2020年冬ドラマ-死にたい夜にかぎって一覧

死にたい夜にかぎって 6話(最終回) 感想|夢でまた逢えたなら

 

f:id:rincoro_ht:20200301180809j:plain

 

「よく出来たドラマだった」とか「素敵な終わり方だった」とか

一言でまとめるのは勿体無いくらい、二人の関係に心揺さぶられた最終回でした。

別れ話となるとしんみりさせられる内容も多い中、

思い出の街を歩いて、当時を語って、「最高に楽しい時間の無駄づかい」という手紙を渡して…

ああ、こんな風に"二人だけの秘密"を共有し尽くした上で

1つの出会いにピリオドを付けられたら、どんなに素晴らしいか…と、

ちょっと羨ましくもなってしまいます。

 

本作の魅力はやはり「多くを語らない」作りだと思っていて、

最終回でもそれが一貫して貫き通されていました。

 

物語は震災でアスカ(山本舞香)の心が壊れていく場面から始まり、

OPが終わった後は時間軸を1ヶ月飛ばした状態で進みます。

その間に描かれるであろう"気持ちが徐々にすれ違っていく二人の姿"を

一切盛り込まない手法は、喧嘩するけど仲直り…というこれまでの話や

冒頭で既に印象強いシーンが描かれたために、

視聴者に自ずと想像させる"行間"の役割にもなっていたと思いますし、

また、震災をきっかけに一気に浩史(賀来賢人)の事を信じられなくなってしまった

アスカの繊細で複雑な心情をも表しているようでした。

 

最終回になって初めて登場したホームレスも、

普段は何しているだとか、今の姿に至るまでの背景とかは語られないままではありましたが、

逆にそうした事で、「どんな人もどうせいつかは縮んで死んでしまうから、

若いうちに楽しんだ方が良い」という言葉が、ドラマ用に作られたものではない

飾り気のない言葉として、ストンと胸に響くものになっていたと思います。

 

そして、本作の集大成かのように、湯豆腐やアサリの話をしながら

街を一軒ずつ訪れる二人を映した後は…

とうとう来てしまった別れの時。

 

新幹線で別れを告げるシーンには、涙を流さずにはいられません。

「もっと一緒に美味しいもの食べに行けば良かったね」

「もっとアスカの曲をちゃんと聞いとけば良かったね」

そんな風にタラレバを並べ立てながら、虫の裏側に似ていると言われる精一杯の笑顔を見せて

手を振っている浩史に対して、

一切顔は見ないものの、目には確かに涙が溢れているアスカ。

"動"と"静"で対比にはなっているけれど、大切な人に対する気持ちは同じだという事。

そこに後押しするかのように、アイナさんの主題歌の

夢で逢えたら 矢継ぎ早に 息を吐くのだろう」という歌詞が重なってからの

あの手紙…まで、流れが完璧としか言いようがありませんでした…。

 

どうしても印象的なシーンが多く、1つずつ解説してみました…みたいな

感想になってしまいましたが。

それだけ、周りから見たら「ろくでもない」かもしれない立場にいる人々を

視聴者にも共感してもらえるように、

優しく、温かく照らし続けた、作り手のセンスが光った作品だったと思います。

 

個人的には、世間では「福田ファミリー」の一員として見られがちな賀来賢人さんが、

唇カサカサで無精髭で…という、どこかの街でふらっと見かけそうな

素朴な佇まいを演じ切った事。

山本舞香さんが、唾で生計を立てていたのが精神疾患者になってしまい…という

深夜らしい過激で難しい役どころを体現されていた事。

そして、「平成物語」を始め、「俺スカ」「部活好きじゃなきゃ〜」など、

放送枠&その時間帯に見るであろうターゲット層に合わせた脚本を作り上げる

加藤拓也さんの柔軟性と力量を、また1つ知れた事。

語りきれませんが、それぞれの分野で、今後のドラマ業界の

ポテンシャルを感じさせてくれました。

 

冬ドラマ最後の作品が、本作で良かったです。

ありがとうございました。

 

 

↓前回の感想はこちら↓

kimama-freedays.ddns.net

 

↓今までの感想はこちら↓

kimama-freedays.ddns.net

 


死にたい夜にかぎって 5話 感想|積み重ねた幸せの中にも、小さな綻びが…

 

f:id:rincoro_ht:20200301180809j:plain

 

「お前は音楽の天才じゃない」

ああ…なんて直球で、なんて酷い事を言うんだ、浩史(賀来賢人)…と、

彼からアスカ(山本舞香)に放たれた言葉に、頭を抱えながら見てしまっていました。

 

