
「70年以上この街に住んでますけどね、
まだまだ知らない素敵な道がたくさんあると思いますよ。」
「あっ…人間も一緒かな。長く生きてるとこの、
自分っていうのはこんなもんなんだっていうふうに決めてしまいがちなんだけど、
自分の知らない魅力ってのはまだまだたくさんあるんだっていうこと…」
千明(小泉今日子)と一緒に鎌倉を散歩する成瀬(三浦友和)のこの言葉が、
本作のテーマだったんじゃないかと思います。
具体例として…
千明は定年を迎え、ドラマ制作部を卒業した後、
長い付き合いの三井(久保田磨希)や飯田(広山詞葉)、
後に合流予定の万理子(内田有紀)と一緒に、
オフィスが自宅の小さな会社からリスタートを図る。
副市長として鎌倉のために困っている。
長年実家で営業し続けていた「カフェ・ナガクラ」の新業態提案を試みる。
で…その新業態が何かと言えばキッチンカーで、
復縁したらしい典子(飯島直子)と広行(浅野和之)が商売を始めた
キッチンカーとコラボする事になる。
万理子はフリーの脚本家として千明以外のプロデューサーとも仕事するようになり、
子供向けの脚本教室の講師も兼業。
(↑万理子が大きな変化を遂げていて、私は嬉しいです…)
そして、鎌倉で海ゴミアートクリエイターとして活動しているえりな(白本彩奈)は
優斗(西垣匠)といろんな街を旅している。
今期初登場の成瀬や律子(石田ひかり)、優斗も当てはまります。
今までも多少の変化はあれど、根本的には変わらない日常を送っていた登場人物たちが、
第3作目となる本作では、「自分はこんなもんだろう」と思い込んで
今いる世界に留まりがちだった状態から、
新しい世界へ一歩踏み出してみる姿が描かれました。
妻との思い出の道を歩きつつ、まだ行った事のない道も歩いてみるという成瀬の話は
ちょっとだけ"人生"にも重なって、
太い道、細い道、目立たない道…様々な道を歩み続けた経験が
今の自分を作るんだろうと思わせてくれる、最終回にぴったりのエピソードでした。
後ろ姿を映す引きのカットも何度かありましたね。
エンディング映像での千明と三井が肩を組んで歩いている姿も
2人だけにある強固な絆を感じられてカッコ良かったのですが、
個人的には、冒頭でえりなが優斗に話していた、えりなが幼少期に見たという
妻(母)に優しそうな表情を向けていた父の後ろ姿は
きっとこういう感じだったのかな…と、ラストの千明と和平の様子で分かる
答え合わせ的演出も中々好きでした。
最終回はまとめに入ろうとあれこれ片付けて終わってしまいがちなので、
大抵は印象に残りづらいですし、
最終回前までが濃くて面白かったと感じる事も、正直に言うと時々あります。
本作も登場人物それぞれ、現時点でのけじめをつける内容が続きました。
でも本作の場合、最後まで満足に見終えたのは…
個性豊かな人物による1つ1つのエピソードを丁寧に紡いでくれた所はもちろん、
一定のピリオドはつけつつも、未来が開(ひら)けていくような
明るい終わり方だったからなのかもしれません。
出演者のスケジュールや年齢を考えると、全10話程度の続編は難しいのかもしれませんが、
数年に一度で良いのでSPで続きが見たいですね。
大人になってある程度歳を重ねた今、「最後から二番目の恋」に出会えて良かったです。
出会わせてくれてありがとうと言いたくなる作品でした。
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