全4話という短さで、初回は震災エピソードをほぼ絡めず、
安(柄本佑)が精神科医になるまでの生い立ちだけを描いたのは何故か?
と思っていましたが、その構成にしたのも意味があると感じられた2話でした。
安もまた震災をきっかけに、当たり前にあった生活を止む無く切り離され、
育ちも環境もバラバラの人々と共に過ごす事になった「震災経験者」の一人であって。
初回では一人の人間が味わった「苦しみ」「弱さ」「繋がりの温かさ」を描き、
今回はそれを大勢の被災者に落とし込む事で、
"単体"から"複数"へと物語を一段階アップさせて行ったように思いました。
記者を通して、本当に自分はこれで良いのかという葛藤。
普段違う環境で暮らしている人々が1つのフィールドに
集められた事から生まれる価値観のズレ。抱えている事情の違い。
しかし、心に傷を負った過去を持つ安が寄り添う形で、それらを解きほぐしてくれる。
誰が悪い、誰が正しいという「決めつけ」をしないように
描いているんだなぁというのが伝わります。
演出面にも結構変化があり、初回ではピアノ調の劇伴を多く取り入れて
重たい雰囲気にせず見やすくする事を心がけてきた一方で。
今回では極力劇伴を排除し"間"を増やす事で
当時の人々の気持ちをダイレクトに届け、思わず視聴者がそれぞれの経験を
登場人物に重ねて見てしまう作りになっていた印象でした。
対立が生まれていた者同士が、キックベースボールでワイワイ楽しそうに遊ぶ図は、
まるでみんなの心が1つになった象徴のようで思わず涙…。
しかし、今回をきっかけに復興へと希望を見出している人が多くなるであろう時に、
たった一人だけまだ前を向けずにいる
所謂「マイノリティ」側(この表現が合っているか分かりませんが)の心情にも
踏み込んでいくのがリアルです。
次回はそこを中心に描いて行くのでしょう。
NHKのドラマは、ドキュメンタリー番組を抱えている事から
調査力に長けている所が強みだとは前々から書いて来ましたが、
その長所を活かして「今何を視聴者に届けるべきか」という役目は
しっかり果たせています。
本作は、そう強く思わせてくれる作品です。
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