2020年秋ドラマ-天使にリクエストを一覧

天使にリクエストを〜人生最後の願い〜 5話(最終回) 感想|さすらいの旅はこれからも続く

 

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話数が短いだけに、「お?ちょっとまとめに入ってるな?」という感じはありましたね。

島田(江口洋介)と時恵(板谷由夏)の関係性もてっきり

これから時々会う形で時間をかけて取り戻していくんだろうと予想していたため、

まさか復縁&しかも一緒に住む事まで考えているとは思わず(笑)

寺本(志尊淳)が「おばあちゃん」と呼べるようになったのも、島田の説得のお陰なのかしら。

成長するまでの経緯はもっと知りたかったし、

今回の話こそ2週にわたって放送しても良かった気はしますが…

まぁでも、今まで描いてきた「相手の願いを叶える事で、自分も過去と向き合って変われる」

というメッセージ性は一貫していたので。

純粋に「良かったね…」と安堵しながら泣ける1時間でした。

 

寺本が和子(倍賞美津子)をおばあちゃんだと受け入れる事が出来てからは、

今まで「サイレントエンジェル」として活動してきた思い出の日々に、

「さすらい」をみんなで歌う楽しそうな姿に、記念写真に、

そして最後は通ってきた道を一斉に映すED映像に…と

ザ・最終回!らしさを盛り込みまくる。

心のどこかにあった憑き物がとれたような4人のその後の姿を

延々と描き続けてくれる終盤の展開が粋だったなぁ…。

憑き物がとれたと言っても、これから出会う人々との関わりを通して

また試練が訪れる日は来るだろうけど。

でも、今の4人なら大丈夫。そう信じたいです。

 

本作はストーリー自体も完成度は高かったですが、

世代の離れた私でも様々な登場人物に食い入るように感情移入出来たのは、

役者一人一人の表情をじっくり見せるカメラワークの美しさもあったからだと思っています。

苦しみに耐えられない時の顔。何かに気づけた時の顔。救われた時の顔。

劇伴は基本的にギターかハーモニカで洒落た雰囲気を漂わせていて、

それを使って一切泣かせにかかろうとはしない。

よくある人情モノでも「死と向き合う事で救われる人々」を

真摯に描いている所に新鮮味を感じました。

 

ロードムービーっぽい作りもお気に入りになってしまうほど、

自分の中ではかなり好印象で終わった作品でした。

続編は見たいけど…島田達の中では過去にピリオドがついたので、

もうこれで完結させて、今後は視聴者自身が想像を巡らせるくらいが"らしい"のかも…ですね。

 

 

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天使にリクエストを〜人生最後の願い〜 4話 感想|ボケ封じの寺が守ってくれたもの

  

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仲良くワイワイ喋ったり、お煎餅の入った袋を回したりしている

移動中の車内の様子が遠足みたいで

凄く微笑ましいなぁ…と思いながら見ていたけれど、

寺本(志尊淳)も同じく過去に傷を抱えていた者だったと分かってからは

そう感じていたのにも納得してしまいました。

まだ自我がなかった頃だったとは言え、そばにいる"はず"の存在がいないという現実を

子供の時から目の当たりにしてきた訳だから辛いですよね…。

時恵(板谷由夏)も連れて、痛みをみんなで分かち合おうとした巡礼旅。

 

いつにも増して聖哉(林田悠作)の回想が多いのが

見ている側をとてもいたたまれない気持ちにさせます。

でも、全体を覆う緑の風景が、最後の亜花里(上白石萌歌)の歌声が心を癒してくれる。

それらの演出がなかったら…ただ重苦しい余韻だけが残ってしまったでしょう。

 

今回歌われた「守ってあげたい」をなぞるならば、

ボケ封じの寺は、三井(山本學)を"孫が亡くなった"という悲劇から守り、

島田(江口洋介)と時恵を"十字架を背負った自分自身を責め続ける贖罪の日々"から

守ってくれた。

階段を上る島田が走馬灯のように過去の出来事を蘇らせていくシーンで

最後に出てきたのは仏像のカット…。

再びあの時の回想になった途端、「息子が守って欲しかったもの」を思い出した。

その一連の流れが「もう自分を追い詰めなくて良いんだよ」

「2人で本当の事を話し合ってみてごらん」と

神様が背中を押してくれているみたいで、自然と涙が溢れてしまいました。

 

