2021年春ドラマ-コントが始まる一覧

コントが始まる 10話(最終回) 感想|コントはまだまだ始まったばかり

 

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まさか、水道修理業者に転職するとは!(笑)

演劇作家のパターンも想像していたけど…

みんなして芸能と関係のない道を進むなんて、意外でした。

 

まぁでも、里穂子(有村架純)と関わるようになったきっかけは

ただの水がメロンソーダに変わる話だったし、

兄の俊春(毎熊克哉)は水でマルチ商法に嵌っていた過去があったし、

「水のトラブル」「奇跡の水」「金の斧銀の斧」など

水が絡むコントもいくつかあったのを考えると、

春斗(菅田将暉)が水道修理業者になるのは別におかしな事ではなくて。

彼にとって水とは、新たな出会いや、言葉にして伝える勇気や、

ネタ作りのモチベーションを与えてくれる、

人生の幅を広げてくれる意味では切っても切れない関係で結びついているんですよね。

 

濁っていたのが透明になった池の水も、彼のこれからを後押ししているようにも感じられました。

そして、もしかしたらそれは、彼の心を映し出す鏡でもあったのかもしれません。

マクベス時代で思い通りに行かなかったり、

挫折を覚えたりして溜まっていった"モヤモヤ"を抱えていた時は淀んだ池だったけど、

解散して1年半が経ち、ネタを書いている立場から「売れるために面白いネタを作らなきゃ」

「2人には申し訳ない」といった重荷も背負う必要がなくなって、

ある意味身軽になった頃には、汚れなど最初から一切なかったかのような綺麗な水に変わっていた。

池を見た時、春斗は本当に嬉しそうで、

目の奥にキラキラとした少年心を宿らせて微笑む姿が印象的でした。

今の仕事に就くきっかけがここにあったのも、何となく分かる。

水はまたしても、彼を救ってくれたんですねぇ。

 

潤平(仲野太賀)や、一仕事終えてきた感じの瞬太(神木隆之介)、

里穂子やつむぎ(古川琴音)と、それぞれ新たな場所で動き出している様子が描かれる一方で、

春斗のコント…"第二章"はまだ始まったばかり。

適職だったのか、今の仕事についていけているのか、それすらも曖昧なままで終わった最終回。

「コントの中でいろんな職業を演じてきた」といった潤平の言葉を踏まえると、

水道修理業者の仕事が長続きせず、いろんな職を転々と…なんて未来も考えられるけれども、

引越しのコントにあったように、泣いても笑っても時間は進むし、

後で振り返った時に今の選択が正解だったと思って生きて行くしかない訳で。

また万が一どん底に陥る時が来ても、2人とは円満に解散出来たから

前みたいに馬鹿騒ぎして時間を忘れる事だって出来るし。

5人集まれば餃子パーティとかで想いを共有する事も出来る。

七転八倒して、いつか「人生最高だった」と胸を張れる日が来るのを願っています。

 

良い意味でドラマらしくない作品でしたね。

ラストの落とし方はもちろん、視聴者の誰もが夢見た「◯年後に再結成!」なんて

ハッピーエンドにはせず、それぞれが別の道を歩む…

若かりし頃の自分を重ねては懐かしんで見てしまうようなリアルがそこにはありました。

あとは何と言っても、春斗と里穂子の恋を匂わせる展開を入れてこなかった所!

自分が一番マクベスを知っているという優越感からプライベートに踏み込んだり、

身近な存在として今まで接したりしていると、

そのうちキス&ハグシーンで一線を超えてしまうのではないか…

で、下手したら恋愛要素が増えて本題が薄まってしまうのではないか…という

可能性もなくはないんですが、

あくまでも現実に向き合う姿が描かれる"青春群像劇"の作りにブレがなかったのが、

最後まで好意的に見られた理由だったと思います。

今の時代では、中々挑戦的だったんじゃないかなぁ。

恋愛がなくたって心が揺さぶられる作品…あんまりないでしょう。

("Love"の愛ではなく、"respect"の愛はあったかもしれないけど。)

 

全体的に微妙な作品の多い土10枠の中でも楽しめました。

っていうか、金子脚本しか当たりがないような(笑)

「俺の話は長い」も好きでしたし…本作もランキングの上位にいますし…

野木先生クラスの脚本家になりそうです。

もう土10枠で書き続けて欲しい…って、無理な話ですねw

 

