耐えた90分でした。
勝点13で並ぶ相手と、アウェイで
2026年10月17日(土)19時、いちご宮崎新富サッカー場。明治安田J2リーグ第11節、テゲバジャーロ宮崎戦です。
この試合前、宮崎が10位、磐田が11位。勝点はどちらも13でした。直接並んでいる相手との、アウェイでの一戦です。
磐田は3日前、ルヴァンカップでJ1の川崎フロンターレに0-4(枠内シュートは2対8。ゴール前だけが、違った|磐田 0-4 川崎)。あれは先発11人を全員入れ替えた試合でしたが、それでも0-4という数字は残ります。切り替えて臨みたい試合でした。
天候は晴れ、気温21.9℃、湿度71%。主審は中井敏博さん。キックオフは19時03分でした。
入場者数は3,293人。宮崎の今季ホーム平均(2,985人)を上回り、開幕戦に次ぐ今季2番目の数字です。この日は「星山設計サンクスマッチ」で、「ピンクリボン活動みやざき」の賛同試合でもありました。
そして秋葉忠宏監督が試合後、2度も口にしていたのがこれです。
我々の身体を動かしてくれたのは、300人以上のジュビロを愛するファン・サポーターの皆さんのおかげです
宮崎まで、300人以上。これはすごいことだと思います。
天皇杯で2回やって、2回とも負けている
この対戦、リーグ戦では初めてでした。J2で初めて同じカテゴリーに並んだので、当然といえば当然です。
ただし、公式戦では過去に2回やっています。どちらも天皇杯で、どちらも磐田が負けています。
| 日付 | 大会 | 会場 | スコア |
|---|---|---|---|
| 2024/6/12 | 天皇杯2回戦 | ヤマハ | 磐田 1-2 宮崎 |
| 2026/8/26 | 天皇杯2回戦 | ヤマハ | 磐田 0-1 宮崎(延長) |
今年8月の試合は、延長110分に土信田悠生に決められて0-1。ホームで、延長戦の末の敗退です。
つまりこの日は、借りを返しにいく試合でもありました。
結果から言うと、返せていません。1-1なので、磐田は宮崎相手に公式戦3試合で0勝1分2敗。まだ勝てていない相手です。
先発は札幌戦から、1人だけ変更
ルヴァンで11人全員を入れ替えた磐田ですが、この日はきっちり戻してきました。
10月10日の札幌戦(1-0)と比べて、先発の変更は1人だけ。吉村瑠晟が外れて、為田大貴が左サイドバックに入りました(後半のシュートは1本。クリア34本で守り切った|磐田 1-0 札幌)。
布陣は4-2-3-1。GK牲川歩見、最終ラインは桑原航太・ダニーロ・山﨑浩介・為田大貴。中盤にユーリ ララと井上潮音。前に佐藤大樹、乾貴士、イアゴ テレス。1トップにジョアン ヴィクトル。
ルヴァンの先発11人のうち、この日も先発したのは為田だけ。「川崎戦の11人は、土曜にはほぼ戻ってきます」と書いたとおりになりました。
対する宮崎も4-2-3-1。監督は大熊裕司さん。前節の富山戦から2人変更で、黒木謙吾と安部崇士が入っています。
8分、桑原航太のJリーグ初ゴール
試合は、磐田が先に動かしました。
8分、この試合1本目のコーナーキック。左CKのキッカーは井上潮音。右足で入れたボールに桑原航太が反応してシュートを放ちましたが、これはゴールの上へ。
ところがそのこぼれ球に、もう一度桑原が反応しました。ペナルティエリア左から左足でゴール右上へ。
1本目を外して、こぼれ球を自分で押し込む。8分、1-0です。
そしてこれが──桑原航太のJリーグ初ゴールでした。
桑原は2004年7月生まれの22歳。帝京長岡高から関西大学に進み、2025年7月にJFA・Jリーグ特別指定選手として磐田に。8月16日の横浜FC戦でJリーグデビューして、この日がリーグ戦8試合目です。右サイドバックが本職の選手です。
試合後、本人がセットプレーについて話していました。
セットプレーでは藤本主税さんから良い役割を与えてもらっていますし、その役割の中で結果を出さなきゃいけないとずっと感じていました
藤本主税コーチの仕込みが、きっちり形になった1点でした。
この時点でOptaが出していた数字も、悪くないものでした。
今季のリーグ戦、先制に成功した試合は5試合。4勝1分け0敗で勝率は80.0%
先制すれば、負けていない。そういうチームだったはずでした。
