2021年冬ドラマ-俺の家の話一覧

俺の家の話 10話(最終回) 感想|最高の花道!"どこかに"ずっといるよね。

 

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前回の感想で寿一(長瀬智也)のナレーションの事を「伝記」って例えたの…

あながち間違いじゃなかったですね。

序盤からな〜んか奇妙な感じだったんですよ。

いつものようにみんなで食卓を囲むんだけど、

寿一に反応しているのは寿三郎(西田敏行)だけだし、

なぜか寿限無桐谷健太)が代わりに謝るし、

観山家の資産の分配について「どうやって?」って…え?4等分なら割り切れるんじゃないの?

って違和感を抱えながら見ていた分、

それが寿一の死に関する伏線だったと分かった途端、全てが腑に落ちました。

 

能が題材である事…隅田川を披露する意味…

前回で「俺が息子だったら出てくるよ。だって会いてぇもん」と寿三郎に話していた理由…

どれも最終回の衝撃的な展開に関係するものだったんですなぁ。

 

 

能の舞台会場で寿三郎が座っていた時に下から現れた時のお風呂スタイルの寿一には

かつての"殺気"なんて全く感じられず、

少し気の抜けた柔らかい表情をしていたのを見て、

あぁ…本当にこの世からいなくなってしまったのかとようやく実感…。

舞台と地上の高低差を利用して上から俯瞰で彼を撮るという演出も印象的で、

そのお陰で当時厳しく指導していた頃の"子供"のようにも見えたし、

そのうち消えてしまいそうな、寿三郎にしか見えない"妖精"にも映りました。

 

それから寿一は有言実行と言わんばかりに、今度はスーパー世阿弥マシンとして

さくら(戸田恵梨香)やプロレスラー達の前に現れる。

「スーパー世阿弥マシンに山賊抱っこされて惚れた思い出」があるさくら。

リザード寿時代からずっと支えてきた仲間達。

"寿一そのもの"ではなくいろんな格好で現れたのは、

いなくなっても、一緒にいたという記憶や思い出はずっとそばにある…という事なのでしょう。

 

最後のマスクを取るシーンは

山口百恵さんの"あの"引退パフォーマンスを彷彿とさせるものだったけれど、

取る"瞬間"までは映らなかった。

あれで完全に別れを告げたと捉える人もいれば、

またいつかひょっこりと現れるだろう…というほんの希望を持つ人もいて、

解釈は大きく分かれるのかもしれません。

 

本作はひたすら誰かを「尊重」する優しさに満ちていたドラマだったと思います。

思えば、25年間も家族をほったらかした人がそんなに日も経たないうちに馴染めるのなんて

現実ではそうそうないし、

寿一が辞めると言っていたプロレスを再び始めていたのだって、

正体が分かった時点で問い詰める事は出来ただろうけど、

また消えてしまうかもしれない…という彼への想いから、

本人がカミングアウトするまで全員で黙っていてくれた。

寿限無にも遅めの反抗期があったけど、最終的には"父"だと認め、見舞いもしてくれたのもそう。

だから、最終回の結末だって、

「長瀬くんが芸能界からいなくなったなんて嘘だ」と思ったって良いんだと。

登場人物やファン、誰も傷つけない。

そんなラストに仕上げたクドカン、本当にありがとうございます…と言いたいです。

 

表現はちょっと大げさになるかもしれませんが、

長瀬くんの作品は、私の成長と共にあった思い出みたいなものでしたからねぇ。

小学生の時はあれやってて、中学生はあれで…って、いろんな作品が思い浮かぶ。

TBSの金10もそうだけど、日テレの土9にもよく出演されてたイメージがあります。

小さい頃から当たり前のように見てきた方だから、暫くお目にかかれないとなると寂しいですが…

寿一みたいに何年か後にまた芸能界に顔を出す日が来るのかも…って期待したって、良いよね?

