2022年秋ドラマ一覧

エルピスー希望、あるいは災いー 7話 感想|「自分は周りとは違う」という心理

 

 

3話の刑事・平川(安井順平)が再登場。

拓朗(眞栄田郷敦)に協力を申し出てくれたので、どういう風の吹き回し?と思ったら…

まぁ〜〜嫌味な男性に描かれていましたね。

組織が一度でも不正を起こせば崩れるという事も、

聞かない考えない話さないの思考停止の日々を送り続けていた事も自覚しつつ、

本人はあくまでも自己保身に走る。

おまけに、開き直って偉そうな態度をとる。

 

でも、分かっちゃうんですよね…組織の中にいながら

「自分は周りとは違う」「自分は正しい」と思い込みたい心理って。

誰しも長い事生きていれば、

そうやって自分を正当化して逃れようとしてきた経験があるかもしれない。

そして…今回は第3章スタートとあって、別々の日常を送るようになった片方の

拓朗(眞栄田郷敦)視点で物語が展開されていった印象が強いのですが、

拓朗からしてみれば、50万円を要求して警察の実態と憶測ばかり語る平川と、

ワインを片手に社会の恐ろしさを語る母・陸子(筒井真理子)は

同じ「そっち側」の人間なんだろうな…とも思います。

今回はそんな、組織の流れに呑まれる事で生まれる人間の"ズルさ"みたいなものが、

複数の登場人物を絡めながら描かれた回だった気がします。

 

自分は能天気ではないと信じている恵那(長澤まさみ)も

ある意味「そっち側」の人間になりかけている状態で、

自分の意思が…というよりかは、社会が、環境がそうさせてしまっているんですよね。

でも、彼女が完全に能天気な人にはならず、

「甘ったれないで下さい」

「悪いけど、酔っ払いの泣き言を聞いてる暇なんて、私にはもうない」

という強い考えに至らせているのは、

間違いなく村井(岡部たかし)の存在がいるからであって。

職場を離れてもなお、度々登場してきては2人の背中を遠回しに押してくれる

村井の"ガソリン"的キャラには、唯一ホッとさせられるものがあるのです。

 

マジクソはマジクソでも…50万円に見合う価値は提示してくれた平川のUSBメモリーと

被害者遺族の会を通して、拓朗はどんどん情報を入手していく。

その情報を聞かされた恵那も、あの時会った謎の男が何者だったのかに気づき始める。

人間の心理をメインに描きつつ、冤罪事件も確実に真相へと一歩ずつ近づいていってます。

組織の実態を目の当たりにして、2人は無事に真相を突き止める事が出来るのか?という覚悟と

目に見えない大きな"不安"を、

拓朗の場合は、八頭尾山の風景を画面じゅうに収めながら、

彼がぽつんとその中にいるように対比をとる(引きで撮る)形で。

恵那の場合は、「あの頃から変われた自分」を物語る机に向かって

字を書いている彼女の様子を、徐々にカメラで近づけて撮る形で

表している演出も面白く視聴しました。

 

本作は真犯人が誰かを謎解きする事をゴールとしている作品ではないので、

本城(永山瑛太)がそのまま真犯人ではあるんでしょうね。

冤罪事件の調査を通しての2人の変化を、本当に地道に描いている作品だと思います。

 

 

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PICU 小児集中治療室 9話 感想|死は待つという事を知らない

 

 

帰宅して、自宅介護に本格的に取り組み始めるカットを見せてからの

南(大竹しのぶ)のナレ死…

最初はあっけないとは思ったけれども、でも、死は突然やって来るもので、

大切な人のために待つという事を知らないものなのだと考えれば、

その展開にしたのも納得行く気がしましたね。

 

また、南の病気については以前からずっと描かれてきたのもあって、

今回はタイトル通り「PICUで働く主人公」のエピソードはお預けして、

彼女を看取るまでで1話分まるまる使うんだろうなぁと覚悟していた部分もあったので。

自覚介護が始まって、数日後に死に際のベッドで南が武四郎(吉沢亮)に

最後のメッセージを贈るという、いかにも"ドラマらしい"感動を誘うような手法をとらず、

本作の舞台がPICUである事を忘れまいと、

母の死を経験しての武四郎の心の機微を見せる方向へと

話を徐々にシフトしていったのも、英断だったと思っています。

 

