PICU 小児集中治療室 9話 感想|死は待つという事を知らない

 

 

帰宅して、自宅介護に本格的に取り組み始めるカットを見せてからの

南(大竹しのぶ)のナレ死…

最初はあっけないとは思ったけれども、でも、死は突然やって来るもので、

大切な人のために待つという事を知らないものなのだと考えれば、

その展開にしたのも納得行く気がしましたね。

 

また、南の病気については以前からずっと描かれてきたのもあって、

今回はタイトル通り「PICUで働く主人公」のエピソードはお預けして、

彼女を看取るまでで1話分まるまる使うんだろうなぁと覚悟していた部分もあったので。

自覚介護が始まって、数日後に死に際のベッドで南が武四郎(吉沢亮)に

最後のメッセージを贈るという、いかにも"ドラマらしい"感動を誘うような手法をとらず、

本作の舞台がPICUである事を忘れまいと、

母の死を経験しての武四郎の心の機微を見せる方向へと

話を徐々にシフトしていったのも、英断だったと思っています。

 

今回新しく搬送されてきた紀來(阿部久令亜)の「強い自分の"フリ"をしたい」という所が、

同じく親1人で育てられてきた武四郎と重なって見えました。

紀來にかけた言葉はきっと、早くに気づけなかった

彼自身に向けた言葉でもあったのかもしれません。

自分はもう大切な人を失ってしまったけど、

父も娘も生きている限り、彼女にはまだ希望が残っている。

退職願を出したのも、話してみてその現実に改めて直面させられたのが

きっかけではあったんでしょうけど…

後悔を上積みしていくかのような優里(新垣来泉)の

「なんで見捨てたの」「医者なら最後まで治してよ」で

ボディーブローを食らってしまった訳ですね。

 

同級生3人とすぐ会える環境にいるから…

可愛いやり取りをしている子供たちに救われているから…

そんなつもりで、仕事を騙し騙しでやってきた武四郎ですが。

やっぱり毎日、いろんな子供たちの命に向き合わければならない職業ですし、

みんなが最後は必ず元気になって退院していくとは限らないという事は

本人もよく分かっているはず。

 

何やら理不尽な交換条件を出されている植野(安田顕)の今後も気になる所。

植野同様、PICUを去ってしまいそうな2人の行方が

最終回前と最終回でどう描かれるのか…見届けます。

 

しかしこれ…タイトルのつけ方と、作品概要の紹介の仕方で

本当に損している作品なんですよねぇ。

エピソード自体は、命の尊さや人間の弱さを真っ正面から描いていて、

質の良い内容にまとまってはいるんです。

吉沢亮さんと安田顕さんの演技も含めて、

だから、最後まで好意的に見たいという気持ちは働くんですけど。

何度も言っている通り、最初から「理想のPICUが出来るまで」をうたわなければ…

脚本家の過去作品の「アライブ がん専門医のカルテ」みたいに、

主人公の成長記を絡めるような言葉をタイトルに持ってきて、

副題を「小児科医・志子田武四郎の〇〇」としていれば…と思わずにはいられないんです。

タイトルと作品概要は、どんな作品なのか?を視聴者に印象づけるための

名刺だと捉えているので。

勿体ない事したなぁ…と思っています。

 

 

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