ドラマスペシャル スイッチ 感想|偏屈でもどかしい大人の"人間愛"

 

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いや〜…坂元裕二作品、やはりハズレがないですね。

刑事ドラマが多く、硬派なイメージのテレ朝ドラマにも溶け込めちゃう。

 

序盤の階段を上から突き落とすという2サスあるあるのシーンで

犯人の顔を既に見せる時点で、ただのサスペンスではないとは思ったけれど、

そこからの展開の切り替わりっぷりが容赦なかったですね。

「カルテット」らしいクセ強めの人物しかいない会話劇が繰り広げられて

クスクスさせられっぱなしだった途端、

星野(石橋静河)から告げられる真実の重さに

さっきまで楽しんでいた私の頭が鈍器で殴られたような感覚に襲われて、

また更に深い部分へと踏み込んでいく…。

「スイッチ」って何だ?ユルいコメディからシリアスへの方向転換?

あぁ!真の「スイッチ」はそれかーー!!

回を増すごとに物語がクライマックスに近づく連ドラではなく、

2時間の放送内で感情がグワングワン揺さぶられて惑わされる心地になる作品は

随分久しぶりでした。

(そういえば、松たか子さん、「カルテット」では終盤で偽名を使っていたという

大きな秘密を抱えていた役だったっけね…(笑))

 

途中まで見て、このヘビーな内容を連ドラにしないのは勿体なかったなぁとも

思いましたけど、最後まで見終わってみれば、単発で正解だったと思いますよ。

連ドラだと多分JOKERになりかける円(松たか子)を直(阿部サダヲ)が止めるくだりが

途中からパターン化して行きそうですし、

坂元さん自身も描きたい所は「不条理な世の中に対する怒り」「歪んだ正義感」じゃなくて

「ちょっと拗れた変わった形の"人間愛"」だったでしょうしね。

 

2人は人生の中で恐らく一番辛い経験を分かち合っていて、

お互いが一番の良き理解者でもあるのだけど、

それは裏を返せば愛には発展せず、良くも悪くも"親友"の関係で止まってしまう。

時間を共にしている内に自ずとそこは分かってしまって、分かっていたから別れたし、

今後も元サヤに戻る事はないのかもしれない。

最初は馬が合わなそうな相手と付き合ってるなぁと感じたのも、

もしかしたら自分の中の闇と程よい距離感を取りたかったからその人を選んだ…

という可能性もあるんだと思いますよ。

でも、直と円だけしか知らない秘密があるように、

ロマン思考の持ち主の貴司(眞島秀和)と亜希(中村アン)も

恋人には言えない(言わない)秘密がある。

そんな、人って案外相手の事を分かっていないのかもよ…という

ほんの皮肉が混じったお話だと受け取りました。

 

(序盤の段階で)なぜこの人と付き合い出したのか全然理解出来ないと思わせる

眞島秀和さん&中村アンさんのキャスティングも妙にしっくり来ましたし、

本来なら重くぐったりとした内容になり、コメディとシリアスのちぐはぐ感が出てしまう所を、

阿部サダヲさんを主演にした事で雰囲気を和らげ、小ネタ要素を忍ばせる坂元作品の作りと

良いバランスが保てていたんじゃないかと思います。

 

ミニドラマ、SPと来たら、今度はやはり連ドラが見たいですねぇ…。

首を長くしてお待ちしてます。

あ、そうそう、来週の「必殺仕事人」の流れは狙いましたよね?(笑)

 


Dr.コトー診療所2004 特別編 1話 感想|名作は最初だけでも泣けるよね…。

 

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えっと…1話感想とは書きましたけど、再び会えて感動したのか

途中まで「2004」とはあまり関係のない懐古話ばっかり書いちゃってます(汗)

どうしても書き残したかったので…すみません…(苦笑)

 

去年の夏頃、夕方の時間に再放送されていた「無印」「2006」を見てました。

無印の1年後を描いたSP「2004」がすっ飛ばされた形の編成だった為あちこちの変化に驚き、

地元のレンタルショップで借りて補完しようにも、在庫がどこもなくて、生活環境も変わって

結局見られず仕舞い…という思いでいた中での今回の特別編放送。嬉しかったです。

 

率直に書いてしまうと、本作は、去年生まれた数々の新作では

太刀打ち出来ないほどの名作でした。

昔の作品でなければ確実に年間ランキング1位にしていました。

先週フジテレビで放送されていた「名場面アワード」の「3分で泣けるコーナー」で、

2006の最終回の、入院中の彩夏(柴咲コウ)にコトー先生(吉岡秀隆)が会いに行く

シーンが紹介されていましたが、それ以上にもっと涙腺抉られるエピソードはいっぱいあるよ!!