今回新しく搬送されてきた紀來(阿部久令亜)の「強い自分の"フリ"をしたい」という所が、

同じく親1人で育てられてきた武四郎と重なって見えました。

紀來にかけた言葉はきっと、早くに気づけなかった

彼自身に向けた言葉でもあったのかもしれません。

自分はもう大切な人を失ってしまったけど、

父も娘も生きている限り、彼女にはまだ希望が残っている。

退職願を出したのも、話してみてその現実に改めて直面させられたのが

きっかけではあったんでしょうけど…

後悔を上積みしていくかのような優里(新垣来泉)の

「なんで見捨てたの」「医者なら最後まで治してよ」で

ボディーブローを食らってしまった訳ですね。

 

同級生3人とすぐ会える環境にいるから…

可愛いやり取りをしている子供たちに救われているから…

そんなつもりで、仕事を騙し騙しでやってきた武四郎ですが。

やっぱり毎日、いろんな子供たちの命に向き合わければならない職業ですし、

みんなが最後は必ず元気になって退院していくとは限らないという事は

本人もよく分かっているはず。

 

何やら理不尽な交換条件を出されている植野(安田顕)の今後も気になる所。

植野同様、PICUを去ってしまいそうな2人の行方が

最終回前と最終回でどう描かれるのか…見届けます。

 

しかしこれ…タイトルのつけ方と、作品概要の紹介の仕方で

本当に損している作品なんですよねぇ。

エピソード自体は、命の尊さや人間の弱さを真っ正面から描いていて、

質の良い内容にまとまってはいるんです。

吉沢亮さんと安田顕さんの演技も含めて、

だから、最後まで好意的に見たいという気持ちは働くんですけど。

何度も言っている通り、最初から「理想のPICUが出来るまで」をうたわなければ…

脚本家の過去作品の「アライブ がん専門医のカルテ」みたいに、

主人公の成長記を絡めるような言葉をタイトルに持ってきて、

副題を「小児科医・志子田武四郎の〇〇」としていれば…と思わずにはいられないんです。

タイトルと作品概要は、どんな作品なのか?を視聴者に印象づけるための

名刺だと捉えているので。

勿体ない事したなぁ…と思っています。

 

 

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アトムの童 8話 感想|ゲーム開発の話を見たいだけなのに

 

 

いかんいかん、某ドラマの感想のサブタイトルにつけていた

「何の話だ?」をまたつけそうになってしまった…(苦笑)

それくらい、プロットに連続性が全くないと言っても良いでしょう。

 

当初は、倒産の危機に遭いそうなアトム玩具が、那由他(山﨑賢人)とタッグを組んで、

大手企業となった宿敵・SAGASもとい興津(オダギリジョー)をあっと言わせる

「ワクワクするような」ゲームを開発する…という話で進んでいたはずなんですけど。

最終章に突入した今では、ゲームの"ガワ"だけを借りた経済ドラマもどきの作りへと

すっかり変わり果ててしまっています。

ゲームの頃にはあまりやってこなかった解説が

株主総会に関するワードだと丁寧に施されていたのが、もう迷走している証拠です。

 

警察が出てくる事で無理やり窮地に追いやらせる終盤の構図も、

那由他と隼人(松下洸平)の対立構造も、興津のキャラ変も、

そもそも「宮沢ファミリーオフィス」の存在も、

正直、最終章で盛り上げるための"その場しのぎ"のネタにしか思えず…。

特に興津に関しては、「奪ったつもりはない」と言うのなら、

じゃあなぜ5話の買収のくだりで、してやったりと言わんばかりの憎たらしい表情を

見せてきたのかも疑問でしかないんですよね。

心情変化の描写にまともに尺を割かずに、いきなり年月を飛ばす形での

二段階の章立て構成にこだわったから、こんな違和感が生まれるんだと思います。

 

そして、新キャラの伊原(山崎努)の登場も後出しじゃんけんと言いますか。

アトムの童が制作したゲームに以前から興味を持っていて、

評価をしているという設定なのであれば、

6話のシリアスゲームの時に、本人が直接名刺を渡してくる形で

「君たちに投資したい」と言わせて登場させていれば、

まだ最終章への唐突感は薄まったのかもしれません。

 

