2021年春ドラマ-半径5メートル一覧

半径5メートル 9話(最終回) 感想|フーミン@芳根さんの成長を見守るドラマでした。

 

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自分が組んだ特集のタイトルが、前回の週刊誌では一番下に載っていたのが、

今回では、本棚に置いても目につきやすい

一番上に載っていた…という出世具合に密かな感動を覚える。

良かったなぁ、フーミン。

風未香(芳根京子)が二折での仕事を通して学んできた事を活かしてきた

集大成のようにも思えたし、でもまだまだ彼女達の物語は続きそうな気もした…

そんな最終回でした。

 

今振り返ってみれば、「半径5メートル」というよりかは、

「半径0〜1メートル」の話の方が多かった本作。

正直言うと、身内のモヤモヤを取り扱う話じゃなくて、

初回や前回、今回のような、日常生活を通して得る謎を風未香自身が追究していって

解決へと導いていく話をもっと見てみたかったです。

確かに、身内がメインでもタメになったり、

価値観の多様性を面白く感じられた時はありましたが、

それと同時に、プライベート(恋愛、育児など)で抱えた私情を持ち込み過ぎていて

登場人物の心情に共感出来ない時もあって。

初回の時点で、「なぜ?」を様々なテーマ・視点で描く作品になるのだろうと期待していた分、

この結果には少し消化不良感も否めません。

 

ただ、女性の生きづらさを題材にした作品でありながらも、

強い主張で他者を圧倒させるのではなく、

当事者の心に寄り添う事で本当の問題がどこにあるのかを浮かび上がらせる作りには

何度もハッとさせられました。

個人的には、社会派ドラマは真面目で堅い方向に行くからと

つい構えて見てしまいがちなんですが、

本作の主人公はあくまでも、失敗もするし、感情にも流されやすい…

そんな"ひよっこ"の描写が、見る側の心を解してくれた気がします。

宝子(永作博美)のふとした言葉に振り回される風未香も、涙声で子犬っぽくなる風未香も、

肉まんを頬張る風未香も…とにかく純粋な性格なのが伝わってきて。

芳根京子さんの持つ可愛らしい声が活かされていたし、

「お姉さん」じゃなくて「お姉ちゃん」が似合う

どことなく親しみやすさを感じさせる彼女だからこそ出来る役だったと思います。

 

山辺(毎熊克哉)との別れは残念でしたが…

同業者として初めて風未香を認めたとも言えますよね。

これからはお互いに闘志を燃やしながら切磋琢磨する

新しい関係になっていくのかもしれません。

 

手柄をとったのが後輩だろうと関係なく、

「良かったね」「唸っちゃった」と感じた事をそのまま言葉や動作で表現してくれる

二折の面々は、理想的な上司過ぎて羨ましい。

身近の疑問なら切り口を変えれば他にも色々出てくるでしょうし、

またいつか続編をやって欲しいです!

 

 

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半径5メートル 8話 感想|安易に踏み入れてはいけない世界だねぇ…

 

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しんどいねぇ……………

就職氷河期というワードは全く知らなかった訳じゃないけど、

今回の話を見るまで解釈が違っていた私も反省。

何となく、「厳しい時代を勝ち抜いてきた社会人」を指すもので、

荒波に飲まれながらも何とかして安定した生活を送る事は出来ているんだろう…なんて

思い込んでいた部分があったんですが、実際にはそういう人達は一握りしかいないんですね。

 

取材する側の"知る"覚悟がないと、踏み入れてはいけない世界。

脆くて繊細な心を"強がり"で覆い隠しながら生きる阿南(須藤理彩)と須川渡辺真起子)。

その2人の懐にズカズカ入り込んでいく風未香(芳根京子)の危うさと、

後に自身の言動がどれだけ愚かだったかを知るまでの成長を見守ったお話でした。

 

私も彼女と一緒で、名刺についての言及がなかったら、

宝子(永作博美)に実際に足を踏まれていなかったら

2人の真意には気づけなかったかもしれないし、

阿南先生には同じ行為をしてしまったかもしれないなぁ。

風未香と会うのを嫌がっていた件、最初は記者だと聞いて、

過去に他の出版社の記者から取材があったものの

デタラメな内容を書かれたトラウマを抱えていたから避けたのかな…なんて思っていたけど、

マウントをとられ続けているのに傷ついたのだと分かった時には

ハッとさせられてしまいました。

本人は小さい頃に支えてもらった恩返しのつもりでやっているのが伝わるだけに、

その想いが向こうに全く届いていないのは…辛いです。

 

