2020年冬ドラマ-アライブ一覧

アライブ がん専門医のカルテ 11話(最終回) 感想|またいつもの青空の下で

 

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最後まで本作らしさを貫き通した、丁寧で、真摯な作品でした。

 

2人に1人がなる「がん」、そしてその5年生存率は極めて少ないと言われる中で、

乳がんを抱える佐倉(小川紗良)、しかも再発した薫(木村佳乃)のどちらもが

3年後も生き続けられるほど克服出来た…というのは、

フィクションらしく綺麗にまとめた感じは確かにありました。

しかし、それでも本作の世界で生きる人々には皆幸せになってもらいたいと思っていて、

最終回はハッピーエンドがふさわしいとも思っていました。

それは、医療ドラマというジャンルを飛び越えて、人間の心を、

現実を突きつけられた時の繊細な気持ちを、いろんな人々を通して紡いできたから。

 

「病気を抱えた患者」「それを治療する医者」という単なる二者の関係を描くのではなく、

あくまでも「がん」はベースとし、家族を、人生を、自分にとっての生きがいを見つめる

きっかけを与えてくれる作りでした。

 

役者陣はもちろん、通常だったら見せ場になるであろう手術シーンでも

あえて劇伴をかけてサラリと流す事で、静かに流れる"時間"を演出するのも。

辛くて重たい物語ながらも、ほんの温かさ=希望を感じさせる光の照らし方も。

お気に入りな表現は沢山ありましたが、特筆すべきは「多くを語らない」スタンス。

例えば、9話では、民代(高畑淳子)の最期はどうなったかは

扱い方によってはお涙頂戴のエピソードに出来たものを、

本作の中で精一杯生きる人々を見ているだけで、視聴者が自ずと自分の境遇と重ね合わせながら

何かを感じ取れるようにしてくれた作り手の誠意が感じられました。

 

そして、青空がよく見える屋上で心(松下奈緒)が深呼吸をするシーンも印象深いです。

他のドラマなら、特に挿入しなくて何ら支障はないかもしれません。

けれども、本作ではそれが良い意味で「ゆとり」の役割を担っており、

命は儚いけれども、同じ空の下では今でも人生の分岐点を乗り越えようとする人がいて、

新たな一歩を進もうとしている人がいるのだと、

医者や患者からそんな勇気をもらえるような余韻が残りました。

 

無くても支障がないという点では、最初は、前半で描かれていた医療過誤の件は、

患者のエピソードが素晴らしいだけに

わざわざミステリー要素を加えなくても十分成立するんじゃないかという疑問はありました。

しかし、最終回まで見てみると、心と薫だけにある友情はあの事件があってこそ生まれたもので、

あの事件がなければ、お互いが「言いにくい」「聞きにくい」事を

勇気を振り絞って伝えるほどの強固な関係にはならなかったかもしれません。

だから、結果的には、ドラマを作る上では必要不可欠なものになっていたと思います。

(ただ、関河(三浦翔平)の扱いは何とか上手く出来なかったものか…

という考えは変わらないけれども。)

 

ドラマチックに仰々しい台詞や動きを加えず、

登場人物の抱える心境を「行間」を用いて等身大に映し出す作りは、

個人的にはNHKが得意としているイメージがありましたが。

視聴率のためにと忖度しない、奇を衒わない作品を民放でも作れてしまうのだという、

ドラマ…いや、量産され続けて世間では飽きが来つつある医療ドラマの「可能性」を

感じさせてくれました。

 

残念ながら視聴率は振るいませんでしたが、最後まで見続けた視聴者には

1つでも"胸に響く"部分があったんじゃないでしょうか。

ぜひ、DVD/Blu-rayも発売して欲しいです。

そして、もっと日の目を浴びて、賞賛されるべき作品だと思います。

 

 

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アライブ がん専門医のカルテ 10話 感想|本当は気づいて欲しい想い

 