 

 

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俺の家の話 9話 感想|能か?プロレスか?それとも…

 

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ガールズバーの話をしたら心拍数が上がった!と喜び、

踊介(永山絢斗)が芸を披露すると言ったら心拍数が下がった!と落ち込み、

一喜一憂する観山家…

ドキドキしながら見守りがちの心拍数の変化をブラックな笑いに変えちゃうなんて、

コンプライアンスにうるさい今の世界じゃ早々難しいですよ(笑)

ドリフのお笑いを見ているようでした。

ふざけた方向に偏ってしまうと、ちゃんと現実と向き合ってもらうよう

位置を元に戻してくれる医師がいるから、

際どいくだりも安心して見られるんですよね。

そして、「きもったま!しこったま!さんたまーー!」と

能一家と幹部達が一丸となって、寿三郎(西田敏行)の奇跡を待つ図には目頭が熱くなる…

ばかばかしさの中には、飾り気のない"愛"がこもってる。

今回はいつも以上に、笑って泣いて、感情が忙しかったです。

 

で、明かされる事のなかった二十八世の継承問題については…

寿限無桐谷健太)に継いでもらう、と遺書に残している気がするんですよねぇ。

その想いには、自分が優柔不断だったせいで彼の未来を奪い、

"家族"としても長い間関係を共に出来なかった申し訳なさとか、

小さい頃から稽古に励む姿を見てきて、その腕前の良さに期待している部分だとか、

いろいろ込められていそう。

ここ数ヶ月間大きな苦悩を味わった寿限無を思ったら、その答えでもアリなのかなって。

本当は寿一(長瀬智也)に継いで欲しい気持ちもあるんだろうけど、

リザード寿の特集が載っている雑誌に大事そうに付箋が貼ってあったのを考えると…

彼にはプロレスの方が合っているのも分かっているのかも…ですね。

一度は辞めたプロレスの世界に結局戻ってくるほど大好きだし、

その道を極めた方が、能面のような殺気を放つ事もなくなって、

さくら(戸田恵梨香)もスカイツリーを独り占め出来る。

寿一は目の前にいる大ファン=父の想いを胸に、再びプロレスに打ち込み、

二十九世は秀生(羽村仁成)になり…そんな流れだと勝手に想像してます。

 

でもなぁ…もう1つ気になるのは「離見の見」の描かれ方。

父の座につく能楽師姿の寿一を、私服の寿一が遠くから見守る図…

なんか、一瞬「幽霊かな?」と思ってしまいましてね。

そう思うと、「離見の見」的なポジションにいる寿一のナレーションも

自身の伝記を紹介しているんじゃないかという気もしてきました(汗)

「奇跡は一度だけしか起こらなかった」

の台詞の時に映った寿三郎の表情は、そんなに病状が深刻そうでもないんですよ。

親の死に目に会えなかった…という"現実"に踏み込むパターンになるんでしょうか。

どうなんでしょ。

 

 

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俺の家の話 8話 感想|親がいない家は実家と呼べるのか

 

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なんかもう…今回のラストは泣くしかない。

今までの思い出が走馬灯のように蘇っていく演出は、やはり涙腺に訴えかけるものがありますよ。

グループホームで寿三郎(西田敏行)を見送ってから実家に一人ぽつんと佇むまでの流れに、

"TOKIOとしての人生"や"クドカンドラマでの思い出"を本作の中に残して

仲間も知り合いもいない新たな世界に飛び込む長瀬くんの心境と、

子供達が自立して家を出て、大切な人も他界して行って一人残される親の心境が勝手に重なって…

後者に関しては、うちのおばあちゃんがそうだったから。

遠く離れた実家で、娘も息子もいなくなって部屋もガラ空きになった家で

余生を送る側の気持ちってあんな感じなんだろうなぁ…なんて、想像しながら見ていました。

 

帰ってきた時に親がいて、家族ならではの"温もり"を感じさせるのが実家であって。

寿一(長瀬智也)にとって親がいなくなった今の家は、実家とは…呼べないですね。

 

「…嫌だったら、別に良いけど」

「そうだねぇ、行ってみっかなぁ」

「…嫌なら、断るけど」

「行くよ。行って欲しいんだろ?」

「良いよ行かなくて」

「行くよ。お前と二人っきりよりはマシだよ」

「じゃあ行けよ!なんだよ面倒くせぇな」

寿一と寿三郎によるこの一連のやり取りも、凄くこの二人らしいなぁと思えて印象的で。

どちらも客観的に今後を考えた上で、もう自分も良い歳なんだからと妥協して

新たな提案をしよう(受けよう)としているんだけど、

本当は「離れ離れになりたくない」っていうわがままな思いがせめぎ合って、

その気持ちが言葉の節々に、本音の形でも、強がっている形でも

滲み出ている所が親子揃って似てます。

 

