10代コンビで全米2位に 2015年、高校在学時からSoundCloudに自分の音楽をアップロードするようになり、2017年頃から注目を集める。暮れにリリースした「All Girls Are The Same」がヒット。なにがすごいって、インターネット上で知り合ったプロデューサーのニック・ミラもまだ15、16才だったことだ。ニック・ミラはXXXテンタシオンなどとトリッピー・レッドの「FxxK Love」で名を上げたばかり。続いて、ジュース・ワールドとニック・ミラで作った「Lucid Dream」が全米シングルチャートで2位にチャートインし、共に才能を全米に知らしめた。
「明晰夢」を意味するこの曲は、スティングの「Shape of My Heart」のメロディーをを下敷きにしており、スティング本人は「原曲に忠実で、美しく再解釈している」と絶賛したものの、売れすぎたせいか訴訟沙汰になり、使用料を払うことで解決した。スティングは同曲をステージにで演奏する際は、ジュース・ワールドの歌詞を挟んだり、亡くなった際は追悼のコメントを出したりしている。
『Legends Never Die』の魅力 遺作について解説しよう。晩年のジュース・ワールドは、アリーという可愛らしい恋人がいて、お金も稼いで、それでも不安障害とドラッグ中毒を抱えている心情を、全編でリリックにしている。歌、ラップ、ソング・ライティングのすべてが2年の間で非常にスキルアップしており、ファンはそこに反応しているのだと思う。
最初こそ「主役がいなくて哀しいよね」という追悼の想いからアルバムをクリックしたものの、みんながくり返し聴く理由は、55分、21曲の『Legends Never Die』が、ポップ・ロックまで飲み込みんだ新しいヒップホップであり、シンプルに傑作だからだ。「Titanic」では、めくるめく思考とともにタイタニックのように溺れていきそうな思いを吐露し、「Good heart, good soul, both been in bad hands/俺の心根は正しいし魂もきれいだ ただ使い方をまちがえたんだ」と言い、自分の状況を客観的に見ている。強烈なのが、「Wishing Well」のセカンド・ヴァース。
Sometimes I don’t know how to feel Let’s be for real If it wasn’t for the pills, I wouldn’t be here But if I keep taking these pills, I won’t be here, yeah I just told y’all my secret, yeah It’s tearing me to pieces I really think I need them I stopped taking the drugs and now the drugs take me 時々 感覚を失うんだ 事実を直視してみようか ドラッグなしでは 俺はここまで成功できなかった でもこの錠剤を摂り続ければ 俺はこの世からいなくなってしまう 俺の秘密をいま明かしたよ そう 俺自身を散り散にさせるんだ まじで俺はいまドラッグが必要だ しばらく止めていたけど いまドラッグのほうから捕まえにくるんだ
2020年に発売されたアルバムの中で、アメリカでの初週最高売り上げを記録したジュース・ワールドの遺作『Legends Never Die』。この作品はなぜそんなにも聞かれ、そして評価されているのか? 彼の経歴やヒット曲、そして歌詞を振り返りながらライター/翻訳家である池城美菜子さんに解説いただきました。
<関連記事> ・21歳のラッパーのジュース・ワールド(Juice Wrld)が急逝 ・ジュース・ワールド、遺作アルバムが『Legends Never Die』チャートを独占 ・全米1位の楽曲「Rockstar」にダベイビーが込めた想いとブラック・ライヴス・マター
2019年12月8日、21才になったばかりだったジュース・ワールドがシカゴのミッドウェイ国際空港で意識を失い、そのまま亡くなってから8ヶ月が経つ。2017年に彗星のごとく出てきて以来、アメリカの若年層を中心に高い人気を誇ってきたアーティストである。その彼の、7月10日にリリースされた遺作『Legends Never Die』の反響が、予想をはるかに超えて凄まじい。アルバムは初週で49.7万枚相当を売り上げ、2020年に出た作品で最多を記録。初週のストリーミングの数字も歴代4位となっている。亡くなったあとに発売されたアルバムとしては1997年の2パックとノトーリアスB.I.G.以来の高いセールスだ。