と言いたくなるほど、毎回泣かずにはいられない作品だったと思います。

 

特に私が印象に残っているのは、無印の8話のあきおじの回と、

最終回で剛利(時任三郎)が、過去の問題が取り上げられて島を出ようとする

コトー先生を止めに行くシーン。

2006の方だと「来年はお祭り行けると良いね」と心に決めた星野夫婦の回かなぁ。

 

静かに包み込んでくれるような柔らかさがあって、その性格が故にいじられやすくて、

でも時折儚さや哀愁も覗かせるコトー先生のキャラクターは勿論好きだったけれど、

それと同時に剛利の変化の描写にも惹かれて見てしまってました。

最初は誰とも口を聞かなそうな堅物な人が、関わりを通して徐々に心を打ち解けていく…

っていう流れに弱いんですよねぇ…。

「みんなが、俺が、どれだけ…待ってるのか…」

初めて本心がだだ漏れになりかけたこの台詞、今でも覚えてる。

 

確かに「泣ける」作品ではあったけど、それは流れ行く日常の中で経験する

過ちとか、弱さとか、ズルさとか、繋がりの貴重さとか、

そんな人間臭さがしっかり描けていた上でのものだったから。

医療ドラマというよりかはガッツリ人間ドラマだし、

全然縁もゆかりもないのに、島の人々に対してまるで実家に帰省してきた"地元感"さえ感じる。

こんな経験は、今まで見てきた作品の中では初めて。

私の母の実家も小さな島で、毎年夏になるとそこに出かけるのが恒例だった分、

当時(再放送時)は「もうすぐあの島に行けるんだなぁ、泳ぎに行けるんだなぁ」とウキウキして

本作と重ねながら見ていた…のもあったのかもしれませんが。

 

話だけじゃなく、キャッチーでかつ緊迫した雰囲気を生み出す劇伴も、

青と緑いっぱいのロケーションを画面いっぱいに映すシーンと

小刻みにカメラを切り替える手術シーンの演出の対比も、静かにイントロが流れる

主題歌の入れ方、あの目の前にぶわっと広がる海と崖のEDまで、何もかもお気に入りで。

個人的には、脚本が良いと演者も良い、演者が良いと演出も良い、

演出が良いと音楽も良い…と、1つ素晴らしい所があると何もかも素晴らしく見えてくるのが

名作だと思っていて、本作を通して、やはりその法則は間違ってないのだろう…と

確信させられました。

 

ああ…ここまで「2004」じゃなくて本作"自体"の話になってしまった…

それに書きたい事あり過ぎて、いつもよりまとまりのない文章になってしまった…(滝汗)

って事で、ようやく「2004」の話を…w

そうですね。もう、まだ何も始まってないのにロケーションを見てるだけで

泣けてきちゃいましたよね。

剛洋、ちっちゃいね…。恋に落ちたとは台詞で分からせなくとも、

ひな(尾崎千瑛)を映した時の、汗でちょっとベタついた髪と

涼しげでサラサラしてそうな肌のアップで初々しささえ感じさせる演出、堪らなかったです。

 

前後編・計4時間を1時間ごとに分けているので、物語はまだまだ序盤といった所。

けれども、「2006」の内容を知ってるだけに、昌代(朝加真由美)さんや原親子が

今後どうなってしまうかは察しがついていて、"きっかけ"を見るのはとても辛くはありますが、

残り3話もじっくり噛みしめながら見守っていきたいと思います…。

(感想は次回以降も書くかどうかは未定です。)

 

そうそう、主題歌のかけ方の件。

前編の前半なら流れないだろうと予想していたので少し驚きましたが、

えっと…次回予告と同時に…じゃない方が良かったかな(笑)

大音量で「銀の龍の背に乗って〜♪」を堪能した余韻のまま行って欲しかったかなぁ。

 

 