でも…直接グループホームまで送り届けられるまで一緒にいられるのって、

よくよく考えたら凄く幸せな事だし、

舞(江口のりこ)や踊介(永山絢斗)のように

心が離れ離れのままで終わってしまう事の方が多いと思います。

いつ終わりを迎えるか分からない日々だから、

こういう時こそ家族全員で支え合っていかなければならないだろうに、

あの「家族写真」が絶頂期だったと言わんばかりに

その先の日常が徐々に崩壊していく展開は…見ていて切ないです。

介護が取り入れられた話だから今回のような"リアルな過程"を表現したんでしょうけど、

やっぱりドラマだからさ。

家族が涙を流しながら、枕元を囲んで最期を看取る"理想"も見たいですよね。

 

「俺の家の話」だけではなく、「私の家の話」にもなっていた今回。

男だらけの芸能一家に生まれて、"女だから"と切り捨てられる舞と、

危うく離婚した元旦那に出産立ち会いされそうになったユカ(平岩紙)の話。

「家の話」なだけに、本当にいろんな登場人物にも焦点を当てる作りになっているなぁ。

ユカの件は、コメディタッチで「元旦那なのに出産に立ち会っちゃった!」なんて

笑いをとる描き方も出来ただろうけど、

何やってんだ!出てって!とちゃんと言ってくれる助産師の存在を作った所に、

本作に対する、クドカン先生に対する信頼が持てました。

女性だからこその生きづらさ、繊細で赤裸々な想いにも向き合おうとしているんだという

意思を感じましたね。

 

 

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俺の家の話 6・7話 感想|僕にとってのお父さん

 

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前回の感想は多忙で書きそびれてしまいましてね…(とほほ…

っていうか、金・土曜分の感想、最近ルーズ過ぎる投稿になってますね…すみません(滝汗)

どうしても触れたい事があったので、最初に書くとすると…

いや〜、長瀬くんに歌わせたり踊らせたりするだけでなく、

スタンドマイクまで倒させるなんて天才かと!

あそこのシーンだけは「TOKIOの長瀬くんが混ざってる!」って思っちゃいましたわ。

クドカンがこれまで作った数々の作品を盛り上げてきた功労者=一人の役者の前に、

長年にわたって活動してきたTOKIOのメンバーの一人でもあるから。

歌手と役者の二足のわらじ、第一線を突っ走ってくれて、今までありがとう…と

敬意と感謝の気持ちを込めているように感じられて、ちょっとグッとくるものがありましたよ。

役者としての姿が見られるのも残り1ヶ月ねぇ。本当に裏方に専念してしまうんでしょうか。

音楽活動が死体(したい)から退社するって話もなかったっけ?

 

 

さて、ここからは7話の感想。

こっちはこっちで、人の温かさに触れるお話でした。

能から逃げてプロレスに走っても、今度は家庭との両立が出来ず

片方に専念する形で"一家の主"から逃げたのを、

元妻・ユカ(平岩紙)にある意味突かれてしまった訳ですが、

一方で秀生(羽村仁成)が「能をやっている父」も「プロレスラーの父」もかっこいいと

全肯定してくれていた事実に思わず泣けてしまいました…。

 

末広(荒川良々)の「泣きながらやっても、笑いながらやっても、介護は介護」という

台詞が示しているように、

能もプロレスも中途半端な状態でも、

息子にとってはかっこよくてなりたいパパである事には変わりないし、

パパが2人いても、どっちにも自分の言葉で気持ちを伝えたいほど大切に想っている存在だし。

寿一(長瀬智也)の場合は、25年実家を出ていてもずっと観山家の一員だし。

どちらを選択するべきとか、誰かの"これまでの人生"を否定するとかそういう話ではなく、

最終的には「"今"どうしたいか」が大切なのだと訴えかける結末に優しさを感じました。

会いたいから、会う。能が死体から、する。

このご時世にはぴったりな内容だとも思いました。

 