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そんな流れになるんだな〜…と思わされた回。

最終章!ついにクライマックス突入!黒幕は誰だ!なんて

緊迫感を煽るドラマをいくつも見てきたからか

(勿論、それもそれで結末を見たい気持ちにさせる良さがありますが)、

最終回前なのに、あくまでも人々の繋がりの温かさを淡々と描く姿勢を貫く所に驚かされました。

ここに来て、ドラマチックに誰かが倒れて衝撃のラスト…とか、

心(松下奈緒)達の行く手を阻むライバルの登場とか付け加えて物語を派手にしない所に、

本作の誠実さが見て取れます。

 

今回の結城(清原翔)の母のステレオタイプな性格、

弟と比べられるという設定はドラマではありがち。

しかし、それらの要素を「結城回」と銘打ってもっと強調して描けば、いかに過酷な環境にいて、

どれだけ苦労して医者の夢を叶えたのか…なんていう彼の生い立ちに感情移入させる形で

お涙頂戴的な話になりかねないものを。

群像劇の作りにせず、メインのエピソードである佐伯兄弟の話にさり気なく絡ませて

"影響を受ける姿""心情変化"を描き、最終的には本作らしい

「気づいていないだけで、実は自分の事のように相手を想っている」という

優しさに満ちたオチにまとめてみせたのが上手いな、と思わされました。

 

薫(木村佳乃)のがん再発の件は予想通りだったので、

特段意外に思う事はなかったのですが、それでも「ああ…ついに再発してしまったのか…」

というショックを一緒に味わう心地でした。

ドキドキでもないし、ハラハラでもないし…何だか胸がキュッと締め付けられるような感じ。

前回の民代(高畑淳子)のエピソードがこのラストに活きてくるんですね。

5年の生存率の期限が過ぎた今。

自分は、目の前にいる友達はもう大丈夫なはずだったのに…って。

 

私の命を救って欲しいでも、担当医になって欲しいでもなく、

「一緒に闘って欲しい」という台詞も印象的。

2人には、いや、みなと病院に勤める医者達には命と向き合う覚悟がある。

 

次回、2人の絆が途絶えない結末である事を願います…。

 

 

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アライブ がん専門医のカルテ 9話 感想|不条理な運命に抗う人々の逞しさに涙…

 

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ああ、ズルいわ…。

XRで夢を叶えさせてあげる伏線回収も、音楽をかけるタイミングも

何もかも出来が良すぎて、文句の付け所がなくて、真に泣かせにかかってきていてズルいわ…。

極め付けは、やっぱり高畑淳子さんの演技の凄み。

どこそこが良かった、印象的だったと感じる所は、

感想として収められる限り1つ1つ書き残していっているのですが、

正直、今回ばかりは、私の拙い文章で高畑さんの演技の凄さを表現するのは

野暮だと思ったくらいでした。

以前にも書いた通り、私の周りにガン患者はいないし、

目の前で誰かの最期を見た経験もないけれど、

末期を迎えた時の表情、話し方、動き方はきっとあんな感じで、

あんな風に旅立って行くのだろうな…と妙に納得させられてしまう迫力がありました。

話題に上がりやすい李社長のインパクトの強さは勿論、

個人的には「となかぞ」での世話焼きなお母さんっぷりも好きでしたが、

また一人忘れられないキャラクターになりそうで…

民代役が高畑さんで良かった、出演されるのが本作で良かったと思わずにはいられません。

 

冒頭から長くなってしまいましたが、

静(山田真歩)のエピソードも興味深く視聴しました。

妊娠中にがんが再発してしまった彼女。自分の命か、子供の命か、という選択。

最初は、最後の卵子で折角生まれた命だから、その努力は無駄にしたくない気持ちは分かるけれど、

子供の為に自分を犠牲にすれば、子供だけでなく残された旦那もどうなるのか、

後悔の念がますます深くなっていってしまうんじゃないか…という考えを持っていました。

しかし、その考えは民代の言葉、

「ガン患者でも欲しがって良いのよ。やりたい事やって良いのよ!」で全て打ち砕かれます。

…そうだな。他人の私がとやかく言う事ではないなと目を覚ます瞬間。

 

今回はてっきり静が中心の話になると思い込んでいた分、

前回で前向きに退場してから再び病院に戻って来るショックも含めて

民代の存在感に持ってかれた感じはありましたが。

結果的には、彼女も描写する事でさり気ない

「生まれて来る命」と「去って行く命」の対比にもなっており、

また、自分がどうありたいかは人それぞれ違うものだし、

患者とか関係なく自由に決めて良いのだ…という「価値観の多様性」にも繋がる点で、

2つのエピソードを絡ませたのはしっかり意味があったと感じられたのが良かったです。

 

