【観戦記】甲府キラー、爆誕。19歳・川合徳孟が2年連続の決勝ミドル|甲府 0-1 磐田

去年と、同じでした。
同じスタジアム、同じ0-0、同じペナルティエリア手前。そして同じ背番号33の右足。
こんなことが、本当にあるんですね。

甲府駅に、フラッグが出ていた

珍しく、配偶者が「行きたい」と仰せになられました。

というわけで、いざ遠征。向かうのはJITリサイクルインクスタジアム、明治安田J2リーグ第6節、ヴァンフォーレ甲府戦です。

甲府駅に着いて、まず目に入ったのがこれでした。

01_甲府駅の歓迎フラッグ|甲府 vs. 磐田

01_甲府駅の歓迎フラッグ|甲府 vs. 磐田


「ジュビロ磐田 サポーターの皆様 甲府へようこそ」。ヴァンフォーレのエンブレムと、ジュビロのロゴが並んでいます。

甲府は、本当にアウェイに優しいチームだと思います。遠征してきた側が、駅に降りた瞬間に歓迎されている。この一枚を撮るために、少し立ち止まってしまいました。

雨は、キックオフ前に止んでくれた

心配していたのは天気でした。ポンチョも一応、鞄に入れてきています。

ところがキックオフのころには、雨はほぼ止んでいました。結局この日、ポンチョの出番はなし。よかった~。

公式記録は曇り、気温25.5℃、湿度84%。9月の甲府にしては、過ごしやすい夜でした。

02_バックスタンドからの眺め|甲府 vs. 磐田

02_バックスタンドからの眺め|甲府 vs. 磐田


この日はバックスタンドから、夫婦ふたりでの観戦です。

相手の監督は、2022年に磐田を率いた人

この試合、気になっていたことがもうひとつありました。

甲府の監督は、渋谷洋樹さん。

2022年に磐田のトップチームヘッドコーチを務め、その年の8月からはシーズン途中で監督に就任した方です。12月まで、磐田を率いていました。

こちらのことを、いちばんよく知っている人がベンチにいる。非常に怖い存在です。

※渋谷監督は甲府での在籍も長く、2010〜2014年にトップチームコーチ、2020〜2022年にヘッドコーチを務めています。2025年12月に甲府の監督に就任しました。

前半、東ジョンが立ちはだかった

出だしは磐田が甲府陣内に攻め込む展開でした。

12分、15分と太田龍之介。22分にイアゴ・テレス。相手ゴール前まで、何度も運べています。

ただ、そのたびに甲府のGK東ジョンが立ちはだかりました。入りそうで、入らない。

03_先発メンバーとジュビロサポーター|甲府 vs. 磐田

03_先発メンバーとジュビロサポーター|甲府 vs. 磐田


この展開、嫌な予感がするんです。取れるときに取っておかないと、カウンターを食らって失点。サッカーあるある、というやつです。

前半のシュートは磐田8本、甲府5本。コーナーキックにいたっては磐田7本、甲府1本。押しているのは間違いなく磐田でした。

それでも、0-0で折り返します。

あとで知ったことですが、東ジョンはこの試合についてこう話していました。

「太田龍之介選手の特徴は分かっていた。遠い位置からでも打ってくるので早めに準備をしていた」

読まれていたんですね。

「0-0のハーフタイムが、実は一番危ない」

私が前半に感じていた「嫌な予感」。あれは、ベンチでも同じだったようです。

秋葉忠宏監督が、ハーフタイムに選手へ伝えたことを明かしています。

「実は、こういう我々がペースを握っているように見えるゲームでも、甲府さんは粘り強く、辛抱強く守りながら、どこかでひと刺しする力を持っています。だから『これは甲府さんのペースでもある』と、はっきり伝えました」

「いい状態で点を取れず、0-0で迎えるハーフタイムが実は一番危ないと、選手たちにも釘を刺しました」

バックスタンドで「嫌だな」と思っていたことを、プロは言葉にして、対策にしていました。当たり前かもしれませんが、こういうのを読むと少し嬉しくなります。

飲水タイムが明けた、その1分後

後半は、両チームともにギアを上げそうで上げきれない、もどかしい展開でした。

時間だけが過ぎていきます。ゴールの匂いが、あまりしない。

61分、小原基樹に代えて川合徳孟。73分には乾貴士に代えて佐藤大樹、イアゴ・テレスに代えて為田大貴。秋葉監督が立て続けにカードを切ります。

そして72分、飲水タイム。

プレーが再開されて、その1分後でした。

川合徳孟。2年連続、同じスタジアムで

74分。

投入からわずか1分の為田大貴からボールが渡ります。受けたのは川合徳孟。ペナルティエリアの手前でした。

右足を振り抜いた瞬間の、低い弾道。ボールはGKの手前で一度バウンドして、伸ばした手も届かずゴールの中へ吸い込まれていきました。

バックスタンドから見ていて、声が出ました。

J.League公式の戦評は、このシュートをこう書いています。

「攻守の切り替えが激しい時間帯に川合 徳孟へボールが入ると、右足のアウトにかけたようなシュートがファーに決まって、磐田がついに均衡を崩した」

見出しはそのまま、「均衡を崩した川合徳孟の“ミドル”」。

そして、ここからが本題です。

私たちは去年も、このスタジアムで同じものを見ています。2025年10月4日、J2第32節のヴァンフォーレ甲府戦

あの日も0-0のまま試合が進み、前半44分、川合徳孟がペナルティエリア手前から右足を振り抜いて、ゴール右上に突き刺しました。スコアは甲府0-1磐田。決勝点でした。