 

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コントが始まる 9話 感想|勝敗なんてつけなくて良い

 

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「夢って、追いかけない方が良いの?」

この言葉を聞いた時、うわぁ…残酷な視点盛り込んでくるなぁ…と。

まだ希望を持ち続けたい年頃の小学生がそれを言ってしまうっていうのもあるけど、

真壁夫婦の出産に立ち会っていた時に生まれた太一(伊藤駿太)が…

っていうのがまたグサッとくる。

 

そうだよなぁ。子供だと人生経験があまりにも少ないから、

物事の裏側までは察する事が出来ない。

試合の勝ち負けじゃないけど、

子供の時にいっぱい遊ぶであろうゲームの「ゲームオーバー」とも似ている。

勝ったら&ステージをクリアしたら成功。負けたら&クリア出来なかったら失敗。

若ければ若いほど勝敗をつけやすい。

でも…そんなはっきりとした子供の視点が描かれたからこそ、

以前の里穂子(有村架純)の「10年間の頑張りが無駄になるとは限らない」ももちろん、

「負けたって事が失敗とは限らない」「人間関係をいくつ築けたかが勝敗を決めるんだと思う」

と話す俊太(神木隆之介)の考え方にも、

酸いも甘いも嚙み分けてきた者ならではの奥深さが増した気がします。

"勝敗"に対して、1つの意味しか知らない子供と、複数の意味を知っている大人の対比…

バーベキューでのくだりは、とても惹きつけられるものでした。

太一くんは今はちんぷんかんぷんでも、俊太の言葉の意図が分かる時がいつか来るはず。

 

"終わり"を彷彿とさせる残り火や、カップに少し残ったコーヒーのカットを

時々挿入していた演出も、もうすぐ解散を迎えるマクベスを表しているようで印象的。

でも、彼らにとっては"終わり"ではない。

焚いている火が消えそうになっていたらまた点ければ良いし、

昔を懐かしんではじっくり語り合う機会はまた訪れるかもしれないし、

飲み干したコーヒーは、春斗(菅田将暉)がネタ作りをする原動力に変わっている。

 

そうそう、俊春(毎熊克哉)について触れてくれていたのも良かったです。

彼の就職先がブラック企業なんじゃないかと少し不安だったんですけど、

そこで働く事に対する想いを聞く限りだと、もう心配はいらないみたいですね。

周りの大切な人を満足させてみて、そういう生き方が出来た時に初めて

自分を満足させられる気がする…の部分が、

昔も今もマネージャーとして尽くしてきたつむぎ(古川琴音)と重なりました。

彼もマルチ商法にハマって仕事も友達も失って、どん底状態に陥って引きこもり…なんていう

一見"負けた"と捉えられる経験を過ごしてきたけど、

その充電期間が今の自分に繋がっている。

春斗だけが何も進路が決まっていない状態ですが、

彼のように、一旦立ち止まって休んでみるのもアリなのかも…とも思わされました。

 

コントの方は、2人の様子の実況=サッカーの試合の実況、司会者=歯科医者と

2つの意味がかけられているのも面白かったです。

厳格な父親を演じる潤平(仲野太賀)…きっとその役に愛着が湧いてしまうでしょうねぇ。

 

次回は最終回って事で…

解散が失敗じゃないとは分かっていても、春斗大好きな2人のエピソードを見てからだと

やっぱり寂しいものはありますよ…(泣)

 

 

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コントが始まる 8話 感想|みんな誰かのマネージャー

 

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視聴してからかなり日が経っているので、簡単感想で。

 

まさか、ここにきて楠木(中村倫也)のモノローグとエピソードを

見聞き出来るとは思いもしなかったなぁ。

まぁでもそうか…里穂子(有村架純)やつむぎ(古川琴音)といった

三者が支えていく話が描かれたのだから、

真のマネージャーとして関わってきた彼の話に触れない訳には行かないか。

そして…危うく車に奪われそうになった「四人目のマクベス」の座。

そうよね。こっちだよね。

途中までは、楠木のマクベスに対する想いが一方通行の状態に感じられて

切なくなってしまったけれども、

最終的には3人にしっかり認識されていると分かったし、

車の件も言及してくれていたので…ホッとしました。

 