それにしても、今回のような回を見ると、元々数字が取りづらい枠とは言え、

視聴率が低いままなのは本当に勿体ないと思えてしまいますねぇ。

本作だけに限って考えるなら、多分、初回のラストのミステリー展開に戸惑って

「思ってたのと違う!」と言って離れてしまった人が多いのかも。私も最初はそうだったし。

でも、回を重ねて行くうちに本作が届けたいメッセージはしっかり伝わったから

ここまで応援して見守る事が出来た訳で。

縦軸の件が解決した前回から患者と向き合うエピソードに絞られて、かなり見やすくなった。

だから、縦軸を無しにしろとは言わないまでも、

もう少し人物の扱い方(特に関河…)、着地点の仕方に工夫が施されていたら

大分違っていたのかもしれませんよね。

 

 

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アライブ がん専門医のカルテ 8話 感想|それぞれが見せる"笑顔"の意味

 

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先週の「ねんとな」の内容と重なる部分があったなぁ。

(視聴済ですがまだ感想は書いておらず。こちらも良い話だったので、

最新話までに書きたい…!←最近、金曜日の分の感想が遅くてごめんなさいm(_ _)m)

寄り添っている"つもり"の「頑張れ」や「いつも希望をもらってる」という言葉で

苦しめ続けてしまうのは人だけれども、

その一方で、忘れかけていた何かに気づかせてくれるのも、

笑顔を取り戻させてあげるのも、また人なのだ…と思い知らされるお話。

悩んだり、迷ったり、絶望したりした時に必要なのは、やっぱり人の存在。

それは、家族や親戚、友達かもしれないし、医者かもしれないし、

同じように闘病している患者かもしれないし、

もしかしたら、旅先で偶然出会った相手だってあり得るかもしれない。

 

和樹(萩原利久)が笑顔を取り戻すきっかけとなった、

道化師の格好をした光野(藤井隆)の芸に夢中になっていた少年時代の自分…

という夢を見るシーン。

まるでファンタジーで、視聴者によっては賛否両論が生まれそうな気はしますが、

かえってその演出が印象に残りました。

ドラマらしい「頑張れ」の押し売りではなく、アプローチを変えて

その言葉が自分にとってプレッシャーになる等身大の姿を描いてきた分、

光野の出現、彼との思い出が、彩りも何もないモノクロの世界に

ロウソクのような柔らかな明かりを灯したように感じられて、

現実と架空のメリハリのつけ方に思わず涙してしまいました…。

 

和樹は光野の芸に元気付けられた記憶で。

莉子(小川紗良)は民代(高畑淳子)にアドバイスしてもらったウィッグとスカーフで。

民代はずっとお世話になってきた心(松下奈緒)と薫(木村佳乃)の支えで。

そして、心と薫の二人は握手をして再出発。

それぞれが、自分なりに笑顔を取り戻し、自分なりに生きる希望を見出していこうよ…という

前向きになれるお話。

 

高畑淳子さんから発せられる言葉1つ1つに人間愛や温かみが含まれているような

演技がとても好きで、個人的には本作の要となる存在だったので、

退場してしまうのには寂しさがありましたが…

まだがんが悪化するかもしれないと不安になりつつも、

「自分でやり切る!」という強い意志を持って旅立って行った時の表情は本当に凛々しくて。

この人ならきっと大丈夫だろう…とも思える、爽やかな余韻の残るラストも良かったです。

 

医療ドラマの、患者のエピソードを扱う1話完結の作りとしては、

初回から特定の患者をじっくり描き続けるのは珍しい印象でしたが、

ずっと見てきたからこそ民代さんの選択には頷けるものがありました。

連ドラだからこその「醍醐味」もこういう形で活かされていたんだなぁ…とも

思わされる回でした。

 

 

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アライブ がん専門医のカルテ 7話 感想|現実から目を背けてしまう人間のズルさ

 

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今回は、引きこもりの息子を持つ武井(平田満)のエピソードと