私が今回の内容を見ていて唯一心が躍ったのは、

繁雄(風間杜夫)がSAGASの社員たちに

アトムの技術の活かし方を熱弁していたシーンくらいですかね…(泣)

あんなシーンをもっと見たかったですし、

むしろ、初回の時には見せてくれそうだと胸を膨らませていたんですけどね。

「最高のゲームを作る」という当初の軸は変えずに、

ゲームを制作していく過程を地道に描いていれば、

ゲームに疎い世代にも彼らの"熱意"が伝わって、分かってもらえたと思うんですが…

なんで強引に従来の「日曜劇場」の型に嵌めてしまったのか、勿体ない限りです。

(もう総括じみちゃってますけど…(汗))

 

 

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PICU 小児集中治療室 8話 感想|大切な人の命を看取るということ

 

 

圭吾(柊木陽太)の容体の悪化に、

事故で新しく運ばれてきた大輝(森島律斗)と光(寺嶋眞秀)の件に、

まだ治療に向き合い切れていない南(大竹しのぶ)に…と、

再び盛り沢山な内容だった今回。

 

いつもだったら、どれか1つをメインにすれば散漫にならずに済んだのに…とか、

南のエピソードはPICUの話ではないのだから…とかツッコみたくなるもんですが、

今回に関しては、患者や患者家族、主人公家族を絡めながら

"死"を意味する「終末期」と"生"を意味する「奇跡」で対比をとるような構成になっていたし。

また、複数のエピソードを重ねていった結果、武四郎の成長物語に厚みを持たせ、

差し迫る現実の中で、彼が大きな決断を下すのにも説得力を感じさせていたと思います。

 

特に、圭吾に優しい嘘をつくシーンなんかは、

同じ状況で「なんてバカ正直に話すんだ!」と思いながら見ていた2話の事があった分、

武四郎の成長をより実感させてくれました。

真実を真実のまま話さないようになった代わりに、

人に真っ直ぐな性格である彼は、部屋を出て、誰もいない所で泣き始めるんですね。

様子からして泣いてはいるんですけど…

彼の表情をあえて映さないように撮っているカメラワークが、

人前で弱さを見せたくないという

彼の強い意志や人間らしさを反映しているようでグッときます。

普段そんな行動をとらないであろう植野(安田顕)が、

武四郎の腕をポンと叩いて「頼もしくなったね」と言っているのを見て

もう涙腺が崩壊してしまいました(笑)

 

植野がストレートな言葉をかけてくれたのも、

まぁ…異動の件が関係しているんでしょうけども。

今回は内容の質の良さに、純粋に泣かされてしまったものの、

鮫島(菊地凛子)の計画に立ち入ろうとする渡辺(野間口徹)の件だけは、

どうも本作の雰囲気に合わない陰謀論の香りがぷんぷん漂っていて嫌ですねぇ。

あんまりそこは露骨に膨らませないで欲しい限りです。

 

東京の病院に検査しにいくと決意した南。最終章でまた本格的に描かれる事でしょう。

息子である以前に医者でもあるから、それだけ母親のために何とかしてあげたいという想いが

南に伝わったのは良かったですが…

辛いのは、家族を前にして「諦められる」事が本当に出来るのかどうかですよね。

武四郎の場合、子供の頃からずっと2人で過ごしてきましたから…

死を覚悟するなんて、中々至難の業だと思いますよ。

 

 

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作りたい女と食べたい女 2・3話 感想|餃子にはご飯でしょ〜

 

 

2話

 

初回の感想でも触れていたけれども、春日(西野恵未)ってやっぱり、

一緒にいてくれるだけで安心感があるんですよねぇ。

おまけに、気配り出来るし、薬の瓶やらプリンやら+αもいろいろ用意してくれるし…

女性同士だから、言いにくい事も相談しやすい。

今の野本(比嘉愛未)にとって"いて欲しい存在"だというのがよく分かる、

彼女の魅力が光る回でした。

 

食べてくれる相手が見つかってからは、デカ盛り料理を作る日々。

初回で綺麗に収まった自分のためのご飯を見ていた分、

ミートボール盛り盛り!卵8個米4合!ご飯こんもり!といった

見た目も材料も規格外で、良い意味で非現実的な料理が続いているのを見ると、

ああ、本当に作るのが楽しくて、

いっぱい作れるのが嬉しくてしょうがないんだろうなぁ…とも思えてきます。

 

