2022年夏ドラマ-石子と羽男一覧

石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー 2話 感想|"よく見ている"思いやりに救われる

 

 

なるほどね〜…そうきたか!と。

どんな真相が隠されているのか?という、ある種の謎解き感覚で楽しめるお話でもありました。

 

孝多(小林優仁)が塾を辞めたいと言ったのも、

木村佳乃さんというキャスト的に毒親の線も考えてはいたものの、

塾の意識高そうな雰囲気や、友達が「小学校受験で落ちたからもう後はない」と言っていた辺り、

実は生徒への教育よりも、数字=実績を多く出す事だけにこだわる塾講師の脅迫からきていて。

塾を辞めたくても責められそうで、

ずっと言い出せなくてあの時思いっきり言ったんじゃないか…

だから、そのうち塾の闇が暴かれるのかも…とか

想像していたんですが、全然そんなことはなく(笑)

結果的に互いを思い合ったが故の心優しい話に落ち着き、

いかに先入観を持って見ていたかちょっと反省するほどでしたw

でも、そんな"引っかかり"やキャストといったミスリードも要所要所に盛り込み、

"自分で選べないし、あの頃には戻せない"が共通点の

スマホゲームのガチャ課金」から「親ガチャ」へと持って行く

シームレスな流れも巧みだったお陰で、

今回も先の読めない、最後まで惹きつけられてしまう内容に仕上がったと思います。

 

前回は、大庭(赤楚衛二)が沢村(小関裕太)のために、

勇気を振り絞って訴えを起こす"友情愛"。今回は"親子愛"。

着地点そのものは違うものの、照らし合わせてみて気づいたのは…

どちらも根本的には、"相手をよく見ている"という思いやりから生まれる

優しさが注がれた話になっているんですよね。

今回で言えば、母子家庭の大変さを目の当たりにして、

手当一覧を紹介する形で手を差し伸べてみる石田(有村架純)とか、

孝多が実は母を想ってあんな発言をしたのだと気づいて、

あえて言及した羽根岡(中村倫也)とか、

もちろん、親身になって息子の面倒を見ている母・瑛子(木村佳乃)とか。

だから、最後には何だか気持ち良い感覚が残るのかもしれません。

 

そして…本作、物語を通して「どんな人だって声を上げて良い」の他にも、

「生きづらいあなたを助ける術は、案外日常のどこかに転がり落ちているかもよ?」

伝えたいんでしょうねぇ。

で、結果的に、それを繰り返し伝える事が、説教的ではなく、

自然と「現代社会を生きる人々にとって支えになるのは"法"」だと

訴えかけるメッセージになっている。

話のテイストに幅を持たせているけれども、芯の所ではブレが一切ない…

2話にして、中々手堅く作られています。


題材自体も、今回は「未成年のゲーム課金」で、

このコロナ禍で実際に増えただろうなぁと納得のいくもので、

毎回親しみやすい題材が取り上げられてるのも上手いですね。

登場人物のポップさで基本楽しめるけれども、

現代社会の実情もさり気なく落とし込まれていて、

「エンターテインメントを見ている」という満足感を覚える作品です。

 

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石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー 1話 感想|声を上げたって良い

 

 

ここ最近の「金曜ドラマ」枠は、全体的には良作に恵まれた枠とは言えるものの、

1/4の確率でハズレ作品が出てくる…といった印象。

しかし、今年に入ってからは期待ほど満足出来ない

(片方は期待を大きく裏切られた(苦笑))作品が続いた分、

正直、脚本家は確信が持てなくても、金10枠でお馴染みとも言える

塚原あゆ子監督×新井順子プロデューサーのタッグで、

今度こそ成功するか…?と大きな望みをかけていたのですが、

そこは期待通り「多くの視聴者(ドラマ好き)に好かれる金10が帰ってきた!」と

喜べる仕上がりになっていて安心しました。

久しぶりに、これなら間違いないと思える作品に出会えそうです。

 

喋りに勢いがあり、心地良いテンポを生む有村架純さんと、

屁理屈なのか繊細なのか、境界線が曖昧で不思議なオーラをまとった中村倫也さんの

お2人による会話劇を楽しめるライトな面を持ち合わせながらも、

物語の根底には、声を上げたくても怖気づいて中々上げられない弱者が

一歩前に踏み出してみるまでの"ほんのちょっとの勇気"が一貫して描かれていた。

サブタイトルの「そんなコトで訴えます?」は、

弁護士に頼りたくても、様々な事情で「いやいや…」とつい否定してしまいがちだったり、

職場の人間関係において、自分だけが我慢すれば

大事にならずに済む…とつい避けがちだったりする、人々の心の声を代弁する言葉であり、

本編こそが「『そんなコト』なんて思わず、誰だって声を上げて良いんだ」という

"アンサー"になっていたんですね。

 

全ての国民は法の下に平等である事、

「声を上げていただかなければ、お手伝い出来ません」などと、

本作を通して訴えたいテーマは何なのかを初回で明確に提示してくれたのも良かったんですが、

それ以上に、個人的に本作を好きになれそうだと思えたのは、

職場いじめによって引き起こされる侮辱罪、名誉毀損強要罪、暴行罪についても

理由を述べてちゃんと言及してくれた所。

こういうのって、ドラマ内でそれを想起させる描写があっても

視聴者がツッコむだけで終わり、

個性強めな主人公やドラマチックな演出を加えて、一見解決したように見せても

根本的な部分では解決出来ておらず、最終的に消化不良感が残るケースが多いので、

少しホッとした感覚を覚えたんですよねぇ。

石田(有村架純)と羽根岡(中村倫也)も同じく心に傷を抱えた弱者だからこそ、

この2人の背景にもどこかできっちり触れてくれるんだろうし、

救い上げたいと心から思える依頼人に寄り添っていく、

ささやかなヒーローになるまでの過程が描かれていくんだろう…という、

そんな期待を膨らませる初回だったと思います。

 

強いて言えば、あくまでも依頼人の大庭(赤楚衛二)視点で話が展開していったためか、

大庭を標的にしようとした動機は何だったのかが不透明で終わった事、

不当な理由で大庭を左遷した会社、特に支店長や彼に加担していた社員たちには

何のお咎めもなさそうだった事、

そして、組織的ないじめを行うような会社に居続け

同じく窮屈な想いを抱えていた沢村の今後には言及しなかった事など、

大庭以外の会社の人間、関係性については、脳内補完ではとても補えそうにないほど

ふんわりとした描写だったので、少し疑問は残りました。

最低限の説明があっても良かったのかもしれません。

ただ、終盤の方の、支店長を座らせ羽根岡がひたすら饒舌で語るシーンは

一見コメディちっくでありつつも、

見方を変えれば、「誰にでも訴える権利はある」を可視化しているとともに、

加害者である彼ももしかしたら

何かそうさせるに至った被害者でもあったのかもしれない?とも考えさせられたので、

こういった物語の奥行きを深めてくれるようなシーンを盛り込んだのは

中々上手い"業"でもあった気がします。

 

また終盤のシーンの話になりますが、夕陽を使った演出もグッと来ましたね。

羽根岡が怯えている中、一歩進んでみんなに声をかける石田の後ろ(右側)にあった夕陽が、

今度は、勇気を出せた事でわだかまりが解けてなくなった大庭と沢村の所にいて、

2人の雪解けを祝福するかのように真ん中に映っている。

根底にある温かさを映し出す演出は、塚原あゆ子監督らしいとも言えます。

石子と羽男、これからも2人の勇姿を見届けていきたいです。

 

 

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