でも、取材内容を削除した事に関しては、今まで「半径5メートル」を通して

自分の知らない価値観の多様性に触れてきた風未香にしては

配慮が足りなかったんじゃないか?と、そこには引っ掛かりを覚えたかな。

キッツい人だな…怖いな…過激な発言だな…と思うのは分かる。

怯んでしまうのも分かる。

ただ、彼女の場合、取材対象者の実態を暴いていく仕事なので、

おそらく就職氷河期の真っ只中を過ごしたであろう二折のメンバーに相談せず、

貴重な発言の要不要を、当時を何も知らない人が自己判断で決めるのは

ちょっと腑に落ちませんでした。

 

けれども、最終的には宝子のナイスなサポートのお陰で救われましたね…

差し入れの肉まんを食べる時のフーミン、可愛かったなぁ。

白Tのラフな格好、高めのポニーテール、子犬みたいな鳴き声で頬張る姿…

童心に帰ったような彼女の様子を見て、こちらも安心させられます。

頼もしい上司が身近にいて、本当に良かった!

 

今回の話だけでは解決出来ない問題かもしれないけれど、

就職氷河期の人々は、今の時代においてはある意味マイノリティでもあって。

彼女達に向けられた視線や、置いてけぼりにされた心境を

可視化して分からせる役割は果たせられたのかと思います。

 

そう言えば「パトワ」は、頭の文字や韻踏みからして"アレ"の事ですね(笑)

際どい名前つけちゃって…凄い度胸だな…。

 

 

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半径5メートル 7話 感想|どん詰まりの風未香に同情

 

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今回は内容云々より、登場人物の描写にモヤモヤしたかなぁ。

 

急な仕事を押し付けられて自分の仕事もままならない状態から

「しんどかった」という本音が漏れてしまった風未香(芳根京子)の気持ちも分かるし、

 迷惑をかけたくなくて一人で抱え込んでしまうますみ(山田真歩)の気持ちも分かるけど…

個人的には風未香の考えに近い。

「もっと早く言ってよ!」案件ですよね。

まだあまりキャリアを積み重ねていなくて、子供も保育園児くらいで子育て初心者なら

今回のような対応になってしまったのも仕方ないと思えますが、

ますみの場合は多分中堅だし、娘は9歳になっている。

夫が単身赴任とは言え、仕事をドタキャンしたり部下に丸投げしたりするのに

きちんと事情を説明しないのは、社会人としてどうなのかと疑問に感じてしまいました。

育児に追われていて時短勤務だった時はどうしていたんでしょう。

大体はその段階で"助け合う大切さ"を学ぶはずなんですが…

 

今日はどうしても用事があるからと言って仕事に穴を開け、

担当から降ろされそうになると「私にやらせてください!」とお願いするもまたドタキャン。

残念ながら、感情論では仕事は成り立たないというのは

社会人になってから身にしみて感じている事なので、

編集者達のサポートあって"なんやかんや"で最後は上手く解決した…という

半ば綺麗にまとまった展開にもスッキリ出来ませんでした。

撮影の立会いはさておき、焼き物や着物の手配すらも当日になるまで頼んでいなかったなんて…

本当にプロの編集者なんですかねぇ。

 

一方で、山辺(毎熊克哉)を奮起させたのが宝子(永作博美)という所は良かったです。

人に疑問を投げかけるほどの豊かな経験値と想像力があるし、

担当している仕事内容もユニークなものばかり。

赤外線とパンツの調査はどんな意味をもたらすのか気になりましたが(笑)

他では思いつかないような取材をさせる事で、

自分で模索する楽しさだとか、やり甲斐を強く実感するだとか…

落ち込んでいる彼に編集者の"原点"を改めて気づかせる存在としては

ぴったりだったと思います。

 

同業者夫婦、同業者カップル、同業者達が集う職場…

風未香のお仕事エピソードも同時進行だったからかちょっと盛り込み過ぎな気はしたし、

母親経験者でもあり、一冊の本を作る上でもある意味同業者とも言える

編集者のますみと作家の青葉(阿川佐和子)の共通点を深堀りしていくだけでも

今回のメッセージは書けそうな感じはしましたが…まぁ良いか。

丸山(尾美としのり)と宝子の、2人の上司の頼もしさに救われた話でした。

 

 

