2024年08月一覧

新宿野戦病院 9話 感想|色濃い日常からの…ロックダウン再び?

 

 

月曜日は休診日で、今日たまたまやってきたアメリカのケーブルテレビ局が

仕事ぶりを撮りたいと言うので、

久々にカンファレンスを開く事にした聖まごころ病院。

1つ1つのエピソード自体が色濃くて楽しめましたが、

カンファレンスで物語を展開していくという発想が、なるほどそう来たか!と思わされましたよ。

 

医療ドラマだと、病院の多忙な実態を演出するためか、

特に繋がりもないような2つの案件を同時進行で描く回は時々見かけますが、

確かに、「その日その日の出来事」としてしまえば、話に散漫さは感じられにくくなる。

元看護師が故に、医者に息子の治療方法を指示しようとし、

終始疑ってかかるモンスターペイシェント母。

大事な部分をカッターで切って搬送されてきたセラピストの男性。

失恋で生きる気力を失い、自殺を図ろうとした19歳の女性。

年齢も職業も動機もバラバラなエピソードが用意された事で、

歌舞伎町にある病院の日常ってこんな感じなんだな…と、

画面上では映されていない日まで想像しながら見られました。

 

そして、秀逸だと感じたのは、それぞれのエピソードと

個性豊かな医療従事者の絡め方にもあります。

例えば…1件目で、星崎(佐津川愛美)が強気な態度に出られたのは、

横山(岡部たかし)の顔が妻から「寝顔を見てると殺意が湧く」と言われるほど

逆撫でる顔だったからなんじゃないか…と周りに言われるのも妙に説得力がありますし(笑)

↑物腰柔らかな感じですもんねw

2件目で看護を担当した堀井(塚地武雅)も、前々回で、自分のカミングアウトで

母は本当は悲しんでいたんじゃないかと悩みを打ち明ける姿が描かれたお陰で、

患者にかける言葉にもより一層重みが増します。

3件目で担当した享(仲野太賀)は…個人的にはどうでも良く感じていた

南(橋本愛)と岡本(濱田岳)との三角関係話がここで活きてくるのか!?と

少し驚くくらいで、彼の着飾らない本音ダダ漏れの嘆きと、

歳の近いマユ(伊東蒼)がそばにいて心強かったからこそ、

患者もまた頑張ろうと思う事が出来た。

横山、堀井、享、マユ…個々のキャラクターが活かされており、

この患者にはこの人がいなければ成立しないと思わせてくれる

バラエティ豊かなエピソードに仕上がっていた気がします。

 

訴えようとしていた星崎のいる狭い診察室に、はずき(平岩紙)、享、啓介(柄本明)と

人が次々入ってきて混雑する流れも、事態はシリアスなんですけど

何だか舞台を見ているようでクスッとしてしまいました(笑)

ヨウコ(小池栄子)の説得により、星崎は改心。

そこからなんと1年が経過し…今回はあくまでも「嵐の前の静けさ」的な回だったのかと

思い知らされるラストで終わり。

嵐の前の静けさとなると、大体、次回に繋げようとして話が停滞する事が多いですからね。

内容が充実していた分、そんな悲劇が待っているなんて…という意外性がありました。

 

宮藤官九郎さんの脚本と言えば、定期的に震災が盛り込まれているイメージですが…

今回はまさかの、新種のウイルスによるパンデミック&コロナ再来ネタ。

宮藤さんからしたら恐らく、震災と同じくらい、ウイルス感染も

「巡り巡って、いつの時代にも起こり得る出来事」と捉えられているのかもしれませんね。

現実世界でも、あたかもコロナが消え去った風潮にはなっているけれど、

ニュースで明るみに出ていないだけで感染者はまた増えつつありますし、

地震、台風、コロナと、生きている間に様々な事を経験した今、

新たなパンデミックが起こってもおかしくはない…

もう「フィクション作品の中での出来事」とは思えないんですよね。

あえてこのタイミングで盛り込んだ意味。

それは…我々現代人への問いかけでもあるのでしょう。

コロナ禍が過去のものになりつつある今、果たして本当に乗り越えられたと言い切れるのか?

再び新種のウイルスが猛威を振るおうとしている時、

学びを活かしてきちんと向き合う事が出来るのか?