作ってくれるお礼にと食費を払い、何かに困っていたらサポートする。

もらった食費が「次はどんな料理に挑戦してみようか?」というモチベーションに変わる。

この例えをするのも何ですが、パートナーとの新しい形を構築していく点では、

一時期の火10ドラマ(TBS)を彷彿とさせますね。

それも、本作の場合は恋愛が絡んでいない、

あくまでも「需要と供給」で成り立っている関係性に思えるから、

これから残り6話で、この"未知数な関係"がどう発展していくのか、

先を見守りたい気持ちにもさせられてしまうのです。

 

3話

 

餃子にはご飯でしょ!!!!!

と声を大にして言いたくなってしまった(というか心の中ではツッコんだ)春日の新人時代。

餃子にも焼肉にも、ご飯は欠かせませんよ。

まぁ、あのおじさんも若い女性に

「仕事終わりの流儀」とやらを伝授したかったんでしょうけどねぇ…

自由時間をどう満喫するかは自分で決めるもんなんですよ。

 

「ぐび」の音に合わせて、春日の飲み姿を段階的にアップで撮っていく演出も…

いろいろ考えさせられましたね。

常にゆったりとした映像になっているのに対して、

リズミカルなカメラワークが挟み込まれる"異物感"の作りもそうですが。

春日がその場で感じている、普段頼まない食べ方を自ら実践している違和感と、

周りに「"正しい"食べ方かどうか」をジャッジされている圧迫感も

同時に伝わってきて、ちょっと心苦しいものがありました。

 

本作って、語り過ぎない所が良いんですよね。

回想の盛り込むタイミングや映像を使い分けながら、

視聴者にある程度"想像を膨らませる時間"を適度に残してくれる

加減が上手い作品だなぁと思います。

 

餃子でぎっちぎちに詰められていたのが、

最後には窓からの自然光が反射するほどすっからかんになったホットプレートは、

それだけお互いが心から食事を楽しめたし、美味しかったという証拠にもなっていて。

相手の食べっぷりをお酒のつまみにする2人が可愛らしかったです。

 

「食べる」という行為はずっと大好きで続けてきたけど、

漬け卵でアレンジしてみたり、食器を変えてみたりで

質を上げる方向に徐々に変わってきている春日さん。

無意識でも確実に影響されていっている所で、次週は外に飛び出してみるとの事で…

2人がどんな"気づき"を得ていくのか、楽しみですね。

 

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ザ・トラベルナース 7話 感想|礼くんがどうしても叶えたかった夢

 

 

今回の脚本、中園ミホさんだったんですね…。

女性の本音や、女性同士のバチバチを描いていた前回の内容を描いた方と

同じとは思えないくらい、普通〜にハートフルなお話でした。

 

ただ、エピソード自体は悪くなかったんですけど、

見ていてちょっと気になったのは、「看護師が無茶を通す」点では

2話の孤独のグルメ回と共通しているのかな?という事。

あの時は確か、脳梗塞になったばかりの患者に固形食を食べさせての治療法に

最初は良く思っていなかった歩(岡田将生)だったのが、

静(中井貴一)の真意を知って、やがて医者と協力するまでの過程が描かれていたんですが…

それを考えると今回の内容も、

"看護師の本来の仕事"を通して魅せる事は出来たはずなんですよねぇ。

 

例えば、強行する人物が、2話では静だったのが、

今回では歩になっていた所まではまだ良かったものの。

うーん…何と言うか、最後の夢である映画撮影に1日付き添う形ではなく、

骨転移で手術は難しいと言われようが、

母とスイス旅行に行けたり、今後も自主制作が出来たり…と

小さい頃からいくつか叶えたかった夢を叶えられるような体にするために、

多くの医者に反対されながらも治療を諦めない描写があった上で、

あの映画撮影のくだりを最後に盛り込んだ話になっていたら。

本作のもう1つの軸である「歩の成長」もより伝わってきたし、

「医療モノ」から脱線しかけているようにも映らなかったんじゃないかと思ってます。

 

終盤の、礼(荒木飛羽)がいたベッドの横に1つの椅子が置かれている構図も、

シングルマザーで忙しい日々を送っていた分、

2人きりで話す時間が欲しかったんだろうな…という

母の本音と不器用さ(ある種の"夢"?)が覗き見えただけに。

内容"だけ"で捉えると、母がただの過干渉で

お見舞いにまともに来ない人で終わってしまったのも勿体なかったですね。

「人を見て人を治す」なら、親子の関係の修復も取り入れて欲しかったです。

 

で…視聴率は良い方なのに、登場人物が多いせいか、なぜか駆け足に見えるまま最終回。

静と天乃(松平健)の関係性もはっきり明かされてませんよね?

