2022年秋ドラマ-エルピス一覧

エルピスー希望、あるいは災いー 10話(最終回) 感想|一筋の光を信じるという気持ち

 

 

リアルの見せ方も、ファンタジーの見せ方も

どちらも"ちょうど良い"所に収まった最終回だったなぁ…と思います。

 

恵那(長澤まさみ)が逮捕させて欲しいと言っていた本城(永山瑛太)が

本当に逮捕されたのかどうかも不明であれば、

正一(鈴木亮平)が政界に入った事で、彼の活躍が恵那にとっては

"希望"か"災い"になるのかどうかも濁されたままですし。

大門(山路和弘)も残念ながら、

マスコミに追われ続ける日々を送っているだけで、失脚はしていない。

そして…恵那の切ったカードが、何か世界や内閣に変革をもたらした訳でもない。

本作の大元となっている松本(片岡正二郎)の冤罪は無事に晴れたものの…

確かに、随所にモヤモヤが残る内容ではありました。

 

ただ…「暗闇の中に刺した一筋の光(=目の前の人間)を信じてみる」という

たった1つの答えが出た事に、今まで積み重なっていた心のつっかえが

スッととれたような、そんな救いを感じさせました。

決してハッピーエンドではないんですけどね。

でも、初回からずっと「飲み込みたくなくても飲み込まれてしまう」事からくる

人間の弱さとか、脆さとか、巨悪の得体の知れなさとかが、

恵那と拓朗(眞栄田郷敦)の表裏一体の関係性や食べ物を通して描かれ続けたからこそ、

彼女がその答えを導き出せたという成長に、響くものがあったんだと思います。

 

最終回にして最も"王道ガッツリ"な牛丼(しかも大盛り)を2人が食べていて、

「何とかなる」とポジティブ思考になっていたのも、

フライデーボンボンからの異動や冤罪事件の調査を経て

また一段とたくましくなれた心境を感じさせて、グッときましたね。

そして、村井(岡部たかし)が店にやってきてからの、2人のとびっきりの笑顔。

立ち位置は違えど、3人はこれからも「一筋の光を信じる」事を大切にしながら

日々を過ごしていくんでしょう…。

それは、EDでは暗闇で1人で食べていたケーキを

ようやく一緒に共有出来たさくら(三浦透子)と松本にも言える事ですし。

もしかしたら…拓朗と目が合った際に、

顔の動きから「頑張れよ」と託してくれていたようにも見えた

正一にも言える事なのかもしれません。

マスコミ陣の中でも、大門に対して一際攻めの姿勢を見せた記者・佐々岡(池津祥子)は、

視聴者にとっての"光"とも捉えられますしね。

 

先ほど「ハッピーエンドではない」とは書いたけれども、

誰かを、何かを信じてみようかな…と思える、そんな着地点になっていた気がします。

個人的には、本作は見るのに一番気力のいる作品で、

正直、時々小難しく感じる部分もあったりはしたんですが、

最後まで見て良かった作品である事には間違いありません。

 

月曜10時台に引っ越ししてからの第1作目「アバランチ」以来、

久々に"カンテレドラマらしさ"を堪能出来ました。

次回作もこの調子で(まぁ、あのスタッフなので大丈夫でしょうけど)

挑戦的な仕上がりになってくれれば…と思います。

 

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エルピスー希望、あるいは災いー 9話 感想|実質、村井主人公回。

 

 

以前から好感度を上げてきた村井(岡部たかし)ですが…

今回はもはや、彼が主人公と言ってもおかしくない回でしたね。

存在感が強過ぎて、ラストシーンも含めて2人の印象があまり残っておりません(笑)

 

というのも、理由はあって…

最終回前になると、最終回で劇的に盛り上げるために

あえて一旦「嵐の前の静けさ」状態にした結果、内容そのものの見応えよりも、

次へと繋げるための引き延ばし感が強まってしまうのがあるあるだと思うんですが、

本作の今回の内容にもそれを感じさせてしまったんですよね。

いや、言葉通り「瞬殺で一撃しなければ反撃される」現実を描きたかったのは分かるし、

拓朗(眞栄田敦郷)に関しては、村井や佐伯(マキタスポーツ)を通して

動きを見せてはいたんですけれども…

何と言うか、ただ事件を追っているだけ…みたいな?

