2022年秋ドラマ-一橋桐子の犯罪日記一覧

一橋桐子の犯罪日記 5話(最終回) 感想|依存ではなく共存の人生

 

 

私が松坂慶子さんをしっかり認識したのは、

お恥ずかしながら「まんぷく」で「ブシムス」という愛称で呼ばれていた

主人公の母親役だったのですが、

本作もそんな松坂さんのチャーミングな持ち味が光る作品となりました。

 

当初は、語尾に必ず「ぉ〜」がつくような喋り方のパンチ力が大きくて、

なんで主人公を分かりやすく乙女キャラにしたんだろう?

なんでそんな喋り方にさせたんだろう?と疑問に思っていて。

見ていくごとに、それは、親友を失い一文なしであるために、

刑務所でお世話になるしかないと考えるほど過酷な状況に立たされている主人公を見て、

視聴者にあまり過酷だと感じさせないように

コミカルさで中和させる意味を持たせているのだと気づけたのですが。

最後まで見てみれば…桐子(松坂慶子)の存在感が

本作が伝えようとしているメッセージみたいなもので。

彼女を「能天気」で「自由奔放」で、時に「自己肯定感の低い」性格に描く事によって、

「老いる事が悲しい事とは限らない」

「出会いは無限大で、幸せは人との繋がりあってこそ」という、

"孤独"が先行し不安を抱えがちな老後問題にメスを入れる

社会派の面も覗かせる作品に仕上がっていました。

 

桐子の行動によって、周りの人々が次第に前向きになっていく様も、

逆に、桐子に影響を受けた人々が"恩返し"にと

彼女の考えや今後の人生を後押ししていく様も、本当に見ていて微笑ましくなれました。

ムショ活を通して知り合った人同士のやり取りや、

そこから生まれる気づきや変化を描写するのに徹していたからこそ、

最後の彼女の決断も納得のいくものになっていた気がします。

 

知子(由紀さおり)が見せたいと言っていた景色がある島で、1人で暮らす。

文面だけなら、誰も自分の気持ちを分かろうとしてくれない、

孤独に耐え切れなくて始めたムショ活を諦め、

結局また孤独の道を選んでしまった…ともとれるかもしれませんが、

初回と最終回とで違うのは、"依存"ではなく"共存"の人生を選んだ事。

親友と過ごした日々=過去にいつまでも縋るのではなく、

親友も含めいろんな人と育んできた思い出と、

今日もどこかで元気に過ごしていて、夢を叶えようと頑張っている

人と人との繋がりを活力にしながら生きていく…。

新天地でも子供たちに愛され、近所の人々に進んで挨拶する桐子は、

死んだ方が良いなんて弱音を吐いていたあの頃とは全く信じられないほどたくましく見えて、

思わず涙が溢れてしまいました。

 

娘夫婦から知子の形見を分けてもらえた事。札束入り白菜。薫子(木村多江)の登場。

サーフィンは孤独な闘いだという榎本(長澤樹)の教え。父との対立。

寺田(宇崎竜童)の誘いを受ける桐子。

そして…「秋桜が好きよ 自由に生きるから」。

各回の登場人物やエピソードを再び掘り起こす事で

桐子の変化を裏付けしていく畳み掛けの展開も、"集大成"感がありましたね。

 

行き詰まる現実と犯罪行為に伴うリスク、出会いの尊さを

5話という短い話数でコンパクトに、かつコミカルに描いていたと思います。

個人的には、NHKの「土曜ドラマ」枠の作品の中では、久々の秀作になりそうです。

 

 

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一橋桐子の犯罪日記 4話 感想|失敗の決め手は「誘拐ごっこ」

 

 

※4話(10/29放送)の感想ですm(_ _)m

 

凄い…凄い結束力だわ。なんか見ていてワクワクしちゃいました。

楽しかった事があっという間に過ぎ去っていく青春の趣さえ感じさせます。

 