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ハケンの品格(2020) 1話 感想|時代に逆行した会社で働く派遣たち

 

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前シーズンはついこの間までやっていた「春子の物語」を通して視聴済み。

とは言っても、2話のホチキス早打ち対決のシーンの時点で

会社と働く人々の描写に疑問を感じ、それ以降も主人公の変わり者っぷりを

前面に出せばウケるだろう感満載の展開が続いたため

終盤の方はあまり真面目に見ていないんですが…

13年も経てばさすがに令和時代らしい価値観を少しは取り入れてくれるだろうと

淡い期待を寄せながら初回を見てみました。見てみたのですが…

むしろ再放送しない方が良かったのでは?

と思えるくらい、13年前とちっとも変わらずの体育会系ブラック企業っぷりに

いろんな意味で愕然とさせられる内容でした。

 

海の近くにあれば間違いなく潮で崩れやすいであろう会社の立地とか、

チェーンソーとか、派遣にも「アンタ」呼びとか色々言いたい事はあるんですが、

一番あり得ないのはコンプライアンスの描写でしょう。

些細な言動でも「セクハラ」「パワハラ」だとテレビで取りあげられる世の中で

当時よりも女性の扱い方に神経質になっている男性社員は多くいるはずですし、

ましてや、企業はイメージ勝負でもある訳で、S&Fのようなある程度大規模な所なら

コンプライアンス対策はしっかり施されているはず。

なのに、まるで裁判でもやってんのか?とツッコミたくなるような、

人事部全員で2人の新人派遣を吊るし上げと来た。

恐喝ですよね?これ、集団いじめですよね?

録音すれば(偶然してたけど)社員の運命を変える

かなりの証拠になりますよね??

でも、ハニトラ呼ばわりされ、精神的に追い詰められてたのにもかかわらず

「まだここで働けるんですか!?」って喜べる精神って一体…(滝汗)

落とし所が強引過ぎて、いくらチェーンソーで大々的にやったとしても

全くスカッとしませんよ。

 

主人公が周りを変えていく痛快系お仕事ドラマには

敵対する会社・ボスの存在や、曲者な悪役の存在は欠かせないのでしょうが、

本作に関しては悪役サイドの言動も主人公の解決方法もどちらも

突飛過ぎてリアリティがないので、

社会派作品もぼちぼち出てきた今の時代となるとあまりにも浮いて見えてしまいます。

特に前作より悪化しちゃってるな〜と思えたのは、

里中(小泉孝太郎)が春子を頼りまくる件。

いじめ撃退には春子。商談にも春子。新人のお悩み相談にも春子。

ドラえもんドラえもんなのか?

本来なら派遣じゃなくて上司がやる仕事でしょ。

huluでまたオリジナルエピソードが配信されるようですが、

それよりも、春子のいない13年間、どうやって会社が保たれてきたのかを

逆に見てみたいもんですよ。

 

私が仮にドラマをあまり見ていない層で、かつ今回の内容が13年前のものだったら

まだ楽しく見ていたかもしれませんが、

令和になっても「平成」どころか「昭和」体制の会社の話が続くのか…と思うと、

次回以降も感想を書くかどうかは不明です。

時間かかって、せっかく放送出来たドラマなんですけどね…

"浮世離れ"感が薄まってくれる事をもう少し期待してみます…。

 

 

※記事タイトルの下にあるカテゴリー「2020年夏ドラマ」表記の件ですが、

本作を全10話とすると8月中に終わる事を想定し、

「最終回を迎える月」を基準としたために夏ドラマ扱いといたしました。

まだ初回も始まっていない他の作品も同じです。

ただ、放送再開し、かつ最終回まで予定通り放送される事が決まっている

「美食探偵 明智五郎」「家政夫のミタゾノ」については春ドラマ扱いとします。←一応報告。

 


探偵・由利麟太郎 1話 感想|令和の世界に漂うは古風な雰囲気

 

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最近、CMでよく見かけるな〜…力入れてるんだろうな〜…と思っていた本作

(まぁ、このご時世で春ドラマのCMが流れないからっていうのもあるでしょうが)。

フジテレビの横溝正史作品となると

去年と一昨年の年末にやっていた某有名小説の実写化を彷彿とさせられ、制作局が違うとは言え

今回も大々的に宣伝しておいてガックリさせられてしまうのではないか…なんて

一抹の不安が過ぎりながらの視聴となりましたが、

原作を知らない私でも「ちゃんと忠実に作られているな」と感じさせてくれる

世界観に満足しました。

 

