自転車屋さんの高橋くん 7話 感想|2人の関係性に点滅信号が?

 

 

祖母・清子(大澤洋子)と山本(瀬口黎弥)のエピソード…

30代手前か30歳の子供に対して、両親が結婚を望む話は何度も見てきたけれども、

おばあちゃんが…っていうのは珍しいですね。

おばあちゃんの立ち位置からしたら、

孫がすくすくと育っているだけで十分微笑ましいはずなのに。

まぁ、孫が可愛いからが故の思いやりなんでしょうけど。

でもねぇ…「両親」じゃなくて「おばあちゃん」から言われるからこそ

中々しんどいものがあって、

実家を出るまでずっと一緒に住んでいたのか、

両親どちらかの実家に遊びに行く時だけ会っていたのかは分かりませんが、

教育も学費も将来の事も何もかも面倒を見てくれていた両親と違って、

おばあちゃんとなってくると「子供の時に可愛がってもらった記憶」がこびりついているために、

物事をガツンと言いづらい山本の気持ちにも共感出来てしまうんですよね。

 

世代が前であればあるほど、多様性に触れる機会がなかった事から来る発言にも

かなりキツいものがありました。

「良いお医者さん知ってるから。必ず治してくれるから」には、

率直な想い過ぎて、ひえぇ…ってなりましたね。

自分には納得しがたい・受け入れられそうにないからって、

自分の望む形へと当てはめようとしてしまうのは、

その世代だけとは限らず、どの人にとってもあるあるだと思います。

そんなシリアスな雰囲気の中、隣のテーブル席でずっとそばにいてくれた

遼平(鈴木伸之)の存在が救いでした。

 

遼平って…今更なんですけど、"物理的な"距離感は確かに近いものの、

"心理的な"距離の取り方には長けているんですよね。

自分がどのタイミングで介入して、どのタイミングで一歩下がるべきか?の

加減を分かっているというのか。

そこが魅力的だなぁと思ってます。

 

例えば5話での、たもつに会わせるために

朋子(内田理央)を実家に送り届けたエピソードにしても、

聡子(濱田マリ)との関係性を既に聞いていた分、

途中までは心配そうに後ろから見守っていたんですけれども。

聡子が泣いている朋子に近寄って、肩を支える様子を見た途端、

「もうこの2人なら大丈夫かもしれない」と確信したかのように

外に出てもらい泣きをする…というのには優しさを感じさせたのです。

 

そして今回では、山本が清子の手をとって向き合おうとしているのが分かった途端、

少し体の向きを変えて1人ジュースを飲んで、

あくまでも「1人で過ごしてますよ」という体(テイ)を作る。

でも、体を作りきれていないっていうのがまた良くて、

ジュースを多く口に含んで、その後は減っている様子が見受けられないのも、

席を外そうとしないのも、

山本が無事に最後まで自分の言葉を伝えられるかどうか、

彼の立場になって内心ドキドキしている遼平の気持ちが伺えるようで

印象に残るシーンでした。

 

唐突な「こうちゃん」呼びも、

張り詰めた空気を和らげてくれる良いアクセントになっていましたし(笑)

そんなギャップがあるから、朋子が惹かれてしまうのも頷けるんですよねぇ。

でも…今まではサブタイトルが「パン子、〜」から始まっていたのが、

今回だと「遼平、〜」になっていたのと、

後半の遼平のエピソードに朋子が絡んでいない辺りに、

2人の距離が離れつつある"サイン"を感じ取れてしまって、切ないものがありましたね。

中華屋からの帰りで、2人を引きで撮るカットが差し込まれていましたが、

その隅に映っている照明が1個だけ点滅していたのが…

まさしく2人の現状を物語っていたとも思います。

 

朋子は左の方向へと歩き、遼平は右の方向へと歩く。

引っ越しと「プレゼント何しようかな〜」で、考えている事も全然違う。

最終回では、このすれ違った状態を解決するのはもちろん、

山本の変化を目の当たりにした遼平が

父と再び向き合おうとする話も描かれるんでしょうし、何やら朋子の父も出てくるようで…?

30分でまとまるのかどうかはちょっと心配ではあるんですが、

果たしてどんな着地に収まるんでしょうかね。

 

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silent 10話 感想|好きでいればいるほど辛い

 

 

※今回の感想を執筆するのに4時間程度かかったくらいには(遅筆過ぎる!^^;)

文章がめちゃめちゃ長いです。

そして、絶賛ばかりの感想ではございません。

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初めにおことわりさせていただくと…本作は今期の作品群の中では

ずば抜けて"愛しい"作品です。

そして、これはただの個人的な見解でしかないので、

読者の皆様にとってはどうでも良い事かもしれませんが、

現段階では、初回から変わらず本作を「名作入り」にするつもりでいますし、

今年見てきたドラマにおいて、唯一の名作だとも思っています。

しかし…それを踏まえた上で、今回の内容を見て感じた

「こうすれば良かったのかも?」を先に書いておきたいと思います。

 

