新宿野戦病院 5話 感想|不平等を目の当たりにするヨウコ

 

 

いや〜…今回はキレッキレでしたね。

宮藤官九郎さんが日々過ごす中での憤りが、話や台詞から強く滲み出てきています。

心の叫びが聞こえてくるようで、もうなんか、ただただ頷くしかなかったです。

 

でも、日本とアメリカによる不同意わいせつ罪の最長刑期の違い、意地悪ベンチ、

マイナンバー保険証、猛暑の中での演説、救急車で運ばれてくる人の半分が軽症者…と

"今の日本"を畳み掛けながらも、その合間に和田勉とか、「白木だよ!」とかっていう

小ネタも差し込んでくるのがクドカン作品の真骨頂と言いますか。

取り上げたテーマが一際シリアスなものだっただけに、今回はいつも以上に

シリアスとコミカルのギャップの大きさに頭がクラクラしました(笑)

 

しかし、こう書けばまたガチャガチャ感が増しちゃったのかも?と思われる読者様も

いらっしゃるかもしれませんが、

個人的には、前回から内容が結構分かりやすくなってきていると感じてまして。

前回の感想でも書いた通り、やはり、享(仲野太賀)が美容クリニックの開業や

南(橋本愛)絡みなどでヨウコ(小池栄子)と個別に動く描写が減っていって、

NPO法人「Not Alone」との連携も見えてきて、

物語が「聖まごころ病院」を中心に展開されていっているのが関係しているのかもしれません。

言い換えれば…物語の舞台が「聖まごころ病院」に絞られてきているという事にもなります。

 

後半では、「命は平等」にこだわり続けてきたヨウコが、

初めて不平等を目の当たりにするエピソードが描かれました。

ECMOは1台しかないし、まごころの方が先に来たのに、

後から来た政治家を乗せた救急車が優先されるという理不尽さ。

笑えば脳が錯覚するから、うちらが笑えばシゲじい(新井康弘)も笑ってくれるだろうと

信じてやまず、途中から久々の再会となる息子も加わって心臓マッサージを続けた結果、

シゲじいは微笑みながら旅立つ事に。

"今の日本"への疑問やモヤモヤを描き続けただけに、

きっと、シゲじいにとってはこれはこれで良い人生の終わりだったはず…と、

わずかでも信じたくなるラストに仕上がっていました。

 

初めて看取る患者を抱き締めながら大泣きするもなお、

20時は救急が増える時間だからと、

颯爽と仕事に戻ってしまうヨウコのプロフェッショナルさよ…。

ヨウコがやってきてから2ヶ月が過ぎ、享をはじめとした病院内の医者たち、

南、岡本(濱田岳)、啓介(柄本明)と、彼女を評価する声が増えてきたのも

今回で特徴的に描かれていて(享に関しては、半分は不純な動機ですがw)、

その分、彼女が無免許だと啓三(生瀬勝久)にバレてしまうラストは

いつしか避けていた現実を一気に突きつけられるようで、

次回はどうなっちゃうの?聖まごころ病院の行方は?という先への興味に繋がりました。

 

真面目さと涙と笑いが凝縮されており、今までの中で最も充実した回でした。

今期も医療ドラマが複数ありますが、

本作が一番、魅力的に映るような登場人物の深掘りの仕方が上手く、

何を描こうとしているのかが明確に表されていると思います。

 

 

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