しかし、能で活躍する秀生に胸を打たれた再婚相手は、

結局「秀生、無理」と言って親権を得るのをやめる事に。

根性なしだとは思うけれど、繋がりもまだまだ浅いのだから、

これからちゃんとお父さんになろうと思ったら

急に自信がなくなってひよってしまうのも無理ないのか。

皮肉にも…まさに「薄い」お父さん、ですね。

「濃い」お父さんである寿一を含む観山家との繋がりは深いから、

書きたくなる思い出もいっぱいあるし、

それだけ作文の内容も中身の詰まった濃いものになる。

今回の「俺の家の話」…は、秀生の家の話でもあるんですね。

 

前回から序盤までは修学旅行か!ってくらい思いっきり浮かれた寿三郎(西田敏行)だったのに、

終盤で「要介護(3に近い)2」だと知らされる展開は、現実を見させられているようで悲しい。

今回はいつもより小ネタも大人しめでしたが、最終回に近づくにつれて

そのうち忘れてしまうとか、深刻な雰囲気も漂わせてくるんでしょうか。

リザード寿が表紙の雑誌、付箋、弟子として受け入れてくれた秀生の事…

最期まで覚えていて欲しいですけどねぇ。

 

 

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俺の家の話 5話 感想|能に縛られ続ける2人の人生

 

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寿限無桐谷健太)の遅めの反抗期は、案外あっさりと終わった。

まぁ…大人になってからだとあんな感じなんだと思いますよ。

父がクソジジイだと知ったら、家出をしたり能を辞めたり出来たはずだけど、

彼はそうはせず、いつも通りの生活を送る事を選んだ。

小さい頃から現在まで長い間人生を共にしてきた「能」だから…

捨て切れなかったし、捨てたくてもどうやって捨てたら良いのか

分かんなくなっちゃったんでしょうね。きっと。

大州(道枝駿佑)くらいの年齢で事実を知らされていれば

別の夢を見つける事も、親に対して思いっきり口答えする事も出来たかもしれないだけに、

感情を上手く伝えきれないまま「結局自分にはこの道しかないんだ」状態になってしまう

寿限無の姿は、ちょっと切ない。

 

でも、どうしようも出来ない怒りを

寿一(長瀬智也)にぶつけられただけでも良かった。

身近な兄の存在がいた事が唯一の救いか。

終盤の「どこ乗れば良いの?」「ふふ…俺の隣だよ」の会話は、

実際には車のどこの席が空いているのかを聞くくだりでも、

その奥底には、初めてお互いを兄弟だと認識した2人が

不器用ながらも兄として、弟として"同じラインで"接しようとする

真っ直ぐな気持ちが込められているようで、妙な温かさを感じるシーンでした。

なので…ここは直に解決すると思いたいです。

 

「能」に縛られていたのは、寿三郎(西田敏行)も同じで。

妻が里帰り出産している時、アルコール中毒で倒れた時、イタリア公演の時と

事あるごとに女性と親密な関係を築くのは褒めたもんではないけれど、

何もかも捨てたい…でも人間国宝に選ばれたのがきっかけで

世間の目を気にしてしまって、結局は捨てる事を諦めたという所は分かる気がしました。

(性欲はむき出しだったよねっていうのは置いといてw)

 

家族写真も、誰かが能面の時を除いては、一度しか撮っていない。

まともに全員で旅行も行けないほど「能」に時間を費やし、縛られてきた人生。

そんな家族が「やらずに後悔よりやって後悔」というスタンスでいるのは、

"今"の観山家らしいなぁ…と思います。

このご時世だから、いつまたどこかで再拡大して、あるいはいつ終息するのかも分からないし。

最期になるかもしれない家族旅行、何も問題が起きずに

思いっきり楽しんでいって欲しいです。

 

ところで…あれだけ女性と交流があるなら、寿限無以外にも隠し子がいても

おかしくない気はしますよねぇ。

さくら(戸田恵梨香)が…って事はないのかしら。

っていうかそれ以前に、旅行から帰って来たら姿も家の物も消えてそうなんですけど…(笑)

 

 

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俺の家の話 4話 感想|絶対権力者の前ではNOとは言えない

 

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いや、本当クソじじいですな(笑)

これは寿限無桐谷健太)が闇堕ちするのも無理ないですよ。

前回の「死に方が分からない」でしみじみしちゃったけどさぁ…

あの話を聞いちゃうと、意味、結構変わって来るよねぇ……。

だって、自分が自分じゃなくなる前に、後悔ない人生を送るために言ってしまおうか、

それとも子供のために言わないでおこうかっていう葛藤も含まれていた訳でしょ?