内容自体は約1時間に収めるためなのか、それとも単に私の理解力が悪いのか(多分後者?(苦笑))、

事件の背景や捜査過程が助手の三津木(志尊淳)から語られる形で

情報量がやや過多な印象を受け、自分なりに物語を解釈しながらの視聴となってしまいましたが、

璃子新川優愛)・瑛一(長田也哉)・瑛造(中村育二)の日下家の3人の関係性から

横溝作品らしい容赦ない"闇""ゲスさ"が強く感じられる描写を堪能出来たのは良かったです。

変な泣き落とし演出や同情シーンもなく、事件の後日談にほんの少しの希望をも含ませる

三津木の淡々としたナレーションでオチをつけたのも好感が持てました。

と、同時に、バディ2人のシーンに西部劇風の主題歌を重ねたエンディングは

なぜだかテレ朝木8枠ドラマっぽさもあったけれど…(笑)

 

最初は、なんで吉川晃司さんが主役?なんて思ったりもしましたが、

初回を見る限りは主役に起用したのも頷けるものでした。

恐らく時代設定は令和なのでしょうが、令和なのか昭和なのかがはっきりと分からない

"曖昧さ"がミステリー作品に馴染んでいて逆に惹きつけられましたし、

深緑の映像と日本の伝統的な京都の町並みが

吉川さんの醸し出す渋みをより引き立たせていたと思います。

主役が吉川さんだけだと視聴年齢層は高くなってしまうだろうから、

相棒に志尊淳さんを置く事でバランスをとったキャスティングも良い。

 

劇中で何度も出ていた由利の先端恐怖症の件も気になりますね。

自分で意識的に使う分には平気だけど、急に目の前に向けられると怖くなってしまうのか…?

4・5話の前後編でその症状になったルーツが語られるのか期待しつつ、

次回以降も見て行くつもりです。

 

しかし、もし犬神家の作品がまた今年の年末にやるとしたら、

このスタッフで作ってくれないもんかな…(笑)

 

 

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美食探偵 明智五郎 7話 感想|身近にストーカーがいる事に気付こ?

 

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同じ地下アイドルを扱った「だから私は推しました」を彷彿とさせられる内容。

今回の事件は、メンバー2人によるココ(武田玲奈)への

嫌がらせから来ていて、あのお弁当も明智中村倫也)が事前に

すり替えていたのではないかと踏んでいたんですが、どっちも外れちゃいましたねぇ。

前者は普通に「仲良し3人組で良かった…」で終わるんですけど…

明智さん、前回はともかく、ちょっとポンコツ過ぎやしませんか…?

自分の身の回りに麗しいストーカーがいる事をもう少し自覚した方が

不幸な人は減ると思いまっせ?(汗)

 

ココサイドのストーカー・田畑(森永悠希)と出会う前から発症していた摂食障害

事件のヒントになると思ったらさらっと描かれた程度で終わったし、

「命より夢をとる」と言う割には、自分のアリバイが確保出来てるんだから

黙っていればいいものを(カラオケのカメラで特定されて無理だろうけど)

田畑がやって来た時にステージ上で堂々と打ち明けるのは意味が分からないし…

れいぞう子(仲里依紗)が入っていったダストシュートの遺体を

警察は調べもしなかったのかなど、

今回に関しては全体的に粗が目立ってしまった印象がありました。

復活早々ツッコミだらけですみませんが、

何か疑問に感じた所は文章化出来る範囲でなるべく残したいタイプなもんで…。

 

しかし、そんなツッコミ所はあれど、演出の美しさで許せてしまうのが本作。

マリア(小池栄子)をはじめとしたキャラクター造形は勿論ですが、

かつての明智作品のようなレトロさと現代的な映像が組み合わさった演出が

本作の一番の魅力だと思いながら見ています。

舞台がライブハウスというのも相性が良く、暗い部屋の中で色とりどりの光をちらつかせる事で

妖しげな雰囲気を上手く醸し出せていましたし、

序盤の翼を生やし真っ赤なドレスを着た女の子が吐いているカットも、

そんなか弱そうな女の子が最後には田畑を悪魔のような目で見下すシーンの対比も、

いくつも見とれる部分がありました。

 

とにかく、大きく間が空かないうちにまた新作が見られたのは嬉しいです。

しかし、次回予告を見る限りは、もうクライマックス突入という感じで、

恐らく9話で終わっちゃうのかな?