メインではないにしても、冤罪事件を取り扱っている以上、

最終章なら、松本死刑囚に関する新たな報道が出始めたり、過去の事件でも進展があったり、

弁護士・木村(六角精児)を登場させたりしながら

「いよいよ真相に迫る」緊迫した雰囲気を滲ませても良かったはずなのに、

今回はそのどれにも触れる事なく終わったが故に、

ちょっとした停滞感を覚えてしまったんだと思います。

恵那(長澤まさみ)に至っては、

終盤まで影を潜めるような立ち位置になっていたのが気になりましたしね。

 

あと…劇中で「YouTuber」というワードが出てきたのをきっかけに、もう1つ疑問に思った事も。

本作の時間軸って2018年から2019年になっていて、

3年前とは言え、一応現代の物語ではあるんですよね。

そこで、今更ではあるんですが…その頃なら既にネットニュースや動画配信サイトも

"情報"を伝える場としては主流になっている訳で(個人的印象)、

それなのに、なぜ彼らはテレビや雑誌といった昔ながらのメディアで

冤罪事件を取り上げてもらう事にこだわるんだろう?とも思えてしまったのです。

(「フライデーボンボン」を通して反響が集まった描写はあったものの)

SNSも栄えているのだから、ネットも利用すれば

もっと影響力も大きかったかもしれないのに…と。

まぁでも、これは恐らく、脚本家の渡辺あやさんのインタビュー↓

〈朝日新聞〉「エルピス」脚本家・渡辺あやさん 6年越しの脚本に込めた危機感と覚悟、東京では書けないこと

によると、プロデューサーの佐野亜裕美さんと企画を考え始めて一度白紙になり、

本作の実現に至るまで6年かかったとの事で、

もしかしたら元々の時間軸も2010年代初頭〜前半に設定されていたって

可能性もあるのかもしれませんけどね。

そこだけ、若干惜しかったかも…と感じて、書いてみた次第です。

 

ただ、消されたかもしれない亨(迫田孝也)の死や、

冒頭でも触れたように、再び「飲み込めない」状態に陥ってしまった

恵那の苦しみややるせなさがじっくり描かれたお陰か、

ラストの村井の暴れっぷりには、ちょっと気持ち良いものがありました。

村井については、後で冷静に考えてみれば、この件でマスコミ業界から追放されないかと

ソワソワさせられる部分もあるんですが、恵那目線でつい見てしまって。

スタジオを映すためのオレンジ色の照明も良い仕事をしていて、

彼女にとって彼の存在が"希望"となるのだろう…と思わせるにはぴったりでした。

 

最終回、どうまとめるんでしょうねぇ。

今までの作風を踏まえれば、巨悪を完全には倒せず、

冤罪事件は解決はしたもののちょっとした苦味が残る…

そんな終わり方になると予想しておりますけども。

 

 

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エルピスー希望、あるいは災いー 8話 感想|サブタイトルの真意が分かった気がする…

 

 

「現実的だと思ってる」

まさかまさかの…です。恵那(長澤まさみ)からこの言葉を聞きたくなかったですね。

テレビを見ながら思わず「うわぁ…」って言っちゃいましたよ。

私たちには番組を守る責任があるので…って感じで一歩引いて、

自分と相手とで境界線を分けるような淡々とした喋り方が

滝川(三浦貴大)から移ってしまっているのが伝わってくる辺り、

彼女はとうとう、忖度が蔓延る世界に飲み込まれてしまったのだというのが

このシーンから分かります。

前回の彼女の描写的に、そうなるのも時間の問題じゃないかとは察していましたが…

それでもかなりの衝撃を受けました。

 

かつての恵那の暴走にしろ、今回の、揺るがぬ証拠を手に入れた

拓朗(眞栄田郷敦)の孤軍奮闘っぷりにしろ、

恵那と拓朗の二者間での立場の変化を描いての"転調"で

毎回視聴者を引きつけていっている作風から考えれば、

そのままの勢いで"痛快劇"で魅せる事だって出来るはずなんですよね。

分かりやすく痛快劇に仕立て上げてしまえば、盛り上がるのも目に見えているし、

そこがゴールになるのでプロットも作りやすいかもしれない。

でも…本作は「あえて」寸止め状態で終わらせ、

同時に、得体の知れない巨大な何かに脅かされながら過ごす現実も描いている。

真相が世に伝わるまであと一歩って所を邪魔してくるのは、

いつも正一(鈴木亮平)のような、

何を考えていて、どこでどう動いているのかが読めない存在なのだと

さり気なく示す姿勢にブレがないのが、妙な余韻を残すのです。

 