普通だったら、何か悪さをするって分かったら否定して止めに入るのが「犯罪」なのに、

本作の登場人物はなぜか肯定的…というか、むしろ協力的な人ばかり。

そこも面白いんですけど、特に今回の何に惹かれたかって、

「相手が報われて欲しい」と願う"親"と"子"それぞれの視点で物語が紡がれていった所。

現実が思うように上手く行かないもどかしさを抱えている榎本(長澤樹)が、

お互い夢を叶えるためにと桐子(松坂慶子)に持ちかけた誘拐計画に、

娘を幸せにしてやれなかったと後悔する久遠(岩田剛典)の本音も絡める。

それぞれの想いが交錯して、初めて一体感が生まれる…という展開の仕方には

そうきたか!と驚かされました。

 

「誘拐ごっこ」のエピソードも、思わぬ"ほっこり"でしたね。

まぁ、警察の父の事だから、この誘拐計画も娘の電話越しの喋り方で、

家出しているのもあって見抜いてしまうんじゃないか…とは予想していましたが。

まさか、幼少期の娘の電話に父が付き合った"楽しかった思い出"の1つである

「あの頃の誘拐ごっこ」が計画失敗の決め手となってくるとは。

ハワイ留学までは流石に許可してくれなかったものの、

今回の出来事に当時の思い出を重ねた事で、

今まで心を閉ざしていた親子関係に"再生"の欠片がちらりと見え始める…

そんなほのかな温かみを感じさせるオチになっていたのも良かったです。

前回の感想でも書いた通り、本作は、桐子のムショ活が周りをどんどん巻き込んでいって、

やがて影響を与えるまでになるという作風が魅力的だと思っているので、

それが最も活きたエピソードになっていた気がします。

 

しかし、犯罪を取り扱っている以上、ほっこり…微笑ましい…だけでは終わりません。

桐子が「誰にも迷惑かけない犯罪がしたい」と言っているのが、

いや、そんな犯罪ないだろう…と思えてしまって、いつも疑問だったんですよね。

ですが、今回の件で、彼女も「利害は一致していようが、人を巻き込めば

かえって迷惑をかけてしまう事もある」と気づいたようです。

雪菜の顔は世間に晒されるし、クラス中には笑われるし、警察も振り回されるし、

アパートの住民たちは、あと半年だとしても居心地の悪さを感じてしまうし…。

生配信していたYouTuberも後々叩かれるんでしょうし、

父・和也(神尾佑)が勘の鋭い人だったから大事にならずに済んだものの、

そうでなければ、同じパート仲間の坂井(富田望生)が

冤罪にかけられた可能性だってあったかもしれません。

「刑務所に入って残りの人生を楽しみたい」という

"自分の欲望"を満たすためにやってきた事が、不特定多数の人たちに迷惑をかけてしまった

桐子のショックな心境も描かれました。

 

もうどうしよう…まさかあんな事になるなんて…と迷っている桐子に

寺田(宇崎竜童)が提案したのは殺人計画。

最後の砦でもあり、桐子にとって一番遠い犯罪でもあります。

それを知っていて提案したんだから…余命わずかなのかもしれませんね。

 

そして、気になるのは、やっぱり最終回の結末について。

知子(由紀さおり)の過去を見る限り、ひょっとしたら、

桐子と出会う前までは彼女と同じ"ムショ活"をしていた?とも考えられそうです。

つまり、知子が学んできた事を、桐子が今学んできている。

 

どちらにしても…「幸せは衣食住だけでなく、"人との繋がり"によって成り立っている」

教えてくれるラストにはなりそうで、今から最終回が楽しみです。

(感想はまた1週間後になるかもしれませんが…(泣))

身を委ねて楽しもうと思います。

 

 

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一橋桐子の犯罪日記 3話 感想|ラストスパート!残り2話が楽しみ。

 

 

桐子(松坂慶子)を立てるような発言をしているから

福森(長谷川初範)は詐欺師だろう…とか、

いろんな犯罪を知っているから、久遠(岩田剛典)は「ムショ帰り」でも看守の方で、

きっと桐子の嘘も見抜いているんだろう…とか、

変に深読みしながら見ていったけれども、どちらもストレートな真相だったとは(笑)

 