まぁ、結局はカミングアウトしてしまったし、

心が晴れやかになるのは当本人だけなんですけど。

でも…個人的には、ちゃんと意識がある前に言った方が良いと思うんですよ。

亡くなってから分かれば「なんでもっと早く言ってくれなかったんだ!」という

怒りをぶつける相手がいないモヤモヤは残りますし、

認知症が進行してきた場合、本人はボケた頭でもポロっと出ちゃう事だってあり得ますし。

そっちの方が精神的に来そうです。

それにしてもねぇ…さくら(戸田恵梨香)に凄いべったりだとは思ったけれど、

まさか他の女性の子供を作るほど女好きだったとは…印象が変わっちまいましたな(泣)

 

印象が変わったと言えば、O.S.D(秋山竜次)も。

場を盛り上げるために生まれたボケキャラのイメージがあっただけに、

深い言葉が彼から出てくるとは思いもしませんでした。

「ラーメン好きなやつってさぁ、

ラーメン好きなやつの気持ちしか分かんねぇんだよなぁ」

これ…自分なりに解釈すれば、今まで医者を目指して努力してきた親が

我が子にも医者になってもらいたいという想いで厳しく教育する

ある種の"願望"と同じ原理なんですよね。多分。

人間国宝で絶対権力者の寿三郎(西田敏行)の下で育ってきた

寿一(長瀬智也)、踊介(永山絢斗)、寿限無

そして、その家族に影響されてきた秀生(羽村仁成)と大州(道枝駿佑)。

観山家の息子達も、繋がりを持つ人々も、

みんな「男なら男らしく継ぐべし」「男らしい意志を持つべし」という

見えないけど確固たる"しがらみ"の中で生きてきたんだろうなぁ…と考えさせられる話でした。

 

"長男なんだから"家を継がなければならない責任感を持つ寿一。

"弟子になったんだから"観山家のために尽くさなければならない任務を任される寿限無

"能の才能がないのなら"違う職業で家に貢献しなければならない踊介。

"能一家の孫として生まれたのなら"能が好きじゃなくても踊らなければならない大州。

初回の感想で「父親の呪いもこの物語には含まれている」といった文を書きましたが、

今回は男性中心の話に絞って、

逃れたくても中々逃れられない"家族の繋がり"を描いてきたと。

 

これは今更の気づきで、俺の家の話の「家」は「いえ」とも読めるけれど、

家庭や家族を意味する「うち」とも読める訳でさ。二重の物語になっているんですよね。

長男は能とプロレスを掛け持ちしていて、父は要介護で、個性的な子達で…という、

一見風変わりの家族を紹介する話でもあるし。

寿一が現状を知って、介護に関わっていく事で、家族とどう向き合って行くのか…という、

長い間そこに存在している"家"そのものを建て直す話でもある。

いや〜、よう捻られてますわ。

 

前半も相変わらず笑いの連続でしたし。

で…ビューティフルライフごっこって、本当に当時からあったのかしら(笑)

世代じゃないので分からないw

 

 

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俺の家の話 3話 感想|まことの"フリ"した顔とまことの顔

 

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再現能が始まった時にゃあ…びっくりしましたよ。

唐突な劇中劇を放り込むくだりは「流星の絆」のポストイットを思い出してしまいました(笑)

あれは初回からいきなりあんなコミカルな展開になったもんだから

雰囲気が噛み合わないように感じて、

それからあの作品の面白さに気づくまで時間がかかったもんですが、

本作の場合は初回、2話と徐々にクスッとさせられるネタを重ねていって…の今回の劇ですからね。

やっぱり"タイミング"って大事だなぁと。

登場人物が役になりきっているのも相まって、楽しく見られましたよ。

「ぽかりぽかり」には笑いましたw

 