つまり、こういうことです。

試合 時間 シュート 結果
2025/10/4 J2第32節 44分 PA手前から右足 甲府 0-1 磐田
2026/9/12 J2第6節 74分 PA手前から右足 甲府 0-1 磐田

場所も、形も、結果も、まったく同じ。どちらもJITリサイクルインクスタジアムで、どちらもペナルティエリア手前からの右足、どちらも決勝点、どちらも1-0の勝利です。

しかも川合徳孟は、リーグ戦の通算得点が3。そのうち2点が、甲府から奪ったものです。

「甲府キラー」と呼んでも、怒られないと思います。

本人も、そう感じていたようです。試合後、「昨年の甲府戦でもゴールを決めました。いいイメージはありましたか」と聞かれて、こう答えています。

「昨年のいいイメージはありましたし、それが今日のゴールにもつながったと思います。しっかりと決め切ることができて良かったです」

ゴールの場面については、こうです。

「最初からゴールは意識していましたし、積極的にシュートを打とうという気持ちで試合に入りました。自分の得意な形だったので、シュートを打とうと決めて、あのようなゴールにつながって良かったです」

「シュートコースもしっかりと見えていましたし、練習でも意識してやっていたので、それを試合で出すことができて良かったです」

「自分の得意な形」。2年続けて同じ場所から同じ形で決めた選手が言うと、説得力が違います。偶然ではなく、狙って打っていた。

去年の彼は18歳でした。今年は19歳。そして今季から、磐田の副主将を務めています。

勝負の神様は、誰に微笑んだのか

試合前、私は「神様が味方をするのはどっちだろう」と思いながらスタジアムに入りました。

その答えらしきものが、秋葉監督のコメントの中にありました。

この日、決勝点をアシストしたのは為田大貴。前節の富山戦ではベンチ外だった選手です。なぜベンチに入れたのかと聞かれて、監督はこんな話をしています。

「前回の富山戦の2日前、1日前のトレーニングで、スプリントのときに『ここまで走ろう』と言っていた中で、少し抜いてしまっている選手が多かったんです。その中でも、タメや貴士、イアゴ、ダニーロという4人は最後まできっちりとやっていました」

「タメは常にどんなときも、メンバー外になろうと、ウォーミングアップだろうと、100%で本気でやってくれます。そういう選手に最後は勝負の神様が微笑んでくれると思いますし、勝負はほんの些細なことで決まると思っています」

「彼が頑張ってくれたところから、(川合)徳孟が持ち込んでのシュートでしたから、彼を選んで良かったと思っています。普段のトレーニングが本当に大事なんだと改めて実感できる、僕にとってもいい教訓になったゲームでした」

神様は、水曜日の練習を見ていたわけです。

73分に入って、74分にアシスト。ピッチにいた時間は、得点までわずか1分でした。

ようやく、今季初のクリーンシート

そのまま逃げ切って、試合終了。甲府0-1磐田。

「試合は、ようやく今季初のクリーンシートにできました。守備面では最後、理屈ではなく、『何が何でも守るんだ』『何が何でも点を取らせない』というメンタリティー、執念、執着を出してくれました」

今季初の完封。ここまで5試合で失点7、どこかで必ず1点は取られていたチームが、この日はゼロで終えました。薄氷の勝利ではありましたが、この「ゼロ」は大きいと思います。

GK牲川歩見も、この日は5本のセーブを記録しています。両ゴールキーパーが5本ずつ止めた試合でした。

その牲川のコメントが、また良かったんです。この日、彼には八田直樹選手と同じチャントが送られていました。

「先輩と同じチャントを歌っていただけたのは嬉しかったですし、こうやって結果を残すことで認められていくと思っていました。個人的には少し遅くなってしまったとは思いますけど、サポーターの皆様にクリーンシートを届けられて良かったと思っています」

「シンプルに嬉しいです。ゼロにできたことは、一つのきっかけとして大きいと思います。ただ、これを続けていくことが僕たちの次の課題になってくると思うので、そこにまたチャレンジしていくことを意識したいです」