あ、でも、福森とゆかり(木村多江)があんな事になるとまでは想像がつきませんでしたね。

「何これ〜…私は何を見せられてるの〜!」

2人を見た時のこの台詞に、桐子の人柄がぎゅっと詰まっているような気がしました。

自己肯定感が低いが故に結局損をしてしまうという、

彼女のお人好し体質が最大限に活かされたお話だったと思います。

 

久遠も前回の寺田(宇崎竜童)に続き、「あんたに必要とされて嬉しかった」と

語っていたのが印象的でした。

やっぱり、心にぽっかりと空いた穴を抱えながら生きる人々に

平等にスポットライトを当てて、

"ムショ活"を通して、皆それぞれ日常に希望や楽しみを見出していく…

そんな物語になっているんですよね。

 

元々は素っ気ない現実世界から逃れるつもりで始めた桐子ですが、

今では着実に友情の輪を作りつつあります。

唯一の親友・知子(由紀さおり)がまだ生きていれば、

他に友達を作らず、ずっと2人だけの生活を過ごしていたかもしれないと考えると…

本当、人生は予測不可能だし、人はいつでも変われるんだなぁと。

孤独になったのを機に動き出した事で、人間関係をどんどん広げていき、

それで逆に励まされたり、ちょっとした勇気を取り戻したりする人も出てくる。

そんな"思わぬ産物"が生まれている所にも、妙な面白さを感じさせるんです。

 

久遠にも寺田にもカミングアウトした桐子。

そして、今回までの時点で、彼女に関わる人物たちの過去や葛藤が明かされた事で、

彼女を後押しし、みんなで成功させようという結束力も描かれました。

 

住んでいるアパートの立ち退きが決まり、もう金銭的に余裕がない…

だからいよいよ刑務所行きを目指すしかないと決心したタイミングで、

家出をした榎本(長澤樹)が転がり込んでくる。

榎本が作戦を提案した時に鳴った雷が、2人の固い"決意表明"を表しているようで、

ここからラストスパートになるのだという実感を湧かせてくれましたね。

残り2話でどうまとめてくれるのか、楽しみです。

 

 

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一橋桐子の犯罪日記 2話 感想|みんな実は独りぼっち

 

 

各々の設定を肉付けしていく形で、内容を膨らませていった今回。

桐子(松坂慶子)がムショ活を本格的に実践する描写よりも、

彼女と接していた榎本(長澤樹)や寺田(宇崎竜童)の置かれた状況や、

菜の花みたいな人だと言われていた知子(由紀さおり)の意味深な裏事情を

明かしていた印象が強かったので、

次回の結婚詐欺回が本番で、今回はその前準備?に見えた気がしなくもないんですが。

目標が定まったお陰か、ふとした時の"現実味があって笑えない"感じも薄まって、

ムショ活を通して様々な人と交流を交わす桐子の様子を

微笑ましく見られるお話になっていたと思います。

 

正義感があり、意見もビシッと言える榎本は、

実は家庭や学校では誰も自分を尊重してくれなくて

心細い気持ちを抱えていた女の子だった。

寺田もただの悪人ではなく、桐子と同じく孤独な老人だった。

寺田があそこを紹介した理由は、どうせ犯罪するなら

同じ意思を持った人たちと一緒にやって、充実した日々を送って欲しい…

自分みたいな寂しい想いはして欲しくない…っていう

ほんの優しさから来ているんじゃないかとも察せられます。

 

初回では2人とも、桐子とは違う立場にいるように描かれていた分、

もしかしたら、孤独感を覚えながらも日々を送っている点ではみんな一緒で、

どの世代でも共通しているのかもしれない…と分かった時には、

ほろ苦さを感じてしまいました。

 