 

 

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世界は3で出来ている 感想|絶望を味わった人。適応できた人。耐えた人。

 

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これ、いつ撮影したのだろう?とビックリさせられるほど、

今の状況に置かれた人々の心境を代弁してくれているかのようなお話でした。

「緊急事態宣言」解除後の世界。妙〜にリアル。

でもって、寝る前に気軽に見られる良い意味での"軽さ"と

現実を思わせてしんみりさせられる"重さ"のバランスも丁度良い。

 

タイトルの"3"が何の意味を指すのかずっと考えながら見ていましたが、

おそらく、「絶望を味わった長男」「変わりゆく世間の波に乗れた次男」

「何とか耐えられた三男」の3兄弟を通して

今の社会の縮図を俯瞰的に描きたかったのかもしれませんね。

"どんな3ヶ月間を過ごしてきたか"はサラッとしか描かれませんでしたが、

"どんな思いを抱えながら生きてきたか"は林遣都さん演じるそれぞれの役から

醸し出される雰囲気、声のトーン、顔つき、表情…で確かに伝わりました。

 

ぐだっとした勇人とお母さん味ある泰斗の対比も凄かったけれど、

三雄を初めて見た時は本当に「誰!?」って思っちゃったもんなぁ…。

微妙にもう中学生みたいな髪型していて可愛らしかったし、

あのあざといポーズも許せちゃうし。

もう少し三雄の話を聞いてみたかった。でも、長男の言葉には頷きっぱなしでした。

 

「これからどうなるんだろうって5歳みたいな事を考えてしまう」

「でも、人って良いよな。忘れるから。渋谷に人いるもんな。」

世の中がとんでもない事になっているのを知ってはいるものの、

それを完全に受け入れる余裕がないまま、気づいたら何もなかったように

日常が"戻ろう"としている…

この状況の変化にぽかんとした気持ちになっている人、

あんな事やこんな事、解放しちゃって良いの?とビクビクする人、多いと思います。

しかし、勇人と同じく自粛期間を上手く利用して出世出来る人もいる訳で、

世の中には本当にいろんなタイプの人間がいるのだとも痛感させられました。

テレビ業界も"進化"している真っ最中ですよね。

リモート機材で実験的に作ったドラマ、兄弟姉妹夫婦で作ったドラマ、

1人複数役で作ったドラマと、既存の枠に囚われない作品が。

バラエティの方は、例えば、本放送前に見た「VS嵐」の嵐のメンバーの合成も違和感なく、

内容自体も以前の形態に近づけようとするといった、

技術の進歩を感じさせられる番組がどんどん出てきました。

10年くらい前だったらあり得ない事でしょう。

 

話は逸れましたが、「当時(の思い出)があるから今がある」

3人が隠し味入りのバターラーメンを味わう姿と重ねつつ、心の片隅に本作の記憶を残したい…

私にとってそう思わせてくれる作品でした。

一人しか出演されていないのに進行もテンポもスムーズでしたし、

深夜にはちょっと勿体なかったですね。

そして、佐藤仁美さんは声のみという贅沢キャスティング(笑)

佐藤仁美さんバージョンで続編が見てみたいし、

もしそうなったら今度は楽しませる方向に行くのかもなぁ。

 

 


行列の女神〜らーめん才遊記〜 8話(最終回) 感想|ラーメンラブに終わりはない!

 

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あー面白かった!

