事前情報を仕入れる際にあたって、「母が肝臓を患い倒れる」「生体肝移植」
「選手生命を失う」などのワードから、再び泣かせ系の闘病物語路線に戻るのかなぁ…
という不安を抱えたままの視聴となりましたが。
まずは、その不安を払拭出来る作りになっていたのは良かったと思います。
本作のテーマはあくまでも「親子の絆」。
それを重視したからか、主人公が弱音を吐いて泣きながら闘病するだとか、
家族に囲まれて母親が亡くなるだとか、形見を持ってレースに挑むだとかの
感動シーンを狙わなかった所は好感が持てましたし。
主人公の設定自体も本来の負けず嫌いの性格が効いて、
崖っぷちに立たされるほど燃えてしまうような
前向きなキャラクターに描かれていた所には、大分救われた気がします。
ちょっぴり不安で、それでも壁に挑んで…という健気な面も持ち合わせる姿は、
相葉雅紀さんの役柄とぴったりハマっていた印象でした。
けれども、その「親子の絆」を重視した結果、
肝心の選手として復帰して行く過程がナレーションや紙芝居で片付けられてしまったのは
ちょっと勿体なかったかなぁ?と。
そこを描かないと、終盤の「ついにこの日が来た」シーンもイマイチ盛り上がらず…。
崇史(相葉雅紀)の夢であるという母・純子(薬師丸ひろ子)が最大級の笑顔を見せる
くだりは最後までとっておくにしても。
せめて「親子の絆」がテーマならば、ナレーションで進められた
「躍進して優勝した」シーンだけは、崇史が息子として親孝行をプレゼントする姿、
純子が涙して抱き合う姿などを映像として見せるべきだったと思えてしまいました。
その他、崇史と新谷(田中圭)のライバルとしての関係性や、チーム内での絆も
あたかも「スポーツドラマ定番ネタ」を盛り込んでみたかのような印象で
全体的に薄い作りに感じ…。
恐らくコンセプト的には、スペシャルよりも連ドラ形式の方が
もっとその点は深く掘り下げられる事が出来て、本作には合っていたのかもしれません。
以上の事から、惜しい所も目立ちはしてしまいましたが、
「闘病」「臓器移植」を扱ったドラマとして斬新な視点で描かれていたのは良かったですし、
ペダルに焦点を当てて躍動感を与えるカメラワークには、
見ていてワクワクさせられるものがありました。
変に泣かせようとするより、こういった真面目な作風の方が何倍も良いです。