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半径5メートル 6話 感想|前後編じゃなくても良かったかなぁ…

 

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宝子(永作博美)が二折に入るまでのきっかけ、ですね…。

ほぼ中間地点の5,6話でその話を持ってきたのは別におかしくないし、

登場人物の過去に迫るには必然的な内容だったと思うけれども…

そもそも今回の記事を書く対象が10年前に事件を起こしてしまった人で、

行動範囲から遠く離れた場所へ取材に行くとなると、

もうそれは、「ニュースにはならないけど、日々生きづらさを抱えながら過ごす

=半径5メートル以内に存在する女性の心境を描く」

作品ではなくなってしまうじゃん?という違和感は拭えないままでした。

森岡大臣の件はニュースになってしまっているし、巻上の過去は記事で大々的に載っている。

一折がメインなら分かりますが…

どう考えても、二折がやらなければならない取材ではないんですよね。

 

いつも記事を作る際に語られる風未香(芳根京子)のモノローグにしても、

巻上(緒形直人)が今でも子供達のために変わらずケーキを作り続けている事、

新しい居場所がある事は宝子(永作博美)が目の当たりにした出来事なのに、

まるで彼女自身がそれらを調べ上げたかのように聞こえてしまうのにもモヤっと。

 

終盤でせめてもの主人公らしさを残すんだったら、

巻上の実態に踏み込み、海辺で本音を聞き出そうとした宝子の動きは

全て風未香に置き換えて描写した方が、"現実に向き合う"点では説得力が増した気がします。

巻上が心を開くまでの変化は、積極的な風未香の言動が

当時の鶴川さんと重なって見えた…なんて動機でも通じそうですし。

何度断られてもへこたれない彼女の姿を見て、

自分もずっと約束出来ないでいた10年前の事件を明らかにする事を実現してみようという

勇気が湧いてくる…といった流れで別軸を絡めてもアリだと思いました。

それに、3話の終盤で、宝子と大沼(真飛聖)と2人っきりで語り合っている時に

風未香について触れていた台詞があったから

(「どう?前田さん。手をかけてるようだけど」)、

この重要な回で伏線として回収した方が、

「上司が部下の成長を見守る」連続型エピソードならではの

醍醐味も味わえたかもしれないのに…。

 

黒いサンタの内容自体は悪くなかっただけに、風未香メインで、通常回で見たかったですかね。

山辺(毎熊克哉)の件も盛り込むために前後編にしたのでしょうが、

しれっと戻っていたとなると…やはり、2話分使ってやるような話ではなかったんじゃないかと。

 

まぁ、宝子の過去も解決した事ですし、次回以降の内容に期待します。

 

 

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半径5メートル 5話 感想|まずは誠意を込めて謝罪すべし

 

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こちらにも羽場裕一さん…「イチケイ」とキャラが被りますな(笑)

私が初めてお見かけしたのは「ウツボカズラの夢」の父親役でしたけど、

そこからずっと、何となく悪そう…という印象は変わらず。

心から優しそうな役を演じている所を見た事がないなぁ。

 

さて、内容の方は、風未香の彼氏である山辺(毎熊克哉)の所属する

一折の実態や調査過程が描かれたので、

いつもより週刊誌の編集部が舞台である面白さは強まったと言えば強まったものの。

その代わりに、女性が抱えている"モヤモヤ"に寄り添うという

本作ならではの味わいは薄まってしまったため、

正直、終始漂う不穏な雰囲気に「これじゃない」と思いながら見続けた感じです。

まぁ、まだ物事が解決しない前編だから、余計にそう感じたんでしょうけど…。

 

山辺のガセ記事については、たとえネタが嘘か本当かまだ確実に分からないとしても、

相手側が名誉毀損を訴えるまで怒っている以上は

まずは自分の落ち度を認めて謝罪するのが、

大人としての、その業界のプロとしての誠意ある対応だと思っています。

世に出た記事は1人の人生を大きく左右するし、世間のイメージにも繋がる、

言わば凶器みたいなもの。

たった2ページの薄い紙で、俳優の未来や希望を壊す事が出来てしまう…

編集者はそんな責任重大な仕事をしている。

だから、SNSで彼への誹謗中傷を見て心を痛める風未香(芳根京子)は

ちょっと違うんじゃないかなぁという気がしてなりません。

 