里穂子を支える事で自分に自信がついたつむぎが

恩返しにとタッパーに詰まった手料理をプレゼントしたり、俊春(毎熊克哉)の再就職だったり、

潤平(仲野太賀)の成長過程をしっかり見ている弓子(木村文乃)の存在感の強さだったり、

つむぎとの面接を通して、楠木がマネージャーをやる意味に改めて気づかされたり…

話自体は大きく進展はなくとも、一人一人の登場人物の"その後"にもちゃんと触れて、

いろんな人物を絡める形でますます愛着が湧くような描写がされているので、

全く停滞感を感じさせません。

そうか。ファミレス=ファミリーレスキューの"ファミリー"は、

"マクベス・ファミリー"の事を指すんだなぁ。

(俊春の就職先はブラック企業ではないか不安ですが…)

 

楠木視点で今までのセトリを振り返っていた…という

コントの伏線回収の仕方も面白い。

つむぎとの出会いがあって、あのセトリを出せたんでしょうね。

 

でも、9話は「結婚の挨拶」、最終回は「新ネタ=引っ越し」となると…

3人がマクベスを再結成する事はもうないのかも…と思えてきました。

次回では、酒屋に本腰を入れる事を決意した潤平の家族に

奈津美(芳根京子)が挨拶に行く様子が描かれて、

最終回では、春斗(菅田将暉)もようやく夢を見つけて

それぞれ独立して行く内容が描かれるのかどうか…?

 

それにしても、春斗はどうするんだろう。

ネタ自体は笑えるものではなくても、日常生活で起こった出来事の落とし込み方の上手さとか、

伏線回収まで用意された内容を考えると、

演劇作家に転身してもアリな気はしています。

 

 

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コントが始まる 7話 感想|一番の理解者だった4人目のマクベス

 

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いつも流れるアバンのコントパート。

今回は割と何を表しているのかは分かりやすかったですね。

無人島はマクベス3人が思い浮かべる理想の世界。

富豪達に仕掛けられているらしいカメラは、「現実」という名の世間からの圧力。

全員金髪なのは、みんなで同じ方向を向きたいから。

で…潤平(仲野太賀)が無人島に持っていきたい物で何も書かなかったのは、

2人が必要な存在だと思っているから。

これだけ想像出来るほどちょっとしんみりさせられるコントだった分、

最後のオチが笹かまなのには笑いましたけどw

 

それにしても、「少しずつ動き始める音がした」かぁ…。

出会いと別れは本当に背中合わせって言いますよね…。

里穂子(有村架純)は「先輩」になろうと、就職に踏み切る形で

確実に前を向き始めているし、

つむぎ(古川琴音)と駿太(神木隆之介)はお互いに距離が近づき、

恋愛という名の幸せを手に入れようとしている。

潤平は本格的に家業に専念する事を考えている。

 

みんな「現在進行形」。

しかし、その中で春斗(菅田将暉)だけが唯一立ち止まっている。

そんな彼が、4人目のマクベスが車だと気づいて

ぐしゃぐしゃに泣くのは…もうこっちが情緒に訴えかけられっぱなしでした。

車まで去ってしまったら、近くにいてくれるモノはいなくなるんだな…と。

 

10年間乗ってきた車。

それは、何年前だか分からないカップラーメンの匂いが染み付いた車でもあり。

ソファのクッションはすり減り、照明も何度も酷使したけども、

3人がお笑いに対して諦めを見せなかったのと同じくらい、

10年間も故障しないでいてくれたタフな車でもある。

洗車をしながらその車に乗って出来た思い出話に花を咲かせる時に、

メインで語っている人をアップで映すのと同じくらいの分量で

いろんな角度から「車の全体図+3人」を映している映像は、

まさしく"4人で作り上げてきたマクベス"という感じがして、

別れの日が来ると思うと一気に切ない心地にさせられました。

 

初回で出てきた福岡のラーメン屋での話が1ヶ月前の出来事だったと知ると、

静かに流れていた劇伴は無音に変わり、

急激に「楽しかった時間は止まってくれない」現実味が襲ってくる。

でも、みんなで車の存在の大きさに気づいた時は、

寂しさを醸しつつも1つ1つの音階は高くて軽やかで、

別れを惜しむ3人をそっと励ますかのような劇伴を流し始める…という

さり気ない雰囲気作りの演出も良かったです。

もちろん、ナレーションもない、"3人だけの空間"でしかないシーンだから、

それをぐっと引き込ませるものにしたのは演技力の高さも大きいんですけども。

なんでもない会話なのに泣けてくるのも凄いし、

演出をあえて大人しくしたのは、役者さん達の演技に信頼を寄せているから…なんですよね。

 