「聖哉、すまなかったぁ…!本当にすまなかった……」

何度も謝り続けながら顔をくしゃくしゃにして泣く江口洋介さんを見るだけでも辛いのに、

声がたまに裏返っているのがもうズルいとしか言えない。

想いを全部出し切って少しでもモヤモヤが取り除かれたのか、

前半で車を走らせているシーンでは真顔だったのが、

帰りのシーンでは表情に柔らかさが漂っているのも"変化"で対比が効いていて印象的でした。

 

個人的には2話から本作の持つ魅力にグイグイ引き込まれていって、

特に今回の話はドンピシャだったので、次回でもう終わってしまうのか…という

寂しさが一気に込み上げてくるようです。

なんで5話なんだろう。

本作だけでなく、この枠は良い作品が多いのに、話数が短すぎるのが本当に勿体ない(泣)

 

 

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天使にリクエストを〜人生最後の願い〜 3話 感想|傷を抱えた者にしか分からない心の叫び…

 

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人情味ある江口洋介さん、良いなぁ…

島田(江口洋介)も歌うんだとは驚いたけれど、

「生活の柄」の歌詞の内容といい、同じ場所で気持ちを分かち合ったシーンといい、

2人にしか持っていない"共通点"を提示した上でのあの流れだから、

彼が歌うのにも物凄く納得しちゃいました。

原曲のチョイス、塩見三省さんや倍賞美津子さんといった渋いキャスティングからして、

多分人生を長く過ごしてきた人ほど刺さるんじゃないかなぁと思う作りなんですけど、

それでも私みたいな若い方の世代でも登場人物の心情が汲み取れるように出来ていて、

とても丁寧な脚本だと感じています。

 

「傷を抱えた者にしか分からない心の叫び」が表向きのテーマならば、

「その人の"生きた証"には価値があったのか?」を全世代に向けて問いかける事が

裏向きのテーマだったように思いました。

 

一番年齢が近いであろう和子(倍賞美津子)の「ダメな事をしてしまうだけよ」という慰めの言葉。

私たちのした事に意味はあったのかという後悔の念が先に来てしまう亜花里(上白石萌歌)。

力になれた事を信じたい寺本(志尊淳)。

そして、武本(塩見三省)の一番の理解者になれた島田。

苦難や挫折を何度も味わってきた大人世代と、

まだまだ人生はこれからの、ちょっとした青臭さが残る若者世代の両者間で

価値観の違いが見えてくる結末が興味深い。

亜花里が「なんで逃げなかったの?」と疑問に感じるのも無理はないと思いますし。

渋いばかりのキャストの中で、上白石萌歌さんと志尊淳さんが

本作のスパイスとしてちゃんと存在感を残しています。

 

1話から描き続けてきた息子を失った時の回想、

「捨てようとしても過去はついて来る」という言葉が一人だけ忘れられない様子を描いていたから、

亜花里も察していたように、武本の所から離れなかったのにも

「もういっその事このまま死んでしまえば…」と自暴自棄になっていた部分が

あったのかもしれませんよね…。

 

人生の価値を自分で見出すのは難しくて。

誰かに認められて、初めて自分の人生が価値あるものに感じられる。

そして、今一番見出せていないのは島田自身…。

死に向かいそうになっている彼を、サイレントエンジェルのみんなが救ってあげて欲しい。

 

 

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天使にリクエストを〜人生最後の願い〜 2話 感想|十字架を背負って生きる大人たち

 