そして、前回に引き続き触れられたさくら(戸田恵梨香)自身のお話。

さくらの幼少期…まぁ、親とのお金関係で悲惨な日々を送っていたのが真実なら

「貸してくれオーラ」を感じ取れてしまうのも理解は出来ますが…

レンタル彼女代として月額3万円をせびる辺り、

作り話なのではないかとちょっと疑っちゃうんですよね。

やっぱり"限りなく黒に近いグレーゾーン"なんじゃないかと。

 

「私の家の話」は嘘かまことか。

半分はまことで、残り半分はオブラートに包んだ嘘かもしれない。

さくらの話を聞いて、本作のテーマが何かが掴めてきましたよ。

"仮面"をつけて本音を隠しながら生きている人々を描きたいのだと。

だから「プロレス」が絡んでくるんだ…と、妙に腑に落ちてしまいました。

 

建前と本音とも言い換えられるお話。

息子に能の才能があると分かって嬉しい反面、

自分は褒められた事ないのに孫が褒められるのは羨ましいという

嫉妬の顔を覗かせる寿一(長瀬智也)と。

「死に方が分からない」とボソリと弱音を漏らす時はマスク姿で、

スーパー世阿弥マシンを褒める時は、当本人の顔が見えない形で

風呂場の壁を挟んで褒めてみせる寿三郎(西田敏行)。

表向きでは"自分"を取り繕ってみせているけど、

実は"何か"で隠していないと自分の気持ちを伝えられなかったり、

気づかれないようにと隠したままでいたり…という

2人の二面性の描写に惹かれます。

 

寿三郎が死ぬ前に本当にやりたい事は恐らく「家族旅行」なんだろうな…というのが

二重線で引かれているのを見て何となく分かるから、それがちょっと切ない。

そして、スーパー世阿弥マシンが息子だというのも恐らく気づいていて。

エンディングノートに大きく書かれた「もう一度、舞台に立つ」に

そのうち「息子と一緒に」が付け加えられる展開が来るんじゃないかなぁと思っています。

親子で立っている所、最終回で見たいな。

 

一見バラバラで密度の濃い内容を羅列させているようで、

最後はきちんとオチをつけて完結させる。

今回の話だけで1本の作品を見ている感覚に陥りました。

じわじわと満足度が上がってきております♪

 

 

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俺の家の話 2話 感想|10分で忘れる…をネタに出来る強さ(笑)

 

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勢いが加速してきましたねぇ…

初回は「俺の家の話」だけあって

主人公の生い立ちや家族事情について紹介するくだりがあったために、

序盤が大人しくて中盤から徐々に"らしさ"が見えて来る…という印象を持っていたけれど。

そんな初期設定が済んだ今回は、終始クスクス笑える小ネタが満載でした。

YO YO!俺のじいちゃん要介護!から始まり、

「ヘルパー 夜這い むちむち」の検索まで。

特に10分前の事を忘れるくだりなんて本来笑っちゃいけない所なんですけど、

西田敏行さんが気持ち良いくらいにカラッとした演技をされるもんだから可笑しくて(笑)

一歩間違えたら顰蹙を買う恐れのある「認知症あるある」を可哀想と思わせる以外で見せるには、

ある程度の潔さがないと成立出来ないんだろうなぁ…と実感しましたよ。

 

そして、さくら(戸田恵梨香)の後妻業疑惑の件。

これは…彼女の言う通り、自分の仕事を全うしているだけですね。この意見はごもっともだ。

Aさん、Bさんと名付けて何人ものおじいさんから遺産をガッポリもらっているのは

はたから見れば詐欺行為ととれるでしょうけど、

後妻業というのは「遺産をもらうために死へと導く」職業であって、

彼女は死に導くよりもむしろ命を長く生かしてきたから、決して不正を働いたとは言えない。

さくらがヘルパーになった動機も特に明かされませんでした。

でも、少なからず分かるのは…"父親"くらい歳の離れた人と共に過ごす形で

その人と"家族"にもなりたかったし、誰かからの"愛情"を欲しかったんじゃないかな…という事。

寿一(長瀬智也)が息子の才能に関して悟っていた

「親でありながら、俺は親離れ出来ていない。いびつな男だ。」じゃないけれど。

寿一が25年間実家に帰らなかったのにもかかわらず、"家族"から逃れられなかったように、

彼女もまた家族という"思い出"から抜け出せない一人なのではないかとふと考えさせられました。

そう考えると、ぱっと見はコメディでテーマは介護でも、

軸はちゃんと"ホームドラマ"なんですね。

クビにはならなそうだったから、今後も寿一達と関わりながら

寿三郎(西田敏行)の世話をしていく事で、少しずつ人との向き合い方が変わっていく所も

さり気なく描かれていくんだろうな。

 

