寅次郎(井上優吏)、人生で初めての失恋。
「男はつらいよ」のあの寅さんに育つまでの
"エピソード0"感が今までより濃く出ていたとともに、
愛情は親から子供へ、兄から妹へ受け継がれていく…も
車屋の動きを絡めながら描いた回でもありました。
父・正吉(きたろう)が平造(毎熊克哉)に告げた最後の言葉。
「どうしようもないろくでなしの、いい加減な事ばっかり言って…
口も悪いし行も悪い。そういう、ダメなお前に戻れよ…」で早速泣かされてしまったなぁ。
ずっとダメダメな息子を見てきたからこそ、
その言葉に愛情が込められているというのが伝わるシーンでした。
光子(井上真央)はそんな温もりのある正吉と共に暮らす事で
芯の強い愛されるお母さんになり、
寅次郎はその母の元で、誰よりも人の気持ちが分かる優しい子へと育つ。
そして、妹・さくら(野澤しおり)もまた兄の背中を見て成長する。
「お父さんを好きになる!」と言った当時のさくらが
時を経て自ら平造に近づくようになるのも感慨深く。
ああ、こうやって車家はいつもの日常へと戻れたんだなぁと思える流れと
機敏な感情描写の積み重ねがあったからこそ、
12歳になった寅次郎、街の雰囲気が変わり
新たなキャラクターのいる世界観にも、すぐに馴染む事が出来ました。
何年後かになった時は、藤原くんロスではあったけれど…
井上くんの寅さんも上手かったなぁ。
「ばかだねえ」の言い方や見た目は寅さんに近くなってきたと思わせられるんだけど、
ただのマネっ子ではなくて、中学生の時期にあるナイーブな一面とか、
あどけない幼少期とは違った大人らしい考え方が滲みでてくる所とか。
難しい役どころを自然と演じられていました。
眉毛にあるいぼ、笑うと目が線になるのも一緒で…
よく似た方をしっかり用意されたスタッフの意気込みも凄い。
序盤では毎熊克哉さんの演技に持ってかれっぱなしで、
竜造(泉澤祐希)が以前とさほど変わりない姿で帰ってきたシーンなんかは
対比が効いていて。
いろんな感情が込み上げんばかりに抱きしめる平造の様子に、
この人は戦地でどれだけの苦しみと地獄を味わったのだろうか…と、
過去は詳しく明かされなくとも、つい想像してしまいました。
基本的に可笑しみのあるストーリーではあるのですが、
ふとした時に戦争時代のやるせなさ、残酷さ、繊細さも含まれていて…
岡田脚本の真骨頂でもあり、それが山田洋次原作の世界観と
見事にマッチングしてるなぁと思わされます。
キャストもまたその世界観にハマっていて、見終えた後はいつも
「ああ、1つの作品を見た」という余韻に浸れますね。あと2回か…(泣)
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