でも、それ以上に個人的に「そこは触れなくて良いの?」と思っているのは、

太郎(泉澤祐希)を立ち直らせる回がなかった事ですかねぇ。

実は…途中まで太郎役が泉澤祐希さんだと気づかなかったんですよ(笑)

それくらい、小者感たっぷりなキャラなんですよね。

だから、今までの出演作で爪痕を残されていたのを考えると、

あの役が本当に泉澤さんである必要があったのかという疑問がず〜っと残っております。

 

 

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親愛なる僕へ殺意をこめて 9話(最終回) 感想|綺麗にまとまったけど納得は行く。

 

 

なるほど…な最終回。

よく取り上げられていた"裏表"に因んで例えるなら、

表のテーマは「真相探し」である一方で、裏のテーマは「痛み」だった訳ですね。

 

京花(門脇麦)は幼少期に、虐待や差別で得た痛みを

受け止めてくれるような存在をずっと探し求めていたし、

エイジ(山田涼介)も同じく、「殺人鬼LLの息子」というレッテルを貼られ続けて出来た傷を

誰かに癒してもらいたかった。

亀一(遠藤憲一)は自分がこの世界に存在する意味を見出すために

"痛み"を知ろうとする行為を止める事はなかったし、

乙(夏子)も家族に必要とされたくて、人に危害を加えていた。

で…ナミ(川栄李奈)は親友の死で、エイジに出会うまでは心に深い傷を負っていた。

こんな感じで、登場人物全てに当てはまります。

そう考えると…唯一「肉体的な痛み」である

序盤のサイ(尾上松也)の拷問シーンも、必ずしも無駄ではなかったって事ですね。

(衝撃の真相続きで、視聴者がサイの存在を忘れていないかどうか心配ですw)

 

凄い綺麗にまとめたなぁとは思うし、

後半は答え合わせ展開とそれに伴う台詞量が多くて、やや難解な内容にはなっていたし。

正直、前回で真犯人が明かされてしまったために

今回の内容が蛇足気味だった気がしなくもなくて、

ミステリーの作りとしては完璧だったとまでは言い切れないんですが。

でも…個人的には、あの結末で終わるのも納得は行きましたね。

何より、この手の作品で扱われがちな「二重人格」の設定を、

客寄せパンダ的な"道具"として片付けない所が、

本作を好意的に見られた大きな理由だったのかもしれません。

二重人格になるまでに至った残酷な背景や、

エイジの二重人格をきっかけに周りが孤独を抱えていく過程、

また、エイジと同じく心が壊れそうな日々を送っていた事など…

設定を通して、それぞれにスポットライトを当て、

さらに役者さんの演技で立体的に魅せる形で

視聴者を引き込ませる作風に徹していたのが良かったです。

 

山田涼介さんの演技力の高さも光りましたね。

前にも書きましたが、おどおどした表情を筆頭に

コミカルな演技がお得意なイメージを勝手に抱いていたのが、

本作ですっかり払拭されました。

片目に思いっきりハイライトを入れて強い意志を見せたり、

逆に真っ黒な瞳で睨みつけて、絶望感と怨恨を増幅させたり…

目の中に取り込む光の調整で、今主人公がどう感じているのかを訴えかけてくる所が

素晴らしい役者さんだなぁと思います。

若干上からになってしまいますが、山田涼介さんの演技だけでも

見る価値のある作品だったのではないでしょうか。

 

 

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作りたい女と食べたい女 1話 感想|「女」というだけで

 

 

以前「王様のブランチ」の漫画コーナーで紹介されて、題材に興味を持ったものの、

結局読んでいないままだった原作が実写化されるとの事で、

視聴してみようと決めておりました。

「夜ドラ」枠の作品は、話数も多い上に毎日あるし、すぐ溜まっちゃうし…

おまけに録画も被り被りで断念した作品が多かったんですが、

(視聴は「カナカナ」「星新一の不思議な不思議な短編ドラマ」のみ)

