今回の話を見た時、ふと「アンナチュラル」の5話を思い出してしまいました。
あれは確か、大切な人がある日突然死んで、真実も分からぬままの夫が
犯人に復讐する話だったと記憶しています。
「アンナチュラル」の方が"被害者目線"の話ならば、
本作の方は無意識に人の命を奪ったり殺害を犯したりしてしまった"加害者目線"のお話。
内容こそ違いますが、「取り残された人々」を主体にした点では共通しており、
更には、どうしようもない、想いをぶつける所がなくやるせないという
残された者の得体の知れないごちゃごちゃとした感情を映し出す結末も
一致していた事から、二作品の人物を重ねずにはいられませんでした。
そして、今回の話の何がエグいって、ただの美談では終わらせず
「これが希望に繋がっていくのかな?」という
心の中がザワザワするような"モヤっと感"を残す着地のさせ方です。
犯人はそのまま加々見(松下洸平)だった訳ですが、
彼がある場所に向かおうとしている目的が父への恨みで、
上司と姿が重なり、自分が上司に殺害を犯してしまった原因は父のせいだという動機で
復讐しに行くのは、正直言って尋常ではありません。
しかし、志摩(星野源)や伊吹(綾野剛)から加々見の想いを聞かされても
それでも彼を信じてあげたいと断言し、
犯人だと分かっても未来でまた会う事を約束してくれる夫婦がいます。
なぜそこまで庇うのかというと、夫婦もただの優しい二人ではなく、
信じてあげられなかった故に息子を亡くしてしまった苦い過去があるから。
また、顔が似ている事から、彼をまるで息子と同じように接してもいた。
だから、無事に出所されるまで支えていく有難い存在になるのでしょうが、
これはある意味二人の間に"闇"も感じさせて怖かったのです。
「人は信じたいものだけを信じる」
志摩のこの言葉がまさに真理を突いていました。
全く血の繋がっていない関係なのに「顔が似ているから」と言うだけで
今までの自分たちの罪悪感を加々見を利用して晴らしている、
「自分たちがこんな親でありたい」という理想像を押し付けているようにも映り、
今後もそうやって依存していくのかと思うと、
最後にまた3人でドライブしようという約束をするシーンも
「守ってくれる人がいて良かったね」というより「この関係はまだ続いていくのか」という
恐ろしさの方が勝ってしまいました…。
ベタに希望を感じさせるハッピーエンドじゃないエンディングなのが良かったです。
松下洸平さんは「スカーレット」で認識して、
それから温かくて優しい八郎というイメージが個人的には定着していた分、
あんなに心が屈折して芯がどこかポッキリと折れてしまったような演技は新鮮に映り、
物語が終わってからもしばらく頭から離れない余韻がありました。
生々しい役も良いですね。
初回は私の想像していたものから遠ざかっていると感じ、あまりワクワクはしなかったのですが、
今回みたいな話なら期待出来るかもしれません。
というか、「アンナチュラル」スタッフなので、こんな風に容赦ない話が見たかったのです。
初回は奮発し過ぎて空回りしたって事で…(笑)
まだコンビにはもどかしさもありますが、回を増していくごとに
本作の世界観、機捜隊の人々が好きになれたら…と思います。
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