冒頭でいつも流れる被告人の犯行現場のシーンですが…
今回は強く「お、なんか違うな?」と目を惹かれましたね。
猫がおもちゃのピアノを弾くと出る賑やかで軽い音と同時に映し込まれるのは、
治安の悪そうな小路の中を走る男性という、何やら物騒な場面との不協和音具合。
そして、とある高校生がシリアス調の曲をピアノで弾くシーンと、
らせん状の階段を上って逃走する引きのカメラワークを
重ねる事によって滲み出る「迷宮入り」感…。
この事件には明かされたくない"何か"があるのかも?
一度踏み入れてしまったら深い闇が待っているのかも?と思わされました。
要点もアバン内で簡潔にまとまっていて、テンポの良さは抜群。
笑い・怪しい・切ない・悲しい…1時間内でいろんな感情も味わえるお得さ。
何だか面白みが増している。その勘が当たっていたのかどうかを確認するために
演出家を調べてみたら、田中亮さんという本作初担当の方でした。
過去作品で何度かお見かけした名前でも、凄い演出をされるんだなぁと思うほど
今まで印象に残った事はなかったんですが…(失礼…^^;)
冒頭のシーンの中では一番良くて、今後この方の担当される回をまた見たくなってきましたね。
高校生がピアノを弾いていたので、この犯行は共犯によるものだと察して、
養護施設の仲良しの子2人が出てきた時点でオチは読めてしまったけれども、
今回のようなストレートな人情話もまた好み。
というか…もしかしたら、今までで最も好きな話だったかも。
坂間の妹・絵真(馬場ふみか)が坂間(黒木華)を頼りにしている様子が描かれたのと、
兄妹になろうと誓い合った3人を絡めて「きょうだい」をテーマにしたのも
捻りが効いていましたが、
それ以前に、今回の裁判は坂間にしか出来ないものだという説得力がありました。
普段はポーカーフェイスを貫こうとしている分、いざ感情を伝えると
心の中で溜めていたものが勢い良く出てしまう所。
(境遇はかなり違うけど)自分の力ではどうにもならない現実を受け入れるしかない所が、
坂間と博人(田中偉登)の2人は似ています。
だから、彼女が入間っちゃうのがとても分かる。
「人生は、自分の思い通りにならない事の方が多い。
しかし、いかなる理由があろうと、あなたは罪を犯してはならなかった。」
「あなたが逆境を跳ね返し、切り開いていける事を。
そして、辛い経験があるから今があると、いつかそう思える日が来る事を。」
「心から願っています」
最初はいつもの"真面目""冷静"な坂間らしく、自身の行為を反省させる言葉を
容赦なく投げかけるけれども、
彼の未来を心から願っているのか、その硬い表情が徐々にほぐれて
人間らしい柔らかな顔つきに変わっていく黒木華さんの演技…目頭が熱くなりました。
裁判はゲームだと言う弁護士には、同じマネー好きである弁護士を紹介して、
民事裁判なら損害賠償を出せるだろうという事で後にぎゃふんと言わせ。
3人には手術費を捻出して、別の高校への編入を掛け合ってみるかを
みちお(竹野内豊)と検討してみるフォローの手厚さも良いですね。
この描写が少しでもあるだけで、視聴者によっては綺麗事と捉えかねない
上記の言葉をぶつけるシーンにしっかり意味を持たせています。
そして、彼女が泣き止むまで待つというさり気ない気遣いを見せる
みちお(竹野内豊)の懐の深さにやられます…
やっぱり、この裁判官なくして今の坂間はなし…ですね。
今回もプロフェッショナルな人々の話を満喫しました。
本作、ここ最近職業モノが続く月9の中でも当たりかも?
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