個人的には…今回で再び紬(川口春奈)と想(目黒蓮)の関係性にフォーカスを当てていた

内容になっていた所に、ちょっとした"今更感"は覚えてしまったのです。

もう少し言い換えると…「振り出しに戻った」が近いんでしょうか。

というのも、今回の1話前、つまり6〜9話とここ最近は

奈々(夏帆)と想をきっかけに、奈々と正輝(風間俊介)、

律子(篠原涼子)と想、律子と華(石川恋)、そして佐倉家と、

どちらかと言うと「紬と想の2人を見守る」側にいる登場人物を

1人ずつ掘り下げる話が続いていて、

各々の関係性を通して、全ての人々に共通する

恋愛を超えた"普遍的な愛"が描かれてきたんですよね。

私としては、この構成が「最終章へとバトンを渡す」には惜しかったのかなぁと思っていて。

"普遍的な愛"が数話描かれてから

1〜4話で取り扱われた"2人の恋愛"に本題がまた戻って、

しかもその話をたった2話でまとめようとしている。

2人の仲を育み、繋ぎ止めてきたのは"音楽"という存在で、

付き合っていると言われてもおかしくないくらい仲が進展しているように見えて、

2人でいる時間が多ければ多いほど「声が聞けない」事実をふと思い知らされては

辛い気持ちが募っていくはずなのに…

"現実"を目の当たりにし、その辛さを最終回前で吐露するのも

展開としては遅いんじゃないか?という感じは否めませんでした。

 

今までの話も「音のない世界」で生じる"壁"を軸に、

分かりたくても、その人の事をもっと知りたいと思っても

完全には通じ合えないし、伝わり切らなかったが故にすれ違いも起こってしまうという

言葉を交わす事の難しさを描いた"意味のある"内容になっていたので、

構成自体を特に否定するつもりはありません。

それに、今までのそういった描写の積み重ねがあったからこそ、

今回の、萌(桜田ひより)が紬に感謝の言葉を言うくだりや、奈々からの手紙、

時間が経って大人になった今だからこそ分かち合えた奈々と正輝の所に

湊斗(鈴鹿央士)がやってきて、「なんで別れたの!」なんて本音で話せるくだりに、

前回の佐倉家とはまた違ったそれぞれの"雪解け"を感じさせて、

「言葉を交わす事は難しいけれども、

どう向き合っていくかで"可能性"は少しでも残っているかもしれない」という点で

救われた心地にもなれましたしね。

 

そこで、思うのは…前回の歌詞カードのエピソードを

今回の後に持ってきても良かったのかな?って。

そして、今回の内容はせめて、9話で描いた方が

先ほど書いた「振り出しに戻った」印象もまだ薄れたのかもしれません。

紬と想の関係性も、5話で湊斗とのけじめを描き、6〜7話で奈々と向き合う姿を描いた上で

「正式に付き合い始めた」設定にしておいて…

付き合い出してから徐々に「もう"あの頃"のように好きな音楽を共有出来ない」

「もう好きな人の声が聞けない」事をお互い感じるようになって、

徐々に衝突が起きる変化を描いていって…。

う〜ん、その後の流れはどうすれば正解だったのかが更に分からなくなってくるので、

ただの思いつきで書いた文章として

軽く受け流して欲しいんですが…(汗)(ツッコミポイントも当然出てくるだろうし…)

紬と会わなくなってしまった想が、ある日律子から

「元気にしてる?」「って心配されるの嫌なのは分かってるけど、

想が元気でいてくれたら、お母さんは嬉しいから」というたった二言のLINEが来て。

それで思い立った想が帰省して、あのやり取りがあって、

萌と華と3人でCDを広げては歌詞カードをめくった時に、

「声が聞けない」現状は残念ながらもう変わる事はないけれども、それをゆっくり受け入れつつ、

「あの時の温もりも、思い出も、2人の間で培われた愛も全て失われた訳ではなくて、

今も"違った形"で確かに心の中で存在し続けている」事に気づいてから

紬の元に戻って、2人で腹を割って話し合う…

そんな流れでもアリだったのかと思います。

 

まぁ、こうして書いた事も、私が想と同じ経験をしていない以上は

安易な言葉にはなってしまうんですけどね。

でも…「もしも今回の内容を"今更感"を覚えさせないように描くならどうするか?」を

考えてみた次第です。

 

ああ…1つの事を書くのに、あまりにも文章が長くなってしまった…(汗)

要点を絞りきれない所は私の悪い癖ですね…。

という事で、気になった部分に触れるのはここで終わりにして、

今度はグッときた部分について簡潔に書いていこうと思います。

 

今回は、初回からずっと見てきた視聴者なら唸らずにはいられない、

たくさんの"リフレイン"がなされた回でもありました。

 

特筆すべき内容として…1つ目にハッとさせられたのは、

ポニーテールにしていた紬の髪を触ってはからかうシーン。

5話の時に湊斗が紬に教えていた「想のタイプの髪型」がポニーテールでしたし、

高校時代も同じ髪型をしていましたよね。

いたずらっ子っぽい表情を浮かべながら、何度も何度も触る想に対して

「ちょっとやめて!w ねぇ〜」って笑いながら注意する紬の2人の姿を見ると、

高校時代でも、たま〜にこうやってふざけ合っていた時が

あったのだろうな…というのが想像出来ます。

でも、だからこそ、"あの頃"とは同じにはならない残酷な現実を

ひしひしと感じてしまうんですよね。

一連の微笑ましいやり取りの後で、「や・め・て!」の次の言葉が

何を言っているのかが分からない苦しみが、無音の演出にして視聴者に共感させる形で

想目線で描かれていったのが、とにかく切ない気持ちにさせられました…。

 

