「お手本のような字だ」と言われたのを機に五島列島に移住してからは
自身の殻を破る作品を次々と生み出し、
その原動力になっているのは島の人々の存在だと気づき、
師弟の関係性からライバルの関係性に変わり…と
様々な経験を通して書道との向き合い方を確立出来た今、
清舟(杉野遥亮)にとって次のフェーズに移った回だったように思います。
今回、書道要素がいつもより薄めだったのがそれを物語っていた気がします。
当初は"面白い作品"を書かなきゃと焦って、1人で籠る時間を作っていた彼が
住民のプライベートに積極的に関わる姿には、何だか感慨深いものがありました。
そんな世話焼きな清舟に加えて、天真爛漫ななる(宮崎莉里沙)が珍しく涙を流していて、
2人の新たな一面を見られた点でも印象に残るお話でした。
なるが空をよく見上げていたのは、また来年、飛行機に乗ってやってくる父親に会える日を
楽しみに待っていたからなのかな…と思うとちょっぴり切なかったですね。
父親に想いを馳せるシーンは他にもあって、
例えば、毎年プレゼントをくれる感謝の気持ちを伝えるために、
人目のつきやすい港で楽しそうに飛行機のおもちゃで遊んでみせたり、
缶蹴りで遊んでいるのを口実に、思いっきり抱きついてきたり、
「本当に欲しいのは、飛行機のおもちゃじゃなくてパパともっと会える機会だよ」
という本音が聞こえてきそうな、今までのおもちゃを返す行為だったり。
あれってもしかして?と想像を膨らませる事も多かったです。
本作は登場人物の心情をモノローグや台詞にして書き起こすのが特徴的ではありますが、
なるの口からは、謎のおじさんの正体が父親である事や
飛行機のおもちゃを送ってくれていた事に気づいていた旨が少し語られただけで、
あの頃とっていた数々の行為の理由を彼女や清舟が
説明・解釈する形をとらなかったのにはホッとしました。
で、もう1つ見ていて思ったのは、今回のお話は島との相性が抜群だったなぁ…という所。
何と言うか、青・緑の自然豊かなロケーションだけでも十分、
大らかさと癒しの空間を作り出す演出になっているんですよねぇ。
まぁそれは、視聴者の心に響くような撮り方が上手いって事にもなるんですけど。
特に、ああ、このシーン素敵だなぁ…と感じられたのは、
父親を清舟となるがバス停で見送る時の、適度に晴れた空と森が引きで映されたシーンと、
「俺はお前の先生だぞ」と清舟がなるに元気づけた時に、
波の音が聞こえる海が背後に映されたシーンでした。
前者の方は、田舎ならではののどかな風景が
親の実家に遊びに行く夏休みでしか見られない特別感で溢れているように思えて、
それが年に1回の父親との再会という別の特別感と重なって
お別れが迫る哀愁を漂わせていましたし。
後者の方は、どうしても重くなりがちなテーマを、
リラックス効果のある波の音を流す事で緩和させているように思えました。
穏やかなイントロで始まる主題歌のタイミングも良く、
海から父親の乗るバスへと場面転換する辺りでかけたお陰で、
また来年も会えますように…と少し希望の持てるラストになっていた気がします。
家族ではないけれど、"先生"として、なるとより一層絆を深め合えた清舟。
最初は、親がいない…どうしよう…と悩んでいたなるが
授業参観に清舟を招待した件だけでも微笑ましいんですが、
周りの保護者が書の技巧について褒める中で、「父」を書いた意味を
清舟となるだけが知っているととれる、特別な関係性を仄めかす見せ方も粋でした。
「父」…その字を教えたって事は、父親から「よろしく頼む」と言われた通り、
ある意味、自分が父親代わりとなってなるを支える"決心"も含まれているのかもしれません。
「必要なのは確信じゃなくて覚悟だろ?
最近の若者は夢を叶えるのに他人の太鼓判を欲しがるのか?」
「お前が自信あるならそれで良いんだよ」
清舟のこの言葉でハッとさせられた浩志(綱啓永)のエピソードも、
この時期になってくると、進路で悩み始める学生も多いんだろうなぁ…と思えるだけに
もっと踏み込んで見てみたかった気持ちはありますが、
メインとはガッツリ繋がらない話も用意されている構成もまた、
いろんな想いを抱えながら生きている"日常"という事で。
とは言え、そう励まされてからは、なるに料理の腕を振る舞っていたので、
ちょっとずつ進歩していっている様子は見えますね。
次回は再び東京での話で、何だか落ち着きがない感じがするんですけども。
でも、そろそろ終わりが近づいている訳で…寂しさが増す一方です。
ところで…誕生日プレゼントでプチプチを渡していた所で
「マルモのおきて」を思い出した視聴者は私だけじゃないはず(笑)
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