確かに別れが訪れるのは辛いけど、

最終回ではみんな幸せな形で終われるだろうと私は信じてます。

車は里穂子が買っている可能性もあるかもしれないし。

もしかしたら、いろんな物事を吸収し、外の世界を経験してきた3人が

仮にマクベスを再結成したら、ネタが驚くほど面白くなっているかもしれない。

 

今でも実体験をネタに取り入れてはいるものの、

あくまでも"高校時代の延長"上にいる関係性だから、内輪受けの方が多くなってしまって

あまり人気が出ない状態だったんだと思いますしねぇ。

コントよりも、日常生活でのやり取りの方が圧倒的に面白いですからね。

 

 

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コントが始まる 6話 感想|キコリは誰かにとってのホコリ

 

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金の斧と銀の斧という、2つの選択を迫られるコントから始まった今回。

それに絡めて、主観的な目線から見た「こうありたい」気持ちと

現実的な目線から見た「こうしなければならない」気持ちで揺れ動く

真壁(鈴木浩介)と奈津美(芳根京子)の心情が描かれる形で、

物語が繰り広げられていく前半パートが印象的でした。

 

「18から28までと、これから先の10年は、別次元の苦しみだぞ」も、

解散するべきみたいに言うんじゃなかったという後悔から出た

「周りの雑音に流される事なく、愚直に夢を追い続けてきたお前らの方が偉い」も

どちらも真壁の本音だと思うし。

奈津美の、マクベス解散と聞いてホッとしたのも、

この人を支えてあげるのは私しかいないという優しさも嘘ではない。

 

しかし、現実と向き合わなければならない歳なのは事実で。

奈津美は潤平(仲野太賀)と付き合ってきた自分に迷いを見せ始め、

潤平は潤平で、奈津美と真壁のモヤモヤとした想いが、直接的にも雰囲気的にも伝わってしまい、

今までの努力やこれから先の未来をネガティブに捉え始めるようになる…。

 

そんな2人を説得しようと動いたのが、春斗(菅田将暉)って所が良いです。

前回の里穂子(有村架純)との会話で、10年間の頑張りが無駄ではなかったと

気づく時がいつか来るかもしれないと教えてもらったし、

学生時代から彼のどこが好きで、なぜ付き合おうとしたのか理由を知っている彼だから、

せめて2人には、マクベスとして頑張ってきた時の自分(彼)を否定して欲しくないっていう

気持ちが働いたんですよね。

 

下の名前を呼んでくれないと嘆く里穂子のくだりを

ラストでの唐突な「キコリ」呼びに繋げるのも、

なぜか潤平の後ろについていくように歩いていた奈津美の謎を

「壊れたルンバ」で回収したのも面白かったです。

今回のコントが一番、本編とリンクしている気がしました。

 

中でも伏線回収で感心させられたのは…

マクベスの"誇り"→"里穂子"」と役名の"キコリ"を関連づけた事。

ホコリとキコリで一文字違いだから、キコリの方も同じからくりがあるだろうと思い、

並び替えてみた結果が"コリキ"。

最初は「いや長◯小力か!」とツッコミたくなりましたが、

その漢字が「小力」である事に気づき、

ああ、もしかして「小力=小さい力=ささやかな力」に

かけているのか…と、名前の意味に納得出来ました。

 

例え、今までの努力が、社会で爪痕を残せなかったり、

周りに共感されないものだったとしても、誰かにとっては"誇り"。

梨穂子にとっては、絶望的な生活を送っていた自分に生きる希望を見出してくれた

マクベスの3人が誇りなのはもちろん。

真壁にとっても、可能性を信じて

10年間夢を追い続けてきたマクベス…教え子の3人が誇りだし。

奈津美にとっては、時間の流れとともに変わってしまう性格をあえて変えないよう徹し、

恋愛にも芸にも真っ直ぐ向き合ってくれた潤平の存在が誇りで。

そして潤平も、そんな不器用な自分についてきてくれた奈津美の存在が誇りである。

 

