ラストシーンの神戸ルミナリエのように、
見た者全ての心に"灯火"が宿り続ける、そんな最終回でした。
時を経て、安(柄本佑)が成長した家族を後ろから温かく見守る図は、まるで、
彼が亡くなったとしても思い遣りや優しい気持ちは
私達の世界で生きているのだ…というメッセージにも思えました。
安が心のケアを通して学んだ事は、
「誰もひとりぼっちにはさせへん」という事。
共に夢を追おうと励ました仲間、被災者全てに寄り添いたいという気持ち、
片岡(清水くるみ)が一時出て行ってしまった事で覚えた後悔と苦しみ、
自分が病気になったとしても未だ傷を抱える患者を最後まで診たいという意思…
今までの話を思い返してみると、どのエピソードも
「今目の前にいる人を救いたい」点で、彼の揺るがない信念を
描き続けてきたものばかりでした。
そんな彼に助けられたから、傷を抱えながらも前を向こうとする家族、患者がいる。
カセットテープの中にいる安の孤独を埋めようと
セッションをしてくれる湯浅(濱田岳)がいる。
誰かの為になろうと動く北林(浅香航大)がいるし、
講義を通して弟の活動を伝えようとする兄・智明(森山直太朗)がいる。
安に救われた者の心の中には、時間が経ったとしても彼は生き続けており、
それに恩返しをするように、彼の人生を紹介し、職務を引き継ぎ、
当時の記録を綴った著書を出版し続ける事で、彼の想いは次の世代へと受け継がれていく。
こうして出来上がる"人と人の繋がり"が、今を生きる若者にとって
いかに価値のあるものかを目の当たりにしたようで、
その温かさに涙を流さずにはいられません。
これが「心の傷を癒すということ」であり、
伝えていく事で孤独を抱える人が少しでもいなくなるかもしれない…という
希望を託された者=「残された光」なのだと
自然と感じ取れるタイトル&サブタイトルの入れ方も含めて、
最後まで「ああ、良い作品を見たなぁ」という気持ちで満たされるような作品でした。
全4話という短い話数だけあって、時間経過の描写は確かに多かったものの、
この世界の登場人物にはそれぞれの"生きた時間"があり、
駆け足を一切感じさせない脚本と演出がとにかく素晴らしかったです。
劇伴の緩急のつけ方も良く、わざわざそれで煽ろうとしなくても
「無音」と「行間」を使いこなせていれば、緊迫感溢れる雰囲気は
しっかり作れるのだとも証明してみせたと思います。
「知らなくていいコト」とは全く違った顔を見せ、1つ1つの言葉に重みを残す、
この人でなければ安先生は成立しないと思わせる柄本佑さんの存在感の大きさ。
震災に耐えながらも、3人の子供を女手一つで育ててきた
厚みが感じられる尾野真千子さんの佇まい。
コンサート会場前で、言葉にならないようなぐしゃぐしゃの感情を堪える濱田岳さんの上手さ。
安を支える師匠の役としては最適過ぎる近藤正臣さんのハマり具合。
このドラマに携わった役者さん一人一人の名前を挙げたいくらい、
毎回の演技にも魅せられました。
桑原亮子さんという脚本家を知れた事、
「こんな演技もされるんだ」「こんな優しい世界観も生み出せられるんだ」など…
全てにおいて新たな発見・収穫を得た作品でもありました。
これは毎年、特にこの時期になったら再放送すべきだと思います。
人生とはどんなものか?生きるとは何か?を、少しでも被災者目線になって
考えさせられる作品に出会えた事に、感謝します。
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