それに加えて、彼女の取材が、山辺とかつて似たような過ちを犯していた

製菓会社の元社長の現在を調べるという内容だっただけに、

どうも「彼を信じたい」「彼は悪くないと思い込みたい」といった私的な感情を

その取材に重ね合わせて動いている違和感を覚えてしまいました。

 

少なからず、今回の話は、本作でやるのに相応しい話ではなかったと思います。

コンセプトからはズレているし、宝子(永作博美)とのやり取りも格段に減ったし。

"半径5メートル"以内にいる山辺のモヤモヤを払拭しようと奔走する前に、

もっと社会的な問題があちこちに転がっているでしょう…なんて(汗)

 

最後は、"10年前"で何となく予想がついていたものの、

宝子の正体は鶴川ゆうだったと発覚。

この件も、山辺の事も、製菓会社元社長の事も

最終的には一括りでまとめる形になるんでしょうけど…

少しでも納得のいく結末であって欲しいです。

 

 

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半径5メートル 4話 感想|"かもしれない"世界で育まれる親子の関係

 

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楽しみにしていた香織(北村有起哉)の回。

やはり、今ではSNSが主流になっているだけに、

今回のテーマが最も"身近な問題に斬り込む"本作らしかったですね。

 

いつからスマホを持たせるか問題、Twitter、オンラインゲーム…

劇中では触れていませんが、顔出しの多いTikTokとかも。

あまりにも発達し過ぎているから、親世代だと経験していない事や、知らない事、

自分では考えられない事がどんどん出てきて、

年の差が離れていればいるほどジェネレーションギャップに陥りがち。

しかし…いつの時代でも変わらないのは、親が子供を心配する事。

親の方から歩み寄っていかないと、子供に気持ちが伝わらないっていうのは

不変なのだと考えさせられるお話でした。

 

否定的に捉えられるイメージのある「若者のSNS」も、

本作の場合は心温まるヒューマンドラマに味付けされる。

だからと言って、SNSに潜む危険性をスルーした呑気な内容になっている訳でもない。

成りすましの成りすましも、もしかしたら保護団体の成りすましだってあるだろうし。

自分の行動を無防備に書き込む事による、ストーカーが浮上してしまいそうな危うさとか、

「だれか泊めて」ってタグをつけたらすぐに複数の男性から反応が返ってくる怖さとか、

利用の仕方次第では危険に晒される可能性があるかもしれない…という含みは、

ある程度持たせていたように思います。

 

人物描写においては、北村有起哉さんは光っていたなぁ…。

ファミレスで娘に会うために父親の姿になり、男性として接しようとするんだけど、

話し方や、話し終わる際の声色からは、所々女性らしさが漏れ出す感じがむしろリアル。

完璧に隠せられないのは「自分らしく生きる」をモットーとしているからなんでしょうね。

娘に正体を特定されて「どうして分かったの?」と言う前のほんの少しの"間"に、

動揺や嬉しさが一気に込み上げるのが伝わる声の演技も凄い。

 

そして、個人的に本作で好感度が増したのは、

今度うちに遊びにおいでといった旨のメッセージを娘に中々送れない時のシーン。

「送っちゃえば良いじゃん!」と言わんばかりに、

誰かがスマホを抜き取って代わりに送るとか、うっかり送信ボタンを押してしまうとかではなく、

宝子(永作博美)のハグで勇気をもらい、"自分の意思で"送った…とする

描写に落とし込んだのが良かったです。

 

次回は前後編。かつて噂になったブラックサンタを題材にしているんでしょうかね?

今回も面白かったですが、盛り込み形式ではなく、

そろそろ1話みたいな「宝子に振り回される風未香(芳根京子)」の関係性を

メインにした話も見てみたい気はしています。

 

 

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半径5メートル 3話 感想|物に囲まれた人生だってアリ

 

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「私は捨てる勇気を持つうちに、夫が必要でない事に気づき捨てました」

ゾッとする台詞から始まった今回のエピソード。

しかし、話を進めて行けば行くほど、それとは真逆の方向に進み、

ある物にまつわる思い出や感情を互いに共有する事で精神的な充足を得られ、

自分とは違う相手の価値観に触れて初めて幸せな人生に繋がる…という

ほっこりさせられる内容に。

 

前回の感想と若干被りますが、どんなネタでも忖度なしで

容赦なく追究するイメージのある女性週刊誌が舞台の作品から、

人の言いにくい本心や心境に寄り添っていく話が生まれるというギャップが魅力的です。

そして、1つの物事に対する新たな見方も教えてくれます。

 

