2021年冬ドラマ-六畳間のピアノマン一覧

六畳間のピアノマン 4話(最終回) 感想|誰の心にもピアノマンは存在する

 

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もう、お恥ずかしい事なんですが…

初回の頃は、冒頭で美咲(南沙良)がピアノマンを歌っている姿を見て、

歌声は可愛いけど、歌った途端に一斉に振り向くほどなの??って

思ってしまっていたんですよねぇ。

演奏で周りが色づいていった映像からするに、彼女はメインで取り扱われる事はなく、

本作がどんな物語かを紹介する案内役的立ち位置になるのだと勝手に決め付けていたから。

でも、今なら、何人も振り返った理由が分かります。

美咲の回は、これまでの3人が誠(古舘佑太朗)と直接関わっていたのとは違った

立ち位置で描かれるお話だったため、"スピンオフ"とか"1つの作品の派生"みたいな

また違った印象で見終えた感じですが…

この人もピアノマンに支えられて生きる力をもらえた一人だったんですね。

 

心が揺さぶられるほど感情移入してしまう回もあれば、

ちょっとそれは自分を優先しちゃってない?と思う回もあって、

全ての人物に完全に共感出来る訳ではなかったけれども。

ただ、境遇もキャリアもバラバラな4人を通して凄く伝わってきたのは、

今まで生きてきた中で必ず1回は"大きな挫折"を味わって、乗り越えた経験がある…という事。

キラキラした夢や希望が汚い大人の手で潰されて、道を踏み外しかけた時も。

大切な人を失った恨みで、復讐に手を出しそうになった時も。

知りたくもない、見たくもない自分の過去を突きつけられた時も。

身近な同僚が亡くなった時も。

いつの時代にも、どんな世代にも、誰の心にも、ピアノマンは存在する。

これが最後まで一貫して描かれてきたから、本作を好意的に見られたんだと思います。

 

コロナ禍で塞ぎがちになっている人々を、少しでも前向きにさせるために作られたという

意図も勿論あるかもしれませんが。

個人的には、自分とは考えや価値観が違くても否定はせず、

目の前でただ逆境を乗り越えて懸命に生きようとする人を純粋に応援してあげよう…といった、

神様が遠くから優しく見守るかのような、そんな温かさに救われた作品でした。

 

何かが大きく解決するとか、人物同士が大きな気づきを得るとかはないものの、

それでもどこかで、点と点で繋がっている…。

ミステリーはミステリーでも、これは温もりを感じさせるミステリーですね。

1話ずつよりも、全話見てからの方が凄く魅力的に映る作品だとも思います。

強いて言うなら…大友(三浦貴大)のメイン回も欲しかったですけど。

あの事件がきっかけで社労士や弁護士を目指すっていうのは分かりますけど、

なぜ生きていくにはリスクの高い(昼でもパフォーマンスしてるから、あれが本業よね?)

パントマイムの道を選んだのかが知りたくて…w

 

 

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六畳間のピアノマン 3話 感想|「良い人になりたい」の真意

 

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複雑な話だなぁ……………。

「普通の人として生きたい」じゃなくて「良い人になりたい」っていうのが

モヤモヤした気持ちを生んでいるんだと思うわ。

(話の出来じゃなくて、登場人物の目線になって考えて…という意味で、モヤモヤ。)

 

秀人(原田泰造)が想像もしなかった過去の自分を見て精神的なダメージを受けて、

これ以上は抱えきれなくなりそうだから目を背けたい…

"今"を大切に生きたいという理由も分かる。

でも、両親や遺族から見てみれば、厳しいがただの"逃げ"でしかない。

私がその立場で記憶喪失だと理解していても

もしかしたら「ふざけんな!自分と向き合え!」って怒るかもしれない。

この例えはちょっとズレてるだろうけど、

自分の落ち度や間違った考え方を指摘してくれているコメントを無視して、

良い所しか拾わない人と同じ原理だと思うから。

 

両親が捜索願を出さなかったのだって、ニュースで取り上げられるほど騒ぎになった影響で

個人情報を晒されたり、住所も特定されて誹謗中傷の張り紙や落書きで汚されたり、

職場や近所にも広まって生活しづらくなったり…

特に背景は語られませんでしたが、色んな事で散々辛い目に遭ってきて、

既に自殺したか、息子と勘当する勢いでそうなった気がするんですね。

どっちの気持ちも分かるだけに…この回は素直に受け止めきれませんでした。

 