23分、追いつかれた
ところが15分後です。
左サイドから奥村晃司がニアへ鋭いクロス。これに橋本啓吾が合わせましたが、牲川歩見がセーブ。しかしこぼれ球をもう一度橋本が拾って中央へ折り返し、走り込んだ家坂葉光が右足で流し込みました。
23分、1-1。
家坂本人のコメントが、この場面をよく表しています。
(奥村)晃司くんがクロスを上げたタイミングで、ハッシー(橋本 啓吾)がつぶれてくれたので、マイナスのところに自分が入っていった。本当に良いボールが来たので、流し込むだけだった
これが家坂葉光の宮崎加入後初ゴール。磐田の初ゴールと、宮崎の初ゴールが、同じ試合で出ました。
宮崎の黒木謙吾は、磐田の先制点について「後ろのコミュニケーションミスで簡単に相手ボールにしてしまい、そこから失点してしまった」と話していました。つまり磐田のCKも、もとは宮崎のミスから。お互いにミスで1点ずつ、という前半でした。
前半は、押されすぎた
「せめて前半はリードして折り返したかった」という感覚、そのとおりだと思います。
ただ、数字を見ると、1-1で折り返せただけでも御の字でした。
| 前半終了時点 | 磐田 | 宮崎 |
|---|---|---|
| シュート | 3本 | 9本 |
| 枠内シュート | 1本 | 3本 |
| ゴール期待値(xG) | 0.17 | 0.77 |
| ボール支配率 | 43% | 57% |
シュート3対9、xGは0.17対0.77。しかも磐田の枠内1本は、8分のゴールそのものです。つまり前半、磐田は得点以外に枠内シュートがゼロでした。
秋葉監督も、試合後にそのまま認めています。
前半はあまりにも押されすぎました。なかなかプレッシングがはまらず、ボールを奪った後もミスがかなり多かったです。そうした苦しい前半の中で、セットプレーから先制できたのは狙い通りでした。だからこそ、あの失点は防がなければいけなかったと思います
井上潮音は、押された理由をもっと具体的に話していました。
相手のSBが高い位置を取ってビルドアップしてくることが分かっていた中で、自分たちのサイドハーフが気にし過ぎてしまい、下がり過ぎてしまったことが自分たちに勢いが出なかった1つの要因だと思います
後半、少しだけ流れが来た
秋葉監督はハーフタイムに手を打ちます。後半開始からジョアン ヴィクトルに代えて太田龍之介を投入。
ハーフタイムに修正するためのアイデアを伝えたところ、選手たちがすぐに反応してくれました。特に前半は、宮崎さんの勢いに惑わされているように我々からは見えていました
実際、15分ごとのポゼッションを見ると、1区間だけ磐田が上回っています。
| 時間帯 | 磐田 | 宮崎 |
|---|---|---|
| 0〜15分 | 40% | 60% |
| 15〜30分 | 42% | 58% |
| 45〜60分 | 40% | 60% |
| 60〜75分 | 54% | 46% |
69分に乾貴士と為田大貴を下げて、小原基樹と川﨑一輝を同時投入。ここから磐田の時間が来ました。
70分に小原のシュート、71分に小原のクロスから太田龍之介、78分に川﨑一輝が枠内へ。J.Leagueの戦評は、小原について「クロスバーに嫌われるなどゴールには至らない」と書いています。
あと一歩でした。
54分、山﨑浩介がアクシデントで
その前に、ひとつ気になる交代がありました。
54分、山﨑浩介がアクシデントで金子大毅と交代しています。クラブ公式も「アクシデント」と表現していて、負傷の程度は発表されていません。
急遽入った金子大毅のコメントです。
ダニーロと初めてセンターバックを組んだ中で、コミュニケーションを取りながらやれた部分もあったので、その点では手応えもあります
ダニーロと金子のセンターバックは、この日が初めて。それで無失点に抑えています。
中3日で大分戦が来るので、山﨑の状態は気になるところです。
後半、宮崎は10本打って枠内ゼロ
ここが、この試合でいちばん伝えたいところです。
後半のスタッツ(試合全体から前半を引いた数字)を見てください。
| 後半のみ | 磐田 | 宮崎 |
|---|---|---|
| シュート | 3本 | 10本 |
| 枠内シュート | 0本 | 0本 |
