面白かったです。
「おじさんは頑固だから〜」という話を親からよく聞いていましたが、
歳をとり始めると、実際にこんな人が多くなるんだろうな…と妙に納得させられるお話でした。
暗闇の中、ケーキを買いに車を出そうとする柴田(藤竜也)の姿には最初、
もしかしたら、いつも付き添ってきた自分より孫の顔の方を覚えていた妻・冨美代(吉行和子)
へのショックによる不注意で事故を起こして、初めて「衰え」を認めざるを得ない状況に
立たされる展開となるのか…?なんて思っていましたが。
あえてその"ドラマらしい"展開はやらず、自分にとって身近で年上の友人が事故を起こし、
帰りに運転しようとしたら、パニックでアクセルペダルとブレーキペダルを
踏み間違えてしまう事で気づかされる…という描写にした所にリアリティがありました。
序盤はまるで別ドラマかのような、悪者は絶対に見逃さない正義のヒーロー!といった
コミカルな流れから始める事で、視聴者の興味を惹かせつつ。
最終的には、高齢者運転と介護、社会的な題材が上手く絡められていた作品でした。
ラストは夫婦の若い頃のエピソードで、物語は綺麗に終わりはしましたが、
「過去にこだわり続ける事は災いをもたらす。」
「しかし、現実を見るのに辛くなったら、過去を思い出してみる事で救われる時がある。」
というメッセージにも感じられ、現実と架空の塩梅も効いていたように思います。
藤竜也さんの、空を見つめる時の哀愁漂わせる目線も印象的でした。
存在を初めて本作で知りましたが、無名の役者さんを使って再現VTRを見せるよりも、
今後は本作を教習所の高齢者講習で見せていった方が、
「藤さんもこんな歳とったんだな〜」とも実感させられて
他人事には思えなくなるんじゃないかな?という気がします。
↓前回の大賞の感想はこちら↓