縦軸部分である須藤(田辺誠一)のエピソードを並行して描いていく作り。

後者は今まで散々引っ張ってきたから、須藤が怪しげに動いてきた割には

あっさりと自分の犯した罪を認めてしまうんだなぁ…という驚きはあったけれど、

前者の患者も含めて「現実から目を背けていた人々の"覚悟"」を

二者の視点で描く話として考えれば、腑に落ちる内容でした。

 

医療過誤を利用してドラマチックな展開にするならば、

長年のキャリアと技術に自信のある医師が、

さらに上を目指そうと教授選に立候補し、そのために隠蔽工作を図る…

なんて流れもあり得るかもしれませんが。(あるいは、裁判で大々的に取り上げるか。)

あくまでも"手段"としてではなく、"自身が変わるためのきっかけ"として

医療過誤を扱う所が本作らしいし、医療ドラマではかなり新鮮さがありました。

 

以前見たとあるドラマで「みんなちょっとずつ良い人で、ちょっとずつ悪い人なんだ」

という台詞が印象に残っているのですが、この台詞と同じで、

根っからの悪人ってそうそういないと思うんですね。

須藤先生はいつまでも自分の腕に自信を持ちたがっていたし、

武井さんの息子は就活の苦しさから現実逃避をして、周りの事は見ないフリをしていた。

それを、ただ悪い人として描くのではなく、人間のズルさ、不器用さ、

中々上手く行かない理不尽な世の中…というのを絡めて

登場人物の心情を映し出そうとしているのがよく伝わります。

 

演出面では、最初はバックショットから始まり、光で顔を見えづらくさせたり、

正面からの撮影ではピントをぼかしたりなどして、

「何か一歩踏み出せない悩み(闇)を抱えているのかもしれない」と

息子に対して思わせておいて。

CM明けになって、保険証を出すという行為でようやく顔がくっきり見えた事、

震える手を映した事で、「変化」が感じ取れる工夫が施されていたのも良かったです。

 

また縦軸の話に戻りますが、須藤が恩田家に謝罪しに行き、

医大を退く意思が固まったという事は…

関河(三浦翔平)の立場はどうなるのでしょうかね。

薫(木村佳乃)の医療過誤の事件を追っていた理由は判明したものの、

強いて言うなら、彼の扱い方はあんまり上手くなかったような気がします。

自分の親も医療過誤で殺されたとか、もっと復讐心を抱えているのかと思っていたので…

この件のためだけに作られたキャラクターという感じがして、

関河から背景が感じ取れなかったのは少し勿体なかったかも?

 

 

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アライブ がん専門医のカルテ 6話 感想|強く願う気持ちは一緒でも…

 

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今回は、絵麻の父・徳介(ベンガル)、結城(清原翔)、民代(高畑淳子)の

3人の言葉にハッとさせられてしまいました。

徳介「自分で(抗がん剤を)使ったことはあるのか?」

結城「娘が傷つかないと、親は気づけないんですかね」

民代「なんでこんなもんに騙されるか不思議でしょ。治りたいからよ。生きたいからよ。

   何だって良いから、縋りたくなるのよ。」

どうか無事に治って欲しいという願いは、患者もその親も一緒。

ただ、世界でたった一人の娘を失うのが怖くて、失わないようにと必死になって、

それがいつしか"感情的"な言動に変わって方向性を間違えてしまう…

娘が病気になった事で複雑な心境に陥る親の気持ちを、端的に表した台詞でした。

 

元患者が配布した がんが治る水、

佐倉(小川紗良)がウィッグをネットで探し始めるエピソードも絡めて、

ただの群像劇ではなく「人は何かに縋りたくなってしまう生き物」という一貫したテーマで

それぞれの人物の内面を描く作りになっているのも、やはり良いです。

最初は「どう見ても普通の水なのに、なんで…」と思ってしまった私を

殴りたくもなりました。

私の周りにがん経験者はいないので、その人の死に直面した家族の想いを

重ねて見るという事はないのですが、だからこそ、

もし自分だったら…もし家族ががんにかかってしまったら…と

自分のいる環境に当てはめて考えるきっかけを与えてくれる本作の存在は有り難いです。

 