そんな考えが含まれていそうです。

 

来週は再び、病院がパニック状態になりそうですね。

最終回に向けて、どう着地させていくのか…ますます気になります。

 

 

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新宿野戦病院 8話 感想|お互い円満な形で区切りをつけられたのが救い…なのかな。

 

 

今回のOPのナレーションは日本語。

使われるとしたら最終回だと勝手に思っていたので、なぜ8話で?とちょっと意外に感じていたら、

旦那がハプニングバーにいるんじゃないかと推測した白木(高畑淳子)の怒りを

時代劇風にコミカルに演出するためっていうのもあるけれど(笑)

今回描かれた事件で、あぁなるほど…と納得。

「様々な事情を抱えた人が雑多にやってくる歌舞伎町」を表現するためか、

毎回異なる言語でその街が紹介されてきた訳ですが、

あえてこのタイミングで日本語にした事で、本作はあくまでもフィクションだけど

2024年の、現在の日本と地続きなのである…というのをさらに印象付けていたように思います。

 

それにしても、今回起こった火災事件とその実態はより一層リアリティがあって、

どうしたってあの某制作会社の事件を彷彿とせずにはいられませんでしたね。

本作の場合は雑居ビルですし、犯人特定までの流れも一捻りあったんですが。

犯人が重傷で優先的に治療されるというシチュエーションと、

犯行動機が「むしゃくしゃしていた。誰でも良かった。死刑になりたかった。」となるとね…

重なってしまう訳ですよ。

 

生配信を意味深な様子で見ていたシーンから、

アイドルに付き纏っていた後藤(北野秀気)が逆上して

雑居ビル爆破を実行したんじゃないかと思い込んでいたので、改心していたと分かって安心。

(↑赤いミサンガをつけていたから余計に…宮藤さん、確か朝ドラをご覧になっていたようなw)

別の人となると、じゃあ、ひょっとして白木の旦那なの…?と一瞬過ぎりもしたけれど、

爆破事件に関わっていなければ、無事に戻ってきてそこもまた安心しました。

惨たらしい事件描写の中で、自身がかえで(田中美久)に対して歪んだ感情を抱えていた事、

それで彼女を不安にさせていた事を反省し、

かえでも彼の誠実な態度を受け、心曇りなく卒業出来て

お互い円満な形で区切りをつけられたという所が、

唯一のファンタジー要素であり、救いになっていたのかなと思います。

 

でも、その後が良い方向に向かうかどうかは…。

もしかしたらかえでが、今回の事件の事でフラッシュバックを起こして

芸能活動を休止する可能性だってあるかもしれないですし、

後藤は犯人ではなかったものの、世間からは「ストーカー」として認識されたまま。

2人の今後は大丈夫だろうかと、気になってしまうのでした。

 

火災シーンや爆破シーンの映像は一切差し込まれませんでしたが、

それでもかなり緊張感がありましたね。

山とか、海とか、トンネルとか、そんな大規模な舞台を取り入れなくても惨事は伝えられる

というのが証明された展開・見せ方でした。

…大事故に見せようとしてCGを取り入れたら、

かえって安っぽく見えるケースもありますしね(苦笑)

事件が起こった日の流れを表す時刻の演出と、

「事件の関係者(被害者・加害者)」に誠心誠意向き合う医療従事者と警察の動向に絞って

描かれていた事が、ドキュメント映像かのような見応えに繋がったのではないでしょうか。

そして、肝心の焼けたビルの映像は、ラストにさらっと映して終わりなのは

視聴者への配慮を感じさせると同時に、

南(橋本愛)の「誰でも安心して遊べる、健全かつ衛生的な、若者の街」のナレーションに合わせて映された事から、

そう信じている裏で危険が潜んでいるかもしれないよ?という皮肉も感じさせました。

 

「I'm doctor! 被害者だろうが加害者だろうが人殺しだろうが絶対殺さん!」

「ずーっと交代で見てたんだ。ド素人はすっこんでろ!」

いやはや…ヨウコ(小池栄子)も啓介(柄本明)もかっこよかったなぁ。

特にヨウコの言葉に関しては、いつもそうですが、決め台詞っぽい演出を入れず「これが私のやり方だから」と言わんばかりにナチュラルに魅せているのが最高なんですよね。

医者としての矜持をしっかり持っていて、それを相手に声を大にして伝える所なんかは、"親子"だな…と思わされるのでした。

 

 

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新宿野戦病院 7話 感想|「かわいそう」「大変ね」の裏に隠された繋がり

 

 

主題歌のいつものイントロが聞こえてきた途端、

おお、もう終わったのか!と思ってしまった今回。

思いがけず良いお話でした。

ラストはほぼ毎回、次が気になるような終わり方をするだけに、

子供らしい純粋さが滲み出る、前歯のない少年の笑顔のサムズアップにつられて

周りも安堵から同じポーズをとる…という優しさに溢れた空気感に

しみじみと見入ってしまってました。

 