そして2つ目は、踏切の向こう側にいる湊斗が「想!」とLINEで呼びかけて、

それに対して想が嬉しそうに振り返るくだり。

想の笑顔に、湊斗もつられて笑みを浮かべる様子を見て、

3話の終盤で回想として描かれた、湊斗のワンコのような笑顔…

あのカットを彷彿とさせた視聴者も少なくないはず。

あの時のような表情をまた見られた事が、私も嬉しくてしょうがなかったです。

と同時に、友達同士だったら今回のようにいつでも"あの頃"に戻れるのに、

肝心の恋人同士になると中々戻れないのは…

「音のない世界」で生きながら、それだけ「大切な人とこれからの永い人生を共にする事」

「大切な人の人生も背負う事」に対するハードルは高いという事なのだ…という"差"も

暗喩的に表現されていたように思います。

 

3話関連で言えばもう1つ、踏切も象徴的に描かれていましたよね。

私は当時の感想でこう書いていて…

・紬と遮断棒を同時に映したカットは、

今まで築き上げてきた紬と湊斗の関係性と、

"青春を共にした同級生"という、輝かしい思い出のまま時が止まっていた3人の関係性が

変わっていってしまうのを示すサインになっていて。

・鳴り響く音は、湊斗が今まで蓋をしてきた感情が

どっと溢れ出してしまうのを示すサインになっているのかもしれない。

当時は湊斗視点で踏切が絡められていたのが、今回ではそれが想に置き換わっていたのと。

加えて、いつの回だったか、「佐倉くん!」と元気に呼ぶ紬の声に、

イヤホンを外して返事をした想のシーンが、

実は音楽を聴いていた"フリ"だったのが今回の終盤で明かされて、

彼女が呼んでくれる自分の名前と、彼女の声がとても大好きで、

聞きたくて聞きたくて堪らなかった…といった2つの"段階"を作ってから、

ラストの「声が聞きたい」に落とし込んだのには、

なんて胸を抉る展開を作るんだ…と慄きましたね。

 

前々から書いていた事ですが、生方美久さんの脚本は、

とにかく、回想や過去エピソードを現在と鮮やかにリンクさせながら

視聴者に感情移入させる技に長けているんですよね。

冒頭では素人ながら、引っかかった所をつらつらと書いてしまったものの、

私はこの巧みさが好きで、惹かれて、最後まで応援して見続けてきたのです。

 

あ…ちなみに、SNSでザワついている例の番組はまだ見ておりません。

好評よりもモヤモヤしている意見の方が散見される辺り、

作り手の意図=情報が作品の感想・印象にも影響を及ぼしやすい私としては、

本作を完走してから見た方が自分のためだと判断しましたので…

(それがリタイアの決め手となった作品も過去にあったので…)

最終回を前にして「なんだ…」と考えをガラッと変えてしまう恐れがあると思うと、怖いのです。

"好き"は"好き"のままでいたい…という事で、

どんな答えを導き出すのか、明日じっくりと見守っていきたいと思います。

…感想は、またその日中には投稿出来ないかもしれませんが…(汗)

 

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エルピスー希望、あるいは災いー 9話 感想|実質、村井主人公回。

 

 

以前から好感度を上げてきた村井(岡部たかし)ですが…

今回はもはや、彼が主人公と言ってもおかしくない回でしたね。

存在感が強過ぎて、ラストシーンも含めて2人の印象があまり残っておりません(笑)

 

というのも、理由はあって…

最終回前になると、最終回で劇的に盛り上げるために

あえて一旦「嵐の前の静けさ」状態にした結果、内容そのものの見応えよりも、

次へと繋げるための引き延ばし感が強まってしまうのがあるあるだと思うんですが、

本作の今回の内容にもそれを感じさせてしまったんですよね。

いや、言葉通り「瞬殺で一撃しなければ反撃される」現実を描きたかったのは分かるし、

拓朗(眞栄田敦郷)に関しては、村井や佐伯(マキタスポーツ)を通して

動きを見せてはいたんですけれども…

何と言うか、ただ事件を追っているだけ…みたいな?

メインではないにしても、冤罪事件を取り扱っている以上、

最終章なら、松本死刑囚に関する新たな報道が出始めたり、過去の事件でも進展があったり、

弁護士・木村(六角精児)を登場させたりしながら

「いよいよ真相に迫る」緊迫した雰囲気を滲ませても良かったはずなのに、

今回はそのどれにも触れる事なく終わったが故に、

ちょっとした停滞感を覚えてしまったんだと思います。

恵那(長澤まさみ)に至っては、

終盤まで影を潜めるような立ち位置になっていたのが気になりましたしね。

 

あと…劇中で「YouTuber」というワードが出てきたのをきっかけに、もう1つ疑問に思った事も。

本作の時間軸って2018年から2019年になっていて、

3年前とは言え、一応現代の物語ではあるんですよね。

そこで、今更ではあるんですが…その頃なら既にネットニュースや動画配信サイトも

"情報"を伝える場としては主流になっている訳で(個人的印象)、

それなのに、なぜ彼らはテレビや雑誌といった昔ながらのメディアで

冤罪事件を取り上げてもらう事にこだわるんだろう?とも思えてしまったのです。

(「フライデーボンボン」を通して反響が集まった描写はあったものの)