この枠で久しぶりに最後まで"ワクワク"させられた最終回だったわ。

最終回にして橋爪(高畑淳子)との確執、安本(岡本健一)との過去、

もう一つのワクワクの理由と、描くべきエピソードを一気に詰め込んできたから

無事にまとめられるのかと少し心配だったけれども、そんな考えは野暮でしたね。

ピンチが重なっても、以前自分たちが担当したお客様が

救世主として再び現れて解決…とかではなく、 

徹頭徹尾「チームで原因を考える」「チームで動く」姿勢が

ブレずに描かれていた作りに満足しました。

 

芹沢(鈴木京香)の教えによって変われたゆとり(黒島結菜)達が、

今度は彼女を救う番だと一致団結し、濃口醤油らあめんの対策を練るシーン、

身を犠牲にして退職届を出すシーンは、今までの話の集大成らしいと言えばらしい内容。

しかし、感謝の言葉を送る訳でもなく、嬉し涙を流す訳でもなく、

芹沢が放ったのはこの言葉。

「私に橋爪先生をワクワクさせるラーメンを作れないとでも思ってるの?」

彼女から発せられる言葉にはいつも自信に満ち溢れていて、情に脆い性格じゃなくて、

思った事はバッサリ言い切る凛々しさが本当に好きでした。

 

私が初期の頃から考えている「ドラマBiz」枠の良さは

「暑苦しさを取り除いた見やすい版日曜劇場」だと思っていて、

まだ強力コンテンツの某続編が始まってはいないものの、

本作はそれよりも更に見応えのある出来だった気がします。

誰もが食べた事のある身近な「ラーメン」を

ビジネスと掛け合わせる目の付け所も面白かったですし、

仕事とは?商売とは?を業界用語&図解を多用して堅苦しくせず、

あくまでも個性的なキャラクターの成長物語をベースに落とし込む事で

老若男女学んで楽しめるエンターテインメント作品に

仕上がっていたのも良かったです。

以前にも書きましたが、「こんなビジネスドラマが見たかったのよ!」という期待感は

最後まで裏切られませんでした。

 

序盤の段階では、実は、OP曲がラブサイケデリコ?なんて思っていましたが、

今となっては、バックのユーモラスな場面と共に大人な雰囲気も醸し出させるOPに対して、

結末にスカッとさせられて「あぁ、今回も良いもん見た〜!」という爽やかな余韻に

浸れたまま終われるTHE イナズマ戦隊のロック調のEDのメリハリが

じわじわとクセになりました。

 

声を大にしてラーメンラブを叫ぶシーンで、物語は幕を閉じる。

これで終わりとは言わずに、またいつか真摯に目の前の仕事に打ち込む

大人達の続きが見たいなぁ。

この枠で続編が見たいと思えたのは「ハラスメントゲーム」ぶりだわ〜!

 

 

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美食探偵 明智五郎 特別編 第3夜 感想|来週から再びメインディッシュ!

 

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前回まで志田未来さんの回や仲里依紗さんの回で殺意を募らせる内容を見せてきた分、

予告の「趣向の違った喜劇」がどんなものか想像つかないまま

今回のを見始める事になったけれど…うん、高低差が素晴らしかったわ(笑)

料理番組が始まったかと思ったら、次は6話の振り返りを通して

マリア(小池栄子)の静かな恐ろしさを再び味わうようになるし、

でもって今度は料理当てクイズという珍企画に笑わされるし…で、

シリアスとコメディの激しい切り替わりっぷりにも最後まで惹きつけられました。

 

と同時に、以前に6話の感想で「『女性』のマリアと『女の子』の苺(小芝風花)」

などと書きましたが、2人の対比をさらに感じさせる新たな発見も。

マリアが手を伸ばした時にビクッと怯えた表情を見せる苺…

この1シーンだけで、自分との格差の違いを痛感する苺の気持ちを表現する

小芝風花さん…上手かったですね。

やっぱり、最近CMやいろんなドラマに起用されるのも、しっかり理由がありますね。

 

5話パートの北村有起哉さんに関しては、個人的に認識したのが「アンナチュラル」で

悪役のイメージが付いていた分(ついこの間まで「螢草」も見たので尚更…w)、

顔いっぱいに小麦粉をまぶすというあんなにコミカルな演技が見られるとは…という

驚きでいっぱいでした。

 

再び戻って6話パートの六郎(草川拓弥)くんは…味覚音痴以前に記憶力もなかったですな(笑)

 

来週からはもう放送再開。

明智中村倫也)が劇中で「こういうのも悪くないでしょう?」と言っていましたが、

3週間にわたっての特別編、悪くないでしょうどころか凄く良かったですよ!