| ゴール期待値(xG) | 0.31 | 0.88 |
宮崎は後半に10本打って、枠内はゼロです。
そして、これは「宮崎が外しただけ」ではありません。Optaの記録を追うと、枠に向かった宮崎のシュートは、ことごとく磐田の選手に止められています。
| 時間 | 場面 |
|---|---|
| 51分 | 阿野真拓が枠内へ → 山﨑浩介がブロック |
| 59分 | 家坂葉光が枠内へ → ユーリ ララがブロック |
| 65分 | 宮脇茂夫が枠内へ → ダニーロがブロック |
| 85分 | 松本雄真が枠内へ → 金子大毅がブロック |
| 90+5分 | 松本ケン チザンガが枠内へ → ユーリ ララがブロック |
5本。全部、体で止めています。
牲川歩見のセーブは、23分と29分の前半2本だけ。後半はGKが触る前に止めていたということです。
これ、札幌戦とまったく同じ構図です。あの試合も牲川のセーブは前半の2本だけで、後半はクリアとブロックで守り切りました。
クリア49本、ブロック21本
その証拠が、この数字です。
| 項目 | 磐田 | 宮崎 |
|---|---|---|
| クリア | 49回 | 14回 |
| ブロック | 21回 | 16回 |
| タックル | 21回 | 9回 |
| 1対1勝利数 | 13回 | 12回 |
クリア49本。札幌戦が34本でしたから、それを大きく上回っています。
ここ数試合、磐田はずっと「クリアの数」の話をしています。
| 試合 | 磐田のクリア | 結果 |
|---|---|---|
| 八戸戦(9/26) | 相手が42本 | 1-2 ● |
| 仙台戦(10/4) | 48本 | 1-2 ● |
| 札幌戦(10/10) | 34本 | 1-0 ○ |
| 宮崎戦(10/17) | 49本 | 1-1 △ |
秋葉監督も、そこを聞かれて答えています。
あれだけ身体を張って、自分たちが絶対に崩れず、最後の最後まで集中し続けたところは本当に素晴らしかったです
守る力は、確実についてきています。問題は、そこではない。
数字で見る90分
試合全体のスタッツです。
| 項目 | 磐田 | 宮崎 |
|---|---|---|
| シュート | 6本 | 19本 |
| 枠内シュート | 1本 | 3本 |
| ゴール期待値(xG) | 0.48 | 1.65 |
| ボール支配率 | 45% | 55% |
| チャンスクリエイト | 5回 | 16回 |
| クロス | 11本 | 31本 |
| アタッキングサードプレー | 169回 | 302回 |
| コーナーキック | 4本 | 6本 |
ここでいちばん重たいのが、磐田の枠内シュート1本です。
90分で、枠に飛んだのは8分の1本だけ。そしてその1本が、ゴールになっています。
言い方を変えれば、打ったシュートが枠に飛んだのは1回きりで、それは入った。決定力の問題ではありません。枠に飛ばすところまで行けていない。
シュートの推移を追うと、もっとはっきりします。
| 時間 | 磐田(枠内) | 宮崎(枠内) |
|---|---|---|
| 20分 | 3本(1) | 4本(0) |
| 40分 | 3本(1) | 9本(3) |
| 前半終了 | 3本(1) | 9本(3) |
| 65分 | 3本(1) | 15本(3) |
| 85分 | 6本(1) | 16本(3) |
| 試合終了 | 6本(1) | 19本(3) |
磐田は20分から65分まで、シュート3本のまま止まっています。45分間、1本も打てていない。
「きちんとやりたいことをやれているのは宮崎で、磐田は大苦戦」という感覚は、この表のとおりです。
なおシュート数は、J.League公式の試合記録では宮崎13本・磐田5本と、Opta集計(19対6)とかなり違います。数え方が違うので、本稿はOpta集計でそろえました。どちらを取っても、差の方向は変わりません。
桑原航太「勝ち切れなかった悔しさの方が大きい」
初ゴールを決めた桑原航太のコメントが、いいんです。
練習からやってきたことをそのまま試合で出すことができて、結果としてゴールにつながったのは良かったです。でも、勝ち切れなかった悔しさの方が大きいですね