物の取捨選択というテーマが取り上げられたら、

テレビでその話題を膨らますために指標になってしまいがちなのが

「今後も使う可能性があるかどうか」。

しかし、本作の場合は、物を捨てる事が全てだとは決して押し付けません。

周りに物が散らかっていたままだったとしても、

偶発的な出来事がきっかけでそれが創作物のヒントに直結する人だっているし。

子供が巣立って役目を果たし、母からしたら自分の好みに合わないただのテーブルでも、

父にとっては自分の半生を投影させるほどの思い入れがあったりする。

オークションで何に価値を見出すのかをみんなで語るシーンも含めて、

特定の物にこだわりを見せる姿を様々な視点で描いていく所もまた、

その人の人生の"片鱗"を覗かせる面白さがありました。

 

中でも、家には「いつか使うかもしれないから」「思い入れがあるから」

「資料になりそうだから」でいろんな物をたくさんとってあって、

捨てるのが大切だと分かりつつも、

ただの口先だけの状態で終わってしまっている風未香(芳根京子)には共感。

提灯記事というワードが劇中で出てきましたが、

日常生活でも、相手には捨てたら?って簡単に言えるけど、

自分の事になると積極的に捨てられないのと一緒ですね。

彼女の気持ちを汲むかのように「選べんのかな?本当に大切な物って」

と呟く宝子(永作博美)の台詞が真理だとも思います。

やっぱり、人そのものを分かっている脚本家がこの手の作品を書くと、

1つ1つの台詞にも突き刺さるものがあります。

 

娘たちが自立したんだから私も新しい事を始めたいと言う母の様子を見て、

「リコカツ」の宿屋に就職した某母のエピソードが頭に過ぎりましたが、

こちらの方は夫婦生活が長く続きそうな結末で良かったです。

ヨガ…可愛らしかったですね。テーブルで好みが分かれていただけで、

それ以外は愛し合っているというよりかは仲良しって感じでしたし。

 

最後に仄めかした宝子の"過去"は…

椅子での「5年以上生存した者はいない」に関係してくるのかな?という気もします。

無理し過ぎて病気を抱えてしまったとか?

まだ分からないですけども。

 

 

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半径5メートル 2話 感想|モヤモヤを埋めたい気持ちは世代共通

 

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週刊誌を発行する出版社が舞台で、

同僚が奥さんが他の男性と浮気している"証拠"を見てしまって、

それを記事にして…っていうこれらの要素は、ゲスニックな方向に転んでしまいがちですが、

まさかこの手の設定で愛の尊さに胸を打たれる話を見られるとは思いもしませんでした。

 

自由奔放な宝子(永作博美)に振り回される形で仕事に打ち込んでいた前回とは違い、

今回の中盤以降は、風未香(芳根京子)の勤務外=プライベートの描写が多いのは

なぜだろう?と不思議でいましたが、

なるほど…丸山の奥さんの事情も絡めて"一人の女性"として扱い、

「どの女性にも満たされぬ想いを抱えている」を描きたかったからだったんですね。

 

丸山の奥さんが出張ホストを頼んでいた理由は、子宮頸がんを患って

子宮を取り除かなければならないと診断された時に、自分がこの先性行為も出来ず、

女として見られなくなる事に不安を募らせていた衝動から来ていたそう。

 

質問もなく自ら「性交渉は出来ます」と助言した医師はともかく、

不妊治療しても子供が作れなくて諦めてしまった後悔があるのなら

セックスレスを嘆くのも分かるものの、

歳を重ねてもしたいと思うものなんだろうか…?と、

まだまだ人生経験が浅い私からしたら彼女の気持ちには完全には同感出来ずじまいでしたが、

あの世代だとそんな人も結構いたりするんでしょうかね。

でも、普段そこまで意識していなくても、

いざ"女性を象徴するもの"である子宮が取り除かれると知ったら、

自分でも平常心でいられなくなるのかもしれない…とは考えさせられました。

 

そして、意外にもラブストーリーの面も持ち合わせている本作。

今回が男女のテーマだから尚更その雰囲気が強まっているんですが、

風未香と山辺(毎熊克哉)の事後を仄めかすシーンとか、マッサージの様子とか、

まだ深夜ではない時間帯に、しかもNHKで普通に描くんですねぇ。

中でも印象に残ったのが、丸山(尾美としのり)が鍋を洗うシーン。

「やっぱりこういう人だから結婚したんだなって」という抽象的な台詞を残しているのに、

中年の男性が年季の入った鍋を洗っているだけで

そう簡単には壊れない夫婦の関係性の深さを物語らせる表現には、唸るものがありました。

 