SNSも栄えているのだから、ネットも利用すれば

もっと影響力も大きかったかもしれないのに…と。

まぁでも、これは恐らく、脚本家の渡辺あやさんのインタビュー↓

〈朝日新聞〉「エルピス」脚本家・渡辺あやさん 6年越しの脚本に込めた危機感と覚悟、東京では書けないこと

によると、プロデューサーの佐野亜裕美さんと企画を考え始めて一度白紙になり、

本作の実現に至るまで6年かかったとの事で、

もしかしたら元々の時間軸も2010年代初頭〜前半に設定されていたって

可能性もあるのかもしれませんけどね。

そこだけ、若干惜しかったかも…と感じて、書いてみた次第です。

 

ただ、消されたかもしれない亨(迫田孝也)の死や、

冒頭でも触れたように、再び「飲み込めない」状態に陥ってしまった

恵那の苦しみややるせなさがじっくり描かれたお陰か、

ラストの村井の暴れっぷりには、ちょっと気持ち良いものがありました。

村井については、後で冷静に考えてみれば、この件でマスコミ業界から追放されないかと

ソワソワさせられる部分もあるんですが、恵那目線でつい見てしまって。

スタジオを映すためのオレンジ色の照明も良い仕事をしていて、

彼女にとって彼の存在が"希望"となるのだろう…と思わせるにはぴったりでした。

 

最終回、どうまとめるんでしょうねぇ。

今までの作風を踏まえれば、巨悪を完全には倒せず、

冤罪事件は解決はしたもののちょっとした苦味が残る…

そんな終わり方になると予想しておりますけども。

 

 

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PICU 小児集中治療室 11話(最終回) 感想|何もかも欲張り過ぎ…に尽きる。

 

 

あれだけ引っ張った割に、圭吾(柊木陽太)…最後にはあっという間に元気になってましたね。

本来30分拡大で想定していたのが、急遽予定が変更になって

通常時間内に収めなければならなくなった結果、急いで巻きが入った感が凄い。

手術から回復までの間がなさ過ぎて、一瞬、もしもの世界かと思えてしまいましたよ…(汗)

っていうか、そこまでやるんだったら、

どうせなら優里(稲垣来泉)と教会で再会するシーンを盛り込んでも良かったような。

あえてそういった"ゴール"を設けなかったのは、

続編を作りたいから…という意図もあるんでしょうけども、

それにしても、消化不良で終わってしまった気がします。

 

「今期ナンバーワン!」「命の尊さや医者の葛藤を丁寧に描いた秀作だった」といった

絶賛コメントが多く散見された本作ですが、

個人的には、最後まで評価をするのが難しく思える作品でした。

…今までの感想を読んで下さった方なら分かっていただけるかと思いますが、

決して微妙って訳ではなく、基本、好意的には見ていたのです。

同じ「医療ドラマ」でも、スーパードクターが活躍する物語よりも

医者の等身大な部分を描く物語の方が好きですし、

微妙な印象の方が強いのなら、こうして感想を書き続ける事もなかったですからね。

でも…秀作と言いたくても言い切れなかったのは、

登場人物の多さと、設定の整理整頓不足…この2点が原因だったと考えています。

 

前回の感想でも書いた通り、最初から4人の青春群像劇として本作を描けば、

何を主体とした物語なのか曖昧に映る事もなかったんじゃないでしょうか。

そうすれば、最終回あるあるの大規模災害エピソードも、

結果的に植野(安田顕)を残留させるため"だけ"に用意されたものには

見えなかったのかもしれませんし、

「子供に向き合う姿を描くドラマでどうしても盛り込む必要があるの?」という

あざとさも感じさせなかったのかもしれません。

 

綿貫(木村文乃)の裁判の件もすっかり忘れているくらいで…

渡辺(野間口徹)が急に改心していたり、

裁判の結果が台詞でさらっと済まされたりしていた辺り、

渡辺のPICUを巡る陰謀論も、綿貫と渡辺の因縁の関係も、

なくても成立出来る話ではありましたよね。

放送してから約24分後の、1台のスマホに各々の食べている姿が4分割で映される形で

「みんな闘っている」を静かに表した演出が印象的だった分、

あんな風に"絆"や"もがき"の表現に工夫を凝らせるのならなぜ…とも思えてしまったのでした。

 

他のドラマにも触れちゃいますが…

本作だけに留まらず、「ザ・トラベルナース」や「祈りのカルテ」も同じで、

今期の医療ドラマはどれも欲張った結果、本末転倒で終わってしまったような気がします。

前者は本作と同様、描くべき登場人物を増やし、

主役ではない静の存在感と凄味を強調し過ぎたが故に、

主人公の成長ぶりにイマイチ実感が湧かず、

当初にはあったコンビでの痛快劇も薄まってしまった。

で…後者は、研修医ドラマならではの青臭さや未熟さ、親子での心温まる物語が

本来の「カルテから謎を読み解く」というコンセプトを食ってしまったのかなぁと。

 