それにしても、本作以外にも言える事ですが、

最近のドラマは中盤や最終章まで引っ張りそうなネタを

早々に解決している傾向にありますね。(視聴者に考察させるためにそうする所もあるけれど)

さくらの後妻業疑惑なんて、まだまだ引っ張ろうと思えば引っ張れたでしょうに、

2話で言及してしまうとは驚きました。

縦軸以上に"描きたいモノ"があるんだ…という

脚本家の意欲やメッセージ性が感じ取れて、良いですね。

 

話の内容に戻るとして…最後の寿三郎の倒れ方は、

きっとこんな風に孤独死するケースもあるんだろうと思えるシーン。

寿一が試合で苦戦している時の歩き方と、

寿三郎の足のおぼつかない歩き方を交互に映してシンクロさせるけど、

後者はドラマのように劇的に立ち上がるなんて事はなかった…という

"理想と現実"を見せられたのが、余計に胸に来ました。

予告では無事そうで何よりでしたが、

寿一は介護の失敗によりプロレスとの繋がりを完全に断つ事になるのか、

はたまた二足のわらじを履くのか…来週も楽しみです!

 

 

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俺の家の話 1話 感想|俺の介護生活が始まる!

 

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冒頭から超個人的なイメージを書いてしまうと…

宮藤官九郎さんの脚本は、私にとっては

ゴーヤチャンプルーみたいなものだと思っているんですよねぇ。

コメディタッチで展開されていく物語に

最初は「なんじゃこりゃ!?」とあまり惹かれずにいるんですが、

回を重ねるにつれて台詞から"真意"が見えてきたり、伏線が回収されたりして

その作品の良さがだんだん分かってくる…みたいな。

つまり、初回の段階だと、独特さの方が勝ってしまって掴めない事が多い。

そんなイメージを抱えていたからか、本作は大衆受けしやすいように

"クドカン節"が抑えめに作られていたのが意外でした。

 

控えめに作られていると言っても、台詞の節々から出てくるキワドさや面白さは健在だし、

特に「退院しました!」「実は録音してました!」っていうくだりは

とんでもなくひどい(笑)←褒めてます

「さんたまプロレス」も、多分視聴者が「あれ一本足したら…」と想像するのを

分かっている上で設定したんだと思ってます。

でも、笑えるやり取りをトントン拍子で進めていった分、後半の重さが効いてくる。

 

認知症疑惑のシーンでは、空気を読まずに答えまくる秀生(羽村仁成)の存在が

気まずい雰囲気を作るのに一役買っていて、

徐々に神妙な面持ちになってしまう大人たちから考えさせられる"余白"が感じ取れましたし、

「介護に特別な感情を持ち込まない方が良いですよ」

介護保険サービスを受けるのは国民の権利」などと、

介護が軸の話だけあって、かなり現実的な面にも触れている印象がありました。

しかし、本作が一番伝えたいのは、きっとそこではない…んでしょうねぇ。

寿一(長瀬智也)が「なんで俺が」というような言葉を

風呂場で投げかけた時にハッとしましたよ。

25年間顔を見せていなくても"家族だから"いつまでも繋がれるけど、

逆に顔を見せなかったから「普通に介護出来るよね?」と圧をかける

父親の呪いもこの物語には含まれているんだと。

 

そんな感じで、表向きは楽しいけれど、深く深く本作を捉えて行ったらゾワッとさせられる…

コメディとシリアスが同居した、

毎回見終わった後に不思議な余韻が残る作品になりそうな予感がした初回でした。

 

戸田恵梨香さんの悪い女っぷりも新鮮で、堪らんですね。

細い方だから、寿三郎(西田敏行)の膝の上に乗って軽い!って言われるのも

全然頷けますし(笑)

次回予告で後妻業かどうかを言及されているあたり…多分違う目的があるんでしょう。

家族のしがらみの中で、他人のさくら(戸田恵梨香)が

どう関わっていくのかにも注目したいです。

 

 

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