試練に立ち向かわなければならない時もあるし、現実的な事を言わざるを得ない時もあるけど、

"頑張ってきた"という事実自体を否定する事はない…。

5人とも確実にバラバラの道に進み始めようとしている図は、

「一つの時代の終わり」「関係性の崩壊の始まり」を想像させられるものですが、

何かが終わる事は決して悪い事ばかりではなく、良い事もあるんだよ?というのを

少しだけ明るく提示してくれたお話でした。

 

そして、中華店での5人の集まり、潤平と奈津美を説得するために尽力した時間、

餃子パーティ、実家の帰省と、

高校の青春時代のような日々を過ごしてきた春斗が、

いざ一人になった時に「自分は何もない」という現実を痛感する姿には、

大人になってからの「あの時は良かったなぁ…」と懐かしむ状態に通ずるものがあって切ないです。

星一つない夜空が彼そのものみたい。

でも、里穂子が言っていたように、何かがきっかけで転機が訪れる時は来ると思いますけどねぇ…。

今はまだ訪れていないだけで。

 

 

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コントが始まる 5話 感想|「変わらないでいて」は傲慢

 

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冒頭から、ジャンルも放送枠も放送時期も

全く関係のないドラマの話題を出す事になりますが、すみません。

個人的に凄く響いた部分があったので、書かせてください。

(個人的な話もちょろっと絡んでくるので、興味がない&本作の感想だけを読みたい方は、

「ここ」から飛んでいただいても構いません。)

 

私がドラマを見ては深く心に刻まれる台詞はいくつかありますが、

今回の終盤で描かれた春斗(菅田将暉)と里穂子(有村架純)のシーンで

すぐさま思い浮かべたのは、

陸王「彼らのゴールを、勝手に作るな」という台詞でした。

その時の背景は確か、一生懸命就職活動をしても全然光が見えず、

努力したって無駄なのだと嘆く息子に対して、

父(主人公)がエールを贈る形で出た流れだったと記憶しています。

当時の私も彼と大体似たような状況で、自分の取り柄は何にもないんじゃないかと思いつめて

毎日のように泣いていた日々を送っていたので、

その台詞を聞いて「ああ、今がダメだからこの先もダメって事はないんだな」と

元気付けられていました。

 

そして今回、その時の感情と重なったのが、

学生時代に華道部部長としてコンテストに全力を注いできた時の経験が

決して無駄ではなかったと気づいた里穂子のエピソード。

               

「こうやって過去の努力が報われる事があるんだって思う時に、

昔の頑張ってきた自分を始めて肯定してあげられる気がしたんです。」

努力は必ず報われるとは言い切れないけど、だからと言って必ず報われない訳でもない。

今はダメでも、人生という長い目で見れば経験が役立つ時が来るかもしれない。

そんなささやかな優しさを込める彼女があまりにも聖母に見えて、

春斗がその言葉で励まされたのが、表情やちょっとした冗談を言えるくらいになるまで

気持ちが和らいだ"変化"で伝わってきたと同時に、

彼女の存在が彼らにとっていかに大きいものかも痛感して

思わず泣けてきてしまいました…。

良かったなぁ。このやりとりを見れば、解散を決意するのも納得ですね。

 

確かに、マクベスとして10年間歩み続けてきた

彼らの"高校時代の延長"っぽい関係性は魅力的ですし、

傍から見たらしょうもないと捉えられそうな なりきりじゃんけんも、

修学旅行みたいに川の字で夜も語り続ける3人も、

そしてコントももっともっと見ていたいとは思うし。

カラオケの延長のくだりはマクベスそのものを象徴しているようで、

このまま延長し続けていて欲しい…とも思います。

でも、「変わらないでいて」を押し付けるのは傲慢に近い。

「高校の頃から時間が止まってんじゃねぇの?」と同じ。

 

春斗の言っていた通り、自分が進みたい道に行けて成功して、

初めて"余裕"が出来たから周りを俯瞰的に見られるようになったのであって、

そもそも生活が充実出来ていない人は自分の事で精一杯で

周りなんかとても見ていられないか、嫉妬ばかりの日々が続くかするはず。

勇馬(浅香航大)本人はそんなつもりで言ったんじゃないんでしょうけど、

今まさに芸人を続けるか諦めるかの大事な時期に差し掛かっている3人に

「何にも変わってないんだね」というニュアンスで

"不変"という名の現実を突きつけるのは嘲笑と一緒なので、

同情されたくないと怒りを露わにする春斗の方に同感します…。

で、「力になりたい」は余計なお世話ですよねぇ。ここには特にイラっとしましたw

 