この日の最終ラインには、山﨑浩介が初先発で入っていました。そのことについても、牲川はこう話しています。

「コミュニケーションの部分は日本語でやり取りができたので、すごく伝えやすかったですし、声をかけるところは意識していました」

初先発の選手を後ろから支えながらの、今季初完封。ゴールキーパーの仕事だなあ、と思います。

太田龍之介の、古巣戦

もうひとつ、この試合には見どころがありました。

1トップに入った太田龍之介にとって、甲府は古巣なんです。

前半の決定機は、ほとんど彼のところから生まれていました。12分のヘディング、15分のシュート。そのどちらも、東ジョンに止められています。

「本当にガス欠になるまでは、相手にとって一番危険な存在でした。彼の背後への抜け出し、キープ力、そしてフィニッシュ。(中略)ただ、古巣戦はどうしても力が入るところもありますし、最後のフィニッシュだけ少し力が入ってしまったのかなと思います」

力が入ってしまう。分かる気がします。

数字で見る、この90分

「どちらに転んでもおかしくなかった」というのが、見ていた私の実感でした。ただ、数字を見ると少し違う顔が出てきます。

項目 甲府 磐田
シュート 10 13
枠内シュート 5 6
ボール支配率 40% 60%
パス成功率 74% 80.7%
コーナーキック 2 11
ゴール期待値(xG) 1.11 1.47

コーナーキックが11対2。支配率も60%対40%。押し込んでいたのは、間違いなく磐田でした。

※ゴール期待値(xG)は、そのシュートがどれくらいの確率でゴールになるかを、位置や状況から数値化したもの。合計が1.47なら「平均的には1.5点入る内容だった」という意味になります。

ちなみに、川合徳孟の決勝点そのもののxGは0.03ほど。100回打って3回しか入らない、そういうシュートでした。

秋葉監督も、そこは正直に言っています。

「あとは、スタッツ通りにもっと点は取れると思います。前半から得点を取れていれば、このような苦しいゲームにはならなかったと思います。いつも言っていますけど、3点、4点、5点と取って、ゼロで勝つというフットボールを展開したいと思っています」

渋谷監督の言葉も引いておきます。

「前半に失点していれば得点差が開いた試合になっていたかもしれない」

相手の監督にそう言わせたということは、内容として悪くはなかったのだと思います。それでも1点しか取れなかったところに、課題が残ります。

1,000人を超えるサポーターが、甲府にいた

この日の入場者数は9,289人。そのうち、磐田から来ていたサポーターについて、秋葉監督がこう話しています。

「まずは甲府まで、1,000人以上の我々を愛し、共に戦ってくれるファン・サポーターの方々が来てくれたこと。本当に感謝しています。何なら5,000人くらい来てくれたんじゃないかと思うほど、ホームかと錯覚するような大きな声で、最後の最後まで我々を鼓舞してくれました。だからこそ、あのような劇的なゴールにつながったと思います」

バックスタンドから聞いていても、本当にそうでした。ゴール裏の声が、ずっと途切れない。

その中の1,000人のうちの2人が、私たち夫婦だったということになります。

8位、勝点10。次は新潟

試合結果|甲府 0-1 磐田

試合結果|甲府 0-1 磐田


これで6試合を終えて3勝1分2敗、勝点10で8位。得点8、失点7で得失点差はプラス1になりました。

甲府は2勝1分3敗の勝点7で13位です。

対甲府は、これで5連勝。通算でも17勝10分2敗と、大きく勝ち越している相手になりました。

※順位は9月12日時点のもので、第6節には未消化の試合が残っています。

次は9月19日(土)19時、アウェイでアルビレックス新潟戦。デンカビッグスワンスタジアムです。

川合徳孟は、次に向けてこう話していました。

「今季初のクリーンシートでしたし、点を取られないことは勝つために大事なことです。まずはそこを続けながら、内容にもこだわって、前半から90分を通してアグレッシブに守備をしていきたいです」

「もっと点を取れたシーンもあったと思うので、そういう場面を逃さず決め切れば、毎試合勝てると思います」

去年も、今年も。同じスタジアムで、同じ背番号33に救われました。

また来年も、ここに来ようと思います。

ハイライト

クラブ公式チャンネルに、DAZNのハイライトが上がっています。あの一撃は、ぜひ映像で。

この日の記録

項目 内容
大会 2026/27 明治安田J2リーグ 第6節
日時 2026年9月12日(土)19:00 キックオフ
会場 JITリサイクルインクスタジアム
スコア ヴァンフォーレ甲府 0-1 ジュビロ磐田(前半0-0/後半0-1)
得点 74分 川合徳孟(磐) アシスト:為田大貴
入場者数 9,289人
天候 曇/25.5℃/湿度84%
主審 山岡良介
警告 65分 イアゴ・テレス(磐)/90+5分 スタチオーリ ミケーレ(甲) 退場なし

※監督・選手のコメントは、ジュビロ磐田公式サイトの試合結果ページおよびJ.League公式の試合後会見録・インタビューから引用しています。

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