何を1番の見所にしたいか?を設定する。

厳しい事を書かせていただきますが…医療ドラマだけでなく、

最近のドラマはそれが出来ていない作品が多いように思うんです。

本作だって、初期設定さえ定まっていれば全然印象が違っていたんですけどね…

う〜ん…登場人物は好きだっただけに、残念感が残りますね…(泣)

 

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作りたい女と食べたい女 8・9話 感想|もう"答え"は見えた模様。

 

 

8話

 

体調不良で寝込む事になってしまった野本さん(比嘉愛未)。

このシチュエーションは2話でもあった訳ですが、

同じような話を再び描く事にちゃんと意味を持たせているんですよね。

春日さん(西野恵未)に対して、

当時は"何となく"良いなぁと感じていたものが"確信"に変わる…

今回は、そんな野本さんの「こうありたい」という決心を、

回想も絡めながらゆっくり描かれた内容になっていた気がします。

 

第2週までの頃は、特に予習していなかった分

同性愛が絡む話になると思って見ていなかったので、ちょっと動揺してしまったんですが。

第3週かつ最終章(?)のスタート回でもある今回の内容を見る限りは、

あくまでも「女性同士の恋愛」にシフトしていくのではなく、

最後まで「生きづらさを抱える女性が居場所を見つけるまで」を

描き切る方向になりそうで安心しております。

 

あと…幼少期についても1話分使ってしっかり触れていたので、7話の感想については少し撤回。

最初は仲良かった友達が「みんなそうしてるから」の世界に飲み込まれていって

いつしか独りぼっちになってしまうという、

学生時代の野本さんが抱えていた苦悩や心細さに

焦点が当たった前半のエピソードが効いていました。

春日さん(西野恵未)が別れ際に「また来ます」と言ってくれたのも安心感がありましたが、

その"サイン"として自分の上着を野本さんにかけるというのがね…

野本さんと同じように、「ああ、この人となら大丈夫。そばにいてくれる」

そんな風に思えて、じわっと温かい気持ちになれたんですよねぇ。

 

9話

 

前々から思っていた事なんですが、森田望智さんが

同僚・佐山役にしっくり来るんですよねぇ。

野本さんがカミングアウトしても、言葉を慎重に選びながら変に気遣う訳でもなく、

「へぇ〜そうなんですね」みたいな感じで変わらずフラットでいてくれるし、

「私は男性が好きなんですけど」と言う事で、

男女の恋愛がスタンダードだとは思っていない気持ちを示してくれる所も良い。

「妻、小学生になる。」でもOL役で、

隅の方に追いやられ気味の主人公に唯一好意を持つキャラとして描かれていたのもあって、

この役を演じられるのにも説得力を感じさせます。

 

自分の中で溜め込んでいたモヤモヤを誰かに吐き出せて、

きっと肩の荷が降りたのでしょうね。

バスから降りた時にちょっとだけ野本さんの足音が弾んだ気がして、

こちらも嬉しい気持ちになれました。

多様性を理解してくれる人が身近にいると、心強いものですよね。

 

そして、今回のご飯はローストビーフ丼。

家でローストビーフ丼…羨ましい(笑)

黄身が乗っかるのを口を半開きにしながら見つめていて、

「いかんいかん!閉じなくちゃ」って後で気づいて閉じるという

春日さんのリアクションがかなり「分かる」。

あまりにも美味そうで、よだれが出そうになったんじゃないか?とも思える表情でしたw

 

春日さんも、元から気の利いた優しい人ではありましたが、

ローズマリーを持ってきたり、ワインを買ってきたりと積極性が増してきている辺り、

野本さんとの食事の時間を本当に楽しみにしているんだろうなぁというのが伺えます。

 

次回は最終回ですが、もうお互い"答え"は見えている様子。

このまま、本作から醸し出る心地良さを、最後まで楽しみたいです。

 

 

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PICU 小児集中治療室 10話 感想|ラストはフジ医療ドラマあるあるの展開に?

 

 

今まで以上に、武四郎(吉沢亮)・悠太(高杉真宙)・桃子(生田絵梨花)・舞(菅野梨央)

による、幼馴染の間にある根強い絆や友情が描かれた今回。

 

当時武四郎に助けられた悠太だからこそ言える「俺だけは、お前に絶対に気づくべきだった」

といった台詞があったように、

本作って、ドラマを魅せる上で重要だと考えている"人間"や"人間模様"の描写に関しては、

合格点を余裕で通過するくらいにはよく出来ているのです。

山田先生(イッセー尾形)のささやかな鼓舞も、純粋に胸を打たれましたしね。

ただ、それだけに、今回の内容を見ていて思うのは…

最初から4人の青春群像劇をテーマにした作品にしておけば、

PICUが出来るまでを描いて…主人公の成長期も描いて…

朝顔」を彷彿とさせる家庭パートも描いて…医師のちょっとした陰謀論も描いて…と、

結局何を主軸にしたいのかが曖昧な印象を持たずに済んだのではないか?という事。

 

というのも、今回だけに関係なく「幼馴染4人組」が強調される事が度々あるんですよね。

今では桃子以外の3人が同じ丘珠病院に勤めているとは言え、

当初は悠太は別の病院の人間だったし、

桃子は変わらず、医療に全く絡んでいない職に就いている。

なのに、PICUでの患者エピソードと並行して、それぞれの絡みも描かれている。

個人的にはそこがずっと引っかかっていて、

「PICUって、小児科の病院でしょ?」なんて、幼馴染の描写に

あまり必要性を感じていなかったのです。

 