本作の場合は10話と短く、秋ドラマも終わりに差し掛かっている時期での放送だったのも

視聴理由に繋がったのかもしれません。

 

初回の内容は、2人が抱えている背景と、2人が出会うまでが描かれました。

基本的に日常に沿って物語が進んでいくので、その時彼女はどう感じているのか?を

視聴者が読み解きながら見る形となります。

適度な"余白"を作ってくれたお陰で、

いっぱい作れば作るほどやり甲斐があって楽しいけど、自分は少食だからと諦める…

でも「いつも少食にしていてお上品」「家庭的」な女性になりたくてなっている

訳じゃないという、野本(比嘉愛未)の内心やきもきした気持ちと。

外食だとまあまあコスパよく収まるけど、容姿もあってか偏見がつきまとうから

家でチキンバーレルみたいな量の多い物を買って食べた方が気が楽…でも値段が高い…という

春日(西野恵未)の日々の葛藤がよく伝わってくる内容になっていました。

 

そして、2人に共通しているのは、「女だから」ってだけで自分を評価されてしまうという事。

説明台詞でもなくモノローグでもなく、映像を通して人物を紹介し、

さらに15分間でコンパクトにまとめた作りになっていたため、

これは次回以降も期待出来そうだと思わせてくれた初回でした。

 

比嘉愛未さんはつい最近まで、おどろおどろしい役を演じられていましたが(笑)

その分、周囲から一目置かれるキャリアウーマンっぽい役には

安心感と安定感を感じさせます。

一方で、西野恵未さんは初めてお見かけするお方ですね。

…というのも、本業は女優さんではなくキーボーディストなんだそう。

しかし、食べるのが好きな春日という女性にはぴったりの佇まいで、

背が高いのも影響しているのか、一緒にいて心が落ち着くような、

重い荷物を背負って相手をほぐしてくれるような、

そんな包容力が滲み出ているんですよねぇ。

 

最後は、本作のタイトルにもなっている「作りたい女と食べたい女」にかけているのか、

野本が一緒に食べない所はちょっと意外でしたが、

大口で黙々と食べる春日の様子を見て、うっかり目頭が熱くなってしまいました…。

目の前で自分の手料理を美味しそうに食べてくれるという事が、

インスタでの「見えているつもりが見えにくい」反響や、

社員が良かれと思ってかけてくれる言葉以上の

最高の"褒め言葉"だったんだなぁと実感するラストシーンだったと思います。

 

月〜木と毎日あるため、感想は今後も書くかどうかは不明ですし、

明日以降は録画視聴になってしまいますが、引き続き見ていくつもりです。

 

 

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拾われた男 8話 感想|親子それぞれ遺伝してる!

 

 

武志(草彅剛)、とんだ大嘘つきだった(笑)

調べたらすぐ分かるような嘘から、聞いただけでもあり得ないだろうと思う嘘まで…

次から次へと重ねていくあのシーンにはもう、じわじわと笑いが止まりませんでしたよ…w

 

武志はアメリカの多くの人からは「ユーモアに溢れた人」「気さくな人」という

イメージを持たれていた一方で、

幼い頃から共に過ごしてきた諭(仲野太賀)だけは彼を

「何を考えているのか分からない人」「翻弄させて困らせる人」だと捉えていた。

でもそれは、相手が今立たされている状況や年齢、

出会った時期によって与える印象が異なっているだけで、

彼は現在まで「相手を想って、突飛な発想・発言で喜ばせようとする」

人である事は一貫しているし。

その性格は、スタッフに差し入れを配り歩く平造(風間杜夫)から

遺伝しているんだろうなぁ…とも思わされます。

 

他にも、どうしようもない人だから「けだもの」と呼ばれる所は、諭と平造で似ていたり。

いつも物を片付けるのは自分だと文句を垂れながらも、

結局また旦那の食べた痕跡をついつい拾ってしまったり。

今回はそんな、自分の心の中に"家族と過ごした時間"が

確実に存在している事を示す「遺伝」と、思い出や出来事が蓄積されればされるほど

縁を切れそうにない「家族」が描かれた回だった気がします。

 

諭にとっての"もう1つの家族"である福子(永尾柚乃)も

徐々に「ポスト結」になりつつありますね。肝の据わった感じがママそっくりです(笑)

