不審者が近づき慄いた声で助けを求める緊迫感を漂わせたシーンから
物語の幕が開けた前回が"緩急"の"急"なら、
居酒屋で駄弁る3人の姿から始まった今回は"緩"のお話。
コインが落ちるSEなど派手な演出が少なくなり、青池(美村里江)はなぜ逃げるのか?
彼女の目的は何なのか?といった一人の女性の謎の動きに焦点を当て
その生き様のルーツを第三者目線で探っていく展開になった事からも、
今までとはまた異質な作りのように思いました。
2年前の裏カジノ事件で捕まった過去がありながらも「普通の社会人」になれた事に
喜びを覚えたが一転、暴力団が関わっていると知ったショックで
再び汚いお金に手を出してしまった青池。
政治のお金絡みの闇に対して、手取り14万円しかもらえていない事を嘆く姿…
歌い出したくなるほど大金に取り憑かれていく姿…
「私はまたすっかり汚れてしまった」「どこなら綺麗に生きられるだろう」
ここまでだと、普通の人になりたくても"前科"がある以上はそこから抜け出す事が
出来ないのだという彼女の絶望的な人生を自然とイメージさせられるものだっただけに、
最後の呟きの真意が分かった途端「そういう意味だったのか!」という驚きと、
過去エピソードを照らし合わせて自分がいかに色眼鏡で物語の先を読んでいたかという
してやられた感がありました。
キーワードは「自分の人生は自分にしか分からない」。
青池は自身の人生に後悔を覚えたまま命を絶ったように見えたけれど、
実はそれは、最後にやりたかった事を成し遂げられた満足感を味わえた上での死だった。
桔梗(麻生久美子)の元で今も「エトリ」の存在に怯えて生き続ける羽野(黒川智花)も
彼女のように自由を手に入れられる日が来るのか?
一つのきっかけで、誰かとの出会いで、その人の運命は大きく変わるかもしれない。
羽野の人生はまだまだ途中であり、ここは前回のテーマだった「分岐点」と
繋がるものになっていたと思います。
分岐点と言えば、伊吹(綾野剛)と志摩(星野源)の死生観の違いも露わになりました。
普段はおちゃらけているように見える伊吹だけど、死に関しては人一倍厳しく、
生きる事に対して貪欲であり続ける。
一方で、真面目そうな志摩は、生に対してはどこか無頓着で冷めきっている。
今まで見てきた星野源さんからは想像も出来なかった
あの目に光が宿っていないような目の演技も印象深く、
これから彼のどんな"闇"が浮かび上がって来るのかが気になります。
序盤は2人の軽やかな会話劇で視聴者を引き込ませながらも
微かな引っ掛かりを覚える謎を所々にばらまき、
最後にはその会話の内容も伏線も余す事なく回収した上で
現代社会の在り方についても考えさせられる要素も盛り込む。
野木節炸裂!なお話。
見終わった後、上質なミステリー小説を読み終わった感覚を覚えました。
ああ…面白かったなぁ。
↓次回の感想はこちら↓
↓前回の感想はこちら↓
超余談:
本編とは直接関係のない話なので、ここに書きます。
本当はもっと早く感想記事を上げるつもりだったのですが、
あの訃報を知ってからだとどうしても今回の話と重なってしまって…。
「彼女の人生はなんだったんだろうな」
「何言ってんだよ志摩ちゃん。そんなの俺たちが決めることじゃないっしょ」
何が原因で逝ってしまったのかは本人にしか分からないし、
それを赤の他人の自分達が詮索する必要はないよね…なんて、
二人のこの台詞を通して考えさせられもしてしまいました。
そういう意味でも、個人的にはかなり印象に残る話となりそうです。