PICUの医療体制がどうとか、ドクタージェットの常駐がどうとか、

そういった"未完成"の設定は取っ払って…いや、そもそもPICUを舞台にするのもやめて。

4人とも同じ病院に配属されている事にして、

自分たちより長く生き、人生経験が豊富な母親のふとした言葉に時に影響を受け、

先輩医師たちや先輩看護師たちに見守られながら

一人前の医師になるべく奮闘する新人群像劇に仕立て上げていたら、

"連続ドラマ"としては十分に成立したと思っています。

もちろん、4人の出番が平等だと散漫になりがちなので、

あくまでも武四郎をメインにする形でね。

 

作り手はきっと、4人をどう活かすかでずっと迷われていた事でしょうけど…

どこに重きを置くかを考え直してみるだけで、

同じスタッフや役者さんでも、全く別作品に仕上がったのかもしれませんね。

こんな事言うのもなんですが、「人間ドラマ」としては素晴らしい部分もあっただけに、

整理整頓が出来ていないまま、全て使っちゃえ〜!感が内容に滲み出ていたのが惜しい…

そんな印象が残る作品でした。(もう総括っぽくなってしまってますが(笑))

 

で、ラストの展開は…ちょっとやり過ぎじゃないですかねぇ。

最終回直前に災害を盛り込んで大規模な内容にするのは

フジテレビの医療ドラマあるあるではありますが、別に救急医でもあるまいし…(汗)

圭吾(柊木陽太)の手術の成功を感動的に見せるため…なのと、

大勢の患者を救って渡辺(野間口徹)率いる北海道の医療団体に評価され、

植野(安田顕)を存続させるためのエピソードなんでしょうけど、

突然異物が混ざり込んできたようで、困惑してしまいましたよ…。

 

 

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自転車屋さんの高橋くん 6話 感想|ちょっとだけ変われた山本に救われる

 

 

※12/9放送分です。いつも投稿が遅くてすみません…^^;

 

まさか、山本(瀬口黎弥)があんな形でナイスアシストしてくれるとは思わなんだ。

前回の、同僚の遅刻の件で一刀両断する朋子(内田理央)の様子を

目の当たりにする姿が記憶に残っていて、

これを機に彼も変わり始めていくのかもしれないな…とは察してはいたけれども、

そこで得た"気づき"を、しかも「輩」呼ばわりした事にも触れながら

行動ではっきり示してくれたのには、グッとくるものがありました。

 

でも、相手にとっては「え?」と思われているのを自覚していない所は

相変わらずって感じでもあり(笑)

見違えるほど変わったんじゃなくて、ちょっとだけ変わった…

この変にドラマチックにしないさじ加減が良いんですよねぇ。

朋子の言葉「大切にすべきなのは、世間や周りの目じゃなくて、自分の気持ちなんだって」

を聞いて、顔を逸らして少し気まずそうにする山本も印象的。

自分がいかに世間に囚われながら生活しているかハッとさせられて、反省して、

また成長していくんでしょうね。

 

そして…今回の内容で、個人的に最も好きだったのは、

遼平(鈴木伸之)の部屋で朋子と2人で話している時に、

風で揺れているカーテンの様子も画面の左側に収めたカメラワーク。

本当にささやかだし、考え過ぎかもしれませんが、

それが何だか「苦しんでるのになんでクソ上司を庇おうとするんや」

「遼平くんの事が心配で言ってるのに、なんで分かってくれないの」って、

最初は自分の想いでガッチガチに塗り固めていたお互いの心を解かしてくれる

隙間風のように映って、不思議と温かい気持ちになれたのです。

窓に映っている外の木々も揺れていた辺り、恐らく自然に吹いた風だと思われます。

カーテンがひらひら揺れるごとに、2人も打ち解け合っていくというシンクロ具合…

どこかの回の終盤にあった、夜風で髪がなびいている朋子のカットもロマンチックでしたが、

本作、風をかなり味方につけている気がしますね。

 

おしゃれな店で服を買い、開放的な美容室でパーマに挑戦し…といった一連の流れで、

そう言えば制服姿の朋子ばっかり見ていたっけなぁとも思い知らされました。

だからか、凄く新鮮です。

特に美容室に関しては、今まで我慢し続けてきた彼女なら選ばなそうな内装で、

あそこを選んだ辺りに、自分を変えたい、変わりたいという意志を感じさせました。

 

山本や貴美子(長井短)との交流を通して、2人が自分を見つめ直すまでの過程を

じっくり描いたお話だったと思います。

「俺の事嫌いになったけ?」はピュアさが滲み出ていてめちゃくちゃ可愛かったです(笑)

恋愛モノのこの手の内容は、"すれ違い"を意識し過ぎなのか、

本音を共有して仲直りするという

先が読める展開を意図的に引き延ばす事が多いので、あまり惹かれはしないのですが、

次週を跨がず今回で解決させたのにも安心しました。

 

まぁ、次回は次回で、また何かありそうですが…

退職して岐阜にいる必要がなくなったという設定を活かしての、

最終回直前では定番の「遠距離問題」を描いていくのかもしれませんね。

 

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拾われた男 10話(最終回) 感想|待って、お兄ちゃん!