先ほど里穂子のエピソードを挙げたように、解散=終わりではないし。

本格的に喧嘩して絶交するまで行かなかったのだから、

今は離れても、芸人を続ける人、全く別の職業に就く人と進路はバラバラでも、

何年か時を経て(マクベス再結成じゃなくても)3人でまた新しい"何か"を

築き上げて行けたら良いんじゃないかと、

今回の結末に対して前向きに捉えています。

つむぎ(古川琴音)の自立の件も里穂子にとっては辛いだろうけど…

なぜ自立しなきゃいけないと思ったのか、

もう少し大人になったら分かる日が来るかもしれないから。

今はまだお互いの気持ちが上手く伝わっていないだけだから。

 

まぁでも、1つの出来事の終わりが絶望の始まりでもあり、

自身が成長していくためのきっかけでもあるという事を描いている本作だから、

簡単にハッピーエンドにはしないんでしょうねぇ…。

 

それにしても、まだ5話なんですね。

もう8話くらいまで見ている気分(笑)

登場人物1人1人に奥行きが感じられるドラマは見応えがあります。

演技面のクオリティの高さが大きいけど、

今回で印象に残ったのは菅田将暉さんのキレた時の演技かなぁ。

ある程度のキャリアと知識を蓄えた先輩ヤクザ(?)から出る威厳が

ちらっと表情に表れて、一瞬ビビってしまいましたよ。

 

 

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コントが始まる 4話 感想|現実に向き合わせてくれる人

 

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あれはズルいよぉ…長年の時を経ての再会&打ち解け合うシーンに弱いのよ…(泣)

 

母が憎い存在ならば許さなくても全然良いし、むしろそのまま終わる方が多いと思うけど、

瞬太(神木隆之介)は許す事を選んだ。

それは多分、子供の頃は分からなくても、

大人になってから自分の非を認めるようになるまで成長出来た証だろうし。

当時は環境・人間関係云々でしつけに余裕が持てなかった事に対して謝りたくても、

もう会えないままここまで来てしまったから謝りづらいという母の不器用さにも

気づいていたからなのかもしれません。

 

燃え尽きるまで野球部のマネージャーに没頭し、そこで面倒見の良さが発揮されていたらしい

つむぎ(古川琴音)の過去エピソードが描かれたお陰で、

繋がりの濃い2人の代わりに説得し、母に会わせたキーパーソンになったのも頷けました。

「逆襲する最後のチャンス」ねぇ…確かに、感情をぶちまけるタイミングを失って

心の底でずっとモヤモヤし続ける人生を送るより随分マシですよ。

現実に向き合わせる言葉をかけてくれる存在がいるって、幸せな事だと思います。

 

一方で、真壁(鈴木浩介)の発した

「18から28までと、これから先の10年は、別次元の苦しみだぞ」もまた真理。

5人は今、人生の岐路に立たされている真っ最中なんですよね。

3人がマクベスを続けていくのかもそうですけど、

つむぎもこの先ずっとバーでマネージャーをやっていけるのかどうかも分からない。

彼女の性格なら尚更、経歴も経験値も豊富だから、

本人は望まなくともリーダーとして周りを引っ張っていく仕事を強いられる可能性は高い。

そして、このまま"現状"を保っていればいるほど、他人を優先してばかりで

自分で無意識のうちに心を壊してしまう危機も孕んでいる。

自分を受け入れてくれた職場と仲間に恩恵を感じて新たな物事に挑戦するのか、

はたまた、今の環境を断ち切って新たにマネージャーをやれる場所を探すのか…。

いつ何時でも、人生は分岐点の連続だと改めて思い知らされます。

 

つむぎとの出会いで大切な事に気づかされ、若いうちに肉親の死を経験し、

春斗(菅田将暉)と潤平(仲野太賀)は真壁の思ってもみない言葉で"現実"を突きつけられる。

一度にいろんな事が襲ってきて、悩まざるを得ない状況に立たされていく感じ…

ああ、これぞ、青春群像劇だなぁ…という充実感がありました。

 

「こうなったら良いなぁ」と視聴者が願う部分と、人生の厳しさを教える部分を、

どうやって調整すれば大衆に見てもらえるドラマに仕上がるかが

よく分かっている脚本ですね。

 