ただ、本作…もう1つ、さじ加減が上手いなぁって思っているのは、

"リアルな現実"を描こうとして、脚色し過ぎていない所。

例えば今回は、拓朗が調べてきた事が

大人たちの汚い手によって簡単に奪われてしまう残酷な部分も描かれた訳ですが、

それだけでなく、最後の最後で「もしかしたら…」と思える

ちょっとした希望も描かれました。

「努力は必ず誰かが見てくれている」じゃないですが。

日々を生きている以上、人の周りに寄ってくるのは味方ばかりではないけど、

必ずしも、敵ばかりでもないと思うんですよね。

誰か1人だけは拓朗を認めてくれている…という事実にホッとします。

 

その人物が今度演じる役が武田"信"玄なのも、何だか粋なチョイスでしたね。

そして、ここまで見てきて、ずっと考えていたサブタイトル「希望、あるいは災い」の

真の意味は、今回のような内容を指すんじゃないかとも思わされました。

冤罪事件を追えば追うほど、様々な人間関係が構築されていっているのを

拓朗はまだ自覚していない気がします。

劇中の拓朗のモノローグで「いつの間にか僕は、びっくりするほど敵を増やしていた」と

ありましたが、びっくりするほど"味方"も増やしているんじゃないかと信じたいです。

 

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エルピスー希望、あるいは災いー 7話 感想|「自分は周りとは違う」という心理

 

 

3話の刑事・平川(安井順平)が再登場。

拓朗(眞栄田郷敦)に協力を申し出てくれたので、どういう風の吹き回し?と思ったら…

まぁ〜〜嫌味な男性に描かれていましたね。

組織が一度でも不正を起こせば崩れるという事も、

聞かない考えない話さないの思考停止の日々を送り続けていた事も自覚しつつ、

本人はあくまでも自己保身に走る。

おまけに、開き直って偉そうな態度をとる。

 

でも、分かっちゃうんですよね…組織の中にいながら

「自分は周りとは違う」「自分は正しい」と思い込みたい心理って。

誰しも長い事生きていれば、

そうやって自分を正当化して逃れようとしてきた経験があるかもしれない。

そして…今回は第3章スタートとあって、別々の日常を送るようになった片方の

拓朗(眞栄田郷敦)視点で物語が展開されていった印象が強いのですが、

拓朗からしてみれば、50万円を要求して警察の実態と憶測ばかり語る平川と、

ワインを片手に社会の恐ろしさを語る母・陸子(筒井真理子)は

同じ「そっち側」の人間なんだろうな…とも思います。

今回はそんな、組織の流れに呑まれる事で生まれる人間の"ズルさ"みたいなものが、

複数の登場人物を絡めながら描かれた回だった気がします。

 

自分は能天気ではないと信じている恵那(長澤まさみ)も

ある意味「そっち側」の人間になりかけている状態で、

自分の意思が…というよりかは、社会が、環境がそうさせてしまっているんですよね。

でも、彼女が完全に能天気な人にはならず、

「甘ったれないで下さい」

「悪いけど、酔っ払いの泣き言を聞いてる暇なんて、私にはもうない」

という強い考えに至らせているのは、

間違いなく村井(岡部たかし)の存在がいるからであって。

職場を離れてもなお、度々登場してきては2人の背中を遠回しに押してくれる

村井の"ガソリン"的キャラには、唯一ホッとさせられるものがあるのです。

 

