不倫モノやドロドロした作風には食指が動かなくなってきているため、
「昼顔」スタッフが再集結!という売り文句を聞いて、
(扱うテーマは違うとは言え)あまり惹かれない作品になってしまうのではないか…と
内心不安に思っていた本作。
ところが、いざ視聴してみると、体感的にはあっという間で。
何と言うか…話が進んでいくごとに、良い意味でウズウズやモヤモヤといった
感情が蓄積されていって、この4人が抱えているものは何なのかを知りたい気持ちにさせる、
そんな吸引力を感じさせる初回でした。
個人的に凄く良かった所は、心情変化の描き方。
最近いろんなドラマを見ていると、感情の起伏が激しい登場人物も決して少なくなくて、
「えっなんでそんな急に!?」とついて行けなくなって
物語にのめり込めなくなる事も度々あった分、
本作はパートナーと一緒にいての"気まずさ"だったり、"むず痒さ"だったり、
そういった繊細な空気感がナチュラルに表現されている気がしました。
また、台詞の間の取り方や対話のテンポも絶妙なんですよねぇ。
陽一(永山瑛太)との関わりを通して描かれるみち(奈緒)の心の声が
随所に散りばめられているから、
彼女の想いを無視したド直球な言葉を投げかける陽一のシーンや
もう何もかも放棄したくなった終盤のみちのシーンがグサッと刺さると言いますか…。
お互い幸せだった日常から一転、本題に踏み込めば踏み込むほど崩壊してしまう
2人の関係性をじっくり描いていたと思います。
そして、2人の関係性とキーケース、みちの心境と桜…で、
登場人物に小道具を絡ませているのも良いなぁと。
前者で言えば、趣味が合わなくても色褪せるまで使っていたのは
それだけ夫を愛していたという証拠にもなるし、
ボロボロになってとうとう使い物にならなくなったキーケースは
2人の間に亀裂が入る状態とシンクロ…
で、陽一は同じ物を手に入れ、みちはネットで女性受けしやすい
鮮やかでツルッとした物を頼もうとしている所なんかは、
まさに"すれ違い"を表しているんですよね。
一方…後者で言えば、
昼の時間帯の桜では、ただ目の前にいる大好きな人の事を考えて充実してそうなみち、
夜の時間帯の桜では、心の奥底にズ〜ンとした暗さや重さを抱えたみちの様子を描いて、
意図的に区別している気もして。
あと…これは本当に独りよがりな捉え方かもしれませんし、
上手く伝わるかどうか分かりませんが(汗)
桜の木が描かれたパズルで唯一欠けているピースは
「逃げるのが上手い」陽一であるかのように見せてから、
ラストシーンでみちが目にしたものが、新名(岩田剛典)にハグされている時の
たった1枚の花びらだった事から、
新名は今後、1ピース欠けたパズルのようにぽっかりと心の空いたみちの孤独を
"理解者"として違う形で補ってくれる存在になるのでは…?ともとれそうな
暗喩表現が施されていたのも、個人的には印象に残りました。
まぁここは、演出の効果が大きいですね。
話している相手をじーっと見る奈緒さんに対して、
時々相手の目を見ているようで、完全に見切れていないような
曖昧な視線を送りながら話す瑛太さんの表情の対比もさる事ながら。
カミングアウトした時だけは引きの映像で、しかも表情は全く映さない形で、
彼の話している事は事実なのか…?やっぱり嘘なのか…?と視聴者に考えさせる
余韻の生み出し方も秀逸でした。(私は事実かな?とは思いますが。)
ああ…書き残したい事が多過ぎて、
つい「これ言いたい!あれ言いたい!」なまとまりのない感想になってしまいました(苦笑)
初回を見た感じだと、同じ木曜劇場の「純愛ディソナンス」「silent」に続いて、
本作もまた、演出や演技をもう一度味わって新たな発見をしたい…と
思わせてくれる作品になりそうです。
そして、結婚にはまだまだ程遠い私からしたら、身近とは言えないテーマではあるんですけど、
だからこそ、新鮮で学びの多い作品にもなりそうだと。
私としては…多様性を描く上でよく取り上げられている「子供を産む・産まない問題」以上に、
避けては通れない話なんじゃないかと思いました。
産むのであれば、必須になるだろうし。
産まずに夫婦2人で暮らし続ける場合でも、
愛情表現で何が重要かはお互いで価値観が違ってくるかもしれないし。
「何でこの時間帯に放送したんだ」「不快だ」という声もある中での本作の放送…
"不倫モノ"で終わらない、最後まで軸のブレない仕上がりになる事を期待しております。
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