 

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コントが始まる 3話 感想|誰かのそばにある奇跡の水

 

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里穂子(有村架純)にとっての奇跡の水はマクベスであり、

俊春(毎熊克哉)にとっての奇跡の水は春斗(菅田将暉)だった…。

今考えてみれば、里穂子と春斗の出会いが初回の「水のトラブル」というコントを

生み出したのも、決して偶然ではなかったんですねぇ。

 

過去のブログを漁ったり、熱帯魚にも名前をつけたりしてしまうほどマクベスが好きなんて

随分物好きだなぁと途中まで思っていたけれど、

なぜそうなったのか、よく伝わってきました。

頑張るのが好きな自分を、無名でも独自の道を歩んで頑張り続けた3人と

重ねて見ていた部分があったんでしょう…。

 

今回の中で最もグッときたのは、

たこ焼きパーティで一斉に集まって語り合う日常的なシーンに、

自分も目の前の物事に向き合ってみようという"原動力"の意味合いをさり気なく持たせた事。

里穂子から語られた社員時代の過去、俊春が宗教に手を染めてしまった過去の

2つのエピソードを同時進行させている上に、登場人物のそれぞれの設定や関係性もかなり複雑で

話が散漫としそうなものを、

1つの空間で誰かの話を共有する事で

同時に"何か"に悩んでいる誰かも「案外辛いのは自分だけじゃないんだな」と励まされつつ、

そこから1人で解決させていくまでの流れで全てをまとめてみせたのが素晴らしかったです。

 

そして、繊細な優しさとコミカルさを持つ本作らしく、

「足を洗ったタオル」の笑いを誘うオチまでしっかり用意。

エピソード自体はシビアであまりにも笑えないものでも、全然重苦しく感じさせません。

むしろ、作り手が「辛い時こそ笑え!」というメッセージを訴えかけてきているようで、

涙を笑いに変える…これが笑いの真髄だよなぁと実感させられます。

 

本作、良い意味でドラマっぽくないんですよね。そこも魅力的です。

例えば、会社を辞めた時の過酷さを表現するために

社員時代の回想を挟んだり、1話での酔いつぶれたシーンを再び見せたり出来たと思うのですが、

(もちろん有村架純さんの演技力の凄さもあるのですが)

長台詞だけで当時の姿を思い浮かばせるなんて相当難しい技でしょう。

それに、言葉選びに関しても、"ドラマらしさ"と"ドラマらしくなさ"の塩梅が抜群。

何気ない会話の中に「着信履歴はね、心配してるよーってメッセージなんだよ」といった

如何にも名言っぽい真理を突く台詞を時たま入れるから、

逆にその台詞が刺さると言いますか。

 

またしても最高記録を更新してきたので、この面白さをどう文章にしようか迷った挙句

イマイチまとまりきれていない感想になってしまいましたが…(汗)

それくらい、よく出来ています。

今回だけで賞が取れそうなほどのクオリティの高さです。

 

 

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コントが始まる 2話 感想|感情を直接伝え合う3人に胸熱

 

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「あなたを選んで良かったわ」

うわ〜〜こんなん泣いちゃうでしょ…っていうか、私が泣いちゃったよ。

もう愛の告白ですよね、これは。

 

1本のストーリーとして既に成立している1話の内容に

瞬太(神木隆之介)と潤平(仲野太賀)という別の視点が加わった構成になっていたお陰で、

マクベスがなぜ10年もの長い関係を築き上げてきたのかがよく分かった回。

3人は高校からの腐れ縁という以前に、互いを戦友でもないし、リスペクトでもない…

言うならば、恋心に近いような想いを抱えてしまっているんだなぁと思いました。

潤平のアドリブ告白もそうだけど、瞬太の春斗(菅田将暉)に対する、

いつも自分を正しい方向に導いてくれるからそれを信じて待つという一途さも可愛らしいし。

自分が第一志望でなかった事にやきもちを妬いてしまう春斗も可愛らしい(笑)

 

恋に進路に、同じ青春時代を過ごした頃を知っている3人の関係はやっぱり素敵で。

私も数少ない友達の中で、今でも連絡を取り合ったりしているのが高校時代の友達で、

それもよく行動しているのが3人というのも一緒でさ…

だから、居酒屋で思い出話に花を咲かせて、心から笑える関係性が

一番理想的だなんて思いながら見てもいます。

 