ただ、誠(古舘佑太郎)を殺した張本人である秀人と、

誠含む同期達にお酒を提供した真治(上地雄輔)と、

その同期の1人からウォーターサーバーを購入した芳江(麻生祐未)が

子ども食堂に集うという世界は狭い的な設定はドラマあるあるでも、

3人には「たった1つの共通点がある」とは気づかせず。

自分の知らない所で誰かを救って、救われた人が今度はまた他の誰かを救って…といった

"人と繋がった思い出で生かされている"という描写に落とし込んだのが味わい深い。

特に真治と同期達のエピソードは良かったなぁ。

ピアノマンの話をしていたからサービスとして流したんじゃなくて、

世の中を舐め切っていた自分に申し訳なさを感じて、影響を受けて、

それが後に自分だけの店を作る原動力になったっていう裏話を聞けたのは熱かったですね。

 

次回でもう最終回。高校生の美咲(南沙良)メインのお話。

ここまで夏野誠という一人の男と関係している3人の物語が描かれてきたのを考えると…

彼女とはどう繋がっていくんだろう。

やっぱり、ピアノマン=自身の心の支えとなった憧れの人 とか?ですかね。

 

 

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六畳間のピアノマン 1・2話 感想|憎しみは愛を知る事で取り除ける

 

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ピアノマンのメロディーとタイトルの手描きの感じからして、

心が和らぐような温かみのある物語なんだという予想に反して、

ある意味見ていられないほど「しんどい!」の連続で始まった本作。

 

感想を書きそびれた初回について軽く触れるとするならば…

最終的に、小さな希望を見つけるために明日も精一杯生きて行く人物を描く

群像劇だという方向性は分かりはしたものの。

コロナ禍であろう劇中の舞台から8年前=2012年だと想定すると、

パワハラブラック企業の描写が果たしてこの時代でも

実際にあったものなのかどうかが気になったり(どちらかと言うと2000年代のイメージ)、

主人公の解決の仕方に「半沢直樹」を参考にしたかのようなヒーローっぽさを感じさせたり、

それも自分本位でしかなかったり…という様々な部分が引っかかってしまい、

中盤までが辛い展開だったのもあって、

個人的にはあまり腑に落ちる内容ではなかったんですよね。

 

しかし、今回はかなり見応えがありましたよ…。

段田安則さんの関西弁と後ろ姿で魅せた話だったと思ってます。

秀人(原田泰造)に逃げられて一気に沸いてきた感情を吐き出した時も。

自暴自棄になって「殺してくれ!」と頼み込む時も。

ビールを美味しそうに飲んでる時も。

ずーっと泣いてた。

 

時が経ってから「もっと子育てを上手くやっていれば」と後悔する事自体は

どの親でも必ず訪れるものでしょうけど、

本作の場合は、それに息子の死と、

定年退職して自由になったからこその"孤独"が重なるから尚更辛い。

けど、決して復讐しようとはしなかった。

泰造はいつでも優しい人だった。

その優しさが息子にはきちんと届いていて、友達にも伝わっていた。

 

心に抱えた憎しみは、息子がどれだけ友達に慕われていたか、

どれだけ愛されていたかという"生きた証"を知る事で取り除ける。

憎しみからは何も生まれないから、前を向いて生きるしかない。

自分の人生ややってきた事を否定するような形で

命を絶つ人間は作り出したくない…という"強さ"を感じさせるお話でした。

 

「お風呂が沸きました」のくだりも印象的で。

最初に口ずさんでいる時はもう

自分だけが生きている事に希望を見出していないんじゃないかと思っていましたが、

あんな思い出があったと知って、また泣けるっていう…。

世の中にはいろんな音楽で溢れていて、

それが本当に小さなもので、何気ないものだったとしても、

誰かにとっては心に響く"何か"が隠れていたりするんだと考えさせられます。

あまり関係ないけど、ある音楽を聴くと、大変だった受験期の頃が蘇るのと

同じ原理なのかもしれませんね。

 

次回は恐らく、秀人がメインの話になるという事は、

やはり誠(古舘佑太郎)を共通項に

4人それぞれの視点で描かれるオムニバス形式になるのでしょう。

今回は泰造が主役の物語だったために、工事現場で生き生きとしている秀人に対して

「なんでそんな笑ってられんねん!」と怒りたくもなりましたが…

それが一変して、心境の変化に共感出来る内容だったら良いなぁ。

 

 

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