 

 

武志(草彅剛)の言う「ごめん。ごめん。」の言葉に、うっかり涙が…。

15年ぶりに再会した両親を前にしたからなのか、

少年っぽいあどけなさが凄い滲み出ていたんですもん。

やっぱり、両親がそばにいると、その温もりが心地良く感じられて

いつの間にか子供に戻ってしまうものなんですね…。

武志が帰国して、あの桜の木の下で家族で太巻きを食べて…

そんな昔からの風習を通して、子供の頃から抱えていた「やっぱり苦手やわ。あの空気」を

再び思い出す諭(仲野太賀)の気持ちの変化も印象的でした。

 

そして、もう1つ印象に残ったのは、武庫川駅を使ってのラストシーン。

"昔みたいな"事をまた経験したからこそ、あのラストに繋がったのかもしれませんね。

駅の構造だけでなく、ホームもフルに活かしていて、見応えのあるシーンになっていました。

どうしても武庫川駅周辺が舞台でなければならない理由があるのかなぁ…と思いながら

今まで見続けてきましたが、最後を見て、なるほど…と。

 

駅に入ると奥の方に、線路に沿った細くて長い歩道が続く入り口があるんですが、

そこが何だか、秘密基地に行くための抜け道みたいで

子供心がくすぐられてしまったんですよね。(だから追いかけるのも頷けるというか。)

で…歩道自体は、出発点(武庫川駅)が"現在"なら、

到達点(向こうの土手)は"未来"にも思えるし。

その中間に位置するホームに武志がいるとなると、

未来へと進む諭を陰ながら見守ってくれているようにも思えたのです。

 

「お兄ちゃん」には二度と追いつけないけれども、

「兄貴」なら、故郷に帰ってきた時に、ホームでまた会えるのかもしれない。

待っていてくれるのかもしれない。

ホームには確かに「兄貴がいた」…アメリカ出発前に彼が野本(片山友希)と交わした

自分の話と共に、思い出として刻まれて行くのでしょう。

そして、いつものナレーション「…というのは、また別の話で」で締める。

結(伊藤沙莉)や福子(永尾柚乃)や長男、両親や武志の存在に支えられながら

これからも松戸諭の人生は続く…そう思わせるには、中々洒落た締め方だった気がします。

 

自販機の下に落ちている飛行機のチケットを拾った所から物語が始まった本作。

当初はドラマチックに、松戸諭の「ツイている」人生を描くのかと思いきや…

最後まで見てみれば、人生は"奇跡"と"後悔"の繰り返しなのだという事を

じっくり描く作品になっていました。

でも何と言うか…主人公が役者の設定なので、壮絶には見えるけれども、

どこか良い意味でありふれてもいるような?

もちろん、チケットの持ち主が事務所の社長で、おまけにスカウトしてもらえた!

っていう経験は中々出来ないだろうけど、

長年過ごしてきた街で、夢を諦めてしまった者から恋が実らなかった者、

自分にとっての後の支え人になってくれる者まで、いろんな人との出会いと別れを経験したり。

なんであの時あんな事言ってしまったんだろう…っていう後悔を後々になって抱えたり。

武志も同じく、"あの時の"諭や両親に謝れなかった事がずっと心残りで。

立派な人に見えて、みんなたくさんの悲しみや悔しさを引きずって、

時に思いがけない出来事に救われながら、何とか今を生きているんだろうな…

という片鱗が度々見えたからこそ、

自分自身の人生と重なって、刺さる部分があったのではないかと思います。

 

地上波で見られて、本当に良かったです。

そして、脚本家・足立紳さんが来年下半期に執筆される朝ドラ「ブギウギ」にも

期待が膨らみますね。

朝ドラには魔物が潜んでいる(個人的印象)ので、どんな脚本家さんでも

ハズレの週なし!は難しくはあるんですけど…

それでも、素敵な作品を作って下さると願いたいです。

 

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エルピスー希望、あるいは災いー 8話 感想|サブタイトルの真意が分かった気がする…

 

 

「現実的だと思ってる」

まさかまさかの…です。恵那(長澤まさみ)からこの言葉を聞きたくなかったですね。

テレビを見ながら思わず「うわぁ…」って言っちゃいましたよ。

私たちには番組を守る責任があるので…って感じで一歩引いて、

自分と相手とで境界線を分けるような淡々とした喋り方が

滝川(三浦貴大)から移ってしまっているのが伝わってくる辺り、

彼女はとうとう、忖度が蔓延る世界に飲み込まれてしまったのだというのが

このシーンから分かります。

前回の彼女の描写的に、そうなるのも時間の問題じゃないかとは察していましたが…

それでもかなりの衝撃を受けました。

 