マジクソはマジクソでも…50万円に見合う価値は提示してくれた平川のUSBメモリーと

被害者遺族の会を通して、拓朗はどんどん情報を入手していく。

その情報を聞かされた恵那も、あの時会った謎の男が何者だったのかに気づき始める。

人間の心理をメインに描きつつ、冤罪事件も確実に真相へと一歩ずつ近づいていってます。

組織の実態を目の当たりにして、2人は無事に真相を突き止める事が出来るのか?という覚悟と

目に見えない大きな"不安"を、

拓朗の場合は、八頭尾山の風景を画面じゅうに収めながら、

彼がぽつんとその中にいるように対比をとる(引きで撮る)形で。

恵那の場合は、「あの頃から変われた自分」を物語る机に向かって

字を書いている彼女の様子を、徐々にカメラで近づけて撮る形で

表している演出も面白く視聴しました。

 

本作は真犯人が誰かを謎解きする事をゴールとしている作品ではないので、

本城(永山瑛太)がそのまま真犯人ではあるんでしょうね。

冤罪事件の調査を通しての2人の変化を、本当に地道に描いている作品だと思います。

 

 

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エルピスー希望、あるいは災いー 6話 感想|相克の関係。言い得て妙!

 

 

「相克の関係」か…面白い事言うなぁ、正一(鈴木亮平)。

 

恵那(長澤まさみ)にとって、正一が手強い相手である事、

彼との色恋に溺れたら中々抜け出せないという事は以前でも語られていたけれども、

今回のあの冷静な声のトーンからは、

彼を俯瞰的に見る形で、あえて意識の外に追いやろうとしている

ささやかな対抗心みたいなものを感じさせました。

一方で正一は、指輪という名の"呪い"で、恵那の滾る感情を一旦封じ込めようとはした。

でもそれは今の彼女には通用せず、自身の思惑に気づいていると察した上で

別れを切り出したんでしょう。

 

「俺とお前は、いつの間にか相克の関係にある。」

「生半可な情理などでそれは埋められないものだ。近い将来君は俺を憎む事になるだろう。」

「そういう君だからこそ俺は好きだった。それはこれからも変わらない。」

敵か味方か、ここまでず〜っと得体の知れない存在感を放ってきた正一ですが、

少なからず、彼女に愛情を抱いていたのは事実なんだろう…とは

この言葉から伝わってきます。

「人生から押し流す大事なもの」で恵那が正一を押し流したように、

正一も恵那を押し流す選択をとったんですよね。

 

正一が退職届を出してからメインテーマがかかるまでの、一連の流れはとても清々しくて。

ああ…彼は、権力がものを言う世界に飛び込む形で

"独り"で戦いに挑もうとしているのだと思わされるシーンでした。

そして、独りになっても彼の背後には、思わず視線を感じるほど

恵那が大々的に映ったポスターが貼られているという構図もシビれます。

返り咲いてもなお、政界が絡んでいる冤罪事件に立ち向かおうとする恵那と、

溢れ出る才能を止められないまま次のフィールドへと移った正一…

離れたとしても、これからも2人の「相克の関係」は続いていくという事を示した点では、

次章への良いバトンタッチ回になったんじゃないでしょうか。

 

恵那と正一の関係性とは別に、

人を駒にして遊んでいるかのようなメディア業界の人事の闇も興味深く視聴。

冤罪事件で魂に火をつけた村井(岡部たかし)は、

「フライデーボンボン」での最初で最後の反抗を見せてくれましたが、

左遷されたという事は、視点を変えれば

今までくすぶっていた自分自身の変化を認められたとも解釈出来る訳で…

そういう意味では爪痕は残せているし、本人も悔いはなかったんだろうと思います。

 

報道生活がスタートする当初は意気込んでいたのが、

時間が経つにつれて、初回で自分が言ったまんま

「誰も自分たちが報道した事の責任なんて振り返りたくない」

「報道って時間ないふりして、いつも必要以上に忙しい」状態に陥ってしまっていた恵那が、

果たして、拓朗(眞栄田郷敦)と共に政界に踏み入れ、真相を見つけ出す事は出来るのか?

