アンティークな内装の喫茶店で、コーヒーを飲みながら推理小説を嗜むかのような
感覚を覚えるドラマでした。
前半はモノローグが多めで、ちょっとテンポがもたついてるのかな?
そして、淡々と語らせる事で、これは「自分の身の回りに起こった不幸な体験談」を
シュールな世界観を交えてお届けするドラマになるのかな?と思っていましたが、
後半になってからはみるみると引き込まれる。
暗めの映像に、しきりに流れるジャズ調の劇伴。
そこに切れ者同士が推理戦を繰り広げて行く展開は、
まるでセッションを見ているようで心地良い。
探偵モノならではのミステリー要素も、
台詞や回想などを多用してあえて分かりやすい作りにしないのが良く、
前半で起こった出来事、登場人物の行為を反芻していく事で
「あの行動はここに繋がっていたのか!」という妙な清々しさもありました。
個人的に、葉村が旅行のチケットを本に変えた事に対して
珠洲(MEGUMI)が怒りを露わにして机を乱暴に扱うシーンに、
ちょっと感情の起伏が急じゃないか?と違和感を覚えていたので…
「あんたも私と同じ黒い羊なんだよ」と放たれた言葉に、ああ…なるほどね…と納得。
後から見返すと、もっと隠されていたヒントが分かったりするのかも。
葉村に付きまとう不運の根源は、"家族という名の理不尽"。
うちの姉が面倒な人なんですよ〜といった自虐でも何でもなく、
家族は一生縁を切ろうとしても切れない呪いでもあるという残酷さを、
淡々とした物語の中にエッセンスとして含ませる。
葬式を断られたんならもう放っておいても良いんだけど、
全然自由にはさせてくれないし。
珠洲には妹=自分より年"下"だからこそ引きずり下ろしたいという執念、嫉妬心が
詰まっているから、静かそうに見えて実はゲンナリとさせられるほど重い。
黒い羊と言った意図、残されたペンダント…
葉村にとってはこの先一生悶々としたまま抱え続けなければならない、
ある意味"十字架"のようなモノになるのでしょう。
予告を見た時点で、このハードボイルドな雰囲気&主人公は
シシド・カフカさんに合っているかも…と思っていましたが、
予想以上にしっくり来ましたね。
ちょっと冷たさを残しつつも落ち着きもある、声のトーンも良い感じです。
そして何より…私、間宮さんが初めて「良いなぁ」とも思えたり。
(これは語弊を生んでしまいそうだけれど。苦手な訳ではないです。)
目線から漂うミステリアスな佇まいや、感情を表に出さない役が合うんだなって。
暑苦しいだとか盛り上げ隊長だとか、今まで見てきた役を踏まえて
そんなイメージを勝手に持っていたから、今回の役はちょっと新たな収穫を得た気分でした。
ゲストという事で惜しくも退場してしまったMEGUMIさんも、
「スカッとジャパン」で嫌味な役を演じられた経験を応用したかと思わせられ、
救いようのないゲスい女性を見事に体現されていた印象です。
金10枠だけでなく土9枠やよるドラ枠も含めて、
最近のNHKドラマは「我が道を行く」点では、テレ東ドラマに近しいものを感じますね。
視聴率に囚われない。やりたいと思った事を突き詰める。
既視感のないジャンルも取り入れる。
だから、地味ながらも上質なドラマがどんどん生まれてくるんですよね。
視聴前は「初回を見てみないと分からないな〜」状態でしたが、
中々面白かったです。お坊さんよりもこっちかも。
でも、リアルタイムで見るよりは、巻き戻したりして自分のペースで見た方が
本作の世界観にどっぷりハマれる気がしたので、
今後は録画にして後日感想…って形になるかも。