だからか、大金を入れる用のバッグを選んだり、銃で遊んだり、作戦を練ったり…

普通だったらジェネレーションギャップで会話も通じなくて、すぐ気まずくなりそうなのに、

2人はどんどん距離が近くなっているし。

榎本といる時の桐子はとてもキラキラして見えるんですよね。

それで思うんですよ。ムショ活に取り組んでみたは良いものの、

いざ逮捕されて長い別れを告げる時に、

あの何気ないやり取りがいかに かけがえのない思い出だったか気づくんじゃないかって。

やっている最中は無我夢中になり過ぎて、案外その尊さには気づけない。

…完全に一括りには出来ませんが、旅行自体はもちろん楽しいけれども、

その日が来るまで待つ時間も同じくらいワクワクするっていうのとも似ているのかなぁと。

今回の件で、オチがどうなるのか何となく読めた気がしています。

 

次回は詐欺のターゲットとして男性(長谷川初範)が狙われるようですが、

長谷川さんなだけに、詐欺師を騙す詐欺師展開にもなりそうですね。

そして、もう1つ気になるのは、久遠(岩田剛典)の実態について。

桐子の行動は既にお見通しだろうというのは前提として。

最初は「ムショ帰り」なのでストレートに元犯罪者かと思ったんですが、

その割には人脈もあれば、犯罪の知識が豊富なんですよねぇ…。

ムショ帰りはムショ帰りでも、いろんな収容者に関わった看守だったりするんでしょうか?

 

 

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一橋桐子の犯罪日記 1話 感想|現実は案外素っ気ない

 

 

※初回(10/8放送)の感想です。大変お待たせいたしました…m(_ _)m

 

「おじさまと猫」をご覧になった事がある視聴者の方なら、分かってくださると思いますが。

開始早々、草刈正雄さんの役どころを見た時に、

あの出会いのお陰で、今度は相手に寄り添える側になったのね…って

勝手に想像したら泣けてきちゃいましてね…。

後妻業 薫子(木村多江)と付き合い出したからは

急にデリカシーがない人になっちゃったのは残念でしたけども(泣)

 

でも、三笠(草刈正雄)だけでなく、

悲しみに暮れる自分に"親身に"配慮してくれる人っていうのは、現実に案外いない。

大好きな親友が亡くなっても、

息子夫婦は、面倒を見る手間が省けて良かった…とか思ってそうだし、

事情を知っている不動産屋は

「刑務所、紹介出来れば良いんですけどね?」なんて冗談でもキツい事言えちゃうし。

桐子(松坂慶子)の気持ちをよそに、掲げてある表札を利用して

詐欺の事しか考えていない喉仏のコソ泥もいれば、お金で勧誘してくる人もいる。

…残念ながら、油断していたら"穴"だらけの世界を、私たちは生きている。

 

NHKの事だから、流石に犯罪を推奨するような内容にはならないだろうと思っていましたが、

実際に定年後に逮捕された人の中には、桐子と同じく、孤独をずっと引きずってきた結果

犯罪に手を染めてしまった人が多くいるんだろうなぁ…と考えさせられる内容でした。

そして、回想を交えながら、独りになってからの桐子の日常を描く事で、

「かけがえのない友を持つのも大事だが、親友の存在に縋ってばかりいると

いざ相手を失った時の反動も大きくなる」

「親友を亡くしたショックを引きずれば引きずるほど、状況を冷静に客観視出来なくなるから、

いつ自立しても良いように"覚悟"をし、準備する」

いわゆるセカンドライフ(=定年後の暮らし)について問題を投げかけるような、

そんな密かなメッセージ性のある作りになっていた気がします。

 

松坂慶子さんの乙女な演技と、

パチンコ台の絶妙な匙加減の合いの手のお陰で"喜劇"に見えているものの、

根本的な部分では"悲劇"の雰囲気をまとわせてはいます。

なので…見ている最中はクスッと出来ても、見終えると切なさの方が残りますね。

 

本作がこれから描くのは「ムショ活」ですが、

ムショ活を応援してくれる榎本(長澤樹)と、

何だかんだで相談に付き合ってくれる久遠(岩田剛典)の2人との交流が、

これから桐子が、素っ気ない人だらけの現実の中で

"人の繋がりの温かさ・尊さ"に気づいていくきっかけになるのでしょう…。

少なからず、初回ではその片鱗を見せてくれました。

そこが着地点になってくれる事を期待します。

 

 

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