視聴者を繋ぎ止めるためには総集編を流せば済むものを、

事件の要点を分かりやすくした総集編6話分+hulu映像6話分で

全く同じものにせず、かつ次回(7話)に向けての前菜となるものを作ろうという

作り手なりの気概が感じられた素敵なおもてなし、ありがとうございました。

そして綺麗な流れで本編にバトンタッチ。空白期間の良い使い方しましたね。

残り4話?のメインディッシュ、楽しみにしております。

 

 

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リモートドラマ Living 3・4話 感想|成功と失敗は隣り合わせの人生

 

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#3「おでんとビール」

 

出演:仲里依紗中尾明慶

 

すごい…演技じゃなくて、日常生活でも

本当にこんな夫婦なんじゃないかと思えてくる(笑)

「ドラマ」という作られた世界で視聴者にそう思わせたら、作り手の勝ちですよねぇ。

 

「美食探偵」のれいぞう子並に放たれる、仲里依紗さんの圧倒的な存在感。

旦那役の中尾明慶さんと交互に飛び交うマシンガントークなどで

夫婦を対等な関係にするのではなく、

あえて奥さん>>>>旦那のアンバランスな関係にした事が

そのままドラマとしての面白さに繋がっていたお話でした。

 

最後は絶対ハッピーエンドで終わらないだろうなぁ…なんて思って見ていましたが、

やっぱり一捻りありましたね。

「やっぱおでんははんぺんだって」

そこか!母音絡みか!という意外性はあったけれど(笑)

 

今再放送されている某タイムスリップドラマのような巻き戻し展開も効いていて、

何したら奥さんの機嫌が悪くなるのか…旦那はどんな失言をしてしまうのか…という

2人の間から醸し出される緊張感をも楽しみました。

 

「落ちた靴下で最後の一滴」…夫婦あるある過ぎてグサッと来ます。

 

 

#4「敬遠」

 

出演:青木崇高、優香(声のみ)

 

1部屋に1人の男性…これが一番リモート要素が強かったですね。

と同時に、過去の自分が映った映像を未来の自分が見るというのには

世にも奇妙な物語」を彷彿とさせられました。

 

「笑ってれば面白いと思ってるんだろうな」

「つまんないな。2秒で分かるだろ」「みんなよく喋るよね〜批判だ批判」

ザッピングしてはいちゃもんつけるシーンが妙に印象に残っていて、

坂元さん自身の今のテレビに対する思いを東山(青木崇高)に

代弁させているように聞こえて笑っていたら…

 

後半にはちょっぴり考えさせられる部分がありましたね。

全力で戦って負けるか、手段を利用して勝つのか、

どっちが後悔しないかどうかなんて、結局の所は分からない…。

成功と失敗は隣り合わせ。

スポーツみたいに、負けても美しい思い出として残る人生だったら良いのに…

なんて思ってしまいました。

 

 

***

 

前回の感想で「『今だから〜』は実験的だったのに対し、本作は挑戦的」などと

書いたものの、全話通して考えてみると、

15分×4本という僅かな話数の中で、自分の思想をどれだけ脚本に反映させられるのかという

坂元裕二さんなりの実験的作品でもあったんじゃないかと思います。

 

個人的には2>3>1>4話の順に好きで、全体的には

「コミカルに見えて実は深い、いや、やっぱりコミカルなのかもしれない」

という印象で見終えたものの、

家の中にいる狭い世界と外の広い世界の対比を緩やかに描いた点で、

同じ時間軸で全く違った生活を送るといった

パラレルワールド的世界観を楽しむ事が出来た作品でした。

 

「今だから〜」もそうでしたが、

こんな時だからこそ、テレビドラマだって、ここまで自由な発想を取り入れて

面白いものが作れるんだぞっていうのを世の中に伝えなくちゃという

ドラマ業界の意気込みが感じられます。

 

最後に、これは偏見かもしれませんが、

90年代がトレンディドラマで恋愛ブームが起こり、

2010年代で社会派のドラマが次々誕生したように、

これからのトレンドは「会話劇」を主体としたドラマになって行くんじゃないかと

ここ最近の作品を見てしみじみ思う時間でもありました…。

 

 

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リモートドラマ Living 1・2話 感想|軸がないようであるのかも

 

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2話構成につき、1話ずつ簡単に感想を書いてから

最後にまとめの形をとる事にします。

 