医療ドラマでお馴染みの手術シーンを「ここが山場じゃないよ」と言わんばかりに、

優しく包み込むかのような劇伴を通して、あえて静かに見せている所も潔いです。

「成功した!」「失敗した!」というシロクロはっきりさせた結末にしなくても、

ちゃんと「がん治療を受ける患者とその家族」「腫瘍内科医」を丁寧に描いていけば、

心が揺さぶられるドラマとして良質なものが出来上がるんだという点では、

新たな地位を確立しているな…とも思っています。

 

縦軸の方は、前回で薫(木村佳乃)の過去が発覚して、

今回でもう真犯人は須藤(田辺誠一)だと明かしてしまうのには意外でしたね。

(というか、間抜けキャラか悪役かのどちらかのイメージがある田辺さん…(笑))

あの症状があると知っていながら、薫に濡れ衣を着せようとしたって事になります。

しかし、当時の手術シーンを改めて見ると…

須藤の次にダメなのは、気づいていながらもスルーした隣の助手でしょう。

これは裁判にかけるべき案件…。

 

情報を自由に追い求める関河(三浦翔平)は、ただのジャーナリストではないのかも。

小さい子供の前では優しそうな表情を見せるので…

薫の事件に関係している?あるいは、同じ医療過誤の被害者とか?ですかねぇ。

 

 

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アライブ がん専門医のカルテ 5話 感想|医療過誤で亀裂が入る2人の関係

 

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5話という中間地点を踏まえるに、

前回の、愛する夫を失った挫折から立ち直る心(松下奈緒)のエピソードを

今回に持ってきたら良かったのでは…と、ふと考えてしまいましたが、

本作にはもう1つ描かなければならない縦軸がありますものね。

 

今回は関河(三浦翔平)の出番を増やす事によって、

心と薫(木村佳乃)の間に培ってきた関係が蝕まれてしまう…という内容でした。

 

夫の真相を知ってから放った言葉「消えて」は確かに

現実を突きつけられるキツい言葉ではありますが、

心は以前からスーパードクターでもなければみんなの女神でもない

"後悔を抱えた一人の人間"として描かれてきたので、

薫に対してこう率直に伝えるのも無理はないのです。

ましてや、夫が亡くなってから出会って、この人となら安心出来そう…

信頼出来る関係になりそう…と期待させておいての…ですからね。

儚げで柔らかな雰囲気を醸し出す松下奈緒さんだからこそ、

最後のシーンには胸が締め付けられる心地がしてなりませんでした。

 

しかし、関河が電話相手に翻弄されている姿や、

「途中交代で匠(中村俊介)のオペをした」という薫の発言からして、

医療過誤は薫が一番の原因ではないのではないかと思います。

25年前に家族を手術で失った、匠と同じような経験をした彼女なら

自身が医者になったら尚更細心の注意を払うでしょうし、

最初に手術を行った須藤(田辺誠一)が取り返しのつかないミスをして

それを部下になすり付けた…とも考えられます。

以上の理由で、ドラマ的には薫はシロの流れになると予想していますが、

今後ここのエピソードを広げていくには、

何が証拠となるのか?どうやって証明してみせるのか?が

鍵になるのかもしれません。

 

第5話なので縦軸をガッツリかと思いきや、

1話完結部分の患者のエピソードも見せてくれたのは意外でした。

長尾(遊井亮子)の置かれている状況とは全く違いますが、

「せっかく得た内定と生活を失いたくない」という焦燥感から

何もかも塞ぎ込んでしまう気持ちには心当たりがあり、

拠り所となる息子を失わずに済んだ解決方法には、純粋に嬉しく感じられました。

 

ラインであれだけ精神的に追い詰めるような、意味深なメッセージを残した割には、

すんなり事情を理解してくれる夫だったんだ?とか、

治療中は親権を預かってもらうよう説得しに行くのは医者としてやり過ぎではないか?