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島田(江口洋介)の粋な計らいで終わるのかと思いきや、

なるほど、そう来ましたかぁ…

二転三転する「嘘」が、互いに思いやっての「優しさ」だったと分かる結末。

これは前回と合わせて1セットで生まれる面白さでしたよ。

前後編で切らないで、民放の初回拡大放送みたいに1時間30分にして

一気に見せちゃった方が、"本作らしさ"が徐々に現れていく作りに

引き込まれたりしたのかもな〜…なんて。

まぁ、終わり良ければすべて良しですが。

 

今回は、十字架を背負って生きている(た)大人達のお話。

生まれたばかりの我が子を捨てた母・幹枝(梶芽衣子)は

死ぬ前にその子に会いたいと言う。

しかし、ヤクザの組長となった息子・克美(六平直政)は

再会してひたすら詫び続ける母に対して「息子ではない」と嘘をつく。

 

人生を狂わせた張本人に、なぜあえて嘘をついたのか…

その根底にはきっと、自分の罪まで背負わせたくない…という想いがあったのかも。

ヤクザになって人を殺した前科のある彼にとっては、

親としてやってはならない事をした母の苦しみや、今もなお抱えて生きている

罪の重さが痛いほど分かったのかも…と思っています。

 

本物の息子ではないにもかかわらず、手をとって心の底から泣いてくれる

お医者さんに治療してもらえて良かった。

たくさんの優しい大人達に出会えて支えられた最期。

幹枝さんのような死に方が出来たら幸せだろうなぁと、ちょっと羨ましくなっちゃいました。

 

一方で、銃の暴発で息子を亡くしてしまったという重い過去を持つ島田。

そんな彼が、これから死にゆく人達とどう向き合って、

どんな風に変わって行くのかも見届けたいです。

 

そう言えば、タイトルをいじって

天使の歌声を持つ上白石萌歌さんに歌謡曲を「リクエスト」する…

という遊び心ある演出も面白かったですね。

急に歌い出したのはびっくりしたけど(笑)ああ、良い声…

 

 

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天使にリクエストを〜人生最後の願い〜 1話 感想|結末の斜め上を行く次回予告に驚き

 

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まず、全5話という短さで、初っ端から前後編なんだ!?という意外性があったのは勿論ですが…

このまま涙をあくまでも淡々と静かに誘う流れになるのだと予想しつつ、

逆にこれで人違いだったらかなりズッコケもんだよなぁとも

冗談で思っていたのも束の間…

まさか本当にそうなるとは思いもしないじゃないですか(笑)

「間違えたんだからしょうがねぇだろ!」

島田(江口洋介)のこのぶっちゃけ具合が一番インパクトに残りましたわ。

まぁ、60年も会っていないんだから、本来ならミジンコレベルの確率になる訳で、

「ヤクザ」というだけでそんなに早く特定出来るのかと

心の中で若干ツッコミながら見ていましたけども。

でも、作風がまだはっきり掴めていない、視聴者が想像を膨らませている中での

"捻り"としてはアリなんじゃないですかね。

 

「人生最後の願い」…余命わずかの人、終活真っ最中の人の手助けをする

特殊組織か何かのドラマかな?と考えてしまうくらい、

事前情報をほとんど入れない状態での視聴だったので、

無難にハードボイルドな探偵モノなんだなぁ…と。

MEGUMIさんがゲストとして来る辺り、ますます「ハムラアキラ」を思い出しちゃいました。

EDの作りと言い、ギターの劇伴と言い、島田の妙なチャラ臭さと言い、

全体的に渋めのテイストで、深夜ドラマっぽいと感じたのが第一印象って所でしょうか。

 

しかし、個人的にちょっと気になるのが、訪問看護師だという寺本(志尊淳)の存在と、

主人公サイドとの絡ませ方。

彼の方が人(患者)に寄り添うお仕事で、夢を叶えるボランティアにも意欲的に参加していた

姿勢を見せていた辺り、こちらの職業の設定にした方が

「最後の願いを叶える」とする本作のコンセプトとしては

斬新だったのではないか?と思うんですよね。

 

探偵モノにした"理由"が、島田と亜花里(上白石萌歌)の活躍を通して

ちゃんと説得力あるものになるかどうか。

その点にも注目しながら様子見してみます。

 

 

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