まだまだ楽しみです。

 

 

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エルピスー希望、あるいは災いー 5話 感想|巡り巡ってまた合流

 

 

いや〜…第5話という折り返し地点で、思い切った構成になっていましたね。

 

今まで"勝ち組"のフリをしていた自分を断ち切るかのように、

ヒゲ面ボサボサ頭で別人になった拓朗(眞栄田郷敦)の物語から始まって。

甘くて心地の良い世界にどっぷり浸かりきった恵那(長澤まさみ)が

出口を見つけるまでの変化にも、正一(鈴木亮平)に潜む闇にも触れて。

最終的には、お互い心が離れていた恵那と拓朗の想いが

再び合致しようとしているまでを描いた今回。

起承転結の"転"から始まり"転"で終わる展開続きで、大変面白かったです。

 

で…前回の感想で「恵那も拓朗も本質的には同じ人間である」と書いた通り、

本作の登場人物を車で例えるなら、

2人の関係性は"アクセル"みたいなものだなぁと、今回の内容を見て思えたんですよね。

というのも、2人とも、向かう先や大元は違えど、

「過去の出来事を突きつけられたのを機に『飲み込めない』体になる→食事を拒む→

冤罪事件を通して強い正義感・義務感が生まれる→暴走する→色恋に溺れる」

で同じ人生を歩んでいるように見えたから。

 

そんな2人とは反対に、正一(鈴木亮平)、拓朗の母・陸子(筒井真理子)、

さくら(三浦透子)など、恵那と拓朗以外のほとんどの人間が、

一歩踏み出す行為を阻み、冤罪事件の捜査中止を促す"ブレーキ"として描かれています。

(さくらは協力した側ですが…2人の暴走が彼女を精神的に追い詰めたともとれるので、

自分がやった事の責任を負わせる意味で、あえてそちら側に。)

村井(岡部たかし)だけがどちらにも属さない、

2人がまたアクセルを勢い良く踏めるようにエネルギーを注入する

"ガソリン"的存在とでも言いましょうか。

 

ブレーキを踏まれたら、もちろんアクセルでは飛ばせません。

正一と寄りを戻してしまった恵那は、まさしくその状態になっていた訳ですが、

拓朗の場合は、彼女と同じくボンボンガールの意中の相手と

ラブホテルで関係を持ちそうになっていた所を、

恵那の電話のお陰で何とか持ち堪える事が出来ました。

拓朗が1人で熱心に事件を追った痕跡がなければ、

恵那があの世界で目を覚ます事はなかったかもしれないし。

拓朗が正一に情報を持ち込まないまま電話に出て、恵那のいるファミレスへ行ったから、

久しぶりにちゃんとしたご飯を食べて再び"生"を見出せた。

2人が一緒にいて、同じ方向を向いて初めてアクセルが踏めるのだという、

そんな関係性が伝わる着地点になっていたのが印象的でした。

 

ペットボトルの水、ウイダー、カレー、オシャレな店での映える料理と、

恵那と拓朗のその場その場での状況とシンクロさせているような食べ物のチョイスも

中々粋な演出ではあるんですが、

今回で拓朗が「食べたい!」って思ったのが雑炊なのも、上手かったなぁと。

熱が出て食欲がない時にはお馴染みの、優しい食べ物。

まずはそれを口に運んでみて、徐々に回復していく様子が、

目力がトレードマークだった以前の自分を取り戻しつつある

彼自身の変化にも思えて、ちょっと安心させられもしました。

 

2人の関係性を描きながらも、

「パワーバランス」には疎いと言いつつ、結局自分もそれを利用して

人と関わろうとしてしまうという、現代社会に蔓延る"闇"も皮肉として混ぜるのにはゾワッと。

事件を追うのにマスコミ業界の実態にも触れるの?それって散漫しないの?なんて

当初は不安に思っていましたが、もうそれも杞憂に終わりそうですね。

人物像、人間模様に深みを持たせて、"意味のあるもの"にしているんだから凄いです。

 

正一のバックに副総理がついていると知った所で、真相にどう立ち向かっていくのか…

期待値が上がる一方です。

 

 

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エルピスー希望、あるいは災いー 4話 感想|拓朗から目力が消えるなんて…

 

 

「飲み込みたくないものを、飲み込まない」と意気込んで

本格的に冤罪事件へと向き合い始めた初回から、

好評を受け第2弾の制作にすぐさま取り掛かった恵那(長澤まさみ)や拓朗(眞栄田郷敦)と、

途中までは「自分たちの行為で救われた人」の存在のお陰で"強い人"でいられるといった

2人の無鉄砲さが描かれてきただけに、

今回の終盤での転調ぶりには目が離せませんでしたね。

一度ほじくったら零れ出て、原型を留められなくなってしまった

人間の弱さや愚かさが描かれたのが印象に残る回でした。

 