たとえ大好きな彼女の作る曲が聞くに堪えない変な曲だったとしても、

自分に一番に聞かせたくて大きな声で起こしたりする姿が愛おしい気持ちが勝ってしまう訳で、

なぜ彼女ごと受け入れる事が出来なかったのだろう…という疑問もあった。けれど…

それと同時に、物語の最後に毎回語られる浩史のモノローグを思い出しもして。

何かあるたび自分の中のモヤっとした感情を押し込めて、

いくらプラス思考に考えたとしても、薄々と感じる理不尽さを我慢し続けているしわ寄せが

あの浩史の言動だったのかもしれない…とも納得させられてしまいます。

 

 

最後は遠くの吉野家へ行く事で、いつものように仲直り…と行きたかったのでしょうが、

月日が経ち、とうとう震災の日が来てしまいました。

初回で揺れを感じたアスカが「別れよう」と告げたのも、ここに繋がって来るのですね。

 

地震が来て、アスカの様子を心配するよりも、

落ちてくる唐揚げを必死に拾い上げる事を優先してしまう浩史の図…

彼と黒田(戸塚純貴)が話している所にフォーカスを当てている隅っこで、

音楽を聴いて微妙な反応を見せる部員達を映す遠目のカメラワーク…

 

この2つのシーンが、幸せや充実感を育んできたように見えて、少しずつ"綻び"が出始めている

アスカとの関係を表していると考えると、

最終回も含めて、もうその関係にピリオドを打つのだと覚悟した方が良いのかもしれません…。

 

 

↓次回の感想はこちら↓

kimama-freedays.ddns.net

 

↓前回の感想はこちら↓

kimama-freedays.ddns.net

 


死にたい夜にかぎって 4話 感想|優しくて、甘酸っぱくて、ほろ苦い1分間

 

f:id:rincoro_ht:20200301180809j:plain

 

新聞配達人・紺野さん(堀田真由)の事を「1分間の恋人」と例える

浩史(賀来賢人)のセンスの良さにキュンキュンしつつ…

そのキャスティングが堀田真由さんっていうのがドンピシャ過ぎて!

方言が抜け切れていなくて、ピュアで、何も飾り気のない紺野さんと、

都会に染まっていて、ガサツで、カジュアルな服をまとったアスカ(山本舞香)。

この2人の女性の対比も、2人の間で別の顔を見せる浩史の様子も興味深く視聴しました。

 

今回主なキーワードとなっているのは「1分間」。

新聞が届くのをワクワクしながら待つ時間。新聞配達人と話す空き時間。別れを告げられる時間。

ガムを渡すまでの時間。仲直りしてから元の2人に戻るまでの時間。

 

男女間の恋愛も親子間の愛情も、全て日々のささやかな行動から生まれる"人間愛"であり、

愛をどう伝えていったら良いのか、どう受け止めていけば良いのか分からない人々が、

自分なりに向き合い、時間をかけながら前に進み始めて行く…というのを、

浩史とアスカ、浩史と紺野さん、そして、いつもより回想が多めに挟まれていた

浩史と父(光石研)それぞれのエピソードを通して、

多方面から優しく描かれていた回だったと思います。

 

これまでの回の演出が、虹がちらっと見えるような光の取り入れ方や、

前回のタイムラプスみたいなダンスシーンなど、独特で幻想的なものが印象的だっただけに、

今回は「人間そのもの」をじっくり映し出すカメラワークが多かったので、

きっと演出家が変わったのかもしれませんね。

しかし、あえてストレートな演出にした事で、たった「1分間」に、

自分の知らない相手の思いやりが感じ取れたり、甘酸っぱくて初々しい感覚に浸れたり、

父の背景を自然と想像させられたりと、

それぞれの登場人物のいる世界に浸ってしまう「奥行き」がたっぷり感じられました。

 

ドアの前で浩史と紺野さんの「青森に比べたら全然」という会話のシーンも、

その前に「朝は寒いから、新聞配達するの大変でしょう?」という話が出ていたと思うのですが、

会話の全貌を見せず"一部を切り取っている"ように自然と流す脚本も良いです。

あえて語らせない。あえて分かりやすくしない。だから、知りたくなってしまう。

 

TVerでちょうど1〜4話が配信されていますので、騙されたと思って

是非とも見て欲しい作品です。

上質なドラマほど終わるのもあっという間で、残り2話…

寂しくなる時間が刻々と近づきます…。

 

 

↓次回の感想はこちら↓

kimama-freedays.ddns.net

 

↓前回の感想はこちら↓

kimama-freedays.ddns.net

 