かつての恵那の暴走にしろ、今回の、揺るがぬ証拠を手に入れた

拓朗(眞栄田郷敦)の孤軍奮闘っぷりにしろ、

恵那と拓朗の二者間での立場の変化を描いての"転調"で

毎回視聴者を引きつけていっている作風から考えれば、

そのままの勢いで"痛快劇"で魅せる事だって出来るはずなんですよね。

分かりやすく痛快劇に仕立て上げてしまえば、盛り上がるのも目に見えているし、

そこがゴールになるのでプロットも作りやすいかもしれない。

でも…本作は「あえて」寸止め状態で終わらせ、

同時に、得体の知れない巨大な何かに脅かされながら過ごす現実も描いている。

真相が世に伝わるまであと一歩って所を邪魔してくるのは、

いつも正一(鈴木亮平)のような、

何を考えていて、どこでどう動いているのかが読めない存在なのだと

さり気なく示す姿勢にブレがないのが、妙な余韻を残すのです。

 

ただ、本作…もう1つ、さじ加減が上手いなぁって思っているのは、

"リアルな現実"を描こうとして、脚色し過ぎていない所。

例えば今回は、拓朗が調べてきた事が

大人たちの汚い手によって簡単に奪われてしまう残酷な部分も描かれた訳ですが、

それだけでなく、最後の最後で「もしかしたら…」と思える

ちょっとした希望も描かれました。

「努力は必ず誰かが見てくれている」じゃないですが。

日々を生きている以上、人の周りに寄ってくるのは味方ばかりではないけど、

必ずしも、敵ばかりでもないと思うんですよね。

誰か1人だけは拓朗を認めてくれている…という事実にホッとします。

 

その人物が今度演じる役が武田"信"玄なのも、何だか粋なチョイスでしたね。

そして、ここまで見てきて、ずっと考えていたサブタイトル「希望、あるいは災い」の

真の意味は、今回のような内容を指すんじゃないかとも思わされました。

冤罪事件を追えば追うほど、様々な人間関係が構築されていっているのを

拓朗はまだ自覚していない気がします。

劇中の拓朗のモノローグで「いつの間にか僕は、びっくりするほど敵を増やしていた」と

ありましたが、びっくりするほど"味方"も増やしているんじゃないかと信じたいです。

 

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アトムの童 9話(最終回) 感想|宮沢ファミリーオフィスとは何だったのか。

 

 

ええぇ…何のための10分拡大??

小山田(皆川猿時)と海(岸井ゆきの)による鬼ごっこや、

ステージを全てクリアした後に流れる

エンドロールっぽい長尺回想(しかもなぜか公哉の出番はカット…)に

時間を割いている暇があったら、

小山田がその後どんな処分を下されたのかとか、

明らかに裏で手を回していた堂島(西田尚美)と宮沢(麻生祐未)を逮捕するとか、

「ゲームの可能性に負けた側」の悪役をきっちり成敗する描写をしてよぉ…(滝汗)

 

那由他(山﨑賢人)が力説していた「ゲームで人を夢中にさせたい」事と、

SAGASのゲーム事業を残したい事は、買収を目的としている株主総会では

同意義にはならない気がするのに、多数決であっさり可決されちゃうし。

株を大量取得して興津(オダギリジョー)を苦しめてきた宮沢は

「少し楽しみですね…SAGASのこれからが」などと言って、

最終的には、可能性を見出している"良い人風"になってしまう。

第三の敵「宮沢ファミリーオフィス」を登場させた割には、

どこもかしこも中途半端で終わっているから、

視聴者に蛇足だと思われてしまうんじゃないでしょうか。

 

分野は全く違うものの、那由他と同じくクリエイティブな仕事に就いている私としては、

彼のモノづくりに対する情熱の深さと純真無垢さに、

がむしゃらに突っ走っていた学生時代を思い起こさせて、いつも元気と活力をもらっていたし。

今にも天下統一してしまいそうな"勢い"のある劇伴には、胸を高ぶらせていて。

その2つが視聴意欲に繋がって、「面白くなりそう」と思わせてくれただけに…

内容がそれに伴っていなかったために、最後まで「面白くなりそう」止まりで

終わってしまったのが、本当に残念でなりません。

 

これはドラマ全体にも言える事ではありますが…特に最近の日曜劇場は、

登場人物とその関係性、目指すべき方向性と、あらゆる設定の描写不足を補うかのように

本来盛り込む必要のない要素を盛り込んだ結果、

物語の本質を欠いてしまっている作品が続いているような気がしております。

(例えば、「ドラゴン桜」「日本沈没」「DCU」「オールドルーキー」とか…(汗))

本作だって、シンプルに、当初のコンセプト通り、

アトム玩具とSAGASの因縁を中心に、

「ワクワクするゲームでSAGASに勝つ」を描くまでの物語で良かったはずなんですね…。

そこに、別ドラマとして成立しそうな、一般的には小難しいイメージを持たれる

経済要素を取り入れるから、本作を通して何を描きたいのか?が分かりづらくなってしまう訳で。

ゲームの持つ可能性や面白さを、ゲームに疎い層でも理解出来るような

描写の積み重ねをコツコツと行っていれば、迷走する事なんてなかったと思うのです。

 

正直、私が最近の日曜劇場で心から面白いと思えた作品は、

2020年夏クールの「半沢直樹」くらいです…(泣)

企業買収やら、逆転劇やら、明らさまな黒幕の存在やら…

正直、もうそろそろ日曜劇場も、完全にリフレッシュしていただきたいと思えてしまいますね。

 

次回作は堤監督の作品なので、その点では、独自の世界観にはなるんじゃないか?

とは期待していますが…果たしてどうなるでしょうかねぇ。

 

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