まず、恵那に関しては…正一(鈴木亮平)の前では抗えない事が

よ〜く伝わってきました。

前回に引き続き、色恋が描かれ、しかもまあまあ長い尺が割かれているので

不快感を覚えがちかもしれませんが、

あのシーンは、自分の弱さを彼の存在で埋(うず)めようとする

"逃げ"と"甘え"の象徴とも捉えられます。

彼のせいで第一線を退き、「フライデーボンボン」という

落ちぶれた者たちが集う場所へと異動させられる羽目になったのに、

彼に再び飲み込まれようとしている。

それは彼女も自覚しているけど、

目先の快楽にどうしても縋ってしまう…っていうのが何だか生々しくてリアルです。

 

今更なんですが、名前が「正一」なのも

彼の得体の知れなさをより増幅させているんですよね。

「正」だから「正義感」「正しい」…そんな良いイメージが先行しがちですが、

「"正しい人"のフリが得意な、登場人物の中で一番したたかな人」にも見えてしまうというか。

鈴木亮平さんは「TOKYO MER」でも体を鍛えられていましたが、

本作ではそのガタイの良さがまた異質感を生んでいて、

敵か味方か分からないけど何となく怪しい…と思わせるには

ぴったりのキャスティングな気がします。

 

そして、恵那が色恋に溺れる一方で、拓朗の、同級生の自殺に向き合う事で、

自分がいかに"勝ち組"にこだわり続けた"負け組"だったか、

いかに過去から目を背けていたかを思い知らされる姿も描かれました。

恵那の前でカレーをがぶりつく様子が妙に頭に焼き付いていたんですが、

それは単純に、目の前の物事に食らいついて「何も考えないようにしていた」

彼そのものでもあったのかもしれないなぁと…。

何に負けたのかに気づいてしまった以上は、もう過去の出来事も、過去の自分も

黙って見過ごす訳にはいかなくなった。

今回の件で、拓朗は冤罪事件に関わらざるを得なくなったと思っているんですが…

1つのターニングポイントを迎えた所で、次回以降、彼をどう描いていくのかが気になります。

 

で、ここまで見てきて一番予想外なのは、

最初はセクハラパワハラしまくりのすんごい嫌な奴に描かれていた村井(岡部たかし)の

好感度が上昇してきている事なんですよね。

上司の反対意見が多い中で「やってみたら?」と言ったり、最後まで流すのを許可したり…

彼は案外裏表がない。

鼻水を垂らすほど泣いた拓朗の人間臭さを引き出したのも彼なんだから、

中々凄い存在だと思わされます。

でも…今では裏表なく部下に接しているものの、彼もまた恵那や拓朗と同じで、

"何か"に負け続けた1人の人間でもあるんでしょうね。

 

1つの冤罪事件をきっかけに、

恵那も拓朗も…もしかしたら村井も?本質的には同じ人間である事が明かされた今回。

あれだけ目力目力と言われていた拓朗が、死んだような目を向けたシーンにゾッとしつつ、

衝撃のラストで終わる。

体つきからして、「元彼」だったんでしょうかね?

いやはや…ある意味"第2章"スタート回とも言える次回が楽しみです。

 

 

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エルピスー希望、あるいは災いー 3話 感想|"正しさ"の中に潜む狂気

 

 

お…今回のモノローグは拓朗(眞栄田郷敦)なんですね。

初回でも彼が担当していて、その時は単純に、登場人物やそれぞれの置かれた状況を紹介する

"語り手"として見ていた訳ですが。

拓朗→恵那(長澤まさみ)→正一(鈴木亮平)とローテーションでやらなかった辺り、

恵那の変化を描く物語だと思わせた前回を踏まえて、

今度は「別視点から見た主人公」を描こうとしているんだな…というのが窺えました。

視聴者にも客観視させた事で、彼女がどんな風に変わったのか?が

より強調されるようになった感じです。

 

