
医療ドラマと言えば大抵は、天才スーパードクターが活躍する痛快劇か
医者の等身大な部分も描くヒューマンテイストの二手に分かれるイメージですが、
私としては後者の方が好き。
その上、脚本家は「コウノドリ」も執筆された事のある坪田文さん。
数週間前の某情報番組にご出演していた松本潤さんが
主人公の事を「オペをしない医者」とも仰っていたので、
恐らく好きな作品だろうなと思い、期待しておりました。
で、いざ蓋を開けてみたら…
いつも笑顔で何を考えているのか分からない主人公の言動を補足する看護師の存在に、
正義感が強くて患者に感情移入しがちな若手ヒロインの存在に、
他の科とのいがみ合い、上層部による権力抗争など
医療ドラマならではのベタな設定は確かに所々で見受けられました。
しかし、個人的には「(好きそうな感じで)良かった」の方が大きく上回る初回でした。
どうして「良かった」という感想が出たのか?
それは後から振り返ってみたら…初期設定の紹介に走ってしまいやすい初回で、
何を控えめにし、何を前面に押し出すのかのバランスがきちんととれた
作りになっていたからなんだと思います。
具体的に言えば、本作ももれなく、病院を舞台にしているからか登場人物が多いんですけど、
「医者と患者の対話」を集中的に描いていたお陰で
本作がどんなドラマなのかも掴みやすかったですし、人物の多さも感じさせませんでした。
そこに、主人公が患者の心情に寄り添っている姿を表す演出と、
ゲスト俳優の演技が加わって…
体の痛みは酷くなるばかりなのに、いつまでも病名が分からない不安や、
病名が判明しないと会社を休めず終いには疑われる理不尽さ、
どこの病院で診てもらっても「異常はない」「ストレスが原因では?」と言われる
苦しみと戦い続け、やがて、どうせ分かってもらえない…と心を閉じてしまう、
そんな仲里依紗さんの繊細かつ真に迫る演技には胸が痛みましたし。
人には見えない、自分にしか分からない苦しみを抱えながら生きてきた
患者・黒岩百々(仲里依紗)の日常生活をじっくり描いてきたからこそ、
その彼女だけの世界に入り込んで、彼女の心の内を深く知ろうとする徳重(松本潤)の姿には、
彼女の今までの努力、人生を肯定してくれているかのような優しさを感じさせて
ホロっと来てしまいました。
「あなたの痛みは、本物です」と言われるのが、どんなに心強い事か。
後ろの大きな窓から入る穏やかな日光も含めて、素敵な雰囲気でしたね…。
そして、妙に印象に残っているのは、徳重が何度か
「なんでも治せる医者なんていない」「理想は理想。現実は現実。」と言っていた点。
利益重視ではなく、1人1人患者を診る病院が増えていく事を夢見る
主人公なのかと思ったら、案外冷静な思考は持ち合わせているんですよね。
「医者は探偵でも、エスパーでもありませんから」とも断言していましたし。
でも、百々に対して、痛みと向き合い、諦めないでくれたから
この診断に辿り着けたと感謝する様子や、
もう1人の患者・横吹(六平直政)が助かったのも
滝野(小芝風花)が普段の様子や仕事、家庭事情もしっかり見てくれていたからだと
捉えていた事で、彼がそう考えているのも何となくピンと来たと言いますか。
赤ひげ先生のようにはなれないけど、自分がこうして人を診る事が出来るのは
周りの人たちとの出会いや助けがあってこそ…なのかもしれませんね。
唯一気になる所としては、やはり先ほども書いた
他の科とのいがみ合い、上層部による権力抗争でしょうか。
そんなの気にしていたら…と文句を言っているシーンもありましたが、
医療業界は人手不足で、治療で手一杯だからこそ、
中々手が回らない細かい部分は総合診療科に任せた方が
双方連携が取れやすくなって良いんじゃないかと思えてしまうんですけども。
この辺りの描写は、今後悪目立ちしない事を願うしかないですね。
来週は選挙でお休みだそうで。
2話まで放送してからならまだしも、初回を放送した後で1週間飛ぶとは、
タイミングが悪かったですねぇ…。