やっぱり、"あの日"の事もガッツリ描くんですね。
端島の時代が1945年までの戦時中ではなく、
1955年(今回は58年)の高度経済成長初期に設定されていたのは、
"あの日"の事まで加えてしまうと内容がボリューミーになってしまうためであり、
あの時があって今がある…みたいに、2話の「ピカは落ちたんだよ」のシーンのように
あくまでもほんのり匂わせる程度で進めていくものだと思っていたので、
ちょっと意外でした。
調べてみると…日曜劇場も放送が開始されたのは1956年で、端島で描かれる時代とはほぼ同期。
スポンサーの降板もあり、単発ドラマを放送していた時期もあり…
そうして長い歴史を積み重ね、世代問わず愛されてきたこの枠で
今回の内容が放送された意味は大きい。
脚本家の野木亜紀子さんの筆に乗せる感情も、今回は一際違いました。
あの時代を知らずに育った世代や、"あれ"を目の当たりにしなかった地域の人々の中では
戦争は終わった(終わっている)と捉える人もいるかもしれないけれども、
被爆した人には「戦争は終わっていない」。
百合子の母・寿美子(山本未來)が10年以上経ってから白血病にかかったように、
"あの日"が呪いとなって今でも苦しみ続けている人はたくさんいる。
私も以前、ニュース番組でその特集を見ていて、心が痛みました。
視聴者に届けたい、どうか少しでも思いを馳せて欲しい…
様々な社会情勢を見た上での野木さん自身の心の叫びを登場人物に重ねて、
物語に奥行きを生ませる手法はまさしく「野木節」だと思っていて、
個人的には、過去作品の「アンナチュラル」「MIU404(特に後半)」以来の
勢いを感じさせる回でした。
題材のお陰もあってか、今までどこか「島の住民の1人」の印象が抜け出せず
ぼんやりしていた端島の登場人物の背景も、今回で輪郭がはっきりしてきた気がします。
百合子(土屋太鳳)の人生…そこで生きた証の一部がようやく見えてきたと言いますか。
常にお嬢様らしく振る舞う態度も、何もかも諦めて遠くを見る目線も
"あの日"が関係していて、その事で朝子(杉咲花)との間に壁を作るようになった。
台風の日に喧嘩して投げた母親のネックレスと再会して、整理がついたんでしょうね。
これまでの事を話しながら朝子の着付けが完了した際、同じ顔の向きで、同じタイミングで
2人が微笑みの表情を浮かべているのを見て、
時を経て心の中にあったわだかまりが消えようとしているんだな…と、
じんわり温かい気持ちにさせられました。
タイミングと言えば、「奇跡は、人が起こす」という百合子の言葉の後で
主題歌が流れる所もグッときましたね。
「♪ささやかな花でいい 大袈裟な花でいい」ボーカルの静かで繊細な歌唱から始まるイントロは、
"あの日"を境に光が消え、出口の見えない真っ暗な世界で彷徨い続けていた百合子の世界に
ぽっと灯火が宿った様を表現しているかのよう。
そして…端島でも、現代でも上がる花火は、
悲しみを繰り返さないという強い意志を感じさせる赤い色。
初回ぶりに心が動かされた1時間でした。
過去パートの描写で強いて言うなら…
百合子も良いけれど、早く主人公の背景も見たいって事くらいかな。
それにしても、1945年、1955〜58年、2018年と3つの時代を描くとは…
1作品に対する情報量が本当に凄いですね。
4話になっても説明が多いなぁとは思います。
で、端島での話に見入って、現代パートに切り替わって改めて思うのは…
「やっぱり、現代パートって必要かな?」って事でしょうか(汗)
今回の内容を見るとね、過去パートだけでも十分成立するんじゃないかという気がするんですよ。
まぁでも今回で、過去と現代がちょび〜っとだけ繋がっているようには感じられたかな。
先ほどの花火もそうですが、なぜか鉄平(神木隆之介)のノートがあるのと言い、
玲央(神木隆之介)が鉄平の孫説も浮上。
また、過去パートと現代パートの行き来もいつもより少ないお陰で、普通に話の内容に集中出来て、見やすかったです。
しかし、現代パートに関しては、まだまだ様子見が続きます…。
↓次回の感想はこちら↓
↓前回の感想はこちら↓