死にたい夜にかぎって 3話 感想|「ド」の音が嫌いな僕

 

f:id:rincoro_ht:20200301180809j:plain

 

本作を見ていると、美術館でずらっと展示されている絵画を

見ているような感覚に陥るんですよね。

もう少し具体的に書くとするなら、一人の人生を紹介する個展が開かれていて、

別の空間に入ると「成長期」「晩期」といった章立て構成になっている概要パネルが

入り口に貼られていて、それをじっくり読み終えたら

あとはタイトルと制作した年、描画方法だけが簡潔に書かれた情報を元に、

1枚1枚の絵を自分のペースで、自分なりに解釈しながら鑑賞する…みたいな、そんな感じ。

(説明が下手なので、これで伝わるのかどうか分かりませんが…(汗))

 

 

冒頭は、中学生の頃の初恋相手だった吉野さん(中村里帆)が

浩史(賀来賢人)の赤い自転車を壊し、それが自分のものだとは言えないまま

壊す作業を一緒に手伝ってしまうというカオスな場面から始まります。

この二人の関係性の他の描写といえば、そこから中学生時代の回想に入り、

タイマンはろうぜと誘われ、ゲームボーイで対戦し、

勝つと一回ガッツポーズして負けると唇を噛む姿に惚れていたらしい事が淡々と描かれて終わり。

 

時を経て、赤髪の岡田さん(小西桜子)の猛烈なアプローチに押されプロポーズをするも、

「妹扱い」された事が気に食わなかった彼女にフラれてしまう場面が描かれますが、これも淡々。

 

場面紹介、説明台詞はほとんど排除されている作りなので、

ある意味ドラマらしくない展開が続きます。

赤が共通点の2人の女性を描いている事は分かりますが、

途中まで見ると「で、何が言いたいの?」の連続でもあります。

 

しかし、そんな疑問符はたった1つの台詞で一気に吹き飛びます。

「失恋のショックで、"ド"の音しか聞こえない気がする」

これだけで、"赤髪"の女性にフラれると同時に、

"赤い自転車"を壊した初恋相手との叶わぬ恋をも思い出してしまう「恋愛に対するトラウマ」、

そして、女性とどう上手く接してあげたら良いのか分からなくなってしまった「迷い」が

暗喩的に表現されていたと思いました。

私が最初に「本作を見ていると美術館に展示されている絵を見ている感覚に陥る」と

書いた理由もそこにあり、"台詞"を通り越して最早"詩"のようにも聞こえるこの独特な言葉でも、

主人公が今どんな心境を抱えているのか受け手が感情移入出来てしまう

台詞運びのセンスの光る点で、強く印象に残りました。

 

もう1つ強く印象に残った所といえば、やはり最後のシーン。

「今の俺は"ド"の音が嫌なんだよ!」「誰がステップ踏んでも"ド"の音になるでしょ!」

「じゃあ踊ってみろよ!男だったら踊れよ!"ド"じゃないんだろうな!?」

この2人にしか生まれないような奇妙な会話の連続がとにかく可笑しい。

しかし、派手な絨毯に浩史が足を踏み入れた途端、主題歌が流れ、ダンスタイムが始まると…

TRFのSAMがそう言っていたんだとアピールする浩史の姿のシュールさ、

やり場のない、どう扱ったら良いか分からない感情を相手にぶつけてしまう不器用さ、

他人が聞いたら「なんじゃそりゃ!?」と思う話でも、2人の間では一生忘れられないであろう

"幸せな思い出"に変わってしまう愛おしさ、

あらゆる感情が一瞬にして込み上げて来て、笑うと同時に涙が溢れるように…。

ここまで、泣いたら良いのか笑ったら良いのかごちゃごちゃになってしまう気持ちになった

恋愛描写は初めてでした。

 

優しいピアノのイントロ、アイナ・ジ・エンドさんのしっとりとした声の入りが、

まるで人間臭く生きる2人を包み込むかのようで、

今までの回で一番内容とシンクロしていたと思いますし。

踊る姿がコマ撮りで映し出される映像も、思い出のアルバムを1ページずつ

めくっているように見えて、中々秀逸な演出でした。

 

見終わった後は毎回、一言では表せない、不思議な余韻が残る作品です。

 

 

↓次回の感想はこちら↓

kimama-freedays.ddns.net

 

↓前回の感想はこちら↓ 

kimama-freedays.ddns.net

 


死にたい夜にかぎって 2話 感想|どんな時も「まぁ良いか」の精神で

 

f:id:rincoro_ht:20200301180809j:plain

 