拓朗がモノローグ側に回って、彼の持ち前の呑気さを表す描写が若干薄まった代わりに、

シリアスな雰囲気は強めに。

今回の内容を考えれば、この手法も成功していました。

突然のゲストにも驚かされましたけど…

特に凄かったのは、主人公サイドと上司の二者間で

"正しさ"と表裏一体になっている危うさや狂気も、さり気なく提示してきた所。

 

岸本がふと呟いた「正しい事がしたいな〜」も、

被害者遺族に「救われた」という言葉をもらえたから

やり遂げなければいけないみたいな恵那の義務感も、

一見ヒーローっぽくは見えたんですけど、欲が増したようで

ちょっと怖くもあったんですよね。

確かに、警察たちによって理不尽な目に遭わされ、

冤罪をかけられたまま今も牢屋で暮らしている松本(片岡正二郎)の実態を

隠蔽するなんておかしい!こんなマスコミ業界ぶった斬ってやる!と思う気持ちは分かるんです。

でも…彼女らの行為が本当に"正しい"のか?と聞かれたらはっきりと答えられませんし、

極端に言えば、自身の過去の罪を償うために冤罪事件を追っているとも捉えかねません。

被害者遺族の目にはどう映るのか?

「真相を突き止める」のが"つもり"に変わって、家の前を張ったり

配慮のない言葉を投げかけたりしてズカズカ踏み込んでは遺族を傷つけてきた、

"当時のマスコミ"と同じ立場に回ってしまうんじゃないか?と考えると…

最後の恵那の騙し討ち作戦も、ただ「スカッと」では終わらない苦い余韻が残りました。

 

上司たちにしても、チャレンジ精神を取り入れずに

ぬるま湯にずっと浸かっているのが"正しい"っていう風潮になりつつあるのが怖いです。

ここの描写は、ある意味、皮肉にもなっていますよねぇ。

報道すべき事実には目を逸らし、目先の欲望や願望に従い続けた結果、

マスコミ業界が大きく変わる事なく現代を迎えてしまった…というのを示しているようなもの。

「フライデーボンボン」で芸能人が若い女性たちに囲まれながら

足つぼを押してはダル絡みする画なんかは、もう時代錯誤も甚だしくて(笑)

セクハラ感満載なのに、なあなあにやっていたら

いつの間にか長寿番組になってしまったのが伝わってきて、

僅かなシーンでもリアルを押し出してくる辺り、

本当に隅々まで凝って作られているんだな…と思わされました。

 

「くたびれた女が缶チューハイ飲みながらだらだら見ている」と分かっていても、

変化を恐れて全くテコ入れを図ろうとしない「フライデーボンボン」という番組がある事。

冤罪事件を取り扱う事に意欲的ではない上層部の存在。

生々しいがために、フィクションなんだから…と却下されそうな設定に、

関西テレビとフジテレビがGOサインを出したという事実は

しかと受け止めておかなければなりませんね。

そして、スポンサーとなっている企業にもね。

 

果たして、最後まで見届ける覚悟はあるのか?を試されているような1時間でした。

面白いのでもちろん見ますけども!(笑)

 

 

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エルピスー希望、あるいは災いー 2話 感想|エンディングも含めて次が気になる…

 

 

前回の感想でも触れた通り、本作は1時間で見せる内容に対して

盛り込んでいる量がかなり多いです。

冤罪事件の調査だけでなく、昭和の価値観のおじさんたちが集うマスコミ業界の現実や、

恵那(長澤まさみ)が今のボロボロの体になるまでに至った背景、

正一(鈴木亮平)とのスキャンダル、さらには拓朗(眞栄田郷敦)のあの"手"の件まで…

とにかく、テーマの異なるエピソードが一挙に集っています。

だから、これらをひっくるめて、どんな結末へと持っていくのか?が読めない上に、

なぜこれだけ複数の謎を作り出したのかも、現段階でまだ掴めておりません。

まぁ、それが楽しみに繋がっているんですけどね。

 

