロ現象はまた次回のお楽しみです。
【黄金崎のはるかなる絶景】
さて、宿に戻り預けていた車を受け取りました。その旨を告げると、驚いたことに、フロントマンが鍵を手に駐車場に向かい玄関まで車を運んでくると、数人のフロントマンがやってきて車を拭いてくれるではありませんか。さらに車を掃除してくれている間、玄関わきで風に当たっていると、「お写真をお撮りしましょうか。」と声をかけてもらいました。二人で並んでの写真はなかなか取れないので、写真をお願いし、旅の記念を残すことが出来ました。
さらに車に乗り込んで宿を後にすると、フロントマンの二人が深々とお辞儀をした後に車が見えなくなるまで両手を高く上げて振り続けてくれるのです。宿のサービスには様々あるわけですが、この宿は心からおもてなしします、との気持ちが表れていて、人は心持が大切だと改めて感じました。
車は、136号線を北上し、この旅の所期の目的であった「黄金崎」をめざします。天気は上々、上り坂を走ると車は長いトンネルへと進みます。トンネルを抜けると、左に黄金崎クリスタルパークが現れます。ここは、ガラス工芸の美術館であり大きな駐車場を備えています。観光バスも駐車できます。
このパークの手前の道を左折すると、道は「黄金崎」へと向かいます。まず見えてくるのは有料駐車場の表示。1日1000円と書かれています。この日は車も少なく、駐車場もガラガラだったので、そこを無視して「黄金崎」に向かいます。すると、坂を上った先に「黄金崎」がありました。確かに駐車場は少なく、12台ほどしか止めることができません。ラッキーなことに1台がすぐに出発し、そこに駐車することが出来ました。
この地は三島由紀夫の小説「獣の戯れ」の舞台となった場所で、そこには三島由紀夫の碑が建っています。そこで記念撮影をしてから展望台へと向かうと、展望台に上がる木製の階段から黄金崎の絶景が飛び込んできました。そのアーチ型の断崖は、海に向かって切り立っていて、その姿はモネの描いたエトルタの風景をほうふつとさせるものでした。アーチ型の岩間に砕け散る白い波しぶきは、まるで生きているようにその大きさと勢いを変えて打ち寄せます。しばし、時間を忘れて見とれました。
(エトルタを思わせる「黄金崎」馬ロック)
展望台には、「黄金崎」の写真の横に「馬ロック」と書かれています。確かに「黄金崎」の形は馬の背にみえて、絶妙な命名に思わずうなります。展望台からは馬ロックの対岸の断崖の波のような地形をみることができ、別の絶景も楽しめます。そして、展望台を降りると黄金崎の横を通る道へと進んでくことになります。その道は、絶景の撮影スポットで三脚を持った一眼レフの写真マニアが打ち寄せる波を撮影していました。
この道は、横から馬ロックを見る角度となる場所があり、柵の横に馬の手綱を引く格好をして立つとまるで馬ロックに乗っているような写真が撮影できます。連れ合いは、みごと馬ロックに騎乗していました。
黄金崎の断崖に下りることができないのが残念でしたが、その道は馬ロックの脇を通り黄金崎の裏側に抜けるように続いています。15分ほど進んでいくと木製の高い階段が現れて眼下に絶壁を見ることができます。階段を上がっていくと日の入りの場所を示す標識が展望台に現れます。さらに階段は続き、その上は「富士見の丘」と呼ばれる展望スペースになっています。
(「富士見の丘」への階段から見た絶景)
遥かなる海原に半島が峰となり、その峰に浮かんだはるかな富士はまさに絶景です。
【石廊崎は波高し】
念願の「黄金崎」の絶景を満喫した我々は、これ以上北上するのを控えて帰りの駅である伊豆急下田に向かう道を引き返すことにしました。
実は、昨日伊豆急下田駅の観光案内所でジオパークの情報を聴き込んだ時に1枚のチラシを手に入れていました。それは、「石廊崎オーシャンパーク」です。この施設は先月、4月1日にオープンした施設で、中では伊豆ジオパークの紹介がなされていると書かれていました。石廊崎と言えば灯台ですが、石廊崎はちょうど136号線で伊豆急下田へと向かう途中にあるのでそこをめざすことにしたのです。