今回深く掘り下げられた人物は、堀井(塚地武雅)とその母・育江(藤田弓子)親子、

アパートで亡くなった独居老人・田辺の3人。

堀井の境遇は、親には中々理解してもらえないという意味で。

育江と田辺…いわゆる「高齢者」は、認知症や介護問題は中々避けられないのはもちろん、

ニュースではマンションやアパートでの孤独死や、

アクセルとブレーキの踏み間違いで自動車事故を起こしやすい年代として取り上げられやすい

という意味で、世間的には「かわいそう」「大変ね」といった気の毒なレッテルを貼られがち。

しかし、3人の人生はそう辛く悲しい事ばかりでもなかったのです。

 

田辺の場合、1週間前にアパートを訪ねていた娘は

孤独死なんて、情けない」と嘆いていたけれども、

実際は聖まごころ病院の常連さんとの付き合いが多く、ベッドにたくさんのお供物が渡され、

彼はいつも充実した日々が送れていたんだろう…というのが察せられる

エピソードに仕上がっていました。

 

そして堀井に関しては、自身が幼い頃から感じていた違和感を理解してくれた母親がいながらも、

親の望んだ"男らしい"人間にはなれなかった、期待を裏切る事になってしまった

後悔や罪悪感からお父さんを演じていた部分もあったのかもしれませんが、

寝ている母におやすみと言った時の微笑みの表情が何だか忘れられなくて。

男とか女とか関係なく、子供から母親への純粋な思いやりが感じ取れて、

ちょっとほっこりした気持ちにさせられたのかもしれません。

20代で若くして家を出て行った分、あと何年一緒にいられるかも分からないからこそ、

せめて母の好きな亭主関白の父になりきって、

悔いのないように少しでも母を幸せにしてあげたい…

それは立派な親孝行で、仮に演じていると知っていても、本当に知らなかったとしても、

育江は我が子の愛情が嬉しかったんじゃないかと思います。

…親子の時間が育めたから、認知症を受け入れるという現実にも向き合えた訳ですしね。

 

あと、これはあくまでも想像の域ですが、

堀井がお父さんを演じてもなお「ペヤング」というワードを口にしていたという事は、

もしかしたら、父もペヤングが好きでよく食べていたんじゃないかな?とも。

父に影響されて食べるようになったのか、

親子で好きなものが同じだったのかもまた分かりませんが…

気持ちが離れ離れのままだったとしても、父と子を唯一繋ぎ止めてくれたのが

ペヤングだったら良いな…と思ってしまいました。

 

高齢者問題とジェンダー、普段なら交わらないであろう2つのエピソードから見えてくるのは、

自分たちが"その人"を知らないだけで、

目に見えない所で優しい繋がりはあるかもしれない…というもの。

性別ではなく、ただ優秀な看護師が欲しいと言って採用してくれた

啓介(柄本明)も頼もしく映りました。

 

個人的には、5話に並んで…いや、5話以上に?好きな回になりそうです。

 

 

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新宿野戦病院 6話 感想|亀甲縛りに歌舞伎町浄化作戦に検査の重要性に

 

 

あー…前々回と前回は見やすい・分かりやすい内容になっていたのに(苦笑)

またガチャガチャ感がぶり返してきちゃいましたねぇ。

 

それもそのはず、ヨウコ(小池栄子)が日本の医師免許を所持していなかった事、

ヨウコは啓介(柄本明)がリツコ(余貴美子)と関係を持って生まれた娘である事、

南(橋本愛)の裏の顔がSM嬢である事…という

3つの衝撃的な秘密を一気に明かし、1話内で同時に動かしているんですもん。

で、そうなってくると、ヨウコはヨウコで解決しなければならない問題が出てくるし、

享の場合は、元々一目惚れしていた南へのモヤモヤの払拭に走りたくなる。

つまり、単独行動が増える。

 

今回は3話以前のように、個々で物語を展開していく形をとっているため

話が散漫になりがちなのに。

前回と同じく、中々テレビでは取り上げられにくい問題を取り上げ、

宮藤官九郎さんご自身がシャイな性格なのか、

真面目さとバランスを取るかのように小ネタやギャグをふんだんに盛り込むから、

何をどう見て良いやら…背中の痛みを甘く見ちゃいけないのと、

毎年の検査でもがんで手遅れになるケースはあるというのを

伝えたいんだと分かる終盤まで困惑しました(汗)

 

