前回に引き続いて「なさそうでありそう」と思わせる題材選びが
中々良い所を突いてきている作品です。
本作がもし数年前に放送されていたら、設定のどこもかしこも嘘臭く感じられて
一種の"ファンタジー"として流されてしまうものなのかもしれませんが、
「脳内チップ」と検索すれば、それに関する記事が何件もヒットする今なら、
(前回の感想と被りますが)近い将来起こりうるのかも…という恐怖心さえ覚えます。
内容自体もそれを反映していて、先端科学のワクワクする部分だけを取り上げるのではなく、
実現させる際に起こるデメリットや危険性、実験が成功して導入されるようになってからの世界も
じっくりと描写して行っているから、ついつい惹かれてしまうんですよね。
今回は、チップを脳内に入れ込まれた人体実験にまつわる事件のお話でした。
今野浩喜さんがゲストの時点で只事では終わらなそうな予感はしましたが、
「そこに愛はあるんか!」とは安易にツッコめないバッドエンドで…
自身が実験台になるのを止めない時の今野さんの白目演技と頭の装置の組み合わせ、
夢に出てきそうなほどゾッとしました…(汗)
劇中にかかったオペラもまた良い仕事をしていて、映像とのミスマッチ具合が
鮎川(今野浩喜)の科学に取り憑かれた頭のイカれっぷりを際立たせていたし。
精神転送に成功したかどうかは、微かに微笑むカーン(安藤政信)の様子で視聴者に察しさせて
あえて濁した終わり方も、次回も見たくさせるニクい作りだったと思います。
そして、もう1つ印象的だったのは、そんな鮎川のクレイジーさを描写した事で、
先端科学に常に興味を持つ小比類巻(ディーン・フジオカ)が純粋な心の持ち主である事を
さり気なく浮かび上がらせた人物対比の仕方。
鮎川が亡くなった時に駆けつけるでもなく、
唯一彼だけが立ち尽くす様子を長々と映していたのが物語っているなぁと。
一見、性格も価値観も全く違うようでも、
小比類巻が不老不死に興味津々になっている様子を見る限りは、
"科学にのめり込む"点である意味似た者同士とも言えて…
カーンも今後再び登場する匂いを漂わせていましたし、
そこにつけこまれそうな危うさを感じています。
そうならないように、小比類巻の行き過ぎた好奇心を引き止める立場として
対照的に用意されたのが
最上(岸井ゆきの)と長谷部(ユースケ・サンタマリア)の2人って所でしょうか。
科学にポジティブな感情を抱いている小比類巻と、
科学の発達を冷静に、客観的に捉える若干ネガティブ寄りの最上と、
唯一科学への知識に乏しく、視聴者側に近い考えを持ちながらも
捜査官としての仕事はしっかりこなす長谷部。
早くも3人のキャラにも安定感が出ているのも見やすいです。
次回は歩くご遺体との事で、小比類巻の妻の蘇生にまつわる
縦軸絡みの話が続きますね。
このまま"1話完結型の事件パート"と"縦軸"で切り離さずに、
事件を追う事で蘇生の手がかりを掴んでいく…という構成になっていくのかもしれません。
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