一昨年のこの時期に放送されていた「エアガール」が
個人的には微妙だったのと(去年のは見ておらず。バタバタしてたのかな?)、
某朝ドラの影響で脚本家に負のイメージがついていたのもあり、
あまり期待せずに見始めましたが…
中々どうして、約2時間があっという間に感じられるくらいには面白かったです。
何と言っても、主人公が根気強く勤勉な性格として、ブレずに描かれているのが良い。
それは、男社会が色濃い明治〜大正時代ならではの「男は仕事し、女は家庭を守れ」という
風潮が強調されていなかったのが大きいんだと思います。
確かに、女性が働く事に対して良く思っていない存在はいましたし、
今だったらパワハラに通ずる言動もしていましたけど、
いざ綾子(葵わかな)が功績を残したら、
「女を使ったんじゃないか」とか屁理屈を言ってはやたら非難するって訳でもない。
同じ"プロ"として認めるものは認めるし、
綾子も2人の心ない言葉を受けて悲観的にならない…(可哀想なヒロインを演じさせない)
そんな男尊女卑を引きずらない描写が見やすかったです。
お陰で、変なストレスも溜まらず、
今ある利器は先代の努力の積み重ねがあってこそなのだ…と、
見ながらしみじみ考えさせられました。
あとは、まぁ強いて言うなら…厨房の観察を深谷(伊東四郎)が許可してくれたり、
女将たちを分量計算に付き合わせたりといった、料理カードが出来上がるまでの流れは
もう少し尺を割いて欲しかったかな?感は覚えましたが、
それらを除けば、主人公が活躍するのも頷ける話にまとまっていたと思います。
例えば、下手したら「本来の仕事はやってるの?」とツッコまれそうな
綾子と香美(林遣都)による胚芽米の実験のくだりも、
2人とも院内で孤立していて、ある程度自由にやらせてもらえたからなんだろう…という、
人間関係を見てなんとなく察せられる"補完"的な要素が用意されていましたし。
綾子が認められて、外でどんどん活動の幅を広げるようになったのも、
小さい頃からグラスを使っての実験が好きで、数学が得意で、
才能を花園(渡部篤郎)に買われて、同じく近くで彼女の様子を見ていた
香美のサポートがあったから…もそう。
さり気ない状況描写や小さなエピソードの連続が、主人公の動きに説得力を持たせていて、
単なる「主人公上げ」の物語にしない所にも好感が持てました。
開発パートだけでも十分に見応えがありましたが、
後半からの夫婦の晩期のエピソードには、ググッと引き込まれましたねぇ。
林遣都さんはもう中堅どころの役者さんになられたんだなぁ…と実感。
病気でやつれた時の若干上目気味の目線に、引きつったような口の動きに、
もうすぐ亡くなってしまいそうな時の片目が開ききっていない感じに…
大病を患った演技が凄くリアルなんですよ。
葵わかなさんも、葵さんから薬師丸ひろ子さんにバトンタッチするのに違和感なし!
っていうのはもちろんなんですけど、恐らく、演技も合わせていらっしゃったんでしょうね。
正直言うと、5年以上前の「わろてんか」で老けメイクをされていた頃は、
どうしてもみずみずしさが前面に出ていて、馴染んでいない印象があったので(失礼)
声や佇まいにこんなにも貫禄が増すとは…と、驚かされました。
また、香美がゆっくり目を閉じる姿を撮らず、
あえて綾子の泣く姿→香美が既に目を瞑った姿 でカメラワークを切り替える事で、
死は待ってくれないという現実を表しているかのような演出も良かったです。
1本太い芯のある、どっしりと構えたような雰囲気を醸し出される
葵わかなさんが主人公にピッタリで、
その明るさと元気さが今回の内容の魅力を上げていたような気がします。
明日の第2夜の主人公は伊藤沙莉さんとの事で、これまた別ベクトルで、
ポジティブな気持ちで見られそうですね。
ダイニングキッチンが作られるまでの話…こちらも楽しみです。
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