もう遅い時間なのもあり(※記事作成時)、簡単感想で。

 

前回のある種の"気持ち悪さ"が抜けた代わりに、"独特さ"が増した2話。

物語の展開は走馬灯のように淡々と進んで行く。

でも、早さはそんなに気にもならなくて。

その時の感情、状況、1つ1つの気持ちが手に取るように分かるから、

首絞めなどの変わったエピソードでも、何故か引き込まれてしまう不思議な魅力があります。

 

「なんで私なんかのために、そこまでしてくれるの?」「好きだからだよ」

「お揃いの診察券、悪くないね。」

変わり者の2人でも、この人達はこの人達なりの"普通"を過ごしてきたんだと思わせられる、

会話のやり取りにピュアさが垣間見える瞬間がとにかく好き。

お互いに精神疾患者だけれど、相手の良い所を見つけ合っては共有する。

きっとその繰り返しが、2人にとっての日常だったのかもしれませんね…。

 

浩史(賀来賢人)は閉所恐怖症、アスカ(山本舞香)はうつ病と、かなり重めの設定ですが、

それを和らげてくれるかのようなセピア調の映像と、

歩きながら時折チラチラ入る虹の演出も印象に残る回でした。

(今回、時間の都合で結構ふわっとした感想になってしまったので、

次回こそはなるべく早く見て書きたい…^^;)

 

 

↓次回の感想はこちら↓

kimama-freedays.ddns.net

 

↓前回の感想はこちら↓ 

kimama-freedays.ddns.net

 


死にたい夜にかぎって 1話 感想|気持ち悪いけど放っておけない

 

f:id:rincoro_ht:20200301180809j:plain

 

※これは1話の感想です。関西だと既に2話の放送が始まっちゃってるので…一応お知らせ。

 

本作の存在をつい先日、ブログやSNSを通して知り、

最近では個人的にコメディ色が強いイメージのある賀来賢人さんの新たな姿が見られそうだな…

山本舞香さんとの組み合わせも面白そうだな…という所に期待しながら、

事前情報全くなしでTVerで見始めた初回。

正直言ってしまうと、

録画していなかったのが悔やまれる…

と思えるくらいには引き込まれてしまいました。これ、結構好きかも…。

 

主人公は初っ端から、ダニを取ってあげるよと嫌味を言う女性に

わざわざビンタされに行ったり、唾を飲むとはどんな事なのか試してみたりとかなりの変人。

特に、後者のくだりは気持ち悪いし、生理的に無理!なんですけど…

それでもこの人の人生を覗き見してみたくなる魅力に駆られます。

変人に見えるけど実は全然変人ではないのかもしれなくて。

気持ちの伝え方が不器用だとか、相手を知りたい好奇心とか、

"なんとなく"だけど共感してしまう部分があったから。

 

「結構好きかも」と最初に書いた理由もそこにあり、

気持ち悪さの度合いは違うものの、冴えない男が何故か愛しく思えたり、

幸せを追い求めようと魅惑的な女性に振り回されたりする点では

「デザイナー 渋井直人の休日」の主人公を彷彿とさせられました。

次回からはまた別の舞台での話になりそうで、どんな展開になるのかは

まだ読めませんが、とりあえず、ちょっぴり切なくて、ちょっぴり応援したくなる

作品になる予感はします。

 

本作が実話なのには驚きましたが、脚本家が「平成物語」の加藤拓也さんなのも納得の出来。

やはり、この手の話を描かせたらピカイチですね。

深夜ドラマらしい独創的で、かつ得体の知れない温もりが感じられる世界観も好みですし、

ましのみさんの歌うOP曲「7」、アイナ・ジ・エンドさんの歌うED曲「死にたい夜にかぎって」

がどちらもハマっています。

特に、OP曲の柔らかな声に合わせて浩史(賀来賢人)が夜空を見上げるアバンに

既に泣けてきてしまいました…。

早速、2曲ともSpotifyの(個人的に作った)ドラマソングプレイリストに追加して来ました。

 

「虫の裏側のような笑顔」と言われるのも頷ける笑顔のぎこちなさ、

カサカサした唇、荒れた肌で、まるで今までの役とは別人の

冴えない男っぷりを体現する賀来賢人さんもとにかく良いので、

好き嫌いはかなり分かれる作風ではありますが、次回からでも一度見てみて欲しい作品です。

(放送時間的な都合で、次回以降も感想を書くかどうかは未定ですが、

初回を見た限りだと好きなタイプの作品で、今後も書いていきたい意欲は高いです。)

 

 

↓次回の感想はこちら↓

kimama-freedays.ddns.net