136号線は昨日の夕方に悪天候の中進んできた道路ですが、この日は晴天でまるで別の道路のような光景を味わいました。道は相変わらずのつづら折りで高低差とカーブは激しいのですが、車窓から眺められる景色は海沿いの遠景が素晴らしいものです。その屹立する断崖とはるかに遠い海の光景は、変幻自在に表れては隠れ、美しい風家を見せてくれます。あまりにきれいなので、途中の駐車場に車を止めてしばし写真撮影に興じました。
そうして走る事小1時間、車は「石廊崎オーシャンパーク」に到着しました。ここでも駐車場は有料で、金額は500円です。さすがにオープンから1カ月の施設は真新しく、駐車場も建物も新鮮です。「パーク」では、石廊崎の灯台と石室神社へのウォーキングツアーがありますが、この日はすでに終了していました。建物内には、ジオの説明ブース、お土産店、軽食レストランがあり、灯台と石室神社への中継点となっています。
(石廊崎灯台から見える波しぶき)
せっかくここまで足を延ばしたので、もうひと歩き灯台に向かいます。石廊崎は、伊豆半島の突端となっており、左右に断崖と海を堪能することができます。「パーク」からは左側の切り立った断崖と寄せうつ波を見ることができます。灯台への道はよく整備されていて舗装道路が続きます。灯台へは10分も可からずに到着、その意外な小ささに驚きます。
それもそのはず、この灯台は日本で唯一の木造2階建ての灯台だそうです。
灯台の横の高台に上がると、目の前に幌がる絶景に目を見張ります。午後になって風が強くなり、午前の遊覧船の欠航も無辺なるかなと思われます。左右に広がる海原と水平線。そして、そこに横たわる絶壁と島。あらためて伊豆半島が火山と大陸プレートの移動によって形作られたのだと感動します。
灯台の右側は、半島の反対側に当たります。こちらにははるかに太平洋が横たわります。下を見ると陸地の岸壁が横たわっており、その間に白波が打ち下ろされて大きな音を立てて砕けていきます。下を見ると高いところが大好きな私でも足がすくむ思いがします。遥か遠い水平線と足元の激しい息吹。いつまで見ていても飽きることがありません。
その半島の突端に石室神社がましましています。
(石室神社から見える先端の岩室)
突端に近づくに従って道は狭くなり、人と人がすれ違えない狭さとなります。風は徐々に強くなり、写真を撮るスマホが飛ばされそうになります。風景はさらにはるかになり、目の前に木製の階段が現れ、その狭い階段を上る人と下る人が譲り合いながら通ることになります。ゆっくりと階段をさがりきったところには神主さんがいました。連れ合いは「令和元年」の御朱印をもらって大感激。私はおみくじで大吉を引き当てて狂喜乱舞です。
そして、その小さな社務所から先がまさに石室神社のご本体です。先端の岩を登っていくと石畳があり、そこに小さな木造の祠がおかれていました。思わず拝んで大吉のおみくじを祠の扉にくくりつけます。祠から振り向けば、そこははるかなる太平洋が横たわっています。視界はすべて海です。その壮大さに息をのむようでした。
この大自然に抱かれた半島の突端に神様がましますことに首肯です。
こうして令和元日からの伊豆ジオパークの旅は大円団を迎えました。地球の息吹を随所に感じて、何度も心からの感動を味わうことが出来ました。数億年にまたがる地球の営みと限られた人の生涯。皆さんは、そこにどんな意味を見出すでしょうか。私は、地球に生きる意味を感じました。
皆さんも機会があれば、是非ともジオの素晴らしさを味わってください。明日を生きる勇気が湧いてきます。
それでは皆さんお元気で、またお会いします。
〓今回も最後までお付き合いありがとうございます。
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