そもそも親権はそんな簡単に交換出来るものなのか?とか

色々気になる部分はあったものの(説得は弁護士の介入もあったかもしれませんが)、

今回も全体的には概ね満足に見られました。

 

次回は乳がん治療を続けている佐倉(小川紗良)のその後のエピソードが

再び取り上げられるそうなので、どんな展開になるのか楽しみです。

一方で、「秘密を握る」という物語のキーパーソン的存在になるであろう

高坂(高畑淳子)が、二人の関係と縦軸部分にどう関わっていくのかは

まだ読めませんねぇ…。

「ナオミとカナコ」で鋭い中国人役をやられただけあって、

こういう役には安定感はありますが。

 

 

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アライブ がん専門医のカルテ 4話 感想|"強くなる"ではなく"弱さに気づく"為の時間

 

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阿久津(木下ほうか)の存在にかなり救われる。

カーテンが風に吹かれてヒラヒラしている予告映像を見ていたから、

まさか前回に続いて衝撃的な展開をやるの…なんて思ってましたし。

特に、感情がプツッと切れたように、パソコンのキーボードを勢いよく打つ

京太郎(北大路欣也)の追い込まれた様子を表す演技には何とも脱力感があった分、

後半の「グリーフケア」展開には、心(松下奈緒)と共に

鬱々とした気持ちが取り除かれたような心地さえしました。

 

他のドラマだったら多分、こんなに良い木下ほうかさんでも

「実は何か企んでるんじゃないの〜?」なんて穿った目で見てしまうものですが。

本作は、木下さんの持ち味である穏やかでソフトな声を活かし、

"心と同じ目線に立って寄り添う上司"として、あのシーンにいなくてはならない

絶対的な存在へと仕立て上げてみせました。良い使い方するなぁと思います。

グリーフケアの講義も、患者にきちんと向き合えなくなってしまった"先生"としての心と、

自分も傷を負っている事に気付けていない"大切な人を失った一人の人間"としての心、

どちらにも向けて伝えたかった事なんですよね。

 

物語自体は、患者の心情を多面的に映し出す ある種の群像劇的な作りから、

夫が亡くなってからの恩田家…という後日談的な作りになり、

「心達が前を向けるのか」を軸に置いた話だったので

今までよりは若干間延びした気がしなくもないものの、

W主演である薫(木村佳乃)をそこに絡めなかったのも英断でした。

壁や試練にぶち当たる展開は医療ドラマでは王道ですが、

「医者も一人の人間である事」

「医者が心の病を抱えていると、患者を傷つけてしまう可能性がある事」を、

心理描写を通して真正面から描いていった作品は中々ないんじゃないでしょうか。

本当に、回を増すごとに予想を良い意味で裏切られ続ける、

秀逸な人間ドラマに仕上がっています…。

 

それだけに、やはり不安なのが、薫と須藤(田辺誠一)の医療ミスパート。

今回、その情報を掴む関河(三浦翔平)が心に近づいてきた所で終了したので、

このまま核心に近づく事で薫が早く正直に告白して、二人で患者を救う日が来たら良いのに…

なんて思ってしまいますね。

 

個人的には、静かに流れる時間が感じられたり、キャストの演技に見入ってしまったりと、

「監察医 朝顔」を彷彿とさせられる部分がある本作。

だからこそ、最後まで良い作品でありますように…と期待してみたいのです。

 

 

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アライブ がん専門医のカルテ 3話 感想|明日があるかなんて分からない

 

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木内(朝加真由美)の家族に対する心境を聞いての心(松下奈緒)の言葉

「甘えられるのも悪くないですよ」に、ちょっと救われた感じがしたなぁ…。

みんながみんな、甘えたり甘えられたりの支え合いが出来ていたら良いのに…

と願わずにはいられない回でした。

 

明日が来ると思っているから、つい心ない言葉を感情的になってぶつけてしまう。

明日が来ると思っているから、後で謝ろう…という考えになってしまう。

「"普通"の日常」を当たり前のように追い求めてしまった事が、

心にとっては一生背負い続ける十字架になるのでしょう。

薫(木村佳乃)の背負った十字架もしんどいね…

 

いつどうなるかが分からない「がん」という題材が本当に効いていて、

ある日その命が突然失われた時に、自分がいかに愚かだったかを

後になってからハッと気づかされる。

がんの人に関わった経験はないものの、「後悔を抱えて生きて行く人間」としては

同じだから、自分の出来事を自然と重ねて身につまされてしまいます。

 