でも、前回と今回を見て分かったのは…

報道に誠意持って向き合おうとすればするほど、何が正しいのか分からなくなってしまった

「過去(=迷っていた頃)の自分」を乗り越えるまでの

恵那の変化を描く物語が主軸になるんじゃないかな?という事。

数々の"揺らぎ"を表す演出が印象に残ったんですよねぇ。

例えば…沸騰したカレーを映す、わずかな間とか。

恵那が正一に本音を話し始めた途端、カメラワークがブレるとか。

どこから自分が崩れてしまったのかを模索するかのようなランニングのシーンとか。

1つ1つのちょっとしたパーツの積み重ねが、

何事にも逃げない強い自分を演じていても、時々"脆さ"が見え隠れする…

そんな主人公の人物像に立体感を持たせているように思えたのです。

で…冤罪事件に関しては、ある意味、彼女を奮い立たせる起爆剤的な存在として

今後描かれていくんだろうと踏んでおります。

 

エンディング映像も中々凝ってますね。

終盤の方は内容とリンクさせる形で、毎回変わるみたいです。

でも、それ以前に…前回見た時は

「これから虚構の中の真実を見つけ出していくんだな…」という恵那の"覚悟"にもとれた映像が、

今回では、序盤で笑顔で振舞っている様子から、スタジオにいる彼女を撮った映像全体が

アナウンサー時代の彼女の"闇"を映し出しているようにも見えて、

同じ映像でも印象が違う作りになっているのも面白いです。

 

最近流行りの考察要素を絡めている上に、

下手したら現実味が強くて重苦しくなりそうな題材を、

エンターテインメント作品として上手く消化出来ていますね。

あのニュース映像も、本物を使っていてびっくりしました。

本当に、最後まで独自路線で突き進んでいって欲しいです…!

 

 

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エルピスー希望、あるいは災いー 1話 感想|挑戦状を叩きつけて来た感。

 

 

へぇ…なるほど…な初回。

個人的には、初回を見ただけではまだ「これは間違いなく面白い!」と

絶賛するまでには至っておらず、

どちらかと言うと、甘いカフェラテに混ざっていた砂糖が

口の中にずっとまとわりついている…みたいな、そんな感じでした。

つまり、じわじわと余韻が残るタイプの作品です。

 

近年のドラマは、分かりやすい導入にするのと、

中間地点で描かれそうな内容を2,3話辺りに持ってくるスピーディな展開が多くなっていて、

もはや最近ではそれが主流になりつつあるのに対して、

本作は今のそういった"流行り"とは逆行した作りになっています。

まぁ、こうは書いたものの、物語がサクサク進んでいくのも、

先がもう読めている話を引っ張ったり、何も進展がない内容で何話も引き延ばされたりするよりは

全然良いと思っているので、特に否定はしません。

 

でも…本作の何がよく出来ていたかって、

下手したら「導入部分が長い」「結局何を描きたいの?」と言われそうな内容を

あえて逆手にとって、断片的な情報を全体に散りばめる事で"ノイズ"を作って

視聴者を引きつけていった所。

もっと具体的に書くとするなら、テレビ業界のお仕事事情を

拓朗(眞栄田郷敦)のモノローグを通してコミカルに…

事前情報の割には空回って見えるくらいに?進んでいった冒頭だったのが、

開始13分辺りからの、ヘアメイク・大山(三浦透子)が拓朗に

録音したのを聞かせて脅迫するシーンをきっかけに、

ちょっとした異質感を徐々に覚えさせる展開になっていたのが良かったです。

 

「飲み込みたくないものを、飲み込まない」が本作のテーマなんでしょうね。

何となく、「石子と羽男」がずっと唱え続けてきた

「声を上げたって良い。声を上げてくれれば、法律は守ってくれる」に

通ずるものがあります。

本当は口に出して吐きたい鬱憤は、現実世界ではいろんな"しがらみ"があって吐く事が出来ず、

その代わりに何かを食べたり飲んだりして吐く…の

繰り返しだったであろう恵那(長澤まさみ)が、

自分が強く伝えたいもの以外はもうそうはしない!という決意表明ともとれるラストは、

劇伴の後押しもあってか、とても頼もしく見えました。

 

まだよく分かっていない恵那や拓朗、正一(鈴木亮平)の謎がある以上、

今後どういう方向に転がっていくのか不透明ではありますし。

それ故に、登場人物の話を膨らませ過ぎて、

回を重ねるごとに話が散漫にならないかという不安も拭い切れてはいませんが…

「次も見てみたい」気持ちにさせられたのは確かです。

次回以降も見守っていこうと思います。

 

 

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