むしろ、本当に大事なことほど、低い声で、静かに語られる。
Gerry Rafferty の「The Right Moment」は、まさにそんな曲と。
アルバムは『Sleepwalking』(1982年)
派手さも過激さもない。
だが、それなりに生きてきた耳には、やけに刺さる。
Gerry Rafferty(ジェリー・ラファティ)と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは
「Baker Street」(1978年)だろう。
もちろん、あれは名曲だと思う。
だが一方で、Rafferty を“あの一曲の人”として語る声も目にする。
それで片づけてしまうのは、あまりにも惜しい。
Rafferty のメロディは、人生を淡々と見つめている。
成功も失敗も等距離で受け止め、
その感情を、過剰に盛らず、良質なメロディに落とし込む。
その冷静さが、どこかクールだ。
ただ、その姿勢は80年代の大ヒットには結びつかなかった。
だが、だからこそ残った音楽もある。

■ “正しい瞬間”は、向こうから来ない
「The Right Moment」を聴いていると、
よくある人生訓――
「焦らず待てば、いつかチャンスは来る」
そういう甘い言葉とは、明らかに違う匂いを感じる。
Rafferty は、
「待てばいい」などとは言っていない。
むしろ、こう問いかけてくる。
その瞬間を、迎えに行く準備ができているのか?
人生には、確かに“タイミング”がある。
だがそれは、偶然でも、神様の采配でもない。
自分は必然だと思っている。
自分が何を選び、何を捨ててきたか。
その積み重ねの先に、
ようやく「Right Moment」と呼べる瞬間が顔を出すのだと思う。
■ 音楽は、人生の答えをくれない
音楽は、人生の答えをくれない。
だが、嘘もつかない。
「The Right Moment」も同じだ。
慰めてくれるわけでもない。
ただ静かに、こう言う。
その瞬間を逃したのは、本当に“運”のせいか?
――耳が痛い。
だが、それがロック。
【このブログ、反原発で始まったブログです。時々、私見があります】
そもそもこのブログは、
ロックの曲を引用しながら、原発、マスコミ、施政に対する違和感や疑問を、
ぼやくように書いてきた場所だった。
最近は曲の思い出話が多くなり、少し反省(笑)
……という“言い訳もどき”を添えつつ、今日は久しぶりに、原点に立ち返り。
■ 神戸(1995年)/東日本(2011年)/熊本(2016年)/能登(2024年)
それでも、現実は「正しい瞬間」を選ばない
先日、青森沖で地震が発生し、
史上初めて「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が出された。
その最中に――
北海道で原発再稼働が可決された、というニュースが流れた。
これは事実だ。誤報でもない。
「異常は確認されていない」
「規制委の審査に合格している」
「地元の理解は得られた」
いつも聞き慣れた言葉が、
いつも通りに並ぶ。
だが、ロックを聴いてきた耳には、
その言葉のリズムの悪さが、
どうしても気になる。
■ “The Right Moment” は、誰のための時なのか
「The Right Moment」は、
“待てば誰かが何とかしてくれる”という歌ではない。
むしろ逆だ。
間違った瞬間に下された決断は、
あとから必ず請求書を持って戻ってくる。
そういう現実を、私たちは何度も見てきた。
原発も同じだ。
「今回は大丈夫だった」
「想定外だった」
「当時の判断は正しかった」
――いったい、何度聞けばいいのだろう。
■ このブログが生まれた場所に、立ち返る
このブログ
【騙されるな! ロックを聴いていれば全てお見通し】
が生まれた源泉には、
反原発という、個人的だが切実な違和感があった。
私は、27年間勤めた会社を
2011年3月11日に退職した。
その日の挨拶回りの途中、
帰宅困難者となった。
生涯忘れられない、あの日から数か月。
テレビで流れる原発事故報道を見て、青ざめた。
事故の大きさ以上に驚いたのは、
報道のいい加減さだった。
関東と関西で違う内容。
新聞も違う。
海外報道も、推測と誇張と混乱が入り混じっていた。
正しいかどうか以前に、
情報が信用できない。
あのとき、
情報リテラシーの重要さを、
一市民として痛感した。
ロックは、政治スローガンではない。
だが、一言居士ではある。
危険を「慣れ」で覆い隠す社会に対して、
ノーを突きつけてきた音楽だとも思う。
ロックは、
何かが起きる「その前」に鳴っている、
さきがけの音だ。
だから、やっぱり言う。
騙されるな。
安全だと言われる“その瞬間”こそ、
一番疑ってかかれ。
ロックを聴いていれば、少なくとも
「考えずに同意する耳」にはならずに済む。
――そう、信じたい。
と云うことでおまけは音楽に戻り、Gerry Rafferty(ジェリー・ラファティ)の
『アルバムは78年『City to City:シティ・トウ・シティ』リブログで
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