第3話で旦那が亡くなる展開は重い。

最後に突きつけられる展開がひたすら重いから、

それもあって視聴率はあまり振るわないのかもしれませんが。

息抜き要素として笑い所を入れたり、

上層部の陰謀論…などと無理に盛り上げる要素を入れたりしなくても、

登場人物の多面的な感情をじっくり積み重ねて行けば

上質なドラマになるのだというのがよく分かる作品。

 

本作の松下奈緒さんも、今まで拝見した作品の中では一番魅力的に映ります。

他人の事情に深入りはしないけれども、

話し方は柔らかいし、表情はどこか温かみがある感じ。

でも決して女神のような人ではなくて、時に迷ったり、感情が揺らいだり…

そんな人間臭さも垣間見えるから、

この人の進む未来がどんな風になるのかを知りたくなってしまう。

奇跡がいつ誰に起こるか分からない環境の下で、毎日のように患者と向き合っていて、

自分にも事故で入院している旦那がいる…というバックボーンが

滲み出ている演技が良いですよね。

最後のシーンも、ベタに泣くんじゃなくて、

目の前で大切な人を失う現実に直面する気持ちと、「え、嘘だよね…?」という

夢見がちな気持ちが同居しているのが読み取れるのが、

逆にリアリティがあって印象的でした。

 

一方で、縦軸の方も着々と進んできていますねぇ。

3話の時点でライターらしき人物が出てきたって事は、

医療ミスに関する裁判が開かれる展開も、そう遠くはないのかも。

 

しかし、このドラマ…感想が詰まる(笑)

良い内容であればあるほど文章がスラスラ書けなくなる、個人的法則ってやつです。

 

 

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アライブ がん専門医のカルテ 2話 感想|死は突然でも、流れるのは優しい時間。

 

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今期は「これだ!」という突出した作品が出てこないと散々嘆いていましたが…

2話を見た限りではその言葉も撤回出来るかもしれない、

そう期待させてくれた内容でした。

 

今回の題材は、近年で認知が広がりつつある「乳がん」。

しかし、「今からでも検査する事が大切だよ」なんていう

啓発的なメッセージだけにとどまらず、

男性も乳がんを発症する物珍しさで視聴者を惹きつける所から始まり。

お節介おばさんの温かさと優しさ、与えられる運命の不平等さから

「何で私が…」という率直な嘆き、

"これから"の人生が残されているが故の1人の女性の抱える不安、死は突然訪れるという事、

そして、乳房切除&再建経験者から贈られる嘘偽りない言葉まで、

多くの患者と人物のエピソードを扱っているにもかかわらず

乳がんに向き合う人々の逞しさ」を共通点とした一切無駄のない話として

まとまっているのが素晴らしい。

 

本作が取り扱う「がん」は、

一回手術しただけでは完治させる事が出来る確率の低い、

言わば慢性の病気。

だから、ドクターXのような凄腕医者もいなければ、

医療ドラマではよくある「難しい手術を成功させられるか!?」などと

ハラハラ感を誘う劇的な展開は一切なく、どちらかと言うと地味ではあります。

けれども、もしかしたら再発するかもしれない、

長きにわたって付き合う事になるのかもしれない…そんな気持ちを抱えて

日々を生きる患者にどう寄り添ってあげられれば良いか。

そこが、心(松下奈緒)や薫(木村佳乃)の動きを通して

よく考えて作られているのが伝わります。

 

初回で見せてきたミステリー要素も、

心が二人の患者を外に連れ出す…なんていうベタな泣かせ要素もかなり排除され、

見やすくなった分、劇伴の使い方も効果的だったという新たな発見も得ました。

特に、カンファレンスでの様子を音声なしにした所で流したのが印象に残ります。

女性の声のする劇伴が、このドラマで流れる優しい時間と相まって

自然と朗らかな心地にさせてくれるんですよねぇ…。

 

医療(ヒューマン)パートがせっかく見応えあるものだけに、

ミステリーを絡ませなくても別に良くない?とは思うんですが。

どうか、後半になるにつれてそっちで変な方向に行きませんように…

このままのクオリティでありますように…と願うばかりです。

 

 

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