それに加えて、風未香と山辺もお互いに向けていた気持ちを知り、

翌朝になるとラブラブカップルのように見えるまでの流れでかかっていた劇伴も、

大人のラブストーリーである事を演出していて洒落てます。

 

芳根さん…普段は正義感の強い役が多いからかあまり意識していませんでしたが、

そう言えば可愛らしい声されているんだよなぁ…と思い出しました。

私も「うるさい!」って怒られたいです(笑)

山辺と付き合うとなると、ただの純愛で終わらなそうな気がしますけど、どうでしょう?

 

 

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半径5メートル 1話 感想|あなたは何をどう見てる?

 

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これは…面白いかも。

視聴前は同局の「今ここにある危機とぼくの好感度について」と本作で

社会的なテーマを扱っているので、

少し真面目な似通った雰囲気になってしまうのではないかと思っていたんですが、

いざ視聴してみたらきちんと棲み分けがされていて、

本作の方は予想以上に軽やかなタッチで描かれていたのに驚きました。

そして、かなり現実に沿った題材なのに、分かりやすく、とっつきやすく見せていますね。

 

今回の内容は「おでんおじさん」。

5歳の息子を持つ共働きの主婦が、スーパーでレトルトのおでんを買おうとしたら

「おでんくらい作ってあげなさい」と言われて勝手に取り上げられてしまった…というもの。

この内容のモデルで真っ先に思い浮かべるのは、ポテサラ事件でしょうねぇ。

でも、なんで今回はおでんにしたんだろう?と考えながら見ていましたが、

結果的におでんにした理由に腑に落ちる内容でした。

 

そもそもおでんってどこからが手作りなのかを実証するために、

ラブホで玉子だけは茹でて後は全部出来合いのものを入れるだけの鍋を作ってみたり、

こんにゃく芋も取り寄せて具材を一から作り上げたりする

風未香(芳根京子)と宝子(永作博美)の様子を映すシーンは

世間に問いかける問題提起の役割をなしていたと思いますが。

それと同時に、二折の仕事内容、

そこに所属するメンバーの仕事に対する取り組み方や熱意も伝わってきたので、

初めて聞いた一折と二折の詳しい紹介が特になくとも、

二折は主観的思考と地道である事をモットーにした部署なのだとすんなり掴めたのが、

「人物・状況紹介(初期設定)」「コンセプト紹介」を兼ねた初回として

よくまとめられた作りだと感心させられました。

強いて言うなら、「あなたもおでんおじさんの予備軍かもしれない」と意識させる形の

教訓じみた解決方法はちょっと気になりましたが、"過程"が楽しめたので、満足しています。

 

仕事のミスで異動が決まった主人公が向かった先は

理想とはかけ離れた地下にある薄暗い部署だったという設定も、

そんな主人公を変わった方法で振り回していく事になる先輩上司の関係性も

王道と言えば王道ですが、二折のキャラクターがとにかく魅力的です。

宝子をはじめ、デスク・丸山(尾美としのり)、

トランスジェンダー記者・海老原(北村有起哉)、妊娠中の記者・藤川(山田真歩)と

個性的でキャスティング的にも頼もしいメンバーが揃っています。

 

特にグッと来たのは、終盤の風未香が一折のデスクに謝罪する時の一連のシーン。

自分の過去と重ねているのか、丸山だけが彼女の様子をじっと見ているんですが、

彼女が戻ってきた時には何も触れずに食事に誘う所に懐の深さを感じさせましたし。

そして、途中からは二折が一切映らない引きの映像に切り替わるんですが、

それもまた「丸山中心に二折のメンバーがささやかに見守っている」ようにも捉えられて、

思わず涙腺がやられてしまいました…。

 

多分、二折丸ごと好きになるだろうなぁ…と。

温かなメンバーに支えられ、刺激を受けて飛躍して行くであろう風未香の今後を

見守って行きたいという確信が持てました。

 

基本的に録画視聴なので、感想は遅いし、

遅過ぎた&溜まってしまった場合はもしかしたら途中で諦めてしまう可能性はありますが、

久々にドラマ10枠で毎回感想を書きたい!と思える作品です。

これはちょっと期待出来そう。

 

 

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