特に、福子が先に「まずは冷静になれ!」って肩に手をぶつけてきて頼もしさを見せた後で、

結(伊藤沙莉)も無意識に同じ行為をとるというのが…

ああ、親子だなぁと感じられてほっこり。

内容自体は、武志がアメリカに残留すると決めた理由や、

その時武志はどうしていたか?を紐解いていく展開になっていて、

前回以上にシリアスさが増した分、今回は福子のキャラクターに癒されました。

 

諭が「2年後来れたら来るわ」と言って去ってからの、武志のまばたきの動きもね…

本当、なんて事ない動作なんですけど、

ゆっくりと閉じられていく間に、諭への想いとか、家族の事とか、後悔とか、

いろんな気持ちが込められているようで、ちょっとだけジーンと来ちゃいましたね。

そのシーンがあった上でのあの「もしもの世界」。

アメリカで1人、大切な人を長年考え続けていたのだというのが分かります。

 

15年間バラバラになっていた家族は、再び1つになれるのか?

そして、もちろん…1000万円をどうするのか?

(映画の脇役出演って、給料いくらなんでしょ??)

役者業の事もあるので、どんな結末に落ち着くのかが読めませんね。

 

 

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エルピスー希望、あるいは災いー 6話 感想|相克の関係。言い得て妙!

 

 

「相克の関係」か…面白い事言うなぁ、正一(鈴木亮平)。

 

恵那(長澤まさみ)にとって、正一が手強い相手である事、

彼との色恋に溺れたら中々抜け出せないという事は以前でも語られていたけれども、

今回のあの冷静な声のトーンからは、

彼を俯瞰的に見る形で、あえて意識の外に追いやろうとしている

ささやかな対抗心みたいなものを感じさせました。

一方で正一は、指輪という名の"呪い"で、恵那の滾る感情を一旦封じ込めようとはした。

でもそれは今の彼女には通用せず、自身の思惑に気づいていると察した上で

別れを切り出したんでしょう。

 

「俺とお前は、いつの間にか相克の関係にある。」

「生半可な情理などでそれは埋められないものだ。近い将来君は俺を憎む事になるだろう。」

「そういう君だからこそ俺は好きだった。それはこれからも変わらない。」

敵か味方か、ここまでず〜っと得体の知れない存在感を放ってきた正一ですが、

少なからず、彼女に愛情を抱いていたのは事実なんだろう…とは

この言葉から伝わってきます。

「人生から押し流す大事なもの」で恵那が正一を押し流したように、

正一も恵那を押し流す選択をとったんですよね。

 

正一が退職届を出してからメインテーマがかかるまでの、一連の流れはとても清々しくて。

ああ…彼は、権力がものを言う世界に飛び込む形で

"独り"で戦いに挑もうとしているのだと思わされるシーンでした。

そして、独りになっても彼の背後には、思わず視線を感じるほど

恵那が大々的に映ったポスターが貼られているという構図もシビれます。

返り咲いてもなお、政界が絡んでいる冤罪事件に立ち向かおうとする恵那と、

溢れ出る才能を止められないまま次のフィールドへと移った正一…

離れたとしても、これからも2人の「相克の関係」は続いていくという事を示した点では、

次章への良いバトンタッチ回になったんじゃないでしょうか。

 

恵那と正一の関係性とは別に、

人を駒にして遊んでいるかのようなメディア業界の人事の闇も興味深く視聴。

冤罪事件で魂に火をつけた村井(岡部たかし)は、

「フライデーボンボン」での最初で最後の反抗を見せてくれましたが、

左遷されたという事は、視点を変えれば

今までくすぶっていた自分自身の変化を認められたとも解釈出来る訳で…

そういう意味では爪痕は残せているし、本人も悔いはなかったんだろうと思います。

 

報道生活がスタートする当初は意気込んでいたのが、

時間が経つにつれて、初回で自分が言ったまんま

「誰も自分たちが報道した事の責任なんて振り返りたくない」

「報道って時間ないふりして、いつも必要以上に忙しい」状態に陥ってしまっていた恵那が、

果たして、拓朗(眞栄田郷敦)と共に政界に踏み入れ、真相を見つけ出す事は出来るのか?

まだまだ楽しみです。

 

 

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