#1「ネアンデルタール

 

出演:広瀬アリス広瀬すず

 

さて1話。実はリアルタイムで既に見ていたものの、

話の内容が独特過ぎるのでもう一度見てから感想を書こう…と思った理由が

主にこの回だったわけですが…

うん、2回目を見てもよく分からん(笑)

詳しく言うと、坂元さんがこの話を作った意図は何となくは分かったけれど(最後に記述)、

なぜ「ネアンデルタール」の設定にしようとしたのかは謎…という感じ。

でも、二人の間で矢継ぎ早に飛び交う会話がひたすら楽しかった。

色んな感じ取り方があるかもしれませんが、

本作の楽しみ方はそれで良いのだろう…とも思いました。

 

今までにありそうでなかった、広瀬アリスさん&広瀬すずさん姉妹の共演ってだけでも

ワクワクしながら見られましたし、

本当の姉妹や兄弟なだけに会話の"間"のバランスも心地よければ、密になっても安心な点でも、

 「リモート」との相性がバッチリな企画を用意したなぁ…と感心させられた初回でした。

 

冷静で真面目なタイプの役にすずちゃん、

楽観的そうなサバサバした役にアリスちゃんというキャスティングもぴったりでしたね。

特にすずちゃんは「anone」に起用されただけあって、

坂元さんにとっては、今回の設定はあて書きがしやすかったんじゃないかなぁ。

 

 

#2「国境」

 

出演:永山瑛太永山絢斗

 

1話よりもさらにカオスな設定でしたが、

内容自体は世の中の現状を暗喩的に捉えたものになっていた印象。

コロナの新規感染者の行動歴が明らかになった途端、

SNSでその人に対して攻撃&差別的なツイートをしたり、特定しようとしたり、

ハッシュタグを使ってのデモが起こったり…

ここら辺の出来事が、今回の「国境が出来る」話を作るきっかけとなったのかな?と思いました。

(あくまでも個人的考え)

「俺たちなんかよりずっと頭の良い人たちが始めた事だと思う」

という発言も妙に自分の中でしっくり来ちゃいましたね。

 

最初は男子高校生みたいに管理人さんの事で盛り上がる

2人の様子に笑わされたかと思いきや、

戦争の話題になった途端、今まで繋がっていたものがプツンと途切れる

人間関係の恐ろしさも感じさせ、でも最後は同じ釜の飯を食べて仲直り…という

緩急のある内容でした。

 

ところで…永山瑛太さんと永山絢斗さんが兄弟な事が本作を知るまで初耳だったのは

ここだけの話で(笑)

雅史が弟かぁ。そうかぁ…←雅史じゃないw

 

 

***

 

久しぶりの坂元裕二作品が地上波で見られるって事で期待していましたが、

間が空いてもやはり独特の世界観を生み出すセンスは健在でした。

リモートを扱ったドラマとしては、まだ「家政夫のミタゾノ」の方は見ていないものの、

同じNHKの「今だから、新作ドラマ作ってみました」は

リモート機材や通話画面を使って"実験"を思わせる作りに特化していたのに対して、

本作は出来る限り普通のドラマの形に近づけようとする"挑戦"が感じられる

企画だったと思います。

 

1、2話の共通点としては、これまた個人的な考えが強めに出てしまいますが、

きっと「コロナ禍で家にいる機会が多くなった人々」の視点に立って作られた

話だったのかもしれません。テレワーク、休業などなど…

私自身も、緊急事態宣言が出されていた時は、出勤回数が減ってしまったために

家で過ごす機会はよくありましたが、

それと同時に、家にいると外で起こっている出来事が、もしかしたらどこか遠い国の

話なんじゃないかとふと他人事に感じる時もあったりしたんですよねぇ。

凄く能天気な発言ですみませんが…(汗)

何というか、家の中での世界と外の世界が分離しているような感覚。

(自分は大丈夫だと言いたい訳ではなく、勿論、感染防止対策はするように日頃から心がけています。)

 

現在、緊急事態宣言は解除されてひとまず安心ですが、

もしその期間が長引いていたとしたら、

「リモートドラマ=ワンシチュエーションドラマで力を発揮出来る」

新人脚本家を発掘するチャンスにもなったのかもしれませんね。

 

3、4話も楽しみです。

 

 

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