10代コンビで全米2位に 2015年、高校在学時からSoundCloudに自分の音楽をアップロードするようになり、2017年頃から注目を集める。暮れにリリースした「All Girls Are The Same」がヒット。なにがすごいって、インターネット上で知り合ったプロデューサーのニック・ミラもまだ15、16才だったことだ。ニック・ミラはXXXテンタシオンなどとトリッピー・レッドの「FxxK Love」で名を上げたばかり。続いて、ジュース・ワールドとニック・ミラで作った「Lucid Dream」が全米シングルチャートで2位にチャートインし、共に才能を全米に知らしめた。
「明晰夢」を意味するこの曲は、スティングの「Shape of My Heart」のメロディーをを下敷きにしており、スティング本人は「原曲に忠実で、美しく再解釈している」と絶賛したものの、売れすぎたせいか訴訟沙汰になり、使用料を払うことで解決した。スティングは同曲をステージにで演奏する際は、ジュース・ワールドの歌詞を挟んだり、亡くなった際は追悼のコメントを出したりしている。
Juice WRLD – Lucid Dreams (Directed by Cole Bennett) 2018年5月に出たファースト・アルバム『Goodbye & Good Riddance』は、ゆっくりとプラチナム・セールス(100万枚)を記録。続いて、フューチャーとのミックステープ『Wrld on Drugs』を半年も経たない10月にリリース。2019年3月に出たセカンド・アルバム『Death Race for Love』は、ニック・ミラとの手作り感があった前作(のオリジナル盤)よりレーベルのインタースコープの意見が入って、カニエ・ウェストのキャンプ出身のヒット-ボーイや、ドレイクの相棒、ボーイ・ワンダらの売れっ子プロデューサーも参加。このアルバムからジュース・ワールドはチーフ・キーフ似とよく言われたラップよりも、歌の比重を増やしている。
『Legends Never Die』の魅力 遺作について解説しよう。晩年のジュース・ワールドは、アリーという可愛らしい恋人がいて、お金も稼いで、それでも不安障害とドラッグ中毒を抱えている心情を、全編でリリックにしている。歌、ラップ、ソング・ライティングのすべてが2年の間で非常にスキルアップしており、ファンはそこに反応しているのだと思う。
最初こそ「主役がいなくて哀しいよね」という追悼の想いからアルバムをクリックしたものの、みんながくり返し聴く理由は、55分、21曲の『Legends Never Die』が、ポップ・ロックまで飲み込みんだ新しいヒップホップであり、シンプルに傑作だからだ。「Titanic」では、めくるめく思考とともにタイタニックのように溺れていきそうな思いを吐露し、「Good heart, good soul, both been in bad hands/俺の心根は正しいし魂もきれいだ ただ使い方をまちがえたんだ」と言い、自分の状況を客観的に見ている。強烈なのが、「Wishing Well」のセカンド・ヴァース。
Sometimes I don’t know how to feel Let’s be for real If it wasn’t for the pills, I wouldn’t be here But if I keep taking these pills, I won’t be here, yeah I just told y’all my secret, yeah It’s tearing me to pieces I really think I need them I stopped taking the drugs and now the drugs take me 時々 感覚を失うんだ 事実を直視してみようか ドラッグなしでは 俺はここまで成功できなかった でもこの錠剤を摂り続ければ 俺はこの世からいなくなってしまう 俺の秘密をいま明かしたよ そう 俺自身を散り散にさせるんだ まじで俺はいまドラッグが必要だ しばらく止めていたけど いまドラッグのほうから捕まえにくるんだ
Juice WRLD – Wishing Well (Official Audio) ジュース・ワールドがよく口にする「デーモン」の正体は自分のなかにある弱さ、不安障害であり、それを和らげるためにまた薬に頼るという悪循環にはまっていた。「ドラッグなしでは 俺はここまで成功できなかった」とは、そのカルチャーの一部に入るために必要だったという意味と、その苦しみから逃れるために創作活動に打ち込んでいたという意味の両方だろう。