いや、正確には、ガチャガチャよりチグハグに近いんでしょうかね。

1つ1つのネタには笑えるんですよ。享と啓三の弱点とツッコミが一緒な所とか(笑)

だけど、TBSで長年の付き合いである磯山Pや金子監督なら、

あれも書きたい、これも入れたいという宮藤さんのある種の暴走をコントロールして、

絶妙な塩梅に持っていけそうな所を…

本作の演出家陣は、まだそこの連携が上手くとれていないんだろうなとは思います。

言葉を選ばずに言えば、宮藤さんの意思を尊重して、やりたいようにやらせたら

それが内容に反映されてしまったという感じ。

ただ、日本の医師免許不所持の件以外は解決出来たみたいなので、

次回からは4・5話の、1つの物事に聖まごころ病院のみんなが向き合う

路線に戻る事を期待したいです…。

 

次回は最も謎のヴェールに包まれている堀井(塚地武雅)メイン回になりそうで。

初期の頃だけですが、初回放送前からSNSでプチ炎上していた分、

男なのか女なのか問題にガッツリ触れているのにヒヤヒヤしていた部分もあったので…

なるほどな…と思えるオチだったら良いなぁと。

いや、でも…あの人は兄妹(姉弟)?他人の空似??

 

 

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新宿野戦病院 5話 感想|不平等を目の当たりにするヨウコ

 

 

いや〜…今回はキレッキレでしたね。

宮藤官九郎さんが日々過ごす中での憤りが、話や台詞から強く滲み出てきています。

心の叫びが聞こえてくるようで、もうなんか、ただただ頷くしかなかったです。

 

でも、日本とアメリカによる不同意わいせつ罪の最長刑期の違い、意地悪ベンチ、

マイナンバー保険証、猛暑の中での演説、救急車で運ばれてくる人の半分が軽症者…と

"今の日本"を畳み掛けながらも、その合間に和田勉とか、「白木だよ!」とかっていう

小ネタも差し込んでくるのがクドカン作品の真骨頂と言いますか。

取り上げたテーマが一際シリアスなものだっただけに、今回はいつも以上に

シリアスとコミカルのギャップの大きさに頭がクラクラしました(笑)

 

しかし、こう書けばまたガチャガチャ感が増しちゃったのかも?と思われる読者様も

いらっしゃるかもしれませんが、

個人的には、前回から内容が結構分かりやすくなってきていると感じてまして。

前回の感想でも書いた通り、やはり、享(仲野太賀)が美容クリニックの開業や

南(橋本愛)絡みなどでヨウコ(小池栄子)と個別に動く描写が減っていって、

NPO法人「Not Alone」との連携も見えてきて、

物語が「聖まごころ病院」を中心に展開されていっているのが関係しているのかもしれません。

言い換えれば…物語の舞台が「聖まごころ病院」に絞られてきているという事にもなります。

 

後半では、「命は平等」にこだわり続けてきたヨウコが、

初めて不平等を目の当たりにするエピソードが描かれました。

ECMOは1台しかないし、まごころの方が先に来たのに、

後から来た政治家を乗せた救急車が優先されるという理不尽さ。

笑えば脳が錯覚するから、うちらが笑えばシゲじい(新井康弘)も笑ってくれるだろうと

信じてやまず、途中から久々の再会となる息子も加わって心臓マッサージを続けた結果、

シゲじいは微笑みながら旅立つ事に。

"今の日本"への疑問やモヤモヤを描き続けただけに、

きっと、シゲじいにとってはこれはこれで良い人生の終わりだったはず…と、

わずかでも信じたくなるラストに仕上がっていました。

 

初めて看取る患者を抱き締めながら大泣きするもなお、

20時は救急が増える時間だからと、

颯爽と仕事に戻ってしまうヨウコのプロフェッショナルさよ…。

ヨウコがやってきてから2ヶ月が過ぎ、享をはじめとした病院内の医者たち、

南、岡本(濱田岳)、啓介(柄本明)と、彼女を評価する声が増えてきたのも

今回で特徴的に描かれていて(享に関しては、半分は不純な動機ですがw)、

その分、彼女が無免許だと啓三(生瀬勝久)にバレてしまうラストは

いつしか避けていた現実を一気に突きつけられるようで、

次回はどうなっちゃうの?聖まごころ病院の行方は?という先への興味に繋がりました。

 

真面目さと涙と笑いが凝縮されており、今までの中で最も充実した回でした。

今期も医療ドラマが複数ありますが、

本作が一番、魅力的に映るような登場人物の深掘りの仕方が上手く、

何を描こうとしているのかが明確に表されていると思います。

 

 

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