そして、何が心に響くかって、感情表現を直接会って伝える描写がメインな所。

スマホは持っているけど、今時の若者ならLINEでメッセージを残したり、

Twitterで今の心境を呟いたりするものを、本作の登場人物にはSNSを利用するシーンが一切ない。

その代わり、自宅で揉めて、急いで自転車を漕いで、早く駆けつけようと走って

とにかく相手に生の言葉をぶつけようとする。

デジタル要素で言えば唯一ブログは出てきましたけど、

想いを残すツールは手書きの遺書もありましたしね。基本的にアナログなんですよね。

1話の感想で「昭和の世代の方が刺さりそう」と書いた理由としては多分ここにもあって、

SNSや、最近ではリモートが主流になっているドラマが増えている分、

本作のひと昔っぽい作りが逆に懐かしく映るからなのかな?という気がしました。

若者があえてアナログな手法をとるアンバランスさもクセになりますね。

 

芳根京子さんは前回の文化祭で観客として登場していたのは知らなかったですし、

中村倫也さんは全然コーヒーを入れそうにないくらい別人…。

で、次回は春斗の兄役として出演される毎熊克哉さんは、系統が確かに似ています(笑)

物語とキャスティング、どっちも充実出来そうですな。

これからどんどん化けるかも…?

 

 

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コントが始まる 1話 感想|昭和世代には特に刺さりそう

 

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今期のドラマは事前に公式サイトでチェックはしているものの、

TVで放送される予告や春ドラマ特集は見ないでおいたので、

本作は中でも得体の知れない感じがあったんですよねぇ。

「コント」だから、毎回1話完結型で描かれるのか、会話劇で楽しませるのか、

それともシニカルなタッチなのかと色々予想していましたが…

いざ初回を視聴してみたら、思ったよりも青春群像劇を

真っ直ぐ描く作りになっていて意外でした。

で…昭和の世代の方が心に刺さるんじゃないかなぁとも。

これから書くのは私が個人的にイメージしている"昔の時代の若者像"なので、

偏見だだ漏れになっちゃうかもしれませんけど、

大胆で思い切りの良い3人を見ていると、

歳を重ねた大人が懐かしむ若気の至りを見ているようでさ。

今時の若者だと、将来は"堅実"で"安定した"生活を送りたいという

ある意味保守的な人が多い気がして。

何か面白い事をやるにしても、リスクを考えずに勢いで福岡まで

ラーメンを食べに行ったり、その場のノリでお笑いコンビを結成したりするよりも、

SNSYouTubeなどの情報ツールを使って、

身近な所から視聴者が目を引く企画を作ろうっていう人の方がいそうなんですよね。

まぁ、いつブレイクするのか、それとも不発で終わるのか分からないギャンブル世界に

飛び込む人達の話だから、周りにそんな人がいない限りは

珍しいっちゃ珍しいと感じてしまうのか。

また、どの世代の芸人にも響くのかも。

 

構成は文字通り「前フリ」で、モノローグも多用していて、

コント→種明かし→おさらい と

「本作はこんな形でお届けしますよ〜」という流れの紹介のような印象が強かったため、

初回だけでは心が動かされる事はなかったのですが、

若者だけで物語を展開していくという面白さは味わえそう。

菅田将暉さん、神木隆之介さん、仲野太賀さん…

ちゃんと高校生っぽく見えたのも凄いし、

やり取りから"高校生活の延長線上""腐れ縁"な関係性なのが伝わってきたわ。

特に太賀さんは、ラーメン店での泣き笑いの演技が良かったです。

ああいう泥臭い演技も似合うんだ…

もっと歳を重ねたら、深みが増して化けそう…そんな可能性も感じさせました。

 

次回は中村倫也さんと芳根京子さんが登場されるとの事で、

今後もゲストが続々出てくるんでしょうかね。

何となく、間宮祥太朗さんと矢本悠馬さんも出てきそうな予感がしてますが…

それだと「べしゃり暮らし」からの刺客になっちゃうのかな(笑)

 

コントから始まる斬新なアバン、若者だらけのキャスティングからし

深夜の時間帯にやってそうなものを、

大人も子供も見るイメージのある土10枠で放送するっていう挑戦的な所が素敵です。

もう少し見守っていきます。

 

 

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