Jリーグ初ゴールの日に、これです。
守備についても、こう話しています。
ゴール前の守備は札幌戦から続けて粘り強くできていますし、トレーニングしてきた成果を出せていると思います。ただ、1-0で守り切れなかったことは課題だと思います
そして最後が、いちばん刺さりました。
僕は優勝も昇格も経験がないですけど、周りの選手から話を聞いていても、そういうチームはこういうゲームもしっかり勝ち切っていくんだと感じています。そのために、自分たちがここから改善していかなきゃいけないと思っています
22歳が、自分の初ゴールの話をほとんどしていません。
井上潮音「最低限の勝点1」
井上潮音のコメントには、天皇杯の話が出てきます。
最低限の勝点1だと思います。アウェイで、あのように手ごわい宮崎を相手に勝点を持って帰れたことは悪くないですけど、優勝を目指す上では勝点3が必要だったと思います。でも、いまのチーム状況や天皇杯で宮崎に負けたことを考えると、アウェイで勝点を持ち帰れたことは次につながると思います
選手のほうから、天皇杯の名前が出ました。やはり、あの敗戦は残っているんだと思います。
イアゴ テレスも、同じことを別の言い方で話していました。
もちろん勝ちに来ていたので、勝点3を取れなかったフラストレーションはある。でもリーグ戦は長いので、負けないことも大事です。耐えて勝点1を取れたことは大きいと思っている
そして秋葉監督の総括が、この試合のすべてだと思います。
この勝点1が今後大きなものになるのか、無駄になるのかは自分たち次第です
勝点14に5クラブ。宮崎9位、磐田10位
この引き分けで、磐田は4勝2分5敗、勝点14。順位は10位です。
| 順位 | クラブ | 勝点 | 得失点 |
|---|---|---|---|
| 1 | ベガルタ仙台 | 24 | +10 |
| 2 | RB大宮アルディージャ | 20 | +10 |
| 3 | アルビレックス新潟 | 20 | -4 |
| … | … | … | … |
| 8 | 藤枝MYFC | 14 | +2 |
| 9 | テゲバジャーロ宮崎 | 14 | 0 |
| 10 | ジュビロ磐田 | 14 | -1 |
| 11 | サガン鳥栖 | 14 | -2 |
| 12 | 徳島ヴォルティス | 14 | -2 |
8位から12位まで、5クラブが勝点14で並んでいます。宮崎と磐田の差は、得失点差の1だけ。
首位の仙台とは勝点10差。「J1昇格を目指すチームが、こんなところで足踏みをしている場合ではない」というのは、そのとおりです。
ただ、この混戦は裏を返せば、2連勝すれば一気に景色が変わる位置でもあります。
次は中3日、ホームで大分
次節は10月21日(水)19時、ヤマハスタジアム(磐田)で大分トリニータ戦です。
相手は7位、勝点17。16得点9失点という、失点の少ないチームです。簡単な相手ではありません。
しかも中3日。宮崎からの移動もあって、秋葉監督は「ほとんどトレーニングはできません」と話していました。
みんなでしっかりと回復してホームに帰り、良い勝点3を取れるように、またしっかりとやっていきたいと思います
守る力はついてきました。クリア49本は、そういうことです。
足りないのは、枠に飛ばす力のほう。90分で1本では、勝てません。
でも、その1本が入ったのが、デビュー8試合目の22歳だったというのは、悪くない話だと思います。
次はヤマハで。
※スタッツはJ.Leagueサイトのスタッツ(Opta集計)に基づく、試合直後の数値です。J.League公式の試合記録ではシュート数が宮崎13本・磐田5本と異なります。数え方の統一を優先して、本稿は全項目をOpta集計でそろえました。後日修正が入る可能性があります。
※Optaの「セーブ数」欄は両チームとも0で、実際の記録(牲川歩見が前半に2本)と合っていません。本稿ではこの項目を使っていません。
※後半のスタッツは、試合全体から前半を差し引いた算出値です。走行距離・スプリント数は未公開です。
※54分の山﨑浩介の交代は、クラブ公式が「アクシデント」と表